賞与(ボーナス)から引かれる税金・社会保険料はいくら?手取りの計算を税理士が解説【2026年版】

「ボーナスって、こんなに引かれるの?」——夏と冬、賞与の明細を見て、毎年そう感じる方は少なくありません。賞与から引かれるのは大きく「源泉所得税」と「社会保険料」の2つですが、その決まり方は毎月の給与とは少し違う独自のルールになっています。税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、賞与を支給する時期になると、経営者や給与計算のご担当者から「賞与の所得税はどう計算するのか」「社会保険料の上限はあるのか」というご相談が増えます。 本記事では、賞与から引かれる源泉所得税の決まり方(前月の給与で率が決まる仕組み)社会保険料の決まり方(標準賞与額×料率)、そして手取りの実際の計算まで、2026年(令和8年)6月時点で適用される令和7年度の最新料率を使い、検算できる具体例つきで網羅的に整理します。数字は国税庁・厚生労働省・協会けんぽ・日本年金機構の一次情報で裏づけています。
📋 この記事の目次
  1. 1. 賞与から引かれるもの、まず押さえる3つの結論(3行サマリー)
  2. 2. 賞与にかかる「源泉所得税」の決まり方
  3. 3. 賞与にかかる「社会保険料」の決まり方
  4. 4. 手取りはどれくらい残る?——具体例で計算する
  5. 5. 経営者・給与担当者が間違えやすいポイント
  6. 7. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 賞与から引かれるもの、まず押さえる3つの結論(3行サマリー)

  • 賞与から引かれるのは①源泉所得税 ②社会保険料の2つ。住民税は賞与からは引かれません(住民税は毎月の給与から年12回で天引き)。
  • 源泉所得税は、賞与額そのものではなく「前月の給与」で税率(賞与の金額に乗ずべき率)が決まるという、毎月の給与とは違う独自の計算をします。
  • 社会保険料は、賞与の総支給額(1,000円未満切捨て=標準賞与額)に料率を掛けます。厚生年金は1か月150万円、健康保険は年度累計573万円という上限があり、これを超える部分には保険料がかかりません。

この3点を、順番に具体的な数字で解説していきます。

2. 賞与にかかる「源泉所得税」の決まり方

賞与の所得税は「前月の給与」で率が決まる

毎月の給与は「源泉徴収税額表(月額表)」で税額を求めますが、賞与は専用の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。最大の特徴は、賞与の額ではなく、その前月に支払った給与の金額をもとに税率が決まるという点です。流れは次のとおりです(国税庁 No.2523「賞与に対する源泉徴収」)。

💡 ①前月の給与から社会保険料等を引いた金額(前月の社会保険料等控除後の給与等の金額)を求める → ②その金額と扶養親族等の数を「賞与の算出率の表」にあてはめ、賞与の金額に乗ずべき率を求める → ③(賞与の額 − 賞与から引く社会保険料等)×その率=賞与の源泉所得税額。

「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人は甲欄、提出していない人は乙欄を使います。なお、この率には復興特別所得税(2.1%上乗せ)が含まれています。

算出率の表(甲欄・扶養親族等0人の場合)

参考までに、甲欄で扶養親族等が0人の場合の「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」と「賞与の金額に乗ずべき率」の対応は次のとおりです(令和7年分・財務省告示別表第三。扶養親族等の数が増えると各区分の金額の境界が上にずれます)。

賞与の金額に乗ずべき率前月の社会保険料等控除後の給与等の金額(扶養0人)
0.000%68,000円未満
2.042%68,000円以上 79,000円未満
4.084%79,000円以上 252,000円未満
6.126%252,000円以上 300,000円未満
8.168%300,000円以上 334,000円未満
10.210%334,000円以上 363,000円未満
12.252%〜45.945%363,000円以上(金額が上がるほど率も段階的に上昇。最上位は前月給与3,495千円以上で45.945%)
💡 前月に給与の支払がない場合や、賞与の額(社会保険料控除後)が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合は、この算出率の表ではなく、月額表を使った特別な計算を行います(国税庁 No.2523)。高額賞与で前月給与との差が大きいケースでは要注意です。

