今さら聞けない?『控除』の意味
税金のことをお話ししていると当然のように登場する『控除』という言葉ですが、実はよく意味を知らないままという方もいるのではないでしょうか?
「あぁ、知ってるよ。税金が値引きされることでしょ?」くらいの認識の方は、改めて控除という言葉の意味を一緒に勉強してみましょう。
1 控除とは「差し引くこと」
控除という言葉は、まず日常生活では馴染みのない言葉です。
控=ひかえる、除=のぞく、ですから、物事が減少することを指す言葉であることは容易に想像がつきます。
辞書で調べると控除とは「金額や数量を差し引くこと」と説明されています。
なるほど、読んで字のごとくの意味ですが、日常会話の中で使うことは滅多にありません。
「テストの点数が悪かったから、来月のお小遣いは半分を控除します」などと言うことはありませんよね。
控除という言葉が登場するのは、まず『税金』に関する場面だけでしょう。
配偶者控除、基礎控除、給与所得控除、扶養控除、社会保険料控除など、様々な条件の控除が存在します。
各条件を満たせば、税制面で「何となくおトク」くらいのイメージはつくでしょう。
2 最も多い勘違い!控除は「税金が返ってくる」わけではない
よく控除のことを「税金が返ってくる」と解釈している人がいますが、これは勘違いです。
控除とは「差し引くこと」と説明しましたが、各種控除は税金を差し引いているのではありません。
「控除って税金が安くなることじゃないの?」と思っていた方は、よく頭の中を整理しながら読んでください。
日本の税制は「儲かった人からは多く、儲かっていない人からは少なく納税を受けよう」という考え方で成り立っています。
つまり、収入が税額を左右することになります。
最も端的に例示しやすいのは所得税なので、所得税を例にして説明しましょう。
所得税は、基本的には収入が多ければ多いほど高くなります。
ただし、単に収入額が大きくても、それに見合って必要経費がかかっていれば、収入額−必要経費=儲けの部分が少なくなります。
この儲けの部分のことを『所得』と呼びます。
計算によって導き出された所得額に応じて所得税の税率が乗じられて所得税額が決まりますが、ここで『控除』が登場します。
誰しも一律で受けられるのが38万円の基礎控除ですが、計算によって導き出された所得税額から38万円が差し引かれるのではありません。
所得が38万円差し引かれます。
頭の中にハテナが浮かんだ方のためにもう少し噛み砕くと「儲けが38万円少なかったことになる」という意味をです。
儲けが少なければ、税金がは安くなります。
結果としては同じことのようですが、控除は「税金が差し引かれる」のではなく「税額計算の基礎となる『所得』が安くなる」ということなのです。
基礎控除を例に説明しましたが、全ての控除が同じ仕組みです。
配偶者の給与が年間103万円以内の場合は38万円の配偶者控除が、16歳から18歳までの扶養親族がいれば38万円の扶養控除、19歳から23歳未満までの扶養親族がいれば特定扶養控除63万円が、それぞれ所得から差し引かれて「儲けがなかった」とみなされることになります。
3 まとめ
今回は意外と知らないままで使っている『控除』について紹介しました。
カンタンにおさらいしておきましょう。
・控除とは「差し引く」ことを指す
・税金の各種控除は、計算によって導き出された税額から控除額が差し引かれるのではなく、税額計算の基礎となる『所得』から差し引かれる
税金がことを考えるうえで基礎中の基礎ですが、改めて説明を受けると「そういう意味だったのか!」と納得する方も多かったのではないでしょうか?
各種控除を活かすことは節税の基本です。
しっかり勉強して、節税につなげましょう。