賃貸経営の仕訳！修繕費と資本的支出を知っていますか？
アパート・マンション賃貸経営の会計処理には、不動産賃貸経営に特有の仕訳ルールがあり、青色申告する場合、会計ソフトを利用すると会計処理を早く行うことができます。
しかし、いきなり会計ソフトで複式簿記を行えと言われても、なかなか出来るものではありません。
そこで、今回は、不動産経理の帳簿処理で役に立つ、もしくは会計ソフトでの入力処理を手助けする、不動産賃貸経営で用いる仕訳について説明していきたいと思います。
(法人の賃貸経営には、一部利用できない内容があるかもしれませんので、ご確認ください。)
入居時の仕訳
不動産業者から、入居人が支払った
「賃料＋礼金＋敷金−手数料」が大家さんの銀行口座に振り込まれます。
不動産業者より頂いた内訳書で、賃貸料、礼金、敷金、手数料の金額を明確に把握し、経理処理しましょう。
賃貸料：8万円、礼金：1ヶ月、敷金：2ヶ月、手数料：7万円であった。
【借方】 /【貸方】
現金・預金 ???80,000 /賃貸料 ???????80,000
現金・預金 ???80,000 /礼金 ?????????80,000
現金・預金 ??160,000 /預かり敷金 160,000 *敷金は、負債(預り金)に仕訳
支払い手数料 ?70,000 /現金・預金 70,000
不動産業者によっては、手数料を用いず入居時の保険料・広告宣伝費とする不動産業者もあります。その場合、以下のように仕訳します。
入居時の保険料が7万円
【借方】 /【貸方】
支払保険料 ???70,000 /現金・預金 ???70,000
広告宣伝費が7万円
【借方】 /【貸方】
広告宣伝費 ???70,000 /現金・預金 ???70,000
確定申告の確証のために、手数料、保険料、広告宣伝費の受領書は、必ず保管しておきましょう。
退去時の仕訳
退去時は
「敷金−修繕費(原状回復費)分担分−未払い」の賃貸料を退去人に返金します。
敷金は負債ですので雑収入(収益)を利用します。
「修繕費の退去人分担分を、預かり敷金より雑収入として受領した。」として仕訳を行います。
修繕費は別途、現金・預金より支出します。
預かり敷金7万円を、修繕費とした。
【借方】 /【貸方】
預り敷金 ???70,000 /雑収入 ??????70,000
修繕費 ?????70,000 /現金・預金 ??70,000
預かり敷金10万円の内、8万円を修繕費として差し引き、残りの預かり敷金2万円を退去人に返金した。修繕費は15万円だった。
【借方】 /【貸方】
預り敷金 ???80,000 /雑収入 ??????80,000
預り敷金 ???20,000 /現金・預金 ??20,000
修繕費 ????150,000 /現金・預金 ?150,000
修繕費15万円を、預かり敷金全額10万円に加え、退去人に5万円負担してもらった。
【借方】 /【貸方】
預り敷金 ??100,000 /雑収入 ?????100,000
現金・預金 ?50,000 /雑収入 ??????50,000
修繕費 ????150,000 /現金・預金 ?150,000
預かり敷金10万円の内、4万円を修繕費として差し引き、3万円を退去月の家賃に充当し、残りの3万円を退去人に返金した。
修繕費は10万円だった。
【借方】 /【貸方】
預り敷金 ???40,000 /雑収入 ????????40,000
預り敷金 ???30,000 /賃貸料 ????????30,000
預り敷金 ???30,000 /現金・預金 ????30,000
修繕費 ????100,000 /現金・預金 ???100,000
過去に計上された未収賃貸料に、預かり敷金を充当する仕訳は、賃貸料を未収賃貸料に置き換えてください。
預かり敷金10万円の内、7万円を退去月の家賃に充当し、残りの3万円を退去人に返金した。
【借方】/ 【貸方】
預り敷金 ???70,000 /賃貸料 ????????70,000
預り敷金 ???30,000 /現金・預金 ????30,000
賃貸料の未入金
賃貸料が払われなかった場合は未収賃貸料で仕訳してください。
賃貸料7万円が払われなかった。
【借方】/ 【貸方】
未収賃貸料 ?70,000 /賃貸料 ??????70,000
未収賃貸料で計上していた、先々月の賃貸料7万円が支払われた。
【借方】 /【貸方】
現金・預金70,000 /未収賃貸料 70,000
税金の納付
固定資産税・都市計画税、個人事業税、印紙税は、租税公課として仕訳し、経費処理します。それ以外の税(所得税、住民税)は計上できませんので注意しましょう。
固定資産税・都市計画税を10万円納付した。
【借方】 /【貸方】
租税公課 ??100,000 /現金・預金 ?100,000
管理会社の集金代行
管理会社からの賃貸料の入金は、1ヶ月遅れとなります。しかし、管理会社の集金日が賃貸料の入金日となりますので間違えないようにしましょう。
集金された賃貸料から、管理会社の委託費用が差し引かれて入金されます。
賃貸料を元に戻し、委託費用を分離する必要があります。
委託費用は外注費として仕訳します。委託費用の受領書は必ず受領し、保管しておきましょう。
賃貸料50万円が支払われ、管理会社への委託費用は8万円だった。
【借方】/ 【貸方】
現金・預金 ?500,000 /賃貸料 ????500,000
外注費 ??????80,000 /現金・預金 ?80,000
消耗品、工具器具備品
10万円未満の事務用品、工具等は、消耗品で仕訳します。なお、工具器具備品としても仕訳可能です。
千円のプリンタ用紙を購入した。
【借方】/ 【貸方】
消耗品 ????1,000 /現金・預金 ???1,000
10万円から20万円未満の事務用品、工具等は、工具器具備品で仕訳します。
1年分をまとめて一括償却資産として、3年で減価償却します。
14万円の管理用パソコンを購入した。
【借方】 /【貸方】
工具器具備品 140,000 /現金・預金 ?140,000
修繕費、建物
個人事業での修繕費とは、固定資産の修復や現状維持のために使われる費用のことを指します。
修繕費の消費税区分は「課税」です。
「修繕費」と「資本的支出」の違い
・資本的支出
固定資産の価値を高めたり、使用期間（耐用年数）を伸ばすために支払った費用のことです。
資本的支出を行った場合、減価償却をします。
減価償却の期間は、対象とするものの耐用年数と同じに設定します。（物品ごとに国が耐用年数を定めています。）
・修理と資産の価値を高めるための改良が一緒にされる場合
修理としての料金部分を割り出して、その部分を修繕費として当期の経費とします。
残りの部分を資本的支出として、減価償却します。
確定申告前に慌てて処理せず、月々コツコツ帳簿処理しておけば、慌てずに済みますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
簿記に慣れていないと、最初は少し難しいかもしれません。
しかし、青色申告する場合にはとても重要なことなので、修繕費や資本的支出などの意味も理解し、仕訳もしっかり出来るようになりましょう！
最後まで読んで頂きありがとうございました。
