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2020.01.11

専従者給与と専従者控除の違い

専従者給与と専従者控除の違い

個人事業主の方は『専従者◯◯』という響きに慣れていることでしょう。

確定申告で登場してくるのは『専従者給与』と『専従者控除』が主ですが、実に混同しやすい用語ですね。

用語としては混同しやすい両者ですが、確定申告上での取扱いは全くと言ってもいいほどに違います。

今回は、どちらも節税には重要な要素ですが考え方が全く異なる『専従者給与』と『専従者控除』の違いについて説明しましょう。

1 専従者とは?

まずは基本となる『専従者』の考え方について説明しましょう。

専従者にはいくつかの要件があります。

まず第一に「事業主と一緒に生活をしている配偶者、15歳以上の子ども、親、祖父母であること」です。

必ずしも同居であることは要せず、同じ家計で生活を営んでいれば認められます。

このような要件を『生計を一つにする』と言います。

例えば、子どもが就学のために別居していたとしても、生活費や学費などを家計から捻出していれば生計を一つにすると判断されます。

また、兄弟姉妹などの場合は同居して独立した家計を営んでいない場合は生計を一つにしていると判断されます。

次に「原則、年間6ヶ月を超えてその事業に専念していること」です。

年間6ヶ月、つまり年の半分はその事業に従事していることが要件となります。

なお、たとえ年間6ヶ月を超えて事業に従事していても、学生は学業に専念しないといけないので専従者からは除外されます。

最後に「他の会社に勤務していないこと」です。

その事業に専念しているという要件があるのですから、当然、他の会社で勤務している場合は専従者にはなれません。

2 専従者給与と専従者控除の違い

さて、本題の専従者給与と専従者控除の違いについて説明していきましょう。

まず大原則として、事業者がその家族に支払った給与は『経費』として認められません。

例えば夫が店舗経営をしていて妻が事務作業を担当していたり、個人の工事業者が息子に作業の手伝いを頼んだ場合に支払った給与は、従業員への給与のように必要経費として計上できないことになっています。

もしこれが無制限に認められるようなことがあれば、家族全員を従業員にして給与を支払ったことにすれば「事業の所得が全くない」という状態さえ容易に作り出すことが可能になってしまい、脱税の温床となってしまいます。

ところが、先ほど説明した要件を満たす場合、所定の手続きを行うことで家族などに支払った給与を経費として計上できるようになります。

それが『専従者給与』です。

専従者給与は青色申告をする際の経費計上のひとつです。

支払い額に上限はなく、年間500万円でも、5,000万円でも、必要経費として計上することができます。

ただし、

・労働時間に見合った給与額である

・他の従業員の給与額と極端な差がない

・ 事業の利益に見合った給与額である

という要件を満たす必要があります。

また、青色申告で専従者給与として経費計上するためには、専従者に給与を支払う年の3月15日までに税務署に『青色事業専従者給与に関する届出書』を提出する必要があります。

もしその年の1月16日以後に事業を立ち上げた場合や、年の途中で専従者が増えた場合は、その事実が発生した日から2ヶ月以内に届出書を提出する必要があります。

一方、白色申告の場合は『専従者控除』になります。

専従者控除の場合は、家族などに支払った給与が経費として計上できるわけではありません。

事業主の所得額から一定額を差し引く『控除』です。

専従者控除の場合、確定申告書の控除欄に記載するだけであり、事前の届出などは不要です。

控除額は

1 配偶者の場合は86万円、配偶者を除く家族は1人につき50万円

2 専従者控除前の総所得額×(専従者の数+1)

のいずれか少ない方です。

例えば総所得額が600万円で配偶者と息子1人が専従者となっている場合、②の計算式では600万円×(配偶者1人+息子1人+1)=200万円で、①<②であるため①が適用されて、総所得額から配偶者86万円+息子50万円の専従者控除が差し引かれることになります。

ただし、専従者控除はあくまでも給与を支払っている事業主だけの特典です。

先ほどの例で配偶者が給与として年間200万円の所得を得ていたとすれば、控除額に関係なく、配偶者個人は200万円の所得に対する所得税を支払うことになります。

両者を比較して考えた場合、青色申告をして専従者給与として家族への給与支払いを全額経費計上することで大きな節税効果を得ることができると言えるでしょう。

3 まとめ

今回は用語として混同しやすい専従者給与と専従者控除の違いを説明しました。

今回のポイントをおさらいしておきましょう。

・生計を一つにした配偶者や子どもなどの家族が、年間6ヶ月以上その事業に従事し、ほかの会社に勤務していない場合は『専従者』となる

・青色申告の場合、家族への給与支払いは『専従者給与』として全額が経費として計上可能

・白色申告の場合、家族への給与支払いは経費として計上できないが、事業主は最大で配偶者86万円、その他の家族1人あたり50万円の所得控除を受けることが可能

・家族と一緒に仕事をしていて給与支払いが発生している場合、青色申告をして給与支払分を経費に計上することで大幅な節税が可能になる

家族で経営している中小企業も数多くあります。

ぜひ効果的に節税に努めて、手元に残るキャッシュを増やしていきましょう。

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