「隣に工場が建つ?!」で損をしないためのガイド
住宅団地などであればあまり考えられる事例ではありませんが、郊外の敷地などでは住宅の隣に工場が建設されることが稀住宅団地などであればあまり考えられる事例ではありませんが、郊外の敷地などでは住宅の隣に工場が建設されることが稀にあります。
工場といえば、音や異臭、車や人の出入りなどが非常に気になるところで「もし隣に工場が建つと分かっていれば、その敷地に住宅を建てることはなかった」と後悔することにもなりかねません。
もしその時点で住宅を手放したとしても、次の買い手を探すのも難しくなるでしょう。
つまり住宅の隣に工場が建つということは、不動産の価値を下げるということに繋がるわけですが、そんなケースでできる限り損をしない方法はないのでしょうか?
今回は「住宅の隣に工場が建つ場合」に損をしないためのガイドを紹介します。
1 工場は「建てられない土地」がある?!
わが国に存在する土地には、全て「どのように使う土地なのか?」の仕分けがなされています。
自分が所有している土地だからといって勝手に住宅を建てることはできないし、広大な敷地だからといって仕分けの外で商業施設を建てることもできません。
全ての国土は『都市計画法』に基づいて
1 都市計画区域
2 準都市計画区域
3 両区域外
の3種類に大分類されています。
都市計画区域は、基本的には都道府県が数多くの規制を設けて管理する土地です。
準都市計画区域は、都市計画区域ほど強く規制はかけられていない土地です。
両区域外とは、人が居住するのに向いていないような山奥の土地などです。
1 の都市計画区域はさらに
(1) 市街化区域
(2) 市街化調整区域
(3) 非線引区域
の3種類に区別されます。
既に市街地が形成されていたり、これから約10年程度の時間をかけて市街地を形成する計画にある区域が市街化区域。
市街化を抑制する計画にある区域が市街化調整区域、いまだに区分が決定されていない地域が非線引区域です。
さらに市街化区域は、住環境を第一に優先した第一種低層住居専用地域から、工業の利便と増進を追求するための工業専用地域までの12種類の用途地域に分類されています。
一般住宅は基本的に工業専用地域以外の用途地域ならどこでも建築することが可能ですが、工場は第一種・第二種低層住居専用地域と第一種中高層住居専用地域では建設不可、工業地域と工業専用地域を除くほかの地域では業種や工場の規模、使用する動力などによって厳しく規制を受けます。
カンタンにいえば
・住居はほぼどこにでも建てられる
・工場は建てられない地域や厳しく規制された土地が多い
ということになります。
2 隣に工場ができた場合はどうすれば損をしない?
住宅の隣に工場が建つということは、用途地域が第一種中高層住居専用地域から工業地域までの8地域であることになります。
住居は工業専用地域を除く11地域で建築可能なので、住宅の隣に工場が建つことは大いに有り得る話です。
住居の優先度が高い地域では業種や規模などで厳しく規制されるので大した規模の工場が建つことはありませんが、周辺に工場が建っていても当たり前の地域に土地を購入して住居を建てれば、ある程度大きな規模の工場が建つおそれは十分に有り得ます。
では、自分が住居を構えたすぐ隣に工場が建つ場合にはどうすれば良いのでしょうか?
工場が隣に建てば、音、異臭、人や車の出入りなどで平穏な生活が害されることは間違いありません。
ある調査では「工場の隣と墓地の隣、どっちがイヤ?」というアンケートが僅差で「工場の隣がイヤ」という結果になったくらいです。
隣に工場が建った以上、都市計画上は建設不可というわけではないので、理由をつけて撤退させることはほぼ不可能でしょう。
もし規制を超えた規模や音などの工場が建っていれば、記録を取って都道府県に申し出て緩和することは期待できます。
隣に工場が建った場合に考えられるのは「不動産価値が下がるのであれば、固定資産税を下げることができるのではないか?」ということです。
固定資産税は、適正な時価を求める方法として固定資産税評価額が利用されている以上、隣に工場が建っているという個別の条件は個人で申し立てても固定資産税評価額を下げることには直結してくれません。
考えられるのは不動産鑑定士に依頼して、不動産鑑定評価によって固定資産税評価額を下げるという方法です。
適正な方法で固定資産税評価額が算定されているというのが役所側の建前で、不動産鑑定評価によって固定資産税評価額を下げることは困難ですが、一切実例がないというわけではないのでチャレンジの価値はあります。
不動産鑑定評価が強く効果を発揮するのは相続の場合でしょう。
相続税を算出する場合には、不動産鑑定評価によって大きく固定資産税評価額を下げることができます。
先々に、という話にはなりますが、相続時に節税につながる材料になるということを相続人となる親族に口伝しておくことが重要でしょう。
3 まとめ
今回は、所有している住宅の隣に工場が建った場合に損をしない方法について紹介しました。
少々冷たい言い方にはなりますが、都道府県が規制している条件をクリアして工場が建った以上、工場を撤退させたりすることは考え難いし、住環境が害されたとして補償を受けるには長い訴訟によってしか結果を得ることはできません。
そうすると、隣に工場があることが不動産価値を下げているとして、節税の材料につなげていくほかに方法がないでしょう。
「そんなことでは解決できない」という心情になるのであれば、初めから第一低層住居専用地域から第一中高層住居専用地域までの地域に住居を構えるべきであり、そのほかの土地に住居を建てることは避けるべきですね。