小山・ミカタパートナーズ/税理士コラム

商工会に確定申告を全て委託することは可能?

2017年8月22日

事業主のみなさんにお尋ねします。

日頃の経理資料の記帳や確定申告書の作成、確定申告の代行をお願いできる委託先として適切なのは誰でしょうか?

答えはもちろん『税理士』ですね。

ほとんどの事業主の方が税理士と回答するはずです。

ところが、中には「商工会じゃないの?」という回答をする事業主もいるでしょう。

実はこの回答、間違いではないのです。

税務書類の作成や税務の代行は税理士しかできないはず…

なぜ商工会でも可能なのでしょうか?

今回は「商工会に確定申告を全て委託することは可能か?」という疑問に迫ってみましょう。

1 なぜ商工会が税務に関与できるのか?

まずは大前提を説明しておきましょう。

税理士法第2条には「税理士は、他人の求めに応じ、税金に関して、税務代理・税務書類の作成・税務相談をおこなう」との規定があります。

また同法第52条には「税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法の無償独占業務である」との規定もあります。

ここでいう『無償独占業務』とは、有償、無償を問わず、これらの業務は税理士しか扱ってはならないという意味です。

冒頭の質問に大抵の事業主が『税理士』と回答するのは、この規定が遵守されているからこそでしょう。

ところでみなさんは『商工会の役職員に対する臨時の税務書類の作成等の許可について』という国税庁長官名の特例措置の存在をご存知でしょうか?

確定申告の制度が始まった戦後まもない頃、税理士(当時は税務代理士)は全国で1万人にも満たない人数しかいませんでした。

昭和40年代になっても2万人超程度に過ぎなかったため、税理士が存在しない地域では適切な税務指導も行き届きませんでした。

そこで、全国で税務指導をおこない公平な税制を確立するため、昭和47年にこの特例措置が打ち出されることになったのです。

特例措置によると

・商工会の地区内に税理士事務所が皆無

・最寄りの税理士事務所との距離が概ね20㎞以上

・商工会に、5年以上経営改善普及事業に関与している経営指導員が常駐している

という条件を全て満たしている場合には、確定申告前の2ヶ月間に限り、商工会の経営指導員が税務指導や税務書類の作成などの業務をおこなうことができると規定しています。

また、この場合に商工会の経営指導員を利用できるのは年間所得400万円以下の事業主のみと定められています。

現在は税理士の人数が7万人を超え、全国で「最寄りに税理士がいないので税務指導が受けられない」という地域はほぼ解消されています。

そのため、商工会が案内する業務内容は記帳代行や指導が主となりましたが、いまだに税理士の人数が十分ではない地方などでは商工会が確定申告書などの税務書類の作成や申告の代行をおこなっています。

ただし、特例措置で示された年間所得400万円以下の制限のほか、従業員の人数など事業規模に関する独自の制限を設けている商工会が多いようです。

条件のみを見た場合、商工会を利用できるのは極小単位で事業を展開している個人事業主に限定されることになりますが、実際には柔軟に対応している商工会も多いので、問い合わせしてみると良いでしょう。

2 商工会と税理士、どちらに依頼するのがおトク?

商工会で税務指導や税務書類の作成を依頼するメリットは、やはり「低料金であること」が一番でしょう。

商工会の会員・非会員、所得額などによって料金には差がありますが、商工会に確定申告書類の作成や代行などを委託した場合の料金は、税理士に依頼する場合の3分の1以下に抑えられるでしょう。

費用面でみれば、商工会に委託するほうが圧倒的におトクです。

ただし、商工会の職員はあくまでも専門家ではありません。

確定申告の前2ヶ月間限定の臨時対応に限られた存在です。

商工会に記帳や確定申告書の作成を依頼した結果、必要経費のミスやうっかり適用できる控除を申告しなかったために税額が上がったというトラブルも報告されています。

商工会に委託した場合、ミスによる損失の責任を追及は困難です。

こうなると、たとえ料金面で割高になるとしても、できる限り税理士に依頼するほうが賢明でしょう。

3 まとめ

今回紹介した「商工会に確定申告を全てを委託できるか?」という疑問の答えは、昭和47年に打ち出された『商工会の役職員に対する臨時の税務書類の作成等の許可について』に基づいて限定的に可能、という結果になりました。

ただし、どこの商工会でも対応可能というわけではなく、あくまでも地理的条件や所得額に制限がありながらも柔軟に対応しているに過ぎないと認識しておく必要があります。

『商工会の役職員に対する臨時の税務書類の作成等の許可について』には、税理士と商工会が協力的な立場で広く公平な税制を普及させる目的がありますが、商工会による税務指導や税務書類の作成などに対して否定的な立場を貫く税理士も多いので、今後、制度変更が加えられる可能性もあります。

また、現在は税務書類の作成などに対応している商工会も、取扱い内容に変更が生じることも予想されるので、情報収集は怠らないようにしましょう。