青色申告とは?65万円控除の要件・5大メリットと申請のやり方を税理士が解説【2026年版】

個人事業主・フリーランスとして開業すると、必ずぶつかるのが「白色申告と青色申告、どちらにすべきか」という最初の分かれ道です。結論から言えば、少しの手間を惜しまなければ、青色申告は圧倒的に有利です。最大65万円の所得控除に加え、家族への給与、赤字の繰越しなど、白色申告にはない特典が法律で用意されています。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでも、開業・独立のご相談では「まず青色申告の承認申請を出しましょう」と必ずお伝えしています。 本記事では、青色申告のメリット、65万円・55万円・10万円控除を分ける要件、申請の手続きと期限、そして令和8年度税制改正大綱で示された見直し(控除額の再編)まで、2026年(令和8年)時点の最新の取扱いで網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 青色申告とは(3行サマリー)
  2. 2. 青色申告と白色申告の違い
  3. 3. 最大のメリット:青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円)
  4. 4. 特別控除だけではない、青色申告の5大メリット
  5. 5. 申請の手続きと期限(ここで失敗する人が多い)
  6. 6. 【令和8年度税制改正大綱】青色申告特別控除が再編へ(令和9年分から)
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 青色申告とは(3行サマリー)

  • 青色申告は、一定の水準で帳簿をつけ、その記録に基づいて正しく申告する人に、税制上の特典を与える制度です(所得税法第143条ほか)。
  • 対象は、事業所得・不動産所得・山林所得を生ずる人。あらかじめ税務署へ「青色申告の承認申請書」を提出した人だけが使えます。
  • 最大の特典が、所得から最大65万円(改正後は最大75万円)を差し引ける青色申告特別控除です。

帳簿づけの手間という「コスト」を払う代わりに、節税という「リターン」を得る——それが青色申告の本質です。会計ソフトが普及した今、そのコストは大きく下がり、リターンだけが残る制度になっています。

2. 青色申告と白色申告の違い

かつては「白色申告は帳簿不要で楽」と言われましたが、現在は白色申告でも記帳・帳簿保存が義務です。手間が大きく変わらない以上、特典のある青色申告を選ばない理由はほとんどありません。

項目白色申告青色申告
事前の申請不要青色申告の承認申請書が必要
記帳の水準簡易な記帳10万円控除は簡易簿記/55万・65万円控除は複式簿記
特別控除なし10万円・55万円・65万円
家族への給与専従者控除(配偶者最大86万円・その他50万円が上限)青色事業専従者給与(適正額を全額必要経費に)
赤字の繰越しできない純損失を翌年以後3年間繰越せる
少額減価償却資産の特例使えない30万円未満を一括経費(年300万円まで)

特に大きいのが、赤字(純損失)を3年間繰り越せる点と、家族への給与を適正額まで経費にできる点です。これらは特別控除と並ぶ青色申告の主役であり、白色申告との差を決定的にします。

3. 最大のメリット:青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円)

青色申告特別控除は、要件によって控除額が3段階に分かれます。国税庁タックスアンサー No.2072 に基づく現行(令和8年分)の要件は次のとおりです。

控除額主な要件
65万円55万円の要件+「e-Taxによる電子申告」または「優良な電子帳簿の保存」のいずれかを満たす
55万円①事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営む ②正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳 ③貸借対照表・損益計算書を添付し期限内に申告
10万円上記の要件を満たさない青色申告者(簡易簿記など)。事業所得・不動産所得・山林所得が対象
💡 65万円控除のカギは「複式簿記+e-Tax(電子申告)」です。複式簿記で55万円の要件を満たしたうえで、確定申告書・貸借対照表・損益計算書を申告期限までにe-Taxで提出すれば、最も手軽に65万円に到達できます(国税庁 No.2072)。会計ソフトを使えば複式簿記の帳簿は自動でつくれます。

ここで誤解されやすいのが、「期限内申告」が65万円・55万円控除の絶対条件だという点です。1日でも申告が遅れると、複式簿記で帳簿を完璧に整えていても控除額は10万円に下がってしまいます。また、不動産所得だけの場合は「事業的規模(おおむね5棟10室以上)」でないと55万円・65万円控除は使えず、10万円控除になります。なお、現金主義による所得計算の特例を選んでいる人は、55万円・65万円控除を受けられません。

4. 特別控除だけではない、青色申告の5大メリット

青色申告の価値は特別控除だけではありません。むしろ事業が育つほど効いてくるのが、次の特典です。

① 青色事業専従者給与(家族への給与を経費に)

生計を同じくする配偶者や親族に支払う給与を、適正額であれば全額必要経費にできます(国税庁 No.2075)。白色申告の専従者控除(配偶者最大86万円・その他親族50万円の固定上限)と違い、仕事の対価として妥当な範囲なら金額の制限がありません。事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。

② 純損失の繰越控除(赤字を3年繰り越せる)

事業で生じた赤字(純損失)を、翌年以後3年間にわたって黒字と相殺できます。開業初年度に赤字が出ても、翌年以降の利益から差し引けるため、立ち上げ期の税負担を平準化できます。

③ 少額減価償却資産の特例(30万円未満を一括経費)

30万円未満の資産を、買った年に全額経費にできます(年間合計300万円まで)。通常は数年に分けて減価償却する資産を一度に落とせるため、利益が出た年の調整に有効です。

④ 貸倒引当金の計上

売掛金などの貸し倒れに備え、年末の債権残高の一定割合(一括評価で原則5.5%)を経費として先取りできます。

⑤ 記帳に基づく信頼(推計課税を受けにくい)

帳簿が整っているため、税務調査で売上や経費を推計で課税される「推計課税」を受けにくく、金融機関への融資や資金調達でも決算書の説得力が増します。

5. 申請の手続きと期限(ここで失敗する人が多い)

青色申告で最も多いつまずきが、申請の出し忘れ・出し遅れです。青色申告は「申告のときに選ぶ」ものではなく、その年が始まる前(または開業直後)に承認を受けておく必要があります(国税庁 No.2070)。

❌ やりがちな失敗
  • 確定申告の時期になってから「青色にしたい」と気づいたが、申請期限を過ぎていてその年は白色しか使えなかった
  • 開業したのに承認申請書を出し忘れ、初年度の赤字を繰り越せなかった
  • 複式簿記で帳簿は完璧だったのに、申告が1日遅れて控除が65万円→10万円に減った
  • 紙で郵送提出したため、e-Tax要件を満たせず65万円ではなく55万円どまりになった
⭕ 王道の対応
  • 開業したらすぐ、「開業届」と「青色申告の承認申請書」をセットで提出する
  • 申請期限を守る(下表)。迷ったら早めに出す
  • 会計ソフトで日々複式簿記の帳簿を自動作成し、e-Taxで期限内に申告して65万円控除を確実に取る
  • 家族に給与を払うなら「青色事業専従者給与に関する届出書」も忘れずに

承認申請書の提出期限は、状況によって変わります。

ケース青色申告承認申請書の提出期限
原則(すでに事業を営んでいる人)青色申告をしようとする年の3月15日まで
その年の1月16日以後に新規開業した人開業日から2か月以内
相続で事業を承継した場合被相続人の申告状況・死亡日に応じた期限(原則4か月以内など)
💬 実務の現場から
——弊社にも、「開業したけれど青色申告の届出をしたか覚えていない」というご相談は実際によく寄せられます。一般論として申し上げると、開業時の届出は後からまとめてやろうとすると必ず漏れます。私たちが関与する場面でも、開業のご相談を受けたらその場で「開業届・青色申告承認申請書・(必要なら)専従者給与の届出」を一緒に出しきるようご案内しています。最初の数枚の紙が、初年度から数十万円の節税を左右します。

6. 【令和8年度税制改正大綱】青色申告特別控除が再編へ(令和9年分から)

