個人事業主が持つべき『印鑑』とは?
我が国では「印鑑を持たないと仕事ひとつできない」と言われています。
確かに、契約書などの重要書類をはじめ、見積書や請求書、部内での報告書でさえ必ず印鑑を押す習慣がありますね。
今回は、これから個人事業主として独立開業する人、または最近個人事業主として開業したばかりで色々な整備が追いついていないという人にぜひ知っておいて頂きたい、個人事業主が持つべき印鑑について紹介します。
1 事業用の印鑑は必要?
まず言っておきたいのが、これから個人事業主として開業する人や個人事業主として開業したばかりで事業用の印鑑を作っていないという人は、絶対に事業用の印鑑を作るべきです。
「どうせ大した書類を作るわけでもないから、個人の印鑑をそのまま使ってもいいのでは?」などとカンタンに考えてはいけません。
個人事業主が印鑑を使用するシーンは、主に契約書、見積書、請求書、領収書などへの押印でしょう。
これらに個人の印鑑を使ってはいけないとか、個人の印鑑では効果がないというわけではありません。
しかし、個人の印鑑を業務書類にまで流用してしまうと、会社の信用や評価を落としてしまうことになります。
また、個人の印鑑を業務書類に流用していると、個人で解説している金融機関口座の届出印や他の個人的な契約書類と同じものになってしまうため、情報セキュリティ上も好ましくありません。
個人で実印登録している印鑑を業務書類に流用してしまうと、実印偽造などに悪用されてしまう危険があります。
2 事業用の印鑑はどのようなものを持つべき?
事業用の印鑑を作成するにあたってオススメしたいのが『丸印』と『角印』の2つを作成することです。
実は角印と丸印では証明するものが異なります。
まず丸印ですが、丸印は「代表者の証明」という効果があります。
分かりやすい例を挙げると、法人を設立する際に法務局に提出する書類に代表者印として丸印を押印します。
法務局で押印した丸印は法人の実印となり、法務局で法人の印鑑証明を発行してもらうことができます。
つまり、丸印は「会社の代表者が証明します」というものなのです。
一方の角印ですが、角印は「会社の証明」という効果があります。
角印には「◯◯工業之印」など会社名を刻印することになり、見積書や請求書、領収書などについて「この会社が発行しました」と証明することになります。
カンタンにいえば、会社としての認印のような存在です。
それぞれ証明するものが異なれば、使用するシーンも異なってきます。
丸印は契約書など代表者が証明する必要がある重要書類に、角印は会社が日常発行する請求書などの書類に使用します。
主に法人を例えにして丸印と角印の性格や用途の違いを説明しましたが、使い分けは法人でも個人事業主でも同じです。
重要な契約書類は丸印で、日頃発行する書類は角印で証明すれば、対外的な信用度アップにもつながるでしょう。
印鑑作成の際には、印鑑の材質にも気をつけてください。
木材なら柘、黒壇、樺、楓、動物素材なら象牙や水牛角、その他ではプラスチックや貴石、チタンなどが印鑑の主な素材です。
価格帯が異なるため一概に高級なものがオススメだとは言い切れませんが、長年業務に使用するものだと考えれば、歪みや欠けが生じやすい耐久性のないプラスチックなどの素材は避けるべきでしょう。
丸印は代表者自らが契約書を交わす際のステータスとも言えるので、動物系の素材でも中心部分に近い『芯持ち』がオススメです。
黒水牛角の芯持ちであれば、高級感があり耐久性も高いので丸印にはピッタリでしょう。
角印は特に押印する機会が多いので、耐久性の高さを基準に選ぶと良いでしょう。
木材であれば黒壇、とにかく耐久性を高めるならチタンなどの新素材もオススメです。
3 まとめ
今回は個人事業主が持つべき印鑑について紹介しました。
最後にカンタンにおさらいしておきましょう。
・個人事業主であっても、個人の印鑑とは別に業務用の印鑑を持つべきである
・業務用の印鑑は丸印と角印の2種類を作成すると良い
・丸印は代表者の証明で契約書類などに、角印は会社としての証明で見積書や請求書などに使用する
・丸印は対外的なステータスにもなるため水牛角など高級感のある素材を、角印は使用頻度が高いため耐久性の高い黒壇やチタンなどの素材がオススメ
これから個人事業主となる人、個人事業主だがまだ印鑑を作成せずに個人の印鑑を流用している人は、この機会にぜひ事業用の印鑑を作成しましょう。