防衛特別法人税とは?令和8年4月開始「法人税額に4%上乗せ」を税理士が解説

令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税という新しい税が始まりました。法人税・地方法人税に加えて、もう一つ申告・納付すべき税が増えた、という改正です。 「うちは中小企業だから関係ない」と思われがちですが、税額がゼロでも申告書の提出は必要という点に注意が必要です。本記事では、防衛特別法人税の仕組み(税率・計算方法・申告)と、中小企業・オーナー経営者がいま押さえておくべき実務対応を、税理士が解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
  2. 2. 防衛特別法人税とは何か
  3. 3. 税額の計算方法(4%は「法人税額」にかかる)
  4. 4. 中小企業への影響:多くは「税額ゼロ・でも申告は必要」
  5. 5. 申告・納付のスケジュール
  6. 6. 専門家の視点:個人の「防衛特別所得税」とセットで動いている
  7. 7. 実務で押さえるべきこと
  8. 8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きたのか(3行サマリー)

  • 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が始まった(防衛力強化の財源確保のための付加税)
  • 税額は 「(基準法人税額 − 年500万円)× 4%」。基礎控除が年500万円あるため、多くの中小企業では税負担そのものは生じない見込み
  • ただし、税額がゼロでも申告(零申告)は必要。法人税・地方法人税の申告書に防衛特別法人税の欄が追加される

2. 防衛特別法人税とは何か

防衛特別法人税は、我が国の防衛力の抜本的な強化に係る財源を確保するための税制措置として、令和7年度税制改正で創設されました。根拠法は、令和7年(2025年)3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」です。

ポイントは、これが法人税に上乗せされる「付加税」だということです。法人税の税率(中小法人の軽減税率15%、その他23.2%など)そのものが上がるのではなく、計算された法人税額をもとに、別建てで4%分を上乗せして納める仕組みです。

項目内容
税の性格法人税額に上乗せする付加税(防衛力強化の財源確保)
納税義務者各事業年度の所得に対する法人税を課される法人(防衛特別法人税確保法〔以下「防確法」〕第8条)
課税の範囲法人の各課税事業年度の基準法人税額について、当分の間、課税(防確法第9条)
課税事業年度令和8年(2026年)4月1日以後に開始する各事業年度(防確法第11条)
税率4%(防確法第14条・第15条)
基礎控除額年500万円(防確法第13条第3項)
💡 「当分の間」課税される付加税 … 防衛特別法人税は、いわゆる時限措置ではなく「当分の間」課されるとされています(防確法第9条)。一過性の税ではなく、毎期の申告に組み込まれる前提で準備しておくのが安全です。

3. 税額の計算方法(4%は「法人税額」にかかる)

防衛特別法人税で最も誤解されやすいのが、「4%」が何にかかるのかです。これは所得(利益)ではなく、計算された法人税額にかかります。

計算式は次のとおりです(防確法第14条第1項・第15条)。

防衛特別法人税額 = 課税標準法人税額 × 4%
課税標準法人税額 = 基準法人税額 − 基礎控除額(年500万円)

つまり、まず通常どおり法人税額(基準法人税額)を計算し、そこから年500万円を差し引いた残りに4%を掛ける、という二段構えです。基礎控除が年500万円あるため、法人税額が500万円以下であれば、防衛特別法人税はゼロになります。

「基準法人税額」とは(ここが要注意)

基準法人税額とは、所得税額の控除(法人税法第68条)・外国税額の控除(同第69条)などの一定の税額控除を適用する“前”の法人税額をいいます(防確法第10条)。

普段、申告書の最終的な「納付すべき法人税額」は、これらの税額控除を引いた後の金額です。しかし防衛特別法人税の課税ベースは、控除を引く前の段階の法人税額である点に注意が必要です。源泉徴収された所得税額の控除や外国税額控除を多く使っている法人ほど、「最終的な法人税の納税額」と「防衛特別法人税の課税ベース」がずれてきます。

💡 1年に満たない事業年度の基礎控除 … 課税事業年度が1年に満たない場合の基礎控除額は、「500万円 ÷ 12 × その課税事業年度の月数」となります(防確法第13条第8項・第9項)。設立初年度や決算期変更の年は満額500万円にならない点に注意してください。