❗ 賞与の所得税は「仮の前払い」にすぎない

ここは誤解されやすい点です。賞与から引かれる源泉所得税は、その年の税額を概算で前払いしているだけです。1年分の正しい所得税は、年末調整(または確定申告)で改めて計算し直し、精算されます。「今回の賞与は所得税が高い/安い」と一喜一憂しても、最終的には年末調整で帳尻が合う仕組みです。

3. 賞与にかかる「社会保険料」の決まり方

標準賞与額 × 料率で計算する

社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)は、賞与の総支給額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に料率を掛けて計算します(雇用保険だけは標準化せず総支給額に料率を掛けます)。本人負担分の料率は、令和7年度では次のとおりです。

保険の種類料率(令和7年度)本人負担分(労使折半など)
健康保険(協会けんぽ・全国平均)10.00%5.00%(労使折半)
介護保険(40〜64歳のみ)1.59%0.795%(労使折半)
厚生年金保険18.300%9.150%(労使折半)
雇用保険(一般の事業・本人負担分)0.55%
💡 健康保険料率は協会けんぽでは都道府県ごとに異なり、全国平均が10.00%です(令和7年度)。介護保険料(1.59%)は40歳以上65歳未満の方に上乗せされます。厚生年金保険料率18.300%は平成29年9月以降、法律で固定されています(本人負担はいずれも労使折半の半額)。

❗ 社会保険料には「上限」がある——高額賞与のポイント

賞与の社会保険料には、毎月の給与にはない標準賞与額の上限が設けられています。ここを知らないと、高額賞与の手取りを読み違えます(日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」)。

保険の種類標準賞与額の上限上限の区切り
厚生年金保険1か月あたり150万円1回の支給ごと(同月内に複数回あれば合算)
健康保険・介護保険年度の累計573万円毎年4月1日〜翌年3月31日の累計

たとえば1回の賞与が200万円の場合でも、厚生年金保険料の計算上は150万円が上限となり、150万円を超える50万円分には厚生年金保険料がかかりません。健康保険・介護保険は1回ごとではなく、その年度に支給された賞与の累計が573万円に達するまでが対象です。

4. 手取りはどれくらい残る?——具体例で計算する

文章だけではイメージしづらいので、実際に手取りを計算してみます。次の前提で見てみましょう。

【前提】 賞与の総支給額50万円/40歳未満(介護保険なし)/協会けんぽ(全国平均10.00%の地域)/扶養控除等申告書を提出済み・扶養親族等0人(甲欄)/前月の社会保険料控除後の給与が30万円。

① 社会保険料(本人負担)

  • 標準賞与額:500,000円(1,000円未満切捨てでちょうど50万円)
  • 健康保険:500,000円 × 5.00% = 25,000円
  • 厚生年金:500,000円 × 9.150% = 45,750円
  • 雇用保険:500,000円 × 0.55% = 2,750円
  • 社会保険料の合計:73,500円

② 源泉所得税

  • 課税の対象:500,000円 − 73,500円(社会保険料)= 426,500円
  • 賞与の率:前月の社保控除後給与30万円・扶養0人 → 算出率の表(甲欄)で8.168%
  • 源泉所得税:426,500円 × 8.168% = 34,836円(1円未満切捨て)

③ 手取り

  • 手取り:500,000円 − 73,500円 − 34,836円 = 391,664円
  • 引かれた合計:108,336円(総支給額の約21.7%
項目金額
賞与 総支給額500,000円
社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)△73,500円
源泉所得税△34,836円
差引 手取り391,664円
💡 もし同じ条件で40歳以上65歳未満なら、介護保険料(本人0.795%)が上乗せされ、500,000円 × 0.795% = 3,975円が追加で引かれます。年齢で手取りが変わるのはこのためです。

