電子帳簿保存法とは?3つの区分と電子取引の義務化を税理士が解説【2026年版】
- 1. 電子帳簿保存法とは(3行サマリー)
- 2. 3つの保存区分(義務はどれか)
- 3. 義務化された「電子取引データ保存」とは
- 4. 電子取引データの保存要件(真実性と可視性)
- 5. 検索要件の緩和と「猶予措置」(小規模事業者の救済)
- 6. 「優良な電子帳簿」と青色申告特別控除(メリット側)
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 電子帳簿保存法とは(3行サマリー)
- 電子帳簿保存法は、税法で保存が義務づけられた帳簿や書類を電子データで保存するときのルールを定めた法律です。
- 保存方法は①電子帳簿等保存/②スキャナ保存/③電子取引データ保存の3区分に分かれ、①と②は任意、③だけが義務です。
- ③の電子取引データ保存は、令和6年(2024年)1月から完全義務化され、法人・個人事業主を問わずすべての事業者が対象です。
ひとことで言えば、「データでやり取りした請求書・領収書は、データのまま正しく保存しなければならない」のが電帳法の核心です。紙に出力しただけの保存は、原則として認められません。
2. 3つの保存区分(義務はどれか)
電帳法の保存方法は3つに分かれます。どれが義務でどれが任意かを正しく区別することが、対応の第一歩です。
| 区分 | 何を保存するか | 義務/任意 |
|---|---|---|
| ①電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で最初から電子的に作成した帳簿・決算書類をデータで保存 | 任意 |
| ②スキャナ保存 | 紙で受け取った/作成した請求書・領収書などをスキャンしてデータで保存 | 任意 |
| ③電子取引データ保存 | メール・Web・クラウド等で電子的に授受した取引情報をデータで保存 | 義務 |
①と②は、紙のまま保存しても構いません(電子化したい場合のルールが定められているだけ)。一方、③は選択の余地がなく、電子で受け取ったデータは電子で保存しなければならない点が決定的に違います。多くの会社が「うちは関係ない」と誤解しがちですが、メールにPDFの請求書が届く・ネット通販の領収書をダウンロードする時点で、③の対象です。
3. 義務化された「電子取引データ保存」とは
電子取引とは、注文書・契約書・請求書・領収書などの取引情報を、紙ではなく電子データでやり取りすることをいいます。具体的には次のようなものが該当します。
- 取引先からメールに添付されたPDFの請求書・領収書を受け取った
- ネット通販・ECサイトで購入し、画面やメールから領収書をダウンロードした
- クラウドサービス・電子契約で請求書や契約書を授受した
- クレジットカードやキャッシュレス決済の利用明細をデータで受け取った
これらは、令和6年(2024年)1月以降、データのまま保存することが義務です。以前のように「印刷して紙で保存すればよい」という宥恕措置は終了しました。なお、紙でもらった請求書を任意でスキャン保存するのは②の話で、③とは別物です。電子で受け取ったものは③、紙で受け取ったものは原則紙(または任意で②)と整理すると分かりやすくなります。
4. 電子取引データの保存要件(真実性と可視性)
電子取引データは、ただ保存すればよいわけではなく、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件を満たす必要があります(国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト)。
- 届いたPDF請求書を印刷し、紙だけ保管してデータは捨ててしまう
- データは残しているが、ファイル名がバラバラで日付・金額・取引先で探せない
- 改ざん防止の措置(タイムスタンプ・規程など)を何もとっていない
- データはデータのまま保存し、紙は補助的な控えと割り切る
- ファイル名を「日付_取引先_金額」で統一する、または検索機能のあるシステム・索引簿で探せるようにする
- 改ざん防止として、事務処理規程を定めて運用する(無料でできる最も手軽な方法)
具体的には、真実性の確保は「①タイムスタンプ ②訂正・削除の履歴が残るシステム ③訂正・削除を防止する事務処理規程の整備・運用」のいずれかで満たせます。可視性の確保は「ディスプレイ・プリンタ等の備付け」と「日付・金額・取引先での検索機能」が基本です。中小企業・個人事業主には、コストをかけずに済む事務処理規程+ファイル名統一の組み合わせが現実的です。
5. 検索要件の緩和と「猶予措置」(小規模事業者の救済)
すべての事業者に完璧な検索システムを求めると負担が大きいため、規模や状況に応じた緩和が設けられています。
| 緩和の種類 | 内容 |
|---|---|
| 検索要件の不要 | 基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者、または出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じることを条件に、検索機能の確保が不要(令和5年度改正で1,000万円以下→5,000万円以下に拡大) |
