銀行が「貸したくなる」決算書の条件|認定支援機関の税理士が解説
- 1. 大前提:節税と資金調達は、しばしば逆を向く
- 2. 銀行が決算書で見る3つの急所
- 3. 「貸したくなる決算書」にするための打ち手
- 4. よくある失敗 vs 適切な対応
- 5. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 大前提:節税と資金調達は、しばしば逆を向く
最初に押さえるべき大原則があります。「税金を限界まで減らした決算書」と「銀行が評価する決算書」は、しばしば逆方向だということです。
利益を圧縮すれば法人税は減りますが、同時に「儲かっていない会社」「自己資本が薄い会社」に見え、銀行の評価は下がります。逆に、適正に利益を出して自己資本を厚くすれば、税金は増えても借入余力(資金調達力)は上がります。どちらを優先すべきかは、その会社が「今後お金を借りて伸ばすのか」「もう借りないのか」で変わります。ここを意識せずに節税だけ追うと、いざという時に借りられません。
2. 銀行が決算書で見る3つの急所
金融機関は、決算書から「貸したお金が返ってくるか」を読み取ろうとします。特に見られるのが次の3点です。
| 指標 | 何を見ているか | 一般的な目安 |
|---|---|---|
| 債務償還年数 | 借入を利益で何年で返せるか | おおむね 10年以内 |
| 自己資本比率 | 財務の安全性(自己資本の厚み) | 中小企業で 15〜20%以上 |
| 損益(黒字か) | 本業で稼げているか | 営業利益・経常利益が黒字 |
債務償還年数
ざっくり「有利子負債 ÷(営業利益+減価償却費)」で計算され、借りたお金を本業の稼ぎで何年かけて返せるかを示します。一般に10年以内が望ましく、長すぎると「返済能力に対して借りすぎ」と見られます。
自己資本比率
「自己資本 ÷ 総資産」。会社の体力・安全性の指標で、高いほど評価されます。利益を出して内部留保を積むほど、この比率は上がります。
黒字か・債務超過でないか
当然ながら、本業で黒字を出しているか、債務超過(資産より負債が多い状態)に陥っていないかは基本中の基本です。
3. 「貸したくなる決算書」にするための打ち手
数字は一朝一夕には変わりませんが、日々の経理と決算の組み立て方で、銀行からの見え方は確実に改善できます。
- 適正に利益を出す:過度な節税で赤字すれそうになるより、利益を残して自己資本を厚くする
- 役員借入金・貸付金を整理する:社長と会社の貸し借りが多いと、決算書の印象が悪くなる
- 不良資産を放置しない:回収不能な売掛金・滞留在庫は実態を見えにくくする
- 資金使途を明確にできる状態にする:「何に使うお金か」を説明できると評価が上がる
- 試算表を毎月締める:月次がきちんと出る会社は、それだけで管理体制を評価される
4. よくある失敗 vs 適切な対応
- 節税最優先で利益を消し、結果「借りられない会社」になる
- 社長個人と会社のお金の貸し借りが整理されていない
- 回収できない売掛金・売れない在庫を資産に計上したまま
- 決算のときだけ慌てる(月次の数字を普段見ていない)
- 「いくら・何に・いつまで」の資金計画がないまま銀行に行く
- 「節税」と「資金調達力」のどちらを優先すべきか方針を決める
- 役員貸借・不良資産を整理し、実態の良い決算書にする
- 月次の試算表を締め、いつでも説明できる状態にしておく
- 事業計画・資金繰り表とセットで、根拠を持って交渉する
5. まとめ
銀行が「貸したくなる」決算書とは、返済力(債務償還年数)・安全性(自己資本比率)・収益力(黒字)がきちんと見える決算書です。そしてその出発点は、「節税」と「資金調達力」のどちらを優先するかを決めること。やみくもな節税は、将来の借入余力を削ります。
決算書は、作ってから直すのではなく、期中の経理と決算の組み立てで戦略的に作るもの。当グループでは、税務顧問(KMP)と融資支援(ユウシサポ)を一体で提供し、累計10億円超の資金調達を支援してきました。「自社の決算書は銀行からどう見えるか」を知りたい方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
銀行は決算書のどこを見ていますか?
赤字だと融資は受けられませんか?
決算書を良く見せるにはどうすれば?
出典・参考資料
- 中小企業庁「中小企業の財務指標」「経営者保証に関するガイドライン」
- 金融庁「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」(債務者区分・自己査定の考え方)
- 日本政策金融公庫「中小企業の財務・経営に関する各種資料」
- 経済産業省「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)制度」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の財務・税務判断に代わるものではありません。金融機関の評価基準は各行・状況により異なります。実際の資金調達にあたっては、専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日
