個人事業主が取得した助成金は所得になるか
現在、国や地方自治体によって様々な助成金の制度が設けられています。
特に少資金で事業を展開する個人事業主にとっては、助成金の存在は非常に頼もしい存在となることも少なくありません。
助成金のおかげでチャレンジできる事業展開もあるので、申請可能な助成金については積極的に利用したいところです。
一方、初めて助成金を取得した個人事業主にとっては、助成金という収入の取扱いについて頭を悩ませることになるでしょう。
事業の収入として取り扱うべきものなのか?確定申告の際に収入として申告するべきなのか?などという疑問を感じるはずです。
今回は、初めて助成金を取得した個人事業主の方にご案内する助成金の取扱いについてを紹介しましょう。
1 助成金ってなに?
まずは基本の学習です。
『助成金』とは一体なんなのでしょうか?
助成金とは、国や地方自治体が給付する支援金のことです。
助成金は各制度の基準を満たしている場合に申請することで給付され、国や地方自治体に対する返済の義務もありません。
同じような用語に『補助金』という制度もあり混同されがちですが、条件を満たしている場合に申請すれば必ず給付される助成金と比較すると、補助金の場合は予算の枠組み内において給付が行われるため、金額や件数の上限に達した場合には給付が終了することがあります。
また、同じように『公的融資』という制度もありますが、これはあくまでも「無利息に近い融資」であり、返済の義務が生じる点が助成金や補助金の制度と大きく異なります。
現在、一般的に広く活用されている助成金制度のほとんどが厚生労働省所管で行われています。
例えば、
・正規雇用を増やしたり、社員に新たなスキルを習得させるために職業訓練を受けさせたりした場合に給付される『キャリア形成促進助成金』
・ハローワークを通じた従業員を一定期間雇用することで給付される『トライアル雇用奨励金』
などが代表的ですね。
この他にも、雇用や労働に関する助成金制度を独自に打ち出している地方自治体が数多くあるので、新規事業の展開を検討している個人事業主や、これから個人事業主として起業しようと考えている方は広くアンテナを張って情報収集に努めるべきでしょう。
2 助成金は所得になる?
個人事業主が避けて通れないイベントといえば『確定申告』です。
確定申告といえば、年間の収入から必要経費と各種控除を差し引いて所得を算出した上で所得に応じた税金を納税するものであるということは、改めて説明するまでもないでしょう。
では、国や地方自治体から取得した助成金は、ここで言う所得として取り扱うべきものなのでしょうか?
事業活動による儲けではないし、公的に給付されたものなので課税されないような印象を受けます。
ところが、結論をいえば助成金は『事業所得』のうちの『雑収入』に該当します。
つまり、確定申告の際には収入に算入するべきものなのです。
確定申告の際には、確定申告書の雑収入欄に給付された助成金の金額を書き込み、さらに『本年中における特殊事情』欄にも「雑収入のうち◯円は△△助成金」と注記を書き込む必要があります。
実は、この「助成金は所得に含まれる」という点を知らないまま確定申告に臨んでしまう個人事業主の方が意外と多いので要注意です。
助成金が年間で数十万円程度であれば所得税額に大幅なズレは生じないかも知れませんが、それでも新規事業を立ち上げたばかりで所得額が少なかった場合は痛い出費になることがあります。
多くの助成金を取得できれば当座の資金繰りには大きな助けになるかも知れませんが、その分だけ雑収入として申告が必要となるため、結果的には税額が高くなってしまうことを覚えておきましょう。
3 まとめ
今回は助成金の取扱いについて紹介しました。
ポイントとなるのは
・助成金は事業所得のうち雑収入として算入したうえで申告する必要がある
・助成金は返済義務のない給付だが、給付された分だけ所得税が高くなる
という2点です。
国や地方自治体が支援金として給付する助成金制度は、できる限り有効活用して事業の促進に役立てたいものですが、確定申告の際には所得として取り扱うことになる=税額が増えるということをよく覚えておきましょう。