M&Aの株式取得額を100%損金にできる制度が2027年3月31日で終わります|中堅・中小グループ化税制(租税特別措置法第56条)を税理士が解説

M&Aで会社を買ったとき、買った株式の取得価額の全額を、その年の損金にできる——そう聞くと、何かの間違いではないかと思われるかもしれません。ですが、実在する制度です。 租税特別措置法第56条の「中小企業事業再編投資損失準備金」、その拡充枠である中堅・中小グループ化税制がそれです。通常枠でも取得価額の70%、拡充枠なら1回目のM&Aで90%、2回目以降は100%を準備金として積み立て、損金に算入できます。しかも拡充枠は、益金に戻し始めるまでの据置期間が10年あります。 そして、この制度には期限があります。令和9年(2027年)3月31日までに計画の認定を受けなければなりません。残りおよそ7か月です。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「同業を買って規模を作りたい」「後継者のいない取引先を引き受けることになった」というご相談は実際に寄せられます。そうしたご相談で最初に確認するのがこの制度なのですが、存在自体を知らないまま株式譲渡契約まで進んでしまっているケースが少なくありません。認定は事後には取れませんので、そうなると打つ手がなくなります。 本記事では、通常枠と拡充枠の違い、条文が定める金額のライン、そして実務で一番見落とされる「表明保証保険を掛けると準備金が消える」という論点まで、条文に沿って整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が問題なのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:なぜ「株式を買うと損金が出る」のか
  3. 3. 拡充枠の入口——「特別事業再編」とは何か
  4. 4. 専門家の視点——実務で一番見落とされる「表明保証保険」の罠
  5. 5. 実務で押さえるべきこと
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が問題なのか(3行サマリー)

  • 租税特別措置法第56条は、青色申告法人がM&Aで他の法人の株式等を購入により取得し、その事業年度末まで引き続き有している場合に、取得価額の一定割合を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積立額を損金の額に算入すると定めています。株式の取得は本来、資産の取得であって費用にはなりません。その原則の例外です
  • 通常枠は取得価額の70%・据置期間5年、拡充枠(中堅・中小グループ化税制)は最初のM&Aが90%2回目以降は100%・据置期間10年です。拡充枠は、産業競争力強化法の特別事業再編計画の認定が前提になります
  • どちらの枠も、計画の認定を受ける期限は令和9年3月31日です(租税特別措置法第56条第1項の表・第1号および第2号)。令和8年度税制改正でこの期限は延長されていません
📌 【2026年8月23日時点の情報です】
本記事は2026年8月23日時点で確認できる法令・公表資料に基づいています。適用期限は令和9年3月31日ですが、税制改正で延長・見直しが行われる可能性があります。特に、各省庁の令和9年度税制改正要望は例年8月末に公表されますので、本記事公開時点では要望の内容も確定していません。実行の判断にあたっては、最新の法令と中小企業庁・経済産業省の公表資料をご確認ください。

2. 前提:なぜ「株式を買うと損金が出る」のか

制度の理屈

会社を買うと、貸借対照表には「子会社株式」という資産が載ります。資産ですから、買った時点では損金になりません。ところが中小企業のM&Aでは、買ってみたら簿外債務が出てきた、想定していた利益が出なかったということが起こります。そのリスクに備えて、あらかじめ引き当てておくことを認めよう——というのが、この準備金の考え方です。

条文の書きぶりも、まさにそうなっています。租税特別措置法第56条第1項は「当該特定株式等の価格の低落による損失に備えるため」積み立てたときは損金に算入する、としています。