4. 中小企業への影響:多くは「税額ゼロ・でも申告は必要」

基礎控除が年500万円あるため、中小企業の多くは防衛特別法人税の負担そのものは生じない見込みです。

法人税額が500万円に達するには、相応の利益が必要です。中小法人(軽減税率が適用される法人)の場合、課税所得がおおむね2,400万円程度までは法人税額が500万円に届かず、防衛特別法人税は生じない計算になります(※あくまで概算の目安です。実際の法人税額は税額控除の有無などで変わります)。

ただし、ここで油断してはいけないのが申告義務です。

⚠️ 計算の結果、納税額が生じない場合であっても、申告義務は失われず、いわゆる「零申告」が必要です(国税庁「令和7年度法人税関係法令の改正の概要」)。

防衛特別法人税の申告書は独立した別の用紙ではなく、法人税・地方法人税の確定申告書の別表に防衛特別法人税に係る欄が追加される形で対応する予定とされています。実務上は、これまでどおり法人税の申告を行う中で、防衛特別法人税の欄も埋める、という流れになります。

5. 申告・納付のスケジュール

防衛特別法人税の申告・納付の基本は、法人税とほぼ同じタイミングです(防確法第25条)。

区分内容
確定申告原則として、各課税事業年度終了の日の翌日から2月以内に、納税地を所轄する税務署長に提出(防確法第25条)
中間申告法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税の中間申告も必要。ただし中間申告の規定は令和9年(2027年)4月1日以後に開始する課税事業年度から適用(防確法第21条、改正法附則62②)
適用開始令和8年(2026年)4月1日以後に開始する課税事業年度から(防確法第11条、改正法附則62①)

たとえば3月決算法人であれば、令和8年4月1日から始まる事業年度(令和9年3月期)が最初の課税事業年度となり、その確定申告(原則 令和9年5月末)から防衛特別法人税の申告が必要になります。決算期が3月以外の法人は、令和8年4月1日以後に始まる事業年度から、という点で開始時期が一社ごとに異なります。

6. 専門家の視点:個人の「防衛特別所得税」とセットで動いている

実務家の立場から申し上げると、今回の防衛力強化の財源確保のための税制措置は、法人・個人・たばこ税の3本柱で段階的に始まる点が押さえどころです。

法人向けの防衛特別法人税が令和8年4月に先行して始まる一方で、個人向けの防衛特別所得税は、令和9年(2027年)分から所得税額に1%が上乗せされます(同時に復興特別所得税が2.1%→1.1%に引き下げられるため、当面の負担は単年では相殺されますが、復興特別所得税の課税期間が延長されます。詳しくは別記事「防衛特別所得税とは?2027年1月開始の所得税1%上乗せ」で解説しています)。

オーナー経営者にとっては、法人と個人の両方で新しい付加税が始まることになります。役員報酬をいくらに設定するかは、法人税・所得税・社会保険料のトータルで考える論点ですが、そこに防衛特別法人税・防衛特別所得税という変数が加わったかたちです。役員報酬の設計を見直したい方は、役員報酬の決め方もあわせてご覧ください。