5. 経営者・給与担当者が間違えやすいポイント

賞与は毎月の給与と計算ルールが違うぶん、支給する側でつまずきやすい論点があります。実務でよくお見かけするものを、失敗と王道に整理します。

❌ やりがちな失敗
  • 賞与の所得税を、賞与額そのものに月額表をあてはめて計算してしまう(正しくは「前月の給与」で率を決める算出率の表を使う)
  • 高額賞与で厚生年金150万円・健康保険573万円の上限を失念し、保険料を取りすぎ・取り足りずにする
  • 賞与支払届の提出(支給日から5日以内に年金事務所へ)を忘れ、標準賞与額が記録されず将来の年金額に影響する
  • 退職する従業員の賞与から、本来不要な社会保険料を控除してしまう(退職のタイミングで控除の要否が変わる)
⭕ 王道の対応
  • 賞与は専用の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使い、前月給与と扶養人数から率を求める
  • 厚生年金(1回150万円)・健康保険(年度累計573万円)の上限をシステム・チェックリストに組み込む
  • 賞与支払届を支給後5日以内に提出し、標準賞与額を正しく記録する
  • 退職月の賞与は、社会保険の資格喪失日(退職日の翌日)と月末在籍の有無で社会保険料の控除要否を判定する
💬 実務の現場から
——弊社にも、「賞与の源泉所得税や社会保険料の計算が合っているか不安だ」というご相談が、賞与の支給時期になると実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、つまずきやすいのは①前月給与で率が決まる仕組みの理解、②高額賞与での社会保険料の上限、③退職者・休職者がいる月の取扱いの3点です。私たちが関与する場面では、給与計算の仕組みそのものを点検し、源泉徴収や社会保険の事務が毎回正しく回る状態を一緒に整えます。

よくある質問(FAQ)

賞与から住民税は引かれますか?

原則として引かれません。住民税は前年の所得をもとに計算され、毎月の給与から年12回に分けて天引きされます(特別徴収)。賞与から差し引かれるのは源泉所得税と社会保険料です。

賞与の所得税が思ったより高い/低いのはなぜ?

賞与の率は「前月の給与」で決まるため、前月に残業代などで給与が多かった月の翌月に賞与が出ると、率が高めに出ることがあります。ただし最終的な税額は年末調整で精算されるので、払いすぎていれば戻ります。

賞与にも社会保険料がかかると損では?

厚生年金の保険料は将来の年金額(標準賞与額として記録)に反映されます。負担である一方、年金の受給額に結びつく面もあります。

役員賞与でも同じ計算ですか?

源泉所得税・社会保険料の計算方法は同じです。ただし役員賞与は、原則として「事前確定届出給与」の届出どおりに支給しないと法人税の損金に算入できないという別の重要ルールがあります。届出額・支給日・支給額が一致していないと全額が損金不算入になり得ます。

賞与を支給したら、会社は何の手続きが必要ですか?

支給日から5日以内に、年金事務所(または健康保険組合)へ「賞与支払届」を提出します。源泉所得税は通常の源泉徴収と同じく、原則翌月10日までに納付します。

7. まとめ

賞与から引かれる税金・社会保険料は、次の3点を押さえれば正しく見通せます。

  • 賞与から引かれるのは源泉所得税と社会保険料の2つ。住民税は賞与からは引かれない。
  • 源泉所得税は「前月の給与」で率が決まる独自ルール。専用の算出率の表を使い、復興特別所得税込みの率を掛ける。最終的には年末調整で精算される。
  • 社会保険料は標準賞与額(1,000円未満切捨て)×料率。厚生年金は1回150万円、健康保険・介護は年度累計573万円という上限がある。

賞与は支給する側にとっても、計算ルールが毎月の給与と異なるため事務ミスが起きやすい場面です。「自社の賞与計算が正しく回っているか」「源泉徴収・社会保険の事務をもっと効率化したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、給与計算・源泉徴収から税務顧問まで、経営者の実務を入口から伴走支援しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 国税庁 タックスアンサー No.2523「賞与に対する源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2523.htm
  • 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年分)」(財務省告示第115号別表第三) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2024/data/15-16.pdf
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和7年度 都道府県毎の保険料率」(全国平均 健康保険10.00%・介護保険1.59%) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r07/index.html
  • 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」(標準賞与額・上限・賞与支払届) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20141203.html
  • 厚生労働省「令和7年度の雇用保険料率」(一般の事業・労働者負担0.55%) https://www.mhlw.go.jp/content/001401966.pdf
  • 所得税法 第183条(給与所得に係る源泉徴収義務)、健康保険法・厚生年金保険法(標準賞与額)
ご利用上の留意事項
本記事は、賞与にかかる税金・社会保険料に関する一般的な情報提供であり、個別の税務・労務判断に代わるものではありません。料率は令和7年度(2025年4月〜2026年3月適用)のものです。健康保険料率は協会けんぽでは都道府県により異なり、健康保険組合では組合ごとに定められます。実際の判断にあたっては、最新の法令・告示・料率をご確認のうえ、税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月6日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp