防衛特別所得税とは?2027年1月開始の「所得税1%上乗せ」を税理士が解説

「2027年から所得税が1%増えるって本当ですか?」——令和8年度(2026年度)税制改正で創設が固まった防衛特別所得税について、経営者からも個人の方からも、こうしたご質問をいただくようになりました。 結論から言えば、本当です。防衛力強化の財源として、2027年(令和9年)1月から所得税に新しい付加税が上乗せされます。ただし、ここには「年収の1%ではない」「始まった年は実は負担がほとんど増えない」という、見出しだけでは伝わらない大事なポイントがあります。税理士法人 小山・ミカタパートナーズの視点で、仕組みと注意点を正確に整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が決まったのか(3行サマリー)
  2. 2. 防衛特別所得税の基本|「年収の1%」ではありません
  3. 3. 復興特別所得税の引き下げと「10年延長」のからくり
  4. 4. 具体例で見る|所得税額30万円の人の場合
  5. 5. 法人にも関係します|防衛特別法人税は2026年4月から「先行」
  6. 6. 経営者・実務でどう備えるか
  7. 7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 何が決まったのか(3行サマリー)

  • 防衛特別所得税が新設され、2027年(令和9年)分の所得税から、所得税額の1%が上乗せされます。
  • 同時に、東日本大震災の復興財源である復興特別所得税の税率が、2.1%→1.1%へ1%引き下げられます。
  • ただし復興特別所得税は課税期間が10年延長(2037年→2047年)されるため、単年では相殺でも、長い目で見れば負担は増えます。

これらは「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」で法制化されています。

2. 防衛特別所得税の基本|「年収の1%」ではありません

ここが最初の、そして最大の誤解ポイントです。「所得が1%増税」と聞くと、年収の1%を取られると思われがちですが、そうではありません。

防衛特別所得税は、所得税額(正確には基準所得税額)に対して1%を課すものです。つまり、

防衛特別所得税 = 基準所得税額 × 1%

「基準所得税額」とは、ざっくり言えば各種の所得控除を差し引いて計算した所得税の額(住宅ローン控除などの一部の税額控除を差し引いた後の金額)です。年収そのものではありません。

ですから、所得控除などで所得税が0円になる方は、防衛特別所得税も0円です。負担は「税額の1%」であって「収入の1%」ではない——この一点を押さえるだけで、過度な不安は避けられます。

💡 根拠法令:所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号、令和7年3月31日公布)。防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、防衛特別所得税・防衛特別法人税が創設されました。

3. 復興特別所得税の引き下げと「10年延長」のからくり

防衛特別所得税の導入に合わせて、いま給与や報酬から天引きされている復興特別所得税が見直されます。

復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源として、所得税額に2.1%を上乗せしている付加税です。これが、防衛特別所得税の開始に合わせて1.1%へ引き下げられます(▲1%)。

下の表が、2027年1月以降に所得税へ上乗せされる付加税の全体像です。

区分改正前(2026年分まで)改正後(2027年分以後)
復興特別所得税基準所得税額 × 2.1%基準所得税額 × 1.1%
防衛特別所得税(なし)基準所得税額 × 1.0%
付加税の合計2.1%2.1%(1.1%+1.0%)

お気づきの通り、付加税の合計は2.1%のままで変わりません。復興特別所得税が1%下がり、防衛特別所得税が1%増えるので、2027年という単年だけを見れば、手取りはほとんど変わらない設計になっています。

では、どこで負担が増えるのか。カラクリは「期間」です。

項目改正前改正後
復興特別所得税の税率2.1%1.1%
復興特別所得税の課税期間(終了)2037年(令和19年)分まで2047年(令和29年)分まで

税率は下げる代わりに、復興特別所得税を取る期間を10年間延長します。つまり「率を薄くして、長く取る」。さらにその上に防衛特別所得税が新たに乗るため、長期で通算すれば、納税者の負担は確実に増えるというのが正味の姿です。「1%下がってラッキー」ではなく、「薄く長く伸ばされた」と理解するのが正確です。