枠は2つある

制度は、通常枠拡充枠の2階建てです。条文上は第56条第1項の表の第1号(通常枠)と第2号(拡充枠)で書き分けられています。

項目通常枠(表・第1号)拡充枠=中堅・中小グループ化税制(表・第2号)
対象となる法人租税特別措置法第42条の4第19項第7号に規定する中小企業者(適用除外事業者・通算適用除外事業者を除く)産業競争力強化法第46条の2に規定する認定特別事業再編事業者である法人
必要な計画の認定中小企業等経営強化法第17条第1項の経営力向上計画(同条第4項第2号に掲げる事項=事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る)産業競争力強化法第24条の2第1項の特別事業再編計画
認定を受ける期限令和9年3月31日まで令和9年3月31日まで
対象となる措置認定に係る経営力向上計画に従って行う事業承継等(中小企業等経営強化法第2条第10項第8号に掲げる措置)認定特別事業再編計画に従って行う特別事業再編のための措置(産業競争力強化法第2条第18項第6号に掲げる措置)
取得価額の範囲10億円以下(条文は「十億円を超える金額」を除外)1億円以上100億円以下(条文は「百億円を超える金額又は一億円に満たない金額」を除外)
積立率70%最初の措置:90%/それ以外:100%
据置期間5年10年

(出典:租税特別措置法第56条第1項の表、同条第2項)

拡充枠は「2回目以降」を狙う制度です

表を見ていただくと分かるとおり、拡充枠は「認定特別事業再編計画に従って行う最初の特別事業再編のための措置として取得をした株式等」が90%、「それ以外の株式等」が100%です(同条第1項の表・第2号の第4欄イ・ロ)。

つまり、認定を取ってから2社目、3社目を買うほど有利になる建て付けです。1社だけ買って終わりという計画には向きません。

3. 拡充枠の入口——「特別事業再編」とは何か

拡充枠を使うには、産業競争力強化法の特別事業再編計画の認定が要ります。ではその「特別事業再編」とは何か。同法第2条第18項が定義しています。

💡 産業競争力強化法第2条第18項(要旨)
「特別事業再編」とは、事業再編のうち、中小企業者(常時使用する従業員の数が2,000人以下のものに限る)又は中堅企業者であって、他の事業者の経営の支配又は経営資源の取得を行ったことがあるものが、当該他の事業者以外の他の事業者の経営資源を自らの経営資源と一体的に活用し、新たな需要を相当程度開拓することを目的として、次に掲げる措置により事業の全部又は一部の構造の変更を行うものをいう。
一 吸収合併/二 吸収分割/三 株式交換/四 株式交付(総株主の議決権の100分の50を超える議決権を保有することとなるものに限る)/五 事業又は資産の譲受け/六 他の会社の株式又は持分の取得(当該他の会社の総株主又は総出資者の議決権の100分の50を超える議決権を保有することとなるものに限る)

このうち、租税特別措置法第56条の拡充枠が対象にしているのは第6号(株式又は持分の取得)だけです。合併や事業譲受けでは、この準備金は使えません。

また定義から分かるとおり、過去にM&Aをやったことがある会社であることが前提になっています。この点は認定基準にも明記されており、産業競争力強化法第24条の2第6項第3号は「特別事業再編を実施する者が、過去五年以内において、他の事業者の経営の支配又は経営資源の取得を行っていること」を認定の要件としています。

「中堅企業者」の定義

産業競争力強化法第2条第25項は、中堅企業者を「常時使用する従業員の数が2,000人以下の会社及び個人(中小企業者を除く)」と定義しています。同条第24項の中小企業者の定義(業種ごとの資本金・従業員数の基準)と合わせると、この制度が想定している対象は次のようになります。

区分産業競争力強化法上の位置づけ
中小企業者製造業等:資本金3億円以下または従業員300人以下/卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下/サービス業:資本金5,000万円以下または従業員100人以下/小売業:資本金5,000万円以下または従業員50人以下(ほか政令で定める業種、企業組合、協業組合、事業協同組合等)
中堅企業者常時使用する従業員の数が2,000人以下の会社及び個人(中小企業者を除く)
特別事業再編の対象上記のうち、中小企業者は従業員2,000人以下のものに限る/中堅企業者

(出典:産業競争力強化法第2条第18項、第24項、第25項)

