海外資産が5000万円を超えたら|国外財産調書の提出義務と出さないリスク
- 1. 国外財産調書とは(3行サマリー)
- 2. 誰が、何を、いつまでに出すのか
- 3. 「出す」と何が得で、「出さない」と何が損なのか
- 4. 出さないと「罰則」もある
- 5. 専門家の視点:CRSとセットで「もう隠せない」
- 6. これから海外資産を持つ・持っている人へ(まとめ)
- よくある質問(FAQ)
1. 国外財産調書とは(3行サマリー)
- その年の12月31日時点で、合計5,000万円を超える国外財産を持つ「居住者(非永住者を除く)」が提出する書類です。
- 翌年の6月30日までに、所轄の税務署へ提出します。
- 「申告」ではなく、海外にどんな財産をいくら持っているかを国に報告するための制度です。
この制度の根拠は、国外送金等調書法(正式名称:内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律)第5条にあります。富裕層の海外資産を通じた国際的な税逃れを防ぐため、平成26年(2014年)から始まりました。法律の名前そのものが「適正な課税の確保」を掲げている点に、国の本気度が表れています。
2. 誰が、何を、いつまでに出すのか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出義務者 | 居住者(非永住者を除く)で、12/31時点の国外財産の合計が5,000万円超の人 |
| 対象財産 | 海外の預金、海外不動産、外国株式・債券・投資信託、海外の生命保険 など |
| 基準時点 | その年の12月31日 |
| 提出期限 | 翌年の6月30日まで |
| 提出先 | 住所地等の所轄税務署 |
ポイントは、「儲かったかどうか」に関係なく、“持っているだけ”で報告義務が生じることです。含み益が出ていなくても、5,000万円を超えていれば対象になります。
3. 「出す」と何が得で、「出さない」と何が損なのか
この制度の核心は、加算税の「アメとムチ」にあります。きちんと出した人は優遇され、出さなかった人は重くなる——その差が、いざというときに効いてきます。
✅ 出した場合のメリット(軽減措置)
期限内に正しく提出していれば、後にその国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れが見つかっても、過少申告加算税などが5%軽減されます。「ちゃんと報告していた」ことが、ペナルティの割引につながります。
❌ 出さなかった場合のデメリット(加重措置)
逆に、提出期限内に出さなかった、あるいは記載すべき財産が書かれていなかった場合、その財産に関して申告漏れがあると、過少申告加算税などが5%加重されます(場合により10%加重となることもあります)。
4. 出さないと「罰則」もある
加算税の加重にとどまりません。悪質なケースには刑事罰も定められています。
- 正当な理由なく期限までに提出しなかった場合、または偽りの記載をして提出した場合:1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されることがあります。
「うっかり」では済まされない、れっきとした法的義務だということです。
5. 専門家の視点:CRSとセットで「もう隠せない」
実務家の立場から申し上げると、国外財産調書を考えるうえで欠かせないのが、CRS(共通報告基準)との関係です。CRSは、各国の税務当局が金融口座情報を自動的に交換する国際的な仕組みで、日本も多くの国・地域から海外口座情報を入手しています。
——弊社にも、海外資産をお持ちの方から「国外財産調書って、本当に出さないといけないのか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、誤解が多いのは「出さなければ、海外資産の存在自体が分からないはず」という思い込みです。実際にはCRSで海外口座の情報は国税庁に届いているため、私たちが関与する場面では「調書を出していないのに海外資産がある」状態こそ、かえって目立ってしまうリスクとしてご説明しています。
国税庁は、CRSで得た海外口座情報と、提出された(あるいは提出されていない)国外財産調書を突き合わせることができます。「調書を出していないが、CRSでは海外に資産がある」という不一致は、調査の格好の入り口になります。“出さないことで隠す”という発想自体が、もはや成り立たないのです。
6. これから海外資産を持つ・持っている人へ(まとめ)
国外財産調書は、5,000万円超の国外財産を持つ人の法的義務です。出せば加算税が軽減され、出さなければ加重され、悪質なら刑事罰もある——そしてCRSによって、海外資産はすでに国税に把握されうる時代です。
結論はシンプルです。海外資産は「隠す」のではなく「正しく報告する」。 そのうえで、合法的に税負担を最適化していくのが、これからの資産防衛の王道です。
「自分は提出義務があるのか」「過去に出していなかったがどうすべきか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、トリプルホルダーの視点で、国外財産の棚卸しから調書の作成・申告の適正化までご支援しています。海外資産のことでご不安があれば、お早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
国外財産調書は誰が提出する必要がありますか?
提出しないとどうなりますか?
海外の口座や資産は税務署に分かるのですか?
過去に提出していませんでした。どうすればよいですか?
出典・参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.7456「国外財産調書の提出義務」
- 国外送金等調書法(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律)第5条
- 国税庁「国外財産調書制度(FAQ)」
- 国税庁「租税条約等に基づく情報交換(CRS/共通報告基準)」/日本経済新聞ほか報道各社
本記事は、国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。要件・罰則は制度改正により変わる可能性があります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日