| 猶予措置 | 「相当の理由」があり、税務調査の際にデータのダウンロードと出力書面の提示・提出に応じられる場合は、保存要件を満たさなくてもよい(恒久的な措置) |
注意したいのは、猶予措置でも「データそのものの保存」は必要だということです。猶予されるのは検索機能などの「保存時の要件」であって、データを残さなくてよいという意味ではありません。また「相当の理由」とは、システムやワークフローの整備が間に合わない場合などを指し、単に対応する気がない・面倒だという理由は認められません(国税庁 一問一答)。緩和に甘えず、できるところから整えていくのが安全です。
6. 「優良な電子帳簿」と青色申告特別控除(メリット側)
①の電子帳簿等保存は任意ですが、一定の要件を満たして帳簿を電子保存すると、税務上のメリットを受けられます。これが「優良な電子帳簿」です。
優良な電子帳簿の要件は、次の3つをすべて満たすことです。
- 訂正・削除の履歴が残る(記録の訂正・削除をした事実と内容を確認できる)
- 帳簿間の相互関連性が確保されている
- 日付・金額・取引先などで検索できる
これらを満たし、あらかじめ所轄税務署長に届出書を提出していれば、その帳簿に関して過少申告加算税が5%軽減される措置を受けられます(国税庁)。さらに、青色申告特別控除にも関わります。現行は65万円控除の要件の一つとして優良な電子帳簿の保存(またはe-Tax申告)が位置づけられており、令和8年度税制改正では、令和9年分以後の75万円控除の条件として優良な電子帳簿の保存が求められる方向です。義務である③だけでなく、任意の①を整えることが、節税にもつながります。
——弊社にも、「電子帳簿保存法に対応できているか不安」「結局、何をどこまでやればよいのか」というご相談は実際に数多く寄せられます。一般論として申し上げると、まず義務である電子取引データ保存(③)を、事務処理規程とファイル名のルールで確実に押さえることが先決です。そのうえで、会計ソフトを活用して優良な電子帳簿(①)まで整えると、過少申告加算税の軽減や青色申告特別控除の上乗せといったメリットも取りにいけます。私たちが関与する場面でも、いきなり完璧を目指すのではなく、規模と体制に合わせて段階的に整えることをおすすめしています。
よくある質問(FAQ)
紙でもらった請求書は、これまでどおり紙で保存していいですか?
メールに添付されたPDFの請求書を印刷して保管していますが、データは消してよいですか?
専用のシステムを買わないと対応できませんか?
対応していないと、どうなりますか?
優良な電子帳簿にすると、どんな得がありますか?
8. まとめ
電子帳簿保存法は、「電子でやり取りした取引データは、データのまま正しく保存する」ことを全事業者に求める法律です。要点は次のとおりです。
- 保存区分は①電子帳簿等保存・②スキャナ保存・③電子取引データ保存の3つ。③だけが義務(①②は任意)。
- ③の電子取引データ保存は令和6年(2024年)1月から完全義務化。メール添付のPDFやECの領収書もデータで保存。
- 要件は真実性の確保(タイムスタンプ・履歴・事務処理規程のいずれか)と可視性の確保(検索機能など)。中小は規程+ファイル名統一が現実的。
- 基準期間の売上高5,000万円以下なら検索要件は不要。整備が間に合わない「相当の理由」には猶予措置(ただしデータの保存自体は必要)。
- 任意の①を「優良な電子帳簿」にすると、過少申告加算税5%軽減や青色申告特別控除(65万円→令和9年分以後75万円の方向)のメリット。
「自社の保存方法で大丈夫か」「何から手をつければよいか」「会計ソフトをどう設定すべきか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、電子帳簿保存法への対応から日々の記帳・電子化、青色申告での節税まで、経営者・個人事業主の方に伴走しています。お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
- 国税庁「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021011-060_01.htm
- 国税庁「65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09_2.htm
本記事は、電子帳簿保存法に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。保存要件の充足・猶予措置の適用は個別事情により異なります。制度内容・要件は変更される場合があります。実際の対応にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月18日
電子帳簿保存法・記帳のご相談は KMP へ
電子取引データ保存の体制づくりから、事務処理規程の整備、会計ソフトの選定・設定、優良な電子帳簿での節税、日々の記帳・青色申告まで、経営者・個人事業主の実務に伴走しています。今の保存方法で大丈夫か、何から手をつければよいか不安な方はお気軽にご相談ください。
無料相談はこちら