認定計画に記載する事項と、認定の要件

産業競争力強化法第24条の2第3項は、特別事業再編計画に次の事項を記載しなければならないとしています。

#記載事項
特別事業再編の目標
特別事業再編による生産性の向上、需要の開拓及び財務内容の健全性の向上の程度を示す指標
特別事業再編の内容及び実施時期
他の事業者の経営の支配又は経営資源の取得の実績に関する事項
特別事業再編の実施に必要な資金の額及びその調達方法
特別事業再編に伴う労務に関する事項

そして同条第6項が、主務大臣が認定をするための7つの要件を定めています。実施指針に照らし適切であること(第1号)、円滑かつ確実に実施されると見込まれること(第2号)、過去5年以内のM&A実績があること(第3号)、生産性の向上が市場構造に照らして持続的と見込まれること(第4号)、過剰供給構造にある事業分野ではその解消に資すること(第5号)、従業員の地位を不当に害するものでないこと(第6号)、適正な競争が確保され一般消費者・関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと(第7号)です。

さらに、税制の適用にはもう一段あります。産業競争力強化法第46条の2は、課税の特例の対象を「生産性の向上及び需要の開拓に特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたもの」に限っています。計画の認定を受けただけでは足りず、確認まで通す必要があるということです。

4. 専門家の視点——実務で一番見落とされる「表明保証保険」の罠

ここが本記事で最もお伝えしたい論点です。

中小企業のM&Aでも、簿外債務や偶発債務のリスクをヘッジするために表明保証保険を付けることが増えています。買い手としては合理的な判断です。ところが、租税特別措置法第56条は、この保険を非常に厳しく扱っています。

積立てそのものができなくなる

第56条第1項は、準備金を積み立てられる場合から次のケースを除外しています。取得の日を含む事業年度終了の日において「当該措置に基因し、又は関連して生ずる損害を塡補する保険で財務省令で定めるものの契約(特定保険契約)を締結している場合」です。

つまり、株式を取得した事業年度の末日時点で表明保証保険を掛けていると、そもそも準備金を積み立てられません

後から掛けると全額が益金に戻る

さらに第56条第3項第7号は、準備金を積み立てている法人が「当該法人が特定保険契約を締結した場合」には、その締結した日における当該特定法人に係る準備金の金額を、その日を含む事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すると定めています。

積み立てた後で保険を付けると、据置期間の途中でも全額が一気に戻ってくるわけです。

⚠️ これは「保険を掛けるな」という話ではありません … 実務家の立場から申し上げると、判断すべきは順番と比較です。表明保証保険の保険料と、準備金による課税の繰延べ効果——どちらが自社にとって大きいかを、株式譲渡契約の条件を詰める段階で並べて比べる必要があります。過去のご相談の傾向として申し上げると、この論点はデューデリジェンスを担当する専門家と、税務を見る専門家が別々に動いているときに落ちやすいところです。契約条件が固まってから税務に相談が来ると、もう選べません。

そのほかの一括益金算入の事由

第56条第3項は、ほかにも一括して益金算入となる場合を列挙しています。全項目を掲げます。

益金算入となる事由益金算入額
第1号イ中小企業等経営強化法第18条第2項の規定により経営力向上計画の認定が取り消された場合(通常枠)取り消された日における当該特定法人に係る準備金の金額
第1号ロ産業競争力強化法第24条の3第2項又は第3項の規定により特別事業再編計画の認定が取り消された場合(拡充枠)取り消された日における当該特定法人に係る準備金の金額
第2号当該準備金に係る特定法人の株式等の全部又は一部を有しないこととなった場合(第3号・第4号に該当する場合および適格合併により当該特定法人が解散した場合を除く)有しないこととなった株式等に係るものとして政令で定めるところにより計算した金額(全部を有しないこととなった場合はその全額)
第3号合併により合併法人に特定法人の株式等を移転した場合その合併の直前における当該特定法人に係る準備金の金額
第4号特定法人が解散した場合(当該法人を合併法人とする適格合併により解散した場合を除く)その解散の日における当該特定法人に係る準備金の金額
第5号特定法人の株式等についてその帳簿価額を減額した場合減額をした日における準備金の金額のうちその減額をした金額に相当する金額(分割型分割・株式分配・資本の払戻しによる減額の場合は政令で定める金額)
第6号当該法人が解散した場合(合併により解散した場合を除く)その解散の日における準備金の金額
第7号当該法人が特定保険契約を締結した場合その締結した日における当該特定法人に係る準備金の金額
第8号上記以外の場合において特定法人に係る準備金の金額を取り崩した場合その取り崩した日における準備金の金額のうちその取り崩した金額に相当する金額