7. 実務で押さえるべきこと

防衛特別法人税は「税額はゼロでも、申告を忘れると手続き漏れになる」のが最大の注意点です。中小企業が押さえるべき要点を、失敗例と王道で整理します。

❌ つまずきがちな失敗
  • 「中小企業だから関係ない」と思い込み、零申告(税額ゼロでも必要な申告)を失念する
  • 4%が「所得」にかかると誤解し、負担額を過大に見積もって不安になる/過少に見積もる
  • 基準法人税額を「税額控除後の納税額」と取り違える(実際は所得税額控除・外国税額控除を引く“前”の法人税額がベース)
  • 決算期ごとに適用開始時期が違うことを把握せず、初年度の申告で慌てる
⭕ これから取るべき王道
  • 自社の決算期から、最初の課税事業年度(令和8年4月1日以後開始)がいつかを確認する
  • 税額がゼロでも申告は必要、と割り切り、法人税申告のルーティンに組み込む
  • 源泉所得税の控除や外国税額控除を使っている法人は、基準法人税額(控除前の額)でいくらになるかを試算しておく
  • 利益が大きい法人は、防衛特別法人税まで織り込んだうえで納税予測・資金繰りを立てる
💬 実務の現場から
守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としてお伝えすると、「新しい税ができたと聞いたが、自社にいくらかかるのか分からず不安」というお声は、制度開始の前後で実際に多く寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、防衛特別法人税で大切なのは負担額の大小そのものより、“税額がゼロでも申告がいる”という手続き面を取りこぼさないことです。私たちが関与する場面でも、まずは決算期から最初の課税事業年度を特定し、申告ルーティンに防衛特別法人税の欄を組み込むところから整えています。

8. まとめ

防衛特別法人税は、令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から始まった、法人税額に上乗せされる付加税です。税額は「(基準法人税額 − 年500万円)× 4%」で計算され、基礎控除が年500万円あるため、中小企業の多くは税負担そのものは生じない見込みです。

ただし、税額がゼロでも零申告は必要で、法人税・地方法人税の申告書別表に防衛特別法人税の欄が追加されます。注意点は、①4%がかかるのは所得ではなく法人税額であること、②課税ベースの基準法人税額は所得税額控除・外国税額控除を引く“前”の法人税額であること、③決算期によって適用開始時期が一社ごとに異なること、の3点です。税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、防衛特別法人税を織り込んだ申告・納税予測から、役員報酬を含むトータルの税務設計まで伴走します。新しい税への対応にご不安のある経営者の方は、お早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

防衛特別法人税とは何ですか?

防衛力強化の財源を確保するために令和7年度税制改正で創設された、法人税に上乗せされる付加税です。令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から課されます。法人税の税率そのものが上がるのではなく、計算された法人税額をもとに別建てで4%分を納める仕組みです。

税額はどう計算しますか?

「課税標準法人税額 × 4%」で計算します。課税標準法人税額は、基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた金額です。基礎控除が年500万円あるため、法人税額が500万円以下であれば防衛特別法人税はゼロになります。

中小企業にも関係ありますか?税額がゼロでも申告が必要ですか?

関係します。基礎控除が年500万円あるため、多くの中小企業では税負担そのものは生じない見込みですが、計算の結果、納税額が生じない場合でも申告義務は失われず、いわゆる「零申告」が必要です。申告は法人税・地方法人税の申告書別表に追加される欄で行う予定とされています。

「基準法人税額」とは何ですか?

所得税額の控除(法人税法第68条)・外国税額の控除(同第69条)など一定の税額控除を適用する“前”の段階の、各事業年度の所得に対する法人税の額をいいます(防衛特別法人税確保法第10条)。最終的に納付する法人税額(税額控除後)とは段階が異なる点に注意が必要です。

いつから申告が必要ですか?

令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度(課税事業年度)からです。確定申告書は、原則として各課税事業年度終了の日の翌日から2月以内に提出します。なお中間申告の規定は、令和9年(2027年)4月1日以後に開始する課税事業年度から適用されます。

出典・参考資料

  • 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日 閣議決定)防衛力強化に係る財源確保のための税制措置の項| https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_06.htm
  • 財務省「令和7年度税制改正」パンフレット(防衛力強化に係る財源確保のための税制措置)| https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2025/05.html
  • 国税庁「令和7年度法人税関係法令の改正の概要」| https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2025/01.htm
  • 国税庁「防衛特別法人税に関する納付手続等について」| https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/bouei_noufu/index.htm
  • 国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」| https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/01.htm
  • 根拠法:所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号、令和7年3月31日公布)。条番号は我が国の防衛力の抜本的な強化に係る財源の確保のための税制措置に関する法律(防衛特別法人税確保法)によります。
ご利用上の留意事項
本記事は、財務省・国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、特定の税務処理の結果を保証するものではありません。防衛特別法人税の計算・申告は、基準法人税額・税額控除など個別の事実関係により異なります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達および国税庁公表の申告書様式をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月20日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継、国際税務まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp