会社の給料と家賃収入、両方ある場合の処理方法は?
一昔前にはサラリーマンでも自宅とは別にマンションを購入して不動産投資に活用することが流行しました。
現在よりも景気が良かった頃の話で、今では「マイホームのローン返済で手一杯だよ」という人が増え、当時に比べると落ち着きを見せています。
しかし、金融機関のローンの利率が下がり続けている今こそ!と不動産投資を始めた方にとっては、税法上の処理が気になるところです。
今回は、不動産投資を始めたサラリーマンに紹介したい「会社の給料と家賃収入の両方ある場合の処理方法」です。
1 給与所得と不動産所得の両方がある場合は『確定申告』
サラリーマンが会社からもらう給料のことを『給与所得』と呼びます。
一方、マンションやアパートの経営などによって得る家賃収入のことを『不動産所得』といいます。
そして、収入があればそれに見合った税金を納付しなくてはなりません。
これが『所得税』です。
給与所得の所得税は、会社が給料を支払う段階で前もって差し引かれていますね。
これが『源泉徴収』です。
ところが、不動産所得は前もって差し引いてもらうことができないので、自分で所得額を申し出て所得税を納付する必要があります。
そう、これが『確定申告』なのです。
確定申告というと、サラリーマンにとっては「個人事業主がすることで、自分には関係ないだろ?」などとイメージし、税理士に頼んだり、確定申告時期の直前になると帳簿をまとめたりして大変だろうという敷居の高さも感じるかもしれません。
しかし「儲けがあったら納税」という税法のシステム上では、家賃収入を得た場合はサラリーマンであっても確定申告をする必要が生じるのです。
2 別々?合算?給与所得と不動産所得の処理方法
サラリーマンの方に誤解が多いのが、給与所得と不動産所得の両方がある場合の税法上の処理方法です。
「給与所得のほうは会社で源泉徴収を受けているから、不動産所得分だけを申告すればいんじゃないの?」
これが最も多い間違いです。
所得税は各所得に課税されているのではなく、所得を得ている各個人に課税されるものなので、給与所得と不動産所得を合算して確定申告をする必要があるのです。
ただし、ここには一つの条件があります。
不動産投資にはかなりの経費がかかるものです。
家賃収入から管理費、修繕費、ローンの利息などの経費を差し引いた金額、つまり「純粋な儲けの部分」が年間で20万円以下の場合は所得税がかかりません。
儲けが少なかった場合の条件なのであまり嬉しいことでもありませんが、寛大な措置でしょう。
さて、このように給与所得と不動産所得を合計して課税額が決まることを『総合課税』といいます。
例えば会社からもらう給料の年収が600万円の場合、所得税は20%です。
給与所得の所得税は源泉徴収と年末調整で納税しているので問題ありませんね。
ここで、さらに年間で300万円の不動産所得を得ていたとします。
300万円に対する所得税は10%です。
この場合、
・給与所得600万円に対する20%の所得税
・不動産所得300万円に対する10%の所得税
というふうに個別に納税するのではなく「給与所得600万円+不動産所得300万円=合計所得900万円」に対する所得税が課税されます。
900万円に対する所得税率は23%ですが、既に給与所得600万円に対する所得税は源泉徴収と年末調整で確定済みです。
よって、確定申告においては、会社から発行される『源泉徴収票』をもとに「既にこれだけの給与所得があって、所得税も納税済みですよ」という事実を加味して確定申告をする必要があるわけです。
3 まとめ
給与所得と不動産所得がある場合の処理方法について紹介しました。
重要なポイントは「源泉徴収と年末調整を受けているサラリーマンであっても、給与所得と不動産所得を合算して確定申告をする必要がある」という点です。
面倒に感じるかもしれませんが、実は悪いことばかりではありません。
もし不動産経営が上手くいかずに赤字経営に転じている場合は、所得税の還付を受けることができるからです。
「ちょうど今年から不動産投資を始めた」とか「今年になって親が経営していたアパートを相続した」というサラリーマンにとっては、翌年には確定申告が必要になることを覚えておきましょう。