(出典:租税特別措置法第56条第3項)

加えて同条第4項は、青色申告書の提出の承認を取り消され、又は青色申告をやめる旨の届出書を提出した場合にも、その時点の準備金の金額を益金に算入すると定めています。この場合は第2項(据置期間経過後の均等取崩し)と第3項の規定は適用されません。

据置期間が過ぎたらどう戻るのか

据置期間(通常枠5年・拡充枠10年)が過ぎると、準備金は自動的に益金へ戻り始めます。第56条第2項の計算式は次のとおりです。

💡 益金算入額の計算(租税特別措置法第56条第2項)
損金算入した準備金の積立額 × その事業年度の月数 ÷ 60
(計算した金額が据置期間経過準備金額を超える場合は、据置期間経過準備金額が限度)
※月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数は1月とします(同条第5項)

分母が60、つまり60か月=5年かけて均等に戻していくということです。通常枠なら「5年据え置いて5年で戻す」、拡充枠なら「10年据え置いて5年で戻す」という時間軸になります。

なお同条第6項は、この制度の適用を受けるには確定申告書等に準備金として積み立てた金額の損金算入に関する明細書等の添付が必要である旨を定めています。申告書上の手当てを忘れると、要件を満たしていても適用できません。

5. 実務で押さえるべきこと

いつまでに、何をするのか

期限は令和9年3月31日までに計画の認定を受けることです。株式を取得する期限ではなく、認定の期限である点にご注意ください。

中小企業庁は、通常枠の手続きフローを次のように示しています。M&Aの相手方が決まったタイミング(基本合意後等)で、経営力向上の内容に株式取得を含み、かつ事業承継等事前調査の内容を記載した経営力向上計画を策定し、主務大臣の認定を受ける。申請時には「事業承継等事前調査チェックシート」を作成して添付する。認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、主務大臣に対して事業承継等を実施したことおよび事業承継等事前調査の内容について報告し、確認書の交付を受ける。税務申告に際しては、認定書と確認書(いずれも写し)を添付する——という流れです。

つまり、基本合意の段階では動き出していないと間に合わない設計になっています。

デューデリジェンスは誰がやるかで手間が変わります

中小企業庁の同じページに、実務上とても効く記載があります。事業承継等事前調査の実施主体が有資格者でない場合は、実施したデューデリジェンスのレポートおよびレポートとチェックシートとの対応関係を示す書類の添付が必要になる、というものです。そして有資格者として明示されているのが次のとおりです。

デューデリジェンスの種類有資格者
法務デューデリジェンス弁護士
財務デューデリジェンス税理士又は公認会計士
税務デューデリジェンス税理士又は公認会計士

(出典:中小企業庁「中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)」)

認定の後も報告が続きます

中小企業庁は、事業承継等事前調査の内容を記載し、準備金積立またはD類型を活用した場合には、毎事業年度終了後(最大5年間)、事業の状況等に係る報告書を認定を受けた主務大臣に提出する必要があるとしています。積み立てて終わりではありません。

