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2019.12.06

『マイナンバー』、個人事業主のデメリットは?

『マイナンバー』、個人事業主のデメリットは?

2015年の導入前後から、何かと話題になっていた『マイナンバー』制度。

個人、法人に対して固有の番号を付与することで、様々な情報管理を紐つけて管理することができるという制度です。

「個人情報の流出が心配」や「資産を把握されるのでは?」という様々な懸念が語られていますが、個人事業主にとってはどのようなデメリットがあるのでしょうか?

個人事業主の視点に立った「マイナンバーのデメリット」について紹介しましょう。

1 『マイナンバー』についてのおさらい

何かと話題の『マイナンバー』ですが、根拠となっている法律の名前をご存知の方は少ないでしょう。

マイナンバー法、正式には『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律』といいます。

その名のとおり、国や市区町村などの行政機関が個人を識別するために番号を付与するための法律です。

そもそも「なんでそんなことを考え付いたの?」と疑問を感じる人が多いかもしれませんが、法案の発端は平成19年頃に発覚した「消えた年金問題」です。

社会保険を一括して管理する方法がなかった日本では、納めたはずの年金がもらえないという事態が発覚し、国は紐つけ作業に追われる数年を送ることになりました。

「なんで個人を管理する番号なんか作るんだ!」と批判したい気持ちも分かりますが、今後も「消えた年金問題」のような事態を再発しないための施策であり、実際のところは「国民の声」によって作り出された法律なんですね。

マイナンバーの本格的な運用は平成28年1月から始まっています。

社会保障や税金に関する手続きでは、既にマイナンバーが活用されていることになります。

平成29年1月からは国レベルので連携が始まります。

各個人がマイナンバー情報を照会する『マイ・ポータル』の運用も開始されます。

さらに平成29年7月からは、地方自治たレベルでの連携が始まります。

法の目的である行政手続きでの利用は、実質的にはここからがスタートといえるでしょう。

将来的には、金融機関へのマイナンバー提出も行われることになる見通しです。

2 当面のデメリットは『事務負担と支出の増加』

さて、個人事業主にとってマイナンバー制度のメリットはあるのでしょうか?

実のところ、目立ったメリットはありません。

マイナンバーの導入によるメリットは、税の公平化や社会保障制度の充実など政治レベルのお話であり、個人事業主にとってはあまり興味も関心も湧きませんね。

一方、デメリットはすぐに肌で感じることができます。

マイナンバーの導入によって、既に残業時間が増えてしまった方も多いのではないでしょうか?

そうです、個人事業主にとっては『事務負担の増加』が最大のデメリットです。

マイナンバーは、既に税や所得に関する申請に利用されています。

例えば、あなたが従業員5名を抱える事業主だとしましょう。

事業主にとっては、マイナンバーは年末調整や健康保険の手続きに必要になるので、まずは従業員5人のマイナンバーを収集します。

「マイナンバーカードのコピーを提出してください」と申し渡すわけですが、それだけでは終わりません。

各従業員の扶養親族のマイナンバーも必要です。

5人の従業員にそれぞれ配偶者がいて、各2人ずつ子どもがいれば…

5人×(配偶者1人+子ども2人)=15人のマイナンバーを管理することになります。

これが従業員5人という小規模ならまだしも、50人、500人と増えていけば、事務負担は相当なものになりますね。

さらに、取引先に対する『支払調書』にも、取引先のマイナンバーを記載しなくてはなりません。

取引先のマイナンバーを収集する作業も生じます。

こうして「会社が知った」マイナンバーは、厳格な管理を求められます。

知り得たマイナンバーを取り扱うことができる担当者を厳格に定める『組織的安全管理措置』、ファイルの置き去りなど人的なミスを防止する『人的安全管理措置』、マイナンバーの保管場所などを確保する『物理的安全管理措置』、社内ネットワークへのアクセス権限などセキュリティ面を強化する『技術的安全管理措置』など、事業主に課せられた課題は山積みです。

パソコンなどの端末に記録した場合、端末を処分する際には物理的な方法で破壊したり、専門業者に依頼して復元不能な方法でデータを削除する必要があり、さらに削除した証明書を保管しておく義務まであります。

これらの措置に手間がかかるだけなら、まだ許せます。

大きなデメリットは、設備費用や人件費、外注費などの『支出』が生じる点です。

例えば、社内ネットワークの強化として情報セキュリティを強化するためにUSBなど持ち出し可能な媒体の暗号化ソフトを導入したとします。

これだけでも、パソコンが数台あるだけで10万円以上の出費になってしまいます。

国が求めるマイナンバーの管理方法を徹底するには、収集や管理のための事務作業と支出を事業主が負担することになり、当面はこの点が最も大きなデメリットとなるでしょう。

3 まとめ

個人事業主におけるマイナンバー制度のデメリットを紹介しました。

最後におさらいしましょう。

・マイナンバーは、所得や税、社会保障の面で既に活用されており、事業主にとっては確定申告や年末調整、社会保険などの申請に必要である

・事業主にとっては、従業員やその扶養親族、支払調書を作成した取引先などのマイナンバーを収集し、管理する必要がある

・収集したマイナンバーは厳格な管理が必要であり、人的な事務負担や、セキュリティ強化などの設備費用の支出が生じる

デメリットの目立つマイナンバー制度ですが、法的根拠が生じている以上は遵守するしかありません。

今後の有効活用を期待しながら、厳格な管理を心掛けましょう。

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