いつがベスト?不動産経営で法人化するタイミング
最近ではサラリーマンでもアパートやマンションなどの不動産経営で副収入を得ている人も少なくありません。
最初は分譲マンションの一室から始まるかも知れませんが、数室、一棟と規模を拡大していくうちに必ず直面するのが『法人化』でしょう。
昔から「家賃収入がいくら以上なら法人化したほうが良い」とか「何室以上なら法人化するべき」などと言われていますが、不動産経営で法人化するタイミングはひとそれぞれです。
今回は、不動産投資家の方が法人化するタイミングの目安について考えていきましょう。
1 なぜ法人化するのか?
不動産投資家が法人化したほうが良い理由、それはひとえに「節税効果が高いから」です。
個人の所得税は、累進課税によって所得が高ければ高いほど税率が高くなり、税制改正による税率は上昇傾向にあります。
以前は課税所得1,800万円超で40%が最高税率でしたが、2015年の改正により課税所得が900万円超で約33%、4,000万円を超えると約45%にも膨れ上がっています。
一方、法人が納める法人税は、改正によって軽減傾向にあります。
2008年には30%だった基本税率は2012年には25.5%、2016年には23.4%に引き下げられ、法人住民税や事業税などを含めた法人実効税率は30%を切る時代になりました。
さらに課税所得800万円以下の中小法人の場合は15%の軽減税率が適用されます。
法人税の税率は課税所得によって累進しないため、資本金1億円を超える大規模な法人を除いては、法人化したほうが節税効果が高いといえるのです。
2 課税所得900万円超なら法人化を!
「法人化が望ましいタイミングはひとそれぞれ」とは言いましたが、一応の目安を示しておくべきでしょう。
個人よりも法人化したほうが節税効果が高いと言い切れる分岐点は「課税所得900万円」です。
個人の場合、所得税と住民税を合算した税率は、
・695万円超から900万円以下…33%
・900万円超から1,800万円以下…43%
です。
一方、法人の場合の所得税と住民税を合算した税率は
・400万円超から800万円以下…約25%
・800万円超…約38%
となります。
つまり課税所得が900万円を超えた場合は個人のほうが所得税と住民税が高くなってしまいます。
ただし、これは単純に不動産所得のみを対象とした場合ですから、不動産経営のみ、つまり専業大家を対象とした考え方です。
サラリーマンで不動産投資をしている場合は、給与所得額によって税率が異なります。
もし給与のみで695万円超の所得がある場合はそれだけで既に税率33%が課せられているのですから、そこから不動産投資を始める場合は初めから法人化して物件を購入したほうが得だといえます。
つまり、法人化のタイミングは
・課税所得900万円を目安とする
・給与所得など、不動産所得以外の所得がある場合はこれも加味する
・課税所得が900万円を超えない場合は個人で、給与所得などを加味して900万円を超えると場合は初期段階から法人化するというのが望ましいでしょう。
3 まとめ
不動産投資家の法人化の目安について紹介しました。
個人の場合と法人化した場合の所得税と住民税の合計税率を考慮すると、課税所得900万円を超えるか否かが法人化の目安となります。
ただし、単純に900万円を目安とするのではなく、課税所得800万円以下の軽減税率も考慮すれば900万円に満たなくても法人化したほうが節税効果が高く、手元に多くのキャッシュが残ることにもなります。
収支のバランスと不動産投資の規模を勘案しながら、現状で個人が良いのか、法人化すればどれくらいの節税効果があるのかをシミュレーションすることが重要です。