不動産の真の価値を示す『不動産鑑定評価』とは?
みなさんは『不動産鑑定評価』という言葉をご存じでしょうか?
なにかの機会に言葉自体は聞いたことがあるという程度の方も多いかも知れませんが、実際に不動産鑑定評価を利用したり、その効力を実感したことがある方は少ないでしょう。
不動産を取得したり、売却したり、相続する際の節税に真価を発揮するのが不動産鑑定評価です。
いったい、不動産鑑定評価がどのように作用することで節税につながっていくのでしょうか?
1 不動産鑑定評価ってなに?
まずはあまり馴染みのない不動産鑑定評価という言葉について説明しましょう。
例えば、全く同じ面積の土地に、全く同じ建材と設計図を使用した家屋が建っているAとBの物件があるとします。
一方のAは平地に、もう一方のBは切り立った斜面の上にありました。
この場合、AとBはどちらが値段が高くなると思いますか?
もちろん、平地にあるAの物件ですよね。
切り立った斜面の上の土地は「いつかガケ崩れが起きたら…」という地盤の不安もあるし、そもそも自宅への行き来が大変です。
このように、不動産の価値は単に広さや建材だけではなく、その不動産の周辺地域の特性や不動産それぞれ個別の特徴によって大きく左右されます。
ところが、不動産の価値を判断する一基準である『固定資産税評価額』は、市価や近接する路線の価格によって決定されるため、その不動産が個別に持つ価値を正しく評価したものではありません。
そこで登場するのが『不動産鑑定評価』です。
不動産鑑定士が対象となる不動産の地域分析や個別分析をおこない、その不動産に最も適した鑑定評価方法で鑑定し、さらに不動産鑑定士が専門的な判断を加味することで、個別の不動産の本来の価値を決定することを、不動産鑑定評価といいます。
2 不動産鑑定評価はどんな時に役立つの?
不動産鑑定評価が真価を発揮するのは
・不動産の売買
・不動産の相続や財産分与
・不動産の贈与
などの場合です。
例えば、親が亡くなって実家の不動産を相続することになったとします。
実家は都会にはありがちな前面道路との接地面が狭く奥まった敷地に家が建つ旗竿地で、しかも近所には高圧線が通っています。
固定資産税評価額をもとに相続税を算出したところ、意外にも高額になってしまいました。
ここで不動産鑑定士に不動産鑑定評価を依頼すると、土地の形状、周囲の環境などの条件を加味して、実際は固定資産税評価額よりも価値が低い不動産だと鑑定してくれます。
結果、相続税の税額算出の基礎となる固定資産税評価額がグッと下がり、相続税は軽減されることになります。
もし不動産を購入する際は、周囲に工場があって騒音がうるさいとか、高圧線があって電磁波が気になるというデメリットが気になるものです。
実際に生活してみるとわかる物件のデメリットは、市価や路線価から算出される固定資産税評価には反映されていません。
このような、固定資産税評価額だけでは表されていない価値を鑑定、評価し、物件が持つ本来の価値を正しく表すのが不動産鑑定評価なのです。
3 どうやって価値を鑑定評価するの?
不動産鑑定評価ができるのは、国家資格である『不動産鑑定士』の有資格者だけです。
不動産の広さや鑑定の目的にもよりますが、一般的に不動産鑑定評価を依頼すると10万円から15万円程度の費用がかかります。
不動産鑑定評価には、大きく分けて
・取引事例比較法
・収益還元法
・原価法
という3つの評価方式があり、不動産個別の特性や鑑定の目的によって評価方法を使い分けています。
まず『取引事例比較法』とは、同じような条件の不動産の取引事例と照らして、市場全体の動向や取引の時期などを踏まえて算出する方法です。
これが最も基本的な査定方法です。
『収益還元法』とは、不動産が将来的に生み出すだろうと予測される純利益と現在の価値を総合して査定する方法です。
将来的な収益の予測というとわかりやすいと思いますが、主に投資不動産の査定で利用される方式です。
『原価法』とは、対象の不動産と全く同じものを再度建てた場合の原価から査定する方法です。
もちろん、老朽化して価値が下がっている部分は減価して修正します。
主に土地付き建物の評価に利用されます。
これらの鑑定方法と、さらに
・建築様式の状態、税負担の状態などを踏まえた『一般的要因』
・宅地、商業地帯、農業地帯など地域の属性を踏まえた『地域要因』
・地盤や接道の状況、土壌汚染、耐震性などの『個別的要因』
を考慮して、不動産の価値を算定することになります。
4 まとめ
不動産鑑定評価について紹介しました。
最後にポイントをおさらいしましょう。
・不動産鑑定評価は、対象となる不動産の地域分析、個別分析に基づき、最も適した評価方法に不動産鑑定士の専門的な知識を加味して算出される、不動産本来の価値を示すものである
・不動産鑑定評価は国家資格である不動産鑑定士がおこない、依頼の相場は10万円から15万円程度
・不動産の実情に照らして本来の価値を査定するため、不動産の相続などの際には相続税の節税にもつながる
相続や贈与などの機会には、不動産鑑定評価によって大幅に税額が変わることがあります。
ぜひ、不動産鑑定評価を利用して節税につなげていきましょう。