高齢者を扶養している人はチェック!老人扶養控除
「高齢になった自分の親や配偶者の親がひとり暮らしをしているのは心配だ」という理由で同居に踏み切る人は少なくありません。
ただ、同居のネックとなるのがやはり家計でしょう。
家族が1人でも増えれば家計からの支出は大きくなり、働き盛りの世代にとっては大きな負担となってしまいます。
今回は、そんな高齢者を扶養する世帯を応援する『老人扶養控除』について紹介しましょう。
1 70歳以上の高齢者を扶養する場合は『老人扶養控除』が受けられる
老人扶養控除を受けるにはいくつかの条件があります。
まずは年齢。
対象となる高齢者は、その年の12月31日時点で70歳以上の人となります。
扶養していれば誰でも良いわけではありません。
対象となる高齢者は「納税者またはその配偶者の直系親族」に限定されている
ので、自分の親や配偶者の親、または祖父母などに限られることになります。
所得額にも制限があります。
老人扶養控除の適用を受けられるのは、年間の所得額が38万円以下の場合に限られています。
国民年金や厚生年金などの公的年金の支給を受けていても問題はありませんが、公的年金控除の金額を超える場合は老人扶養控除が受けられない場合があるので要注意です。
また青色・白色申告者の専従者として所得がある場合は、所得額が制限内であっても控除されません。
さらに同居の有無でも区別されます。
通常の扶養控除であれば「生計を一にしている」という条件で同居の有無を問わないところ、老人扶養控除では「同居の有無」で控除額が変わります。
さて、これらの要件を満たしたうえで控除される金額は
・同居している場合…58万円
・同居をしていない場合…48万円
です。
もし扶養する高齢者が障害者の場合はさらに控除額が引き上げられます。
・障害者の場合…27万円
・特別障害者(6か月以上にわたり身体の障害で寝たきりの状態で介護を要する)の場合…40万円
が老人扶養控除に加算されます。
例えば、寝たきりで介護が必要な自分の親と同居を始めた場合は
・同居の老人扶養控除…58万円
・特別障害者控除…40万円
合計98万円が控除されることになります。
2 どうやって利用する?老人扶養控除
老人扶養控除を受けるためには、事業者は確定申告で、給与所得者は年末調整でそれぞれ申告する必要があります。
これは、老人扶養控除に限らず、扶養親族の申告と変わらないので戸惑うことはないでしょう。
確定申告に必要な書類は『扶養控除等(異動)申告書』です。
年末調整の場合は『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』を作成します。
基本的には障害者手帳などの提出を義務付けられてはいませんが、会社の運用などによっては証明書類として提出を求められることがあるので、必要書類の種別などは個別に確認したほうが無難でしょう。
3 まとめ
老人扶養控除について紹介しました。
ここで今回のポイントをおさらいしておきましょう。
・老人扶養控除は、70歳以上で年間所得38万円以下の父母、祖父母を扶養する場合に適用される控除である
・同居の場合は58万円、同居せずに扶養する場合は48万円が控除される
・確定申告の際には『扶養控除等(異動)申告書』を、年末調整では『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』を作成する
高齢者、特に寝たきりで介護が必要となると家計の負担は並大抵ではありません。
もし高齢者を扶養する状況があれば、もれなく申告して家計の負担を軽減し、余裕のある介護をしてあげることこそが親孝行につながるのかも知れませんね。