❌ 間に合わなくなる進め方
  • 株式譲渡契約を締結してから、税務の専門家に「何か使える制度はないか」と相談する(認定は事後には取れません)
  • 表明保証保険を先に手配し、事業年度末に契約が生きている状態で決算を迎える(第56条第1項により、そもそも積立てができません)
  • 準備金を積み立てた後、次の年度に表明保証保険を付ける(第56条第3項第7号により全額が益金に戻ります)
  • 拡充枠を狙いながら、過去5年以内のM&A実績を整理していない(産業競争力強化法第24条の2第6項第3号の要件を満たせません)
  • 合併や事業譲受けのスキームで計画を組む(拡充枠の対象は同法第2条第18項第6号の株式・持分の取得だけです)
  • 確定申告書に明細書を添付し忘れる(第56条第6項)
⭕ 期限から逆算した進め方
  • 令和9年3月31日という認定期限から逆算し、基本合意の前にどちらの枠を使うかを決める
  • 取得価額の見込みを、通常枠の10億円以下、拡充枠の1億円以上100億円以下という条文上のラインに当てはめて枠を選ぶ
  • 過去5年以内のM&A実績(経営の支配または経営資源の取得)を、契約書と登記で証跡として揃える
  • デューデリジェンスを弁護士・税理士・公認会計士に依頼し、チェックシートと対応がとれる形でレポートを受け取る
  • 表明保証保険の保険料と、準備金による課税繰延べの効果を数字で並べ、契約条件を詰める前にどちらを取るか決める
  • 認定計画の認定に加えて、産業競争力強化法第46条の2の主務大臣の確認まで通す段取りを組む
  • 積立後、最大5年間の事業状況報告と、据置期間経過後の取崩し(月数÷60)を織り込んだ税負担の見通しを作る

6. まとめ

  • 租税特別措置法第56条の中小企業事業再編投資損失準備金は、M&Aで取得した株式の取得価額の一定割合をその事業年度の損金に算入できる制度です。通常枠は70%・据置5年、拡充枠である中堅・中小グループ化税制は最初のM&Aが90%、2回目以降は100%・据置10年です
  • 計画の認定を受ける期限は、通常枠・拡充枠のいずれも令和9年3月31日です。財務省「令和8年度税制改正の解説」(措置法・法人税関係)を全文検索し、「事業再編投資損失準備金」「特別事業再編」の記載が0件であることを確認しています。現時点で延長はされていません
  • 取得価額のラインは条文で決まっています。通常枠は10億円以下、拡充枠は1億円以上100億円以下です
  • 拡充枠は、産業競争力強化法第2条第18項第6号の株式・持分の取得(議決権50%超)だけが対象で、合併や事業譲受けは対象外です。また同法第24条の2第6項第3号により、過去5年以内のM&A実績が認定の要件になります
  • 実務で最も見落とされるのが表明保証保険です。事業年度末に契約していると積立てができず(第56条第1項)、積立後に契約すると全額が益金に戻ります(同条第3項第7号)。保険料と課税繰延べ効果の比較は、株式譲渡契約の条件を詰める段階で済ませておく必要があります

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点と、財務・税務デューデリジェンスの有資格者としての立場から、枠の選定、認定申請のスケジュール設計、表明保証保険との比較、そして積立後の取崩しまで織り込んだ税負担の見通しづくりまで、一体でご支援しています。基本合意の前にご相談いただくほど、選べる手が多くなります。

よくある質問(FAQ)

期限の令和9年3月31日までに何を終えていればよいのですか?

株式の取得ではなく、計画の認定です。通常枠なら中小企業等経営強化法第17条第1項の経営力向上計画の認定、拡充枠なら産業競争力強化法第24条の2第1項の特別事業再編計画の認定を、令和9年3月31日までに受けている必要があります(租税特別措置法第56条第1項の表・第1号および第2号)。中小企業庁は、M&Aの相手方が決まったタイミング(基本合意後等)で計画を策定するよう案内しています。

拡充枠の100%は、本当に取得価額の全額が損金になるのですか?

条文上はそのとおりです。租税特別措置法第56条第1項の表・第2号の第4欄ロは、最初の措置以外の株式等について「百分の百」と定めています。ただしこれは課税の繰延べであって、免除ではありません。据置期間10年が経過した後、同条第2項により月数÷60、すなわち5年かけて益金に戻っていきます。

1社だけ買う場合でも拡充枠は使えますか?

