相続税を合法的に圧縮する王道|生前にやるべきことの正しい順番
- 1. 全体像:相続税対策は「3階建て」で考える
- 2. 1階:まず「いくらかかるか」を知る(基礎控除)
- 3. 2階:非課税枠・特例で「評価」を下げる
- 4. 3階:生前贈与は「時間をかけて」計画的に
- 5. よくある失敗 vs 王道の進め方
- 6. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 全体像:相続税対策は「3階建て」で考える
相続税対策は、次の3階層で考えると迷いません。下の階から順に固めるのが鉄則です。
| 階層 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1階(土台) | 財産の棚卸しと相続税額の試算 | まず「いくらかかるか」を知る |
| 2階(評価減) | 非課税枠・特例で財産評価を下げる | 課税対象そのものを圧縮 |
| 3階(移転) | 生前贈与で計画的に渡す | 時間をかけて財産を移す |
多くの失敗は、1階(現状把握)を飛ばして、いきなり3階(贈与)や保険商品に飛びつくことから起こります。
2. 1階:まず「いくらかかるか」を知る(基礎控除)
対策の出発点は、自分の家にそもそも相続税がかかるのか、かかるならいくらかを把握することです。鍵になるのが基礎控除です。
たとえば相続人が配偶者と子2人(計3人)なら、3,000万円+600万円×3=4,800万円。遺産の総額がこの範囲に収まれば、相続税はかかりません。まずは財産(不動産・自社株・預貯金・保険など)を棚卸しし、概算額を出すこと。ここを飛ばすと、必要のない対策にお金と時間を使ってしまいます。
3. 2階:非課税枠・特例で「評価」を下げる
課税対象を圧縮する、効果が大きく王道的な打ち手がこの階層です。
生命保険の非課税枠
死亡保険金には、相続税の非課税枠があります。
相続人3人なら1,500万円まで非課税。預貯金で持つより保険にしておくほうが、この枠のぶん有利になります。納税資金の確保や、特定の人へ確実に渡す手段としても有効です。
小規模宅地等の特例
自宅や事業用の土地について、一定の要件を満たすと評価額を最大80%減額できる特例です。効果が非常に大きい反面、適用要件(誰が継ぐか・住み続けるか等)が細かく、判断を誤ると使えません。自宅の土地評価が大きい方ほど、ここの設計が効きます。
4. 3階:生前贈与は「時間をかけて」計画的に
財産を生前に移す手段が贈与です。ただし2024年(令和6年)の改正で、ルールが変わった点に注意が必要です。
暦年贈与(年110万円の非課税)と「7年内加算」
毎年110万円までは贈与税がかからず、コツコツ移せます。ただし、亡くなる前の一定期間内の贈与は、相続財産に持ち戻して相続税の対象になります。この期間が、改正で従来の3年から7年に延長されました(2024年1月1日以降の贈与から段階適用、完全移行は2031年)。延長された4年分については、合計額から100万円を控除した残額が加算されます。
ポイントは、「駆け込みでの贈与は効きにくくなった」=「早く始めた人ほど有利」になったということです。
相続時精算課税(年110万円の基礎控除が新設)
もう一つの選択肢が相続時精算課税です。改正で、この制度にも年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円分は相続財産に持ち戻されないため、使い方次第で有効な手になります。暦年課税とどちらが有利かは、年齢・財産規模・渡す相手で変わるため、必ず試算してから選びます。
5. よくある失敗 vs 王道の進め方
- 現状把握(試算)をせず、いきなり保険や不動産を買う
- 高齢になってから慌てて駆け込み贈与(7年内加算で効きにくい)
- 小規模宅地等の特例を、要件を満たさない形で当てにする
- 節税ばかり優先し、「誰が何を継ぐか」を決めず家族がもめる
- 納税資金を考えず、土地ばかりで現金が足りなくなる
- まず財産を棚卸しし、相続税額を試算する(1階)
- 生命保険の非課税枠・小規模宅地等の特例で評価を下げる(2階)
- 早めに、計画的に暦年贈与・相続時精算課税を使う(3階)
- 「節税」だけでなく「分割(もめない)」「納税資金」をセットで設計する
6. まとめ
相続税の圧縮は、①現状把握 → ②評価減(保険・小規模宅地)→ ③生前贈与という順番で、土台から積み上げるのが王道です。2024年改正で生前贈与は「早く始めた人が有利」になりました。そして忘れてはならないのが、相続対策は税金だけの話ではないということ。「節税・分割・納税資金」の3つが揃って初めて、家族に円満に資産を遺せます。
「自分の家は何から手をつけるべきか」は、財産構成・家族構成・自社株の有無で大きく変わります。当事務所では、非上場株式の評価や事業承継まで含めた相続設計をご支援しています。まずは現状の試算から、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
相続税はいくらから かかりますか?
生前贈与は今からでも間に合いますか?
生命保険は相続税対策になりますか?
自宅の相続税評価を下げる方法はありますか?
出典・参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.4124「相続時精算課税の選択」
- 相続税法 第15条(基礎控除)・第12条(生命保険金の非課税)・第19条(生前贈与加算)・第21条の9(相続時精算課税)/租税特別措置法 第69条の4(小規模宅地等の特例)
- 国税庁「令和5年度税制改正(資産課税)/生前贈与加算の見直し(3年→7年)」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務判断に代わるものではありません。税制は改正され、適用は個別事情により異なります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日
