資産管理会社(プライベートカンパニー)は何億円から作るべきか
- 1. 資産管理会社とは何か
- 2. 何から作るべきか──「資産額」より「所得」で判断
- 3. 主なメリット
- 4. 見落とされがちなコスト・デメリット
- 5. 向いている人・向いていない人
- 6. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 資産管理会社とは何か
資産管理会社とは、個人の資産(不動産・株式・自社株など)を法人に持たせ、法人を通じて保有・運用・管理するための会社です。事業で商売をするというより、「資産を持つ・管理する」こと自体を目的とする点が特徴で、大きく次の型があります。
- 不動産保有・管理型:賃貸不動産を法人で保有し、家賃収入を法人で受ける
- 株式・有価証券保有型:上場株や投資信託を法人で保有・運用する
- 自社株・持株型:オーナーの自社株を持株会社に集約し、承継に備える
2. 何から作るべきか──「資産額」より「所得」で判断
法人化を考える最大の分岐点は、個人にかかる所得税率と、法人にかかる実効税率が逆転するポイントです。
個人の所得税は超過累進で、課税所得が増えるほど税率が上がり、住民税と合わせると最高で約55%に達します。一方、中小法人の法人税率は所得800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%で、地方税を含めた実効税率はおおむね30〜34%程度です。
| 区分 | 税率の概観 |
|---|---|
| 個人(所得税+住民税) | 累進で最高 約55% |
| 中小法人(実効税率) | おおむね 30〜34% 程度 |
このため、一般的には継続的な課税所得が年900万円を超えるあたりから法人のほうが有利になりやすく、設立コストや手間まで含めると「年1,000万〜1,200万円の所得が継続して見込めるか」を実質的な目安とする専門家が多いです。
ポイントは、「総資産が何億円あるか」ではなく「その資産から毎年いくら所得が生まれ続けるか」で考えることです。含み益の大きい資産でも、毎年の所得が小さければ法人化の節税メリットは限定的です。
3. 主なメリット
- 所得の分散:家族を役員にして適正な役員報酬を払うことで、所得を分散し、世帯全体の税率を下げられる(給与所得控除も使える)
- 税率差の活用:高い個人税率ではなく、低い法人実効税率で利益を受けられる
- 相続・事業承継:個人で持つより、株式の形にしておくことで評価・分割・移転がしやすくなる。計画的な承継対策の器になる
- 経費の範囲:法人として事業に必要な費用を、個人より広く経費にできる場合がある
- 再投資のしやすさ:法人内に利益を留保し、次の投資に回しやすい
4. 見落とされがちなコスト・デメリット
メリットばかりが語られますが、コストと制約を理解せずに作ると後悔します。
- 設立費用:合同会社で15万円前後、株式会社で30万円前後の初期費用
- 赤字でもかかる税金:法人住民税の均等割が、赤字でも年7万円程度〜発生する
- 社会保険の加入義務:役員報酬を出すと社会保険料の負担が生じる
- 申告・記帳のコスト:法人の決算・申告は個人より複雑で、税理士費用もかかる
- 資産の私的利用ができない:法人の資産は、オーナー個人が自由に使えるわけではない
- 出口の手間:作るのは簡単でも、たたむ(清算する)には手間と費用がかかる
5. 向いている人・向いていない人
- 不動産・株式から継続的に高い所得(目安:年1,000万円超)が生まれている
- 家族への所得分散の余地がある(配偶者・子の関与が見込める)
- 相続・事業承継を見据えて、早めに器を作っておきたい
- 毎年の所得が小さく、節税メリットが設立・維持コストを下回る
- 数年で資産を売却・現金化する予定がある(法人化の効果が出る前に出口が来る)
- 記帳・申告などの管理コストや手間を負担に感じる
6. まとめ
資産管理会社は、「資産が何億円あるか」ではなく「継続的にいくら所得が生まれるか(目安:年1,000万円超)」と「相続・承継まで含めた目的」で判断すべきものです。税率差・所得分散・承継対策という強力なメリットがある一方、設立・維持コストや資産の私的利用制限といった制約もあります。
「自分の場合に作るべきか、作るならどの型か」は、所得の状況・家族構成・将来の承継方針によって最適解が変わります。当事務所では、非上場株式の評価や組織再編まで踏まえた高度な資産設計をご支援しています。資産管理会社をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
資産管理会社は資産が何億円あれば作るべきですか?
資産管理会社の主なメリットは何ですか?
デメリットや注意点はありますか?
個人の不動産を法人に移せば節税になりますか?
出典・参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
- 所得税法 第89条(所得税の税率)・法人税法 第66条(法人税の税率)/租税特別措置法 第42条の3の2(中小企業者等の軽減税率=年800万円以下15%)
- 中小企業庁「法人税率の軽減(中小法人の軽減税率の特例)」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務判断に代わるものではありません。税制は改正され、適用は個別事情により異なります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日
