どこまで認められる?株式投資の必要経費
サラリーマンでも資産運用や副業として株式投資をしている方が増えています。
株式投資は上手に運用することで資産を大幅に増やすこともできますが、その分だけリスクも高まります。
一方で、低リスクで運用すれば安定して資産を増やすこともできますが、儲けは少なくなります。
低リスクで株式投資をする方にとっては、株式投資によって得た収入をできる限り手元にキャッシュとして確保したいところですね。
そこで重要になってくるのが、株式投資にかかる必要経費の考え方です。
今回は、株式投資における必要経費について紹介していきましょう。
1 「必要経費アップ=手元のキャッシュ増」の理由
株式投資に限った話ではありませんが、必要経費として計上する金額が多ければ多いほど手元のキャッシュは増えることになります。
この仕組みをカンタンに説明しておきましょう。
わが国では「儲けた分だけたくさんの税金を支払いましょう」という制度を導入しています。
ではここでいう税金とは何のことを指しているのかというと、主に所得税のことを指しています。
所得税とは、年間の所得に応じて課税される国税のことですね。
所得とは、単なる売上高や給与支払額のことを指す言葉ではありません。
所得とは「収入−必要経費−各種控除」によって算出される、一言でいえば『儲け』のことを指します。
例えば、売上高が800万円の事業主Aと、売上高が1,000万円の事業主Bがいたとします。
売上高だけみると、事業主Bのほうが上なので税金も高くなりそうですね。
ところが、事業主Aは必要経費と各種控除の合計400万円だったとすれば、先の計算式では所得が400万円になります。
一方、事業主Bは必要経費と各種控除の合計が700万円もかかったとすれば、所得は300万円です。
すると、所得では事業主Aが400万円、事業主Bが300万円になるため、結果として「Aのほうが儲けが多かった」となり、事業主Aのほうが所得税は高くなります。
このように、いくら収入が多くても、必要経費や各種控除の額が大きくなればなるほど儲けが少なかったと判断されて、所得税が安くなります。
実際に必要経費がかかり過ぎていれば確かに儲けは少なくなりますが、必要経費として計上できる支出や控除が認められるものは漏らさず申告することで、帳簿上の所得は少なくなります。
必要経費が多くなる=帳簿上の儲けが少なくなる=税金が安くなる=手元に残るキャッシュは増える、という図式がこれで理解できたでしょう。
2 株式投資で認められる必要経費の範囲は?
株式投資の利益の基本は、株を購入した価格よりも高く売却することであり、株の売却によって得た収入は『譲渡所得』として確定申告することになります。
譲渡所得は「譲渡によって得た収入から、取得費用と譲渡費用を合計して差し引く」という計算式から算出されることになり、他の所得のような「必要経費を差し引く」という考え方がありません。
つまり、取得費用も譲渡費用もせいぜい証券会社の手数料や金融機関の手数料程度で、ほとんど差し引かれるものがないのです。
株式投資にはパソコンやモバイル端末の購入、通信費、新聞や情報誌、指南書などの書籍の購入、勉強会やセミナーなどの参加費用など、多くの出費が伴いますが、これらは必要経費として控除されません。
株式投資による収入が譲渡所得とみなされている以上は仕方がないのでしょう。
ただし、最近では「信用取引等の方法による上場株式等の譲渡など所有期間1年以下の上場株式等の譲渡による所得は、事業所得または雑所得とする」と改正されました。
確定申告書にも「先物取引に係る雑所得等」という欄があり、ここに記入することによってFXや先物取引などを事業所得または雑所得として申告することができるようになりました。
事業所得や雑所得であれば必要経費の控除が可能になるため、先に挙げたような通信端末や書籍などの購入費、通信費なども必要経費として控除できるようになります。
新たに株式投資を始めた方など、所有期間が短い株の売買で収入を得た方は、譲渡所得での申告ではなく「先物取引に係る雑所得等」として事業所得または雑所得として申告することで、必要経費を計上し節税につなげることができます。
3 まとめ
株式投資の必要経費について紹介しました。
最後にポイントだけおさらいしておきましょう。
・株式投資による収入は、基本的には『譲渡所得』に該当するため、必要経費を控除することができない
・FXや先物取引など信用取引による上場株式の譲渡で、所有期間1年以下の上場株式等の譲渡による収入は、譲渡所得ではなく事業所得または雑所得として申告可能
・「先物取引に係る雑所得等」として申告すれば、通信端末や書籍などの購入費用、通信費用、セミナー等への参加費用なども必要経費として控除可能
法改正によって、株式投資の収入は条件次第で譲渡所得ではなく事業所得や雑所得として申告が可能になり、必要経費の控除が可能になりました。
「これは雑所得で申告できるだろうか?」と疑問に思う場合でも、一旦はそのまま申告してみるのも良いでしょう。
必要経費が控除されるのか、控除できないのかで税額には大きな差が生じます。
税務官からの質問に理論的に説明ができる用意があれば十分に期待できるので、ぜひチャレンジしてみましょう。