4. 具体例で見る|所得税額30万円の人の場合

数字で見ると、相殺の構造がはっきりします。仮に、その年の所得税額(基準所得税額)が30万円の方を例にとります。

  • 改正前(2026年分まで):復興特別所得税 30万円 × 2.1% = 6,300円
  • 改正後(2027年分以後):復興特別所得税 30万円 × 1.1% = 3,300円/防衛特別所得税 30万円 × 1.0% = 3,000円/合計 6,300円

付加税は 6,300円 → 6,300円で、その年の負担は変わりません。違いは、本来2037年で終わるはずだった復興特別所得税が、2047年まで10年延びること。この10年分が、長期で見たときの実質的な負担増になります。

5. 法人にも関係します|防衛特別法人税は2026年4月から「先行」

「防衛増税」は個人だけの話ではありません。法人向けには防衛特別法人税が先に始まります。

  • 防衛特別法人税:基準法人税額に対して4%を上乗せ。ただし年500万円の基礎控除があるため、課税所得が一定規模までの中小法人には負担が及びにくい設計です。
  • 開始時期:法人は2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から先行して適用されます(個人の防衛特別所得税は2027年から)。

つまり経営者の方は、会社(2026年4月〜)と個人(2027年1月〜)の二段階で防衛増税に向き合うことになります。自社の規模では防衛特別法人税が実際にいくらかかるのか、早めに試算しておくと安心です。

6. 経営者・実務でどう備えるか

💬 実務の現場から
——弊社にも、改正のたびに「うちの会社と自分自身で、結局いくら増えるのか」「給与計算のシステムはどう直せばいいのか」というご相談が、経営者の方から実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、まず混乱しやすいのは、復興特別所得税の率が変わること(2.1%→1.1%)が、源泉徴収や給与計算の設定変更に直結する点です。私たちが関与する場面では、法人(2026年4月〜)と個人(2027年1月〜)の二段階を一枚の表に整理し、「いつ・どの税が・いくら」効くのかを可視化するところからご支援しています。

実務で押さえておきたいのは、次の点です。

  • 源泉徴収・給与計算の設定変更:2027年1月から復興特別所得税の率(2.1%→1.1%)と防衛特別所得税(+1%)が同時に動くため、給与システム・源泉徴収事務の改修が必要になります。
  • 法人の試算(2026年4月〜):防衛特別法人税は年500万円控除があるため、自社の基準法人税額がいくらかで負担の有無が変わります。先に試算を。
  • 「年収の1%ではない」ことの社内共有:従業員から不安の声が出やすいテーマです。「税額の1%であって収入の1%ではない」と正しく説明できる準備を。
  • 高所得者ほど影響が大きい:付加税は所得税額に比例するため、所得税額の大きい方ほど絶対額の負担も大きくなります。富裕層・高所得の経営者は長期の資産計画に織り込んでおくのが賢明です。

7. まとめ

防衛特別所得税は、2027年(令和9年)1月から、所得税額の1%が上乗せされる新しい付加税です。同時に復興特別所得税が2.1%→1.1%に下がるため、始まった年の負担はほぼ変わりません。しかし、復興特別所得税の課税期間が2047年まで10年延長され、その上に防衛特別所得税が新設されるため、長期で通算すれば負担は確実に増えます。法人には防衛特別法人税が2026年4月から先行する点も忘れてはいけません。

「自社と自分自身で、いつ・いくら増えるのか」「給与計算や源泉徴収の事務はどう変えればよいか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、改正対応から日々の実務、資金計画まで経営者に伴走しています。お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

防衛特別所得税はいつから始まりますか?

2027年(令和9年)分の所得税から、所得税額に1%が上乗せされます。法人向けの防衛特別法人税は2026年4月から先行します。

負担はどれくらい増えますか?

所得税額の1%です。同時に復興特別所得税が2.1%→1.1%へ下がるため単年では相殺的ですが、復興特別所得税の課税期間が延長されるため長期では負担増になります。

会社員も対象ですか?

はい。給与の源泉徴収・年末調整に反映されます。会社側は給与計算・源泉事務の見直しが必要です。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、防衛特別所得税・防衛特別法人税および復興特別所得税の見直しに関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。税額の計算には各種控除・要件があり、個別事情により異なります。施行に向けて政省令等で詳細が定められるため、実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月4日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp