国税局の指摘を受けないために確定申告で注意すべき点
国税局による指摘。
物騒な響きですが、最近では国税局による捜査で明らかになった脱税の手口を大々的に公表するなど、税に対する対応が厳しいものであることが一般にも広く知られるところとなりました。
平成27年に国税局による強制的な査察が行われた件数は189件、そのうち処罰の必要があるとして検察庁に告発された件数は115件で、告発率は実に60%を超えています。
査察によって追徴課税を受けるだけならまだしも、刑事罰の対象となってしまっては会社の存続も危ぶまれるところでしょう。
今回は、国税局に指摘を受けないための確定申告での注意点について紹介します。
会社を、ひいては自分自身の身を守るために、しっかり読んでください。
1 『国税局』ってなに?
ドラマや映画でも有名な国税局ですが、日頃の業務などの実状を知っている方はあまりいないでしょう。
国税局は国税庁の出先機関で、東京、大阪などの合計11局から構成されています。
各地の国税局の下では、おなじみの税務署がみなさんの税に関する業務をおこなっています。
カンタンに理解するために会社組織に例えると
・会社組織の中枢である本社にあたるのが国税庁
・地方を統括する支社にあたるのが国税局
・地方の中でも地域を細分化して業務をおこなう支店にあたるのが税務署
だと思えば良いでしょう。
ごく小単位で経営している個人事業主や中小企業では、税務調査を受けたとしてもほぼ税務署によるものでしょう。
ところが、資本金1億円以上の大企業は原則的に国税局が担当することになっています。
また、多額の脱税が疑われるなど悪質なケースでは、税務署ではなく国税局が担当します。
2 国税局の指摘を受けないための注意点
事業主の間では「国税局が査察を実施した場合、間違いなく追徴課税を受ける」という認識が広がっています。
この認識はあながち間違いではなく、国税庁が発表している統計結果をみると
・法人税の場合は69.9%
・所得税の場合は79.3%
が『修正』を受けています。
国税局による査察において修正を受ける大半が、悪意の有無にかかわらず「収入の申告漏れ・不申告」によるものです。
つまり、計上すべき収入であることを知らずに計上していなかったり、故意に申告しなかったり、というケースですね。
後者のような悪質なケースは追徴を含めて罰を受けても当然ですが「そんなこと、知らなかった!」という事業主にとっては高すぎる授業料となってしまいます。
そこで、国税局の査察対象となる資本金1億円以上の企業が、確定申告において特に注意する点を挙げましょう。
まず当然のことですが「計上すべき収入を漏らさず計上すること」です。
小規模の事業主なら、副収入の申告漏れ、生命保険金などの一時所得の申告漏れなどに注意したいところですが、大企業なら
・国外における事業収益
・海外銀行における預金の利子
・外国株式の配当金などによる運用収益
の申告が漏れやすいので注意したいところです。
国外現地で課税されている場合には「あっちで納税しているから国内では納税しなくても良いのでは?」と勘違いしがちですが、不本意ながら国内でも課税されます。
この場合、外国税額控除が適用されるので、確定申告では計上とともに控除も漏らさず適用して節税に努めましょう。
「反面調査の予防」にも注意したいですね。
反面調査とは、査察を実施した会社に存在する資料や聴取だけでは判明しない事項を、金融機関や取引相手などに対する調査で補完することです。
相手先の業務に支障が生じるのも大層な迷惑ですが、最も怖いのは相手先に対する信用に傷がつくおそれがあることでしょう。
反面調査を避けるためには、社内で調査を完了してもらうことが一番です。
査察官から「この支出に関する資料はありますか?」と質問された場合に社内の資料では説明が果たせないと、支出先に資料提出を求めたり聴取することになってしまいます。
確定申告では、必ず帳票類に記載されている支出に対応する資料を照合する作業を怠らないようにしましょう。
日頃から帳票類、証憑類の適切な保管と整理に努め、確定申告においては必ず照合作業を行うことが重要です。
3 まとめ
今回は、特に大企業が注意したい、国税局から指摘を受けないための確定申告における注意点を紹介しました。
ポイントとして挙げたのは
・海外における事業収入など、収入を漏らさず申告すること
・反面調査を予防するため、帳票類・証憑類の適切な保管整理と確定申告時の照合作業を怠らないこと
の2点ですが、これは至極当然のことです。
それでも60?70%の企業が国税局の査察によって修正を受けているという現状を見れば、大企業の経理事務を適切におこなうことがいかに難しいのかを物語っていると言えるでしょう。
申告漏れは追徴課税の対象となり、反面調査は会社の信用性を落とすおそれがあるのですから、いずれも事業主にとっては大きなマイナスとなります。
ぜひ、国税局による査察を受けても問題なしとなる「申告是認」を勝ち取って頂きたいですね。