土地は減価償却できない?
減価償却は、資産の購入・導入費用を数年に分けて経費計上することであり、事業者の節税対策としては基本中の基本です。
減価償却する資産の代表的なものが『建物』でしょう。
自社ビル、工場などの建物の建設費用や購入費用は数十年のスパンで経費計上していくことになります。
では、その建物が建っている『土地』はどうなるのでしょうか?
今回は「土地の減価償却」についてお話ししましょう。
1 土地は減価償却できない
まず結論からお話しします。
土地については、減価償却の対象外です。
つまり減価償却できません。
まず『減価償却』とはなにかを考えてみましょう。
減価償却とは、経年によるモノの劣化代だといわれています。
どんなモノでも、時間の経過によってその価値は減少します。
建物、設備、車両、どんなモノでも中古になり、時間が経過しながら使用を重ねてその価値が減少していきます。
その減少分を損失として費用計上することで、事業者は「儲けが減った」と申告し税額の控除を受けることになります。
これが確定申告ですね。
では、土地はどうでしょうか?
土地は長年使用したからといって、その価値を失うことはありません。
たとえ使用していなかったとしても、土地が劣化したり減少してしまうことはありません。
だから土地は減価償却できないのです。
「そんなこと言っても土地を購入するには費用が必要だし、これを費用計上できないというのは不条理だ」と思うでしょう。
しかし、土地の売買取引とは権利の移転とみなされるため、通常のモノを売買する行為とは全く意味合いが異なるのです。
2 地価の値下がりは価値の減少ではないの?
土地の価値は減少しない、と説明しましたが、土地には「地価の値下がり」が存在します。
確かに、周辺事情の変化、地域の政治情勢や開発状況などによって、土地の値段は上下変動します。
では、減価償却できるビルを例に考えた場合、周辺に同じようなビルが乱立し始めてビル自体が値下がりしたからといってそれを損失として計上することはできるでしょうか?
もちろん、できませんね。
この理屈と同じで、みなさんが「土地の価値が減少した」と感じている「地価の値下がり」は、会計税務の世界では損失とはみなされないのです。
もし地価が値下がりしたとしても、事業自体が順調でその土地を売却しなければ売却による損失は生じません。
売却によって利益が生じれば譲渡所得税が発生し、損失が生じれば損益通算によって黒字部分から控除することになります。
土地は「売却によって初めて利益・損失を計上することができる」ものなのです。
3 まとめ
今回は土地が減価償却できない理由についてお話ししました。
もし、これまでに土地が減価償却できないことを知らなかったとしても恥ずかしいことではありません。
実は業績好調な事業者でさえ「節税対策に土地を購入しよう」などと計画しながら、その過程で初めて土地が減価償却できないということを知る人も少なくないのです。
地価が値下がりしてしまうと、税務上は反映しないのに実質的な損失を抱えた状態になってしまうので、事業の資産として土地の購入を検討している方はよく検討したほうが懸命でしょう。