今年は収入がなかった!それでも確定申告は必要?
少々の明るい見通しを感じることができても不景気を感じずにはいられない昨今。
現在は「働き手が足りない」と嘆いている事業主も多い中、一方では完全失業し収入を得られず生活が逼迫してしまう方もいる現実があります。
わが国では国民の三大義務の一つとして掲げられている『納税』ですが、失業であったり、キャリアアップのためにやむなく事業を停止している場合など、収入が発生しない時期があっても珍しくはありません。
では、収入がない場合、所得に応じて所得税額を決定する『確定申告』をする必要はあるのでしょうか?
今回は、意外とミスや勘違いが多い「収入がない場合の確定申告」について紐といてみましょう。
1 「収入ゼロ」なら基本的に確定申告は不要
確定申告とは、毎年3月中旬までに前年の1月1日から12月31日までの収入から必要経費や各種控除を差し引いて所得を算出し、所得税額を決定するものです。
「儲けた分だけ税金を支払いましょう」という所得税の税額を決定するための重要なイベントですね。
では、儲けがない場合はどうなるのでしょうか?
正しくは、いくら収入があっても必要経費が収入を上回ったりする場合も含まれるので「所得がなかった場合」と言うほうが適切ですね。
所得税額を算出する際には必ず各種控除を差し引くことになりますが、最低でも38万円の基礎控除を差し引くことになります。
つまり、年間の収入が38万円以下の場合は、基礎控除が差し引かれるため所得はゼロとなり、ゼロにいくら税率を乗算してもゼロのままなので、所得税はかからないことになるわけですね。
所得がゼロになる場合、所得税は非課税となるため、基本的には確定申告の必要はありません。
例えば税務署に問い合わせても同じ答えが返ってくるでしょう。
2 所得ゼロ、それでも確定申告をしたほうがいい?
所得がゼロになれば所得税もかからないので確定申告をする必要はない。
これは「基本的には」というお話です。
場合によっては確定申告をしたほうが良い、むしろ確定申告をするべきというケースもあります。
まず、勘違いが多いのが「会社の退職日が1月から3月初旬までの間」の場合。
確定申告時点では無収入となるため、確定申告は不要だと勘違いする方が大勢います。
確かにサラリーマンであれば前年の所得税は年末調整で適切に清算されているし、退職した年の確定申告は不要です。
ただし、その翌年には、退職した年の1月から3月までの間に会社から所得税を源泉徴収されているため、確定申告をすれば余分に支払っている所得税の還付を受けられる可能性が大です。
また、会社を退職したから無収入、というわけでもない方は絶対に確定申告が必要になる場合があります。
例えば、会社を退職した後でマイホームを売却していればその収入は譲渡所得とみなされるため確定申告が必要です。
譲渡所得のほかにも、所得とみなされるケースは多々あります。
賃貸アパートなどで家賃収入を得ていれば不動産所得、生命保険などで保険金を受け取っていたりすれば一時所得、金融機関の預貯金利子や社債の利子などを受け取っていれば利子所得に該当するため、確定申告が必要です。
さらに一点、注意が必要なのが住民税です。
確定申告のデータは市区町村の税務データとリンクするため、市区町村は個別で住民税の申告を受けなくても確定申告のデータをもとに住民税を課税します。
そもそも所得がゼロなら住民税も課税されないのでここにも大きな問題は生じませんが、問題は国民健康保険。
国民健康保険料の算出には『所得割』という計算項目がありますが、確定申告がなく住民税の申告もないと無申告者として計算されてしまい、国民健康保険料が割高になってしまいます。
結論は「収入ゼロなら確定申告は不要、ただし住民税の申告はするべき」となりますね。
3 まとめ
今回は「無収入の場合の確定申告」について紹介しました。
最後にポイントだけ押さえておきましょう。
・無収入の場合は「所得ゼロ」になるため確定申告の必要はない
・自分では収入がないと思っていても、不動産の売却益や家賃収入など所得にあたる収入がある場合もあるので要注意
・国民健康保険料は所得を元に計算する項目があり、無申告のままだと保険料が割高になるので、収入がゼロでも住民税の申告のみはするべきである
今回、特に注意が必要なのは「意外にも所得とみなされる収入がある」という点です。
サラリーマンが退職して無収入となった場合は確定申告自体に馴染みも頓着もない方も多いので要注意でしょう。