賞与(ボーナス)から引かれる税金・社会保険料はいくら?手取りの計算を税理士が解説【2026年版】
- 1. 賞与から引かれるもの、まず押さえる3つの結論(3行サマリー)
- 2. 賞与にかかる「源泉所得税」の決まり方
- 3. 賞与にかかる「社会保険料」の決まり方
- 4. 手取りはどれくらい残る?——具体例で計算する
- 5. 経営者・給与担当者が間違えやすいポイント
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 賞与から引かれるもの、まず押さえる3つの結論(3行サマリー)
- 賞与から引かれるのは①源泉所得税 ②社会保険料の2つ。住民税は賞与からは引かれません(住民税は毎月の給与から年12回で天引き)。
- 源泉所得税は、賞与額そのものではなく「前月の給与」で税率(賞与の金額に乗ずべき率)が決まるという、毎月の給与とは違う独自の計算をします。
- 社会保険料は、賞与の総支給額(1,000円未満切捨て=標準賞与額)に料率を掛けます。厚生年金は1か月150万円、健康保険は年度累計573万円という上限があり、これを超える部分には保険料がかかりません。
この3点を、順番に具体的な数字で解説していきます。
2. 賞与にかかる「源泉所得税」の決まり方
賞与の所得税は「前月の給与」で率が決まる
毎月の給与は「源泉徴収税額表(月額表)」で税額を求めますが、賞与は専用の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。最大の特徴は、賞与の額ではなく、その前月に支払った給与の金額をもとに税率が決まるという点です。流れは次のとおりです(国税庁 No.2523「賞与に対する源泉徴収」)。
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人は甲欄、提出していない人は乙欄を使います。なお、この率には復興特別所得税(2.1%上乗せ)が含まれています。
算出率の表(甲欄・扶養親族等0人の場合)
参考までに、甲欄で扶養親族等が0人の場合の「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」と「賞与の金額に乗ずべき率」の対応は次のとおりです(令和7年分・財務省告示別表第三。扶養親族等の数が増えると各区分の金額の境界が上にずれます)。
| 賞与の金額に乗ずべき率 | 前月の社会保険料等控除後の給与等の金額(扶養0人) |
|---|---|
| 0.000% | 68,000円未満 |
| 2.042% | 68,000円以上 79,000円未満 |
| 4.084% | 79,000円以上 252,000円未満 |
| 6.126% | 252,000円以上 300,000円未満 |
| 8.168% | 300,000円以上 334,000円未満 |
| 10.210% | 334,000円以上 363,000円未満 |
| 12.252%〜45.945% | 363,000円以上(金額が上がるほど率も段階的に上昇。最上位は前月給与3,495千円以上で45.945%) |
❗ 賞与の所得税は「仮の前払い」にすぎない
ここは誤解されやすい点です。賞与から引かれる源泉所得税は、その年の税額を概算で前払いしているだけです。1年分の正しい所得税は、年末調整(または確定申告)で改めて計算し直し、精算されます。「今回の賞与は所得税が高い/安い」と一喜一憂しても、最終的には年末調整で帳尻が合う仕組みです。
3. 賞与にかかる「社会保険料」の決まり方
標準賞与額 × 料率で計算する
社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)は、賞与の総支給額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に料率を掛けて計算します(雇用保険だけは標準化せず総支給額に料率を掛けます)。本人負担分の料率は、令和7年度では次のとおりです。
| 保険の種類 | 料率(令和7年度) | 本人負担分(労使折半など) |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・全国平均) | 10.00% | 5.00%(労使折半) |
| 介護保険(40〜64歳のみ) | 1.59% | 0.795%(労使折半) |
| 厚生年金保険 | 18.300% | 9.150%(労使折半) |
| 雇用保険(一般の事業・本人負担分) | ― | 0.55% |
❗ 社会保険料には「上限」がある——高額賞与のポイント
賞与の社会保険料には、毎月の給与にはない標準賞与額の上限が設けられています。ここを知らないと、高額賞与の手取りを読み違えます(日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」)。
| 保険の種類 | 標準賞与額の上限 | 上限の区切り |
|---|---|---|
| 厚生年金保険 | 1か月あたり150万円 | 1回の支給ごと(同月内に複数回あれば合算) |
| 健康保険・介護保険 | 年度の累計573万円 | 毎年4月1日〜翌年3月31日の累計 |
たとえば1回の賞与が200万円の場合でも、厚生年金保険料の計算上は150万円が上限となり、150万円を超える50万円分には厚生年金保険料がかかりません。健康保険・介護保険は1回ごとではなく、その年度に支給された賞与の累計が573万円に達するまでが対象です。
4. 手取りはどれくらい残る?——具体例で計算する
文章だけではイメージしづらいので、実際に手取りを計算してみます。次の前提で見てみましょう。
【前提】 賞与の総支給額50万円/40歳未満(介護保険なし)/協会けんぽ(全国平均10.00%の地域)/扶養控除等申告書を提出済み・扶養親族等0人(甲欄)/前月の社会保険料控除後の給与が30万円。
① 社会保険料(本人負担)
- 標準賞与額:500,000円(1,000円未満切捨てでちょうど50万円)
- 健康保険:500,000円 × 5.00% = 25,000円
- 厚生年金:500,000円 × 9.150% = 45,750円
- 雇用保険:500,000円 × 0.55% = 2,750円
