銀行が「貸したくなる」決算書の条件|認定支援機関の税理士が解説

「うちの決算書、銀行から見てどうなんでしょうか?」 資金調達のご相談で、私たちが最初に確認するのがこの点です。同じ会社でも、決算書の作り方・見せ方ひとつで、銀行の評価は大きく変わります。 ところが多くの中小企業は「税金が少なくなる決算」を優先するあまり、結果として「銀行が貸しにくい決算書」になってしまっています。 本記事では、金融機関が決算書のどこを見ているのか、そして「貸したくなる決算書」にするための考え方を、認定支援機関(経済産業省)として数多くの資金調達を支援してきた立場から整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 大前提:節税と資金調達は、しばしば逆を向く
  2. 2. 銀行が決算書で見る3つの急所
  3. 3. 「貸したくなる決算書」にするための打ち手
  4. 4. よくある失敗 vs 適切な対応
  5. 5. まとめ
  6. よくある質問(FAQ)

1. 大前提:節税と資金調達は、しばしば逆を向く

最初に押さえるべき大原則があります。「税金を限界まで減らした決算書」と「銀行が評価する決算書」は、しばしば逆方向だということです。

利益を圧縮すれば法人税は減りますが、同時に「儲かっていない会社」「自己資本が薄い会社」に見え、銀行の評価は下がります。逆に、適正に利益を出して自己資本を厚くすれば、税金は増えても借入余力(資金調達力)は上がります。どちらを優先すべきかは、その会社が「今後お金を借りて伸ばすのか」「もう借りないのか」で変わります。ここを意識せずに節税だけ追うと、いざという時に借りられません。

2. 銀行が決算書で見る3つの急所

金融機関は、決算書から「貸したお金が返ってくるか」を読み取ろうとします。特に見られるのが次の3点です。

指標何を見ているか一般的な目安
債務償還年数借入を利益で何年で返せるかおおむね 10年以内
自己資本比率財務の安全性(自己資本の厚み)中小企業で 15〜20%以上
損益(黒字か)本業で稼げているか営業利益・経常利益が黒字

債務償還年数

ざっくり「有利子負債 ÷(営業利益+減価償却費)」で計算され、借りたお金を本業の稼ぎで何年かけて返せるかを示します。一般に10年以内が望ましく、長すぎると「返済能力に対して借りすぎ」と見られます。

自己資本比率

「自己資本 ÷ 総資産」。会社の体力・安全性の指標で、高いほど評価されます。利益を出して内部留保を積むほど、この比率は上がります。

黒字か・債務超過でないか

当然ながら、本業で黒字を出しているか、債務超過(資産より負債が多い状態)に陥っていないかは基本中の基本です。

3. 「貸したくなる決算書」にするための打ち手

数字は一朝一夕には変わりませんが、日々の経理と決算の組み立て方で、銀行からの見え方は確実に改善できます。

  • 適正に利益を出す:過度な節税で赤字すれそうになるより、利益を残して自己資本を厚くする
  • 役員借入金・貸付金を整理する:社長と会社の貸し借りが多いと、決算書の印象が悪くなる
  • 不良資産を放置しない:回収不能な売掛金・滞留在庫は実態を見えにくくする
  • 資金使途を明確にできる状態にする:「何に使うお金か」を説明できると評価が上がる
  • 試算表を毎月締める:月次がきちんと出る会社は、それだけで管理体制を評価される

4. よくある失敗 vs 適切な対応

❌ よくある失敗
  • 節税最優先で利益を消し、結果「借りられない会社」になる
  • 社長個人と会社のお金の貸し借りが整理されていない
  • 回収できない売掛金・売れない在庫を資産に計上したまま
  • 決算のときだけ慌てる(月次の数字を普段見ていない)
  • 「いくら・何に・いつまで」の資金計画がないまま銀行に行く
⭕ 適切な対応
  • 「節税」と「資金調達力」のどちらを優先すべきか方針を決める
  • 役員貸借・不良資産を整理し、実態の良い決算書にする
  • 月次の試算表を締め、いつでも説明できる状態にしておく
  • 事業計画・資金繰り表とセットで、根拠を持って交渉する

5. まとめ

銀行が「貸したくなる」決算書とは、返済力(債務償還年数)・安全性(自己資本比率)・収益力(黒字)がきちんと見える決算書です。そしてその出発点は、「節税」と「資金調達力」のどちらを優先するかを決めること。やみくもな節税は、将来の借入余力を削ります。

決算書は、作ってから直すのではなく、期中の経理と決算の組み立てで戦略的に作るもの。当グループでは、税務顧問(KMP)と融資支援(ユウシサポ)を一体で提供し、累計10億円超の資金調達を支援してきました。「自社の決算書は銀行からどう見えるか」を知りたい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

銀行は決算書のどこを見ていますか?

自己資本比率、債務償還年数、営業利益などの「返済力」を重視します。一時点の利益だけでなく、財務の安全性を見ています。

赤字だと融資は受けられませんか?

一概に不可ではありません。赤字の要因が一時的であることや改善計画を、試算表や事業計画で説明できれば可能性は十分あります。

決算書を良く見せるにはどうすれば?

粉飾ではなく、役員貸付金の解消など貸借対照表の整理と、試算表の定期提出など継続的な情報開示で銀行の信頼を作ることが王道です。

出典・参考資料

  • 中小企業庁「中小企業の財務指標」「経営者保証に関するガイドライン」
  • 金融庁「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」(債務者区分・自己査定の考え方)
  • 日本政策金融公庫「中小企業の財務・経営に関する各種資料」
  • 経済産業省「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)制度」
ご利用上の留意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の財務・税務判断に代わるものではありません。金融機関の評価基準は各行・状況により異なります。実際の資金調達にあたっては、専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日

資金調達のご相談は KMP・ユウシサポへ

税務顧問と融資支援を一体で提供し、累計10億円超の資金調達を支援してきました。自社の決算書が銀行からどう見えるか知りたい方はご相談ください。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。経済産業省認定支援機関として、税務顧問から資金調達(融資支援サービス「ユウシサポ」)まで経営者に伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp