「5棟10室」が基準?不動産所得の事業的規模を活用した節税方法
不動産投資の規模を拡大していくと『事業的規模』への拡大を考えることになります。
「規模の拡大なんか考えなくてもやっていけるよ」と思っている方は、ぜひ今回の記事をしっかり読んでください。
起業的規模への拡大で享受できるメリットを理解できれば、考え方が変わること間違いナシです。
1 不動産所得の『事業的規模』とは?
不動産の貸付によって得られた所得は『不動産所得』になります。
そして、不動産所得は「事業として行われているか?」によって所得税の計算が異なってきます。
「事業として行われている」ことを『事業的規模』といい、事業的規模で経営されている不動産事業には税法上の優遇措置が用意されています。
では、何をもって『事業的規模』と判断するのでしょうか?
国税庁が示す事業的規模の基準は
・貸し間、アパート等については独立した室数が概ね10室以上
・一戸建ての貸家については概ね5棟以上
です。
この「5棟10室」の基準を満たせば、原則として事業的規模として取り扱われますが、この基準を満たしていなくても「社会通念上事業と称するに至る規模で行われているかどうかによって、実質的に判断する」とされています。
例えば、ものすごく広い1室を貸し付けているだけの場合でも事業的規模として認められることがあるし、2階建ての貸家2棟とアパート6室を所有していれば実質的には「5棟10室」と同等と見なされて事業的規模として認められることもあるのです。
2 ここが嬉しい!事業的規模のメリット
不動産経営が事業的規模として認められることよって享受できるメリットを活用することで、大幅な節税が可能になります。
では、事業的規模のメリットを紹介しましょう。
①『青色申告特別控除』65万円が適用される
青色申告特別控除とは、不動産所得からさらに65万円が控除される制度です。
事業的規模を満たしていない場合の青色申告特別控除額は10万円なので、事業的規模と認められることで55万円も控除額が増えることになります。
②『青色専従者給与』が認められる
青色専従者給与とは、配偶者や子どもなど、生計を一にする親族に対して支払った給与が全額必要経費として認められる制度です。
例えば夫が不動産経営者で、妻を従業員として年間200万円の給与を支払った場合、この200万円は必要経費となります。
もちろん、無制限に給与として与えても良いわけではなく、勤務の実態があった分だけしか認められないので注意が必要です。
また、青色専従者として1円でも給与を支払った場合、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなることも要注意でしょう。
③未回収家賃を必要経費に計上可能
不動産経営の悩みのタネといえば「家賃の未払い」でしょう。
通常、未回収が確実になった場合はその未回収分の収入がなかったものとして計算しますが、事業的規模になると、未回収分は『貸倒損失』として必要経費に計上することが可能です。
「未払い家賃に泣くことを救済できる」と考えれば、このメリットは大きいですよね。
④災害による損失を必要経費に計上可能
昨今、大規模な地震や火災が発生して大損害を受けた方がたくさんいらっしゃいます。
事業的規模になると、自身や火災などの災害によって受けた不動産の損失の全額が必要経費として計上できます。
また、その年の不動産所得だけでは損失額を差し引くことができないほど多額になれば他の所得から差し引くことも可能です。
さらに、その年の他の所得から差し引いてもなお損失額が補てんできない場合は、翌年以後3年間にわたって損失を繰り越し可能です。
3 まとめ
不動産所得の事業的規模について紹介しました。
ここでカンタンにおさらいしましょう。
・事業的規模の基準は「5棟10室」だが、広い1室や2棟6室なども実質的に事業低規模として認められることがある
・事業的規模として認められた場合、青色特別控除65万円、青色専従者給与の計上、未回収家賃の計上、災害による損失の計上などのメリットを享受できる
事業的規模のメリットを活用し、特別控除や必要経費への計上を増やすことで、所得税や住民税の節税につながります。
事業的規模への転換には特別な申請はなく、青色申告をすることによってメリットが享受できます。
事業的規模に該当する不動産資産を所有している方は、ぜひ事業的規模への転換を検討してみてください。