- 社会保険料の合計:73,500円
② 源泉所得税
- 課税の対象:500,000円 − 73,500円(社会保険料)= 426,500円
- 賞与の率:前月の社保控除後給与30万円・扶養0人 → 算出率の表(甲欄)で8.168%
- 源泉所得税:426,500円 × 8.168% = 34,836円(1円未満切捨て)
③ 手取り
- 手取り:500,000円 − 73,500円 − 34,836円 = 391,664円
- 引かれた合計:108,336円(総支給額の約21.7%)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 賞与 総支給額 | 500,000円 |
| 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険) | △73,500円 |
| 源泉所得税 | △34,836円 |
| 差引 手取り | 391,664円 |
5. 経営者・給与担当者が間違えやすいポイント
賞与は毎月の給与と計算ルールが違うぶん、支給する側でつまずきやすい論点があります。実務でよくお見かけするものを、失敗と王道に整理します。
- 賞与の所得税を、賞与額そのものに月額表をあてはめて計算してしまう(正しくは「前月の給与」で率を決める算出率の表を使う)
- 高額賞与で厚生年金150万円・健康保険573万円の上限を失念し、保険料を取りすぎ・取り足りずにする
- 賞与支払届の提出(支給日から5日以内に年金事務所へ)を忘れ、標準賞与額が記録されず将来の年金額に影響する
- 退職する従業員の賞与から、本来不要な社会保険料を控除してしまう(退職のタイミングで控除の要否が変わる)
- 賞与は専用の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使い、前月給与と扶養人数から率を求める
- 厚生年金(1回150万円)・健康保険(年度累計573万円)の上限をシステム・チェックリストに組み込む
- 賞与支払届を支給後5日以内に提出し、標準賞与額を正しく記録する
- 退職月の賞与は、社会保険の資格喪失日(退職日の翌日)と月末在籍の有無で社会保険料の控除要否を判定する
——弊社にも、「賞与の源泉所得税や社会保険料の計算が合っているか不安だ」というご相談が、賞与の支給時期になると実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、つまずきやすいのは①前月給与で率が決まる仕組みの理解、②高額賞与での社会保険料の上限、③退職者・休職者がいる月の取扱いの3点です。私たちが関与する場面では、給与計算の仕組みそのものを点検し、源泉徴収や社会保険の事務が毎回正しく回る状態を一緒に整えます。
よくある質問(FAQ)
賞与から住民税は引かれますか?
賞与の所得税が思ったより高い/低いのはなぜ?
賞与にも社会保険料がかかると損では?
役員賞与でも同じ計算ですか?
賞与を支給したら、会社は何の手続きが必要ですか?
7. まとめ
賞与から引かれる税金・社会保険料は、次の3点を押さえれば正しく見通せます。
- 賞与から引かれるのは源泉所得税と社会保険料の2つ。住民税は賞与からは引かれない。
- 源泉所得税は「前月の給与」で率が決まる独自ルール。専用の算出率の表を使い、復興特別所得税込みの率を掛ける。最終的には年末調整で精算される。
- 社会保険料は標準賞与額(1,000円未満切捨て)×料率。厚生年金は1回150万円、健康保険・介護は年度累計573万円という上限がある。
賞与は支給する側にとっても、計算ルールが毎月の給与と異なるため事務ミスが起きやすい場面です。「自社の賞与計算が正しく回っているか」「源泉徴収・社会保険の事務をもっと効率化したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、給与計算・源泉徴収から税務顧問まで、経営者の実務を入口から伴走支援しています。お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.2523「賞与に対する源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2523.htm
- 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年分)」(財務省告示第115号別表第三) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2024/data/15-16.pdf
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和7年度 都道府県毎の保険料率」(全国平均 健康保険10.00%・介護保険1.59%) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r07/index.html
- 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」(標準賞与額・上限・賞与支払届) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20141203.html
- 厚生労働省「令和7年度の雇用保険料率」(一般の事業・労働者負担0.55%) https://www.mhlw.go.jp/content/001401966.pdf
- 所得税法 第183条(給与所得に係る源泉徴収義務)、健康保険法・厚生年金保険法(標準賞与額)
本記事は、賞与にかかる税金・社会保険料に関する一般的な情報提供であり、個別の税務・労務判断に代わるものではありません。料率は令和7年度(2025年4月〜2026年3月適用)のものです。健康保険料率は協会けんぽでは都道府県により異なり、健康保険組合では組合ごとに定められます。実際の判断にあたっては、最新の法令・告示・料率をご確認のうえ、税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月6日
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