高額医療費制度とは
病気や怪我で思いがけず入院になってしまうと、病気や怪我以上に頭を悩ませることになるのが『医療費』の負担です。
日頃、外来の診察や治療しか受けたことがない方であれば、入院によってどれくらいの医療費が請求されるのかは非常に心配になることでしょう。
入院費用を支払ってしまうとその後の生活が立ち行かなくなってしまうようなケースもあるので、頭の痛い問題であることは間違いありません。
そんな思いがけない入院による多額の出費を支援してくれるのが『高額医療費制度』の存在です。
今回は万が一の入院による出費を力強くカバーしてくれる高額医療費制度について紹介していきましょう。
1 入院費ってどれくらいかかるの?
これまでに自分自身が入院したり、家族など身近な人が入院した経験がないと、実際に入院費がどれくらいかかるのかは未知の領域でしょう。
もちろん、入院の理由や傷病の程度、治療法や各医療機関によって入院費は異なりますが、ある調査によると入院治療費の自己負担額の平均は約22万円。
10万円から20万円であった人が全体の約35%、20万円から30万円であった人が約17%でした。
つまり、10万円から30万円の人が全体の約半分となるため、重度の傷病などではない限り「約30万円くらいあれば間に合う」と考えておけばよいでしょう。
同じ調査によると、入院日数の平均は約20日。
全体の約80%は1ヶ月以内で退院しています。
この調査を総じて考えてみると「20日程度の入院で20万円から30万円の入院費がかかる」と見て、概ね間違いはないでしょう。
2 高額医療費制度を利用すれば自己負担額は激減する
入院費の自己負担額の平均は20万円程度。
例えば手取り月収が30万円のサラリーマンであれば、収入の70%は入院費で消し飛んでしまうことになります。
その上、20日近く入院していたせいで給料も減ってしまうのですから、高出費+収入減というダブルパンチを食らうことになります。
生命保険などに加入していればカバーできるかも知れませんが、保険金の給付までは気が気ではないでしょう。
そこで登場するのが『高額医療費制度』です。
通常、病院などの医療機関では健康保険証を提示することで医療費の3割だけを支払います。
残りの7割は健康保険が負担して医療機関に支払ってくれている図式ですね。
ところが、入院ともなると自己負担額は3割だけといっても多額になってしまいます。
高額医療費制度は「収入に応じて月初から月末までの自己負担額の最高額が定められており、最高額を超える部分は健康保険側が負担する」という制度です。
例えば、月収30万円程度の人が入院して入院費の総額が100万円になったとします。
この場合、自己負担額は3割なので窓口での支払いは30万円になりますが、高額医療費の上限が約9万円となり、実際の自己負担額は約9万円、残りは健康保険側が負担してくれることになります。
高額医療費の上限は収入によって異なり、収入の少ない方はより負担が軽減されるように規定されています。
・住民税非課税…3万5,400円
・月収26万円以下…5万7,600円
・月収28万円から50万円…8万100円+(医療費−26万7,000円)×1%
・月収53万円から79万円…16万7,400円+(医療費−55万8,000円)×1%
・月収83万円以上…25万2,600円+(医療費−84万2,000円)×1%
日本人男性の平均年収は約500万円と言われていますが、月収に換算すると35万円程度(ボーナス別)になるので、高額医療費制度を利用すれば自己負担額は10万円以内に収まることが多いようです。
注意が必要なのは、差額ベッド代や保険適用外の治療などは高額医療費制度の対象にならないことです。
また、高額医療費制度は「月初から月末までの医療費」を対象としているため、急な入院でなければできるだけ1つの月に収まる入院計画を立てるのがベターです。
高額医療費制度で最も注意が必要なのは、基本的には「医療費の上限を超えた部分が『払い戻される』制度である」という点です。
一旦は窓口で3割の自己負担分を全額支払い、申請によって後日の払い戻しを受けることになります。
この「一旦は自己負担分を支払う必要がある」ということを知らないまま退院を迎えてしまうと、その場の資金繰りが苦しくなってしまいます。
計画的に入院できる場合や、入院中に手続きなどをしてくれる家族がいる場合は、退院までに『限度額認定証』を取得しておくことで、窓口での支払時に高額医療費制度の適用を受けることができます。
限度額認定証は健康保険側に申請することで取得できるので、窓口での自己負担額を減らしたい方は限度額認定証を取得しておくことを強くオススメします。
3 まとめ
今回は高額になってしまう入院費の負担を力強くカバーしてくれる高額医療費制度について紹介しました。
ここで今回の内容をおさらいしておきましょう。
・高額医療費制度は、収入に応じて月内の医療費の上限が定められており、上限額を超える支払分が払い戻される制度である
・収入によって自己負担額の上限額は異なるが、年収500万円で入院費100万円(自己負担額30万円)の場合、高額医療費制度の適用を受けると実質負担は10万円以内に収まる
・基本的には「限度額の上限を超えるものが払い戻される制度」であるが、退院までに限度額認定証を取得しておくことで、窓口負担にも高額医療費制度が適用され、一時的な出費が抑えられる
入院を勧める医療機関は入院の案内と同時に高額医療費制度の説明を加えてくれるところも多く、制度の利用が漏れることはあまりないかも知れませんが、急で短期間の入院になると一旦は3割負担分の全額を自分で支払うことになり
ます。
退院までに限度額認定証を取得しておくことで入院費の自己負担額は大幅に少なくなるので、計画的な入院の際には医療機関の窓口で相談しておくと良いでしょう。