産業競争力強化法第24条の2第6項第3号が「過去五年以内において、他の事業者の経営の支配又は経営資源の取得を行っていること」を認定要件としていますので、その計画より前にM&Aの実績があることが前提になります。そのうえで、認定計画に従って行う最初の措置は90%、それ以降が100%です。1社目を買うところから始める場合は、まず通常枠(70%)の検討になります。

合併で会社を取り込む場合も使えますか?

拡充枠は使えません。租税特別措置法第56条第1項の表・第2号は、対象を産業競争力強化法第2条第18項第6号(他の会社の株式又は持分の取得で、議決権の100分の50を超える議決権を保有することとなるもの)に限っています。同項は第1号に吸収合併、第2号に吸収分割、第5号に事業又は資産の譲受けを掲げていますが、これらは準備金の対象外です。

表明保証保険を掛けたら、絶対に使えないのですか?

条文が対象としているのは「当該措置に基因し、又は関連して生ずる損害を塡補する保険で財務省令で定めるもの」(特定保険契約)です。すべての保険が該当するわけではありませんので、実際に検討されている保険契約が財務省令の定めに当たるかを、契約前に個別に確認する必要があります。該当する場合、事業年度末に契約が生きていれば積立てができず(第56条第1項)、積立後に締結すれば全額が益金に算入されます(同条第3項第7号)。

買った会社を後で売ったら、どうなりますか?

租税特別措置法第56条第3項第2号により、特定法人の株式等の全部又は一部を有しないこととなった場合には、その有しないこととなった株式等に係る準備金の金額(全部を有しないこととなった場合はその全額)が、その日を含む事業年度の益金に算入されます。据置期間の途中でも同じです。

買った会社の株式を減損したら、準備金はどうなりますか?

同条第3項第5号により、特定法人の株式等について帳簿価額を減額した場合には、減額した金額に相当する準備金の金額が益金に算入されます。減損損失と準備金の取崩益が同じ事業年度に立つ形になりますので、期待していたほどの節税にはならない点にご注意ください。なお同条第1項も、積立額の計算にあたって、その事業年度に帳簿価額を減額して損金算入した金額に相当する金額を控除すると定めています。

通常枠と拡充枠は、両方使えますか?

それぞれ別の計画認定に基づく別の措置ですので、要件を満たす取引ごとに判定することになります。ただし取得価額のラインが異なり(通常枠は10億円以下、拡充枠は1億円以上100億円以下)、必要な計画も窓口も異なります。中小企業庁の問い合わせ先も、通常枠は中小企業税制サポートセンター、拡充枠のうち中堅企業向けは経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策課と分かれています。どちらで組むかは、取引の規模と過去の実績を見て早い段階で決めておくのが安全です。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、法令および中小企業庁・国税庁・財務省の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案における計画の認定や税務上の取扱いを保証するものではありません。適用期限(令和9年3月31日)をはじめとする制度の内容は、今後の税制改正により変更される可能性があります。本記事は2026年8月23日時点で確認できる法令・公表資料に基づくものであり、その後の改正・運用変更により記載内容が現行と異なる場合があります。 特に、各省庁の令和9年度税制改正要望は例年8月末に公表されるため、本記事公開時点では要望の内容は確定していません。認定申請・M&Aの実行にあたっては、最新の法令および中小企業庁・経済産業省の公募・様式のご案内をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月23日

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公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点と、財務・税務デューデリジェンスの有資格者としての立場から、枠の選定、認定申請のスケジュール設計、表明保証保険との比較、積立後の取崩しまで織り込んだ税負担の見通しづくりを一体でご支援しています。認定は事後には取れませんので、早いほど選べる手が多くなります。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から、M&A・事業承継の税務、財務デューデリジェンス、国際税務・資産防衛まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。