令和7年12月に公表された令和8年度税制改正大綱で、青色申告特別控除の見直しが示されました。デジタル化(電子帳簿・電子申告)を一段と促す内容で、令和9年(2027年)分の所得税から適用される見込みです。

💡 改正大綱で示された見直しの方向(令和9年分から・見込み)
75万円控除を新設:優良な電子帳簿の保存+e-Tax(電子申告)の両方を満たす場合
65万円控除:e-Tax(電子申告)を行う場合
紙で申告する場合は一律10万円に引下げ(複式簿記で帳簿を整えても、紙申告だと10万円)
・現行の「複式簿記+紙申告で55万円」という区分は実質的に見直される方向

ポイントは、「複式簿記であること」だけでは高い控除を取れなくなり、電子帳簿・電子申告が前提になることです。会計ソフト(クラウド会計)で帳簿をつけ、e-Taxで申告する体制を今のうちに整えておけば、改正後もそのまま最大75万円控除を狙えます。逆に紙申告を続けていると、複式簿記でも10万円控除に下がってしまいます。

※本項は令和8年度税制改正大綱(与党公表)に基づく今後の見通しです。最終的な内容は国会で成立する改正法令で確定します。最新情報は国税庁の公表をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

青色申告は個人事業主だけの制度ですか?

いいえ。個人の所得税の青色申告のほか、法人にも法人税の青色申告があり、欠損金の繰越控除などの特典があります。本記事は主に個人事業主・フリーランスの所得税の青色申告を解説しています。

開業届だけ出して、青色申告の承認申請書を出し忘れました。今年は青色にできますか?

原則として、その年の3月15日(1月16日以後開業なら開業から2か月以内)までに承認申請書を出していないと、その年は青色申告にできません。翌年分から青色にするため、早めに承認申請書を提出しましょう。

複式簿記は難しそうです。簿記の知識がなくても65万円控除は取れますか?

取れます。クラウド会計ソフトを使えば、日々の入力から複式簿記の帳簿・貸借対照表・損益計算書が自動で作られます。あとはe-Taxで期限内に申告すれば65万円控除の要件を満たせます。

赤字でも青色申告をする意味はありますか?

あります。青色申告なら、その年の純損失(赤字)を翌年以後3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。開業初年度が赤字になりやすい事業ほど、青色申告のメリットは大きくなります。

不動産所得でも65万円控除は使えますか?

事業的規模(おおむね貸間・アパートは10室以上、独立家屋は5棟以上が目安)であれば使えます。規模がこれに満たない場合は10万円控除になります。

8. まとめ

青色申告は、帳簿づけの手間と引き換えに、節税の特典をまとめて受けられる、個人事業主・フリーランスの王道の選択です。要点は次のとおりです。

  • 最大65万円控除のカギは「複式簿記+e-Tax(電子申告)+期限内申告」。会計ソフトを使えば実現できる。
  • 特別控除だけでなく、家族への給与の経費化・赤字の3年繰越し・30万円未満の一括経費など、事業が育つほど効く特典がある。
  • 最大のつまずきは申請の出し忘れ・出し遅れ。開業したら「開業届+青色申告承認申請書」をセットで出す。
  • 令和8年度税制改正大綱で、令和9年分から電子帳簿+e-Taxで75万円・紙申告は10万円へ再編の見込み。電子化の準備を今のうちに。

「自分は55万円と65万円のどちらを取れるか」「家族への給与をいくらにすべきか」「赤字をどう繰り越すか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、開業時の届出から日々の記帳・申告、改正への対応まで、個人事業主・フリーランスの方に伴走しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 所得税法 第143条(青色申告)・第57条(青色事業専従者給与)・第70条(純損失の繰越控除)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
  • 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月・与党公表)
ご利用上の留意事項
本記事は、青色申告に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。控除額の適用要件・申請期限・事業的規模の判定は個別事情により異なります。令和8年度税制改正大綱に基づく見直しは今後の見通しであり、最終的な内容は成立する改正法令で確定します。実際の申告・申請にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月10日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp