不動産売却の譲渡所得税とは?3,000万円特別控除・長期短期の税率・取得費を税理士が解説【2026年版】
- 1. 不動産の譲渡所得税とは(3行サマリー)
- 2. 税率は「所有期間」で決まる――長期20.315%・短期39.63%
- 3. マイホームを売ったときの3,000万円特別控除(措置法第35条)
- 4. 10年超所有のマイホームは「軽減税率」も使える
- 5. 取得費が命――「5%しか引けない」を避ける
- 6. 相続した実家を売るなら「空き家の3,000万円特別控除」
- 7. 失敗と王道――税額はここで決まる
- 8. 実務でどう向き合うか(まとめの視点)
- 10. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 不動産の譲渡所得税とは(3行サマリー)
- 不動産の譲渡所得とは、土地や建物を売って得た利益のことで、給与所得や事業所得とは合算せず単独で税額を計算する分離課税の対象です(国税庁No.1440・No.3202)。利益が出なければ(マイナスなら)原則として所得税・住民税はかかりません。
- 譲渡所得は「売った金額(譲渡収入金額)−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で計算します。ポイントは、売った金額そのものではなく、買ったときの値段(取得費)や売るためにかかった費用(譲渡費用)を差し引いた「利益」に課税される点です。
- 税率は、売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで、長期譲渡所得(20.315%)と短期譲渡所得(39.63%)に分かれます。マイホームや相続した空き家には、税額を大きく下げる特別控除・軽減税率が用意されています。
2. 税率は「所有期間」で決まる――長期20.315%・短期39.63%
不動産の譲渡所得の税率は、売った年の1月1日時点での所有期間で二段階に分かれます(国税庁No.3208・No.3211)。所有期間の起算は取得日、判定は「売った日」ではなく「売った年の1月1日」時点である点が最大の落とし穴です。
| 区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日時点) | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
※復興特別所得税は基準所得税額の2.1%(平成25年〜令和19年)。短期30%×2.1%=0.63%、長期15%×2.1%=0.315%。
同じ利益でも、短期と長期では税率がほぼ2倍違います。たとえば譲渡所得が1,800万円の場合、
- 短期(5年以下):1,800万円 × 39.63% = 713.34万円
- 長期(5年超):1,800万円 × 20.315% = 365.67万円
と、約348万円もの差が出ます。
3. マイホームを売ったときの3,000万円特別控除(措置法第35条)
自分が住んでいる(住んでいた)家屋やその敷地を売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります(租税特別措置法第35条・国税庁No.3302)。所有期間の長短を問わず使えるため、多くのマイホーム売却で税金がゼロになります。
主な適用要件
- 自分が住んでいる家屋を売ること。以前住んでいた家屋の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊した場合は、取り壊し日から1年以内に敷地の売買契約を締結し、かつ住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(取り壊し後、敷地を貸駐車場等の用に供していないこと)。
- 売った年の前年・前々年にこの特例(または居住用財産の譲渡損失の特例)を受けていないこと。
- 売った年・その前年・前々年に、居住用財産の買換え特例・交換特例を受けていないこと。
- 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でないこと。
使えないケース(適用除外)
- この特例の適用を受けることだけを目的として入居した家屋
- 新築期間中などの仮住まいや、一時的な目的で入居した家屋
- 別荘など、趣味・娯楽・保養のために所有する家屋
手続き
税金がゼロになる場合でも、確定申告が必須です。確定申告書に「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」等を添付して提出します。申告しなければ特例は受けられません。
4. 10年超所有のマイホームは「軽減税率」も使える
売った年の1月1日時点で家屋・敷地の所有期間がともに10年を超えるマイホームを売った場合、3,000万円特別控除を引いた後の課税長期譲渡所得金額に、通常の長期(20.315%)より低い軽減税率を適用できます(国税庁No.3305)。この軽減税率は、3,000万円特別控除と重ねて使えます。
| 課税長期譲渡所得金額(3,000万円控除後) | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 0.21% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円を超える部分 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
たとえば、取得費が不明な相続不動産(後述の概算取得費5%を使用)を8,000万円で売却し、譲渡費用300万円、所有10年超・居住用の場合、
- 概算取得費 = 8,000万円 × 5% = 400万円
- 課税譲渡所得 = 8,000万円 −(400万円+300万円)− 3,000万円 = 4,300万円
- 税額 = 4,300万円 × 14.21% = 約611万円
通常の長期税率20.315%なら約873万円ですから、軽減税率で約262万円軽くなります。所有10年超のマイホームは、3,000万円控除+軽減税率の二段構えが基本です。
5. 取得費が命――「5%しか引けない」を避ける
譲渡所得の大きさは、取得費をいくら積めるかでほぼ決まります。取得費とは、売った土地・建物の購入代金や購入時の仲介手数料・登録免許税・不動産取得税などの合計で、建物についてはそこから減価償却費相当額を差し引いた金額です(国税庁No.3252)。
問題は、取得費が分からない場合です。先祖代々の土地や、購入時の契約書・領収書を紛失した古い不動産では、実際の取得費を証明できません。この場合、売った金額の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使います(国税庁No.3258)。
| 取得費の状況 | 取得費として使える金額 |
|---|---|
| 購入時の契約書・領収書がある | 実際の取得費(建物は減価償却費相当額を控除) |
| 取得費が不明・実額が売却額の5%より低い | 売った金額の5%(概算取得費) |
たとえば5,000万円で売った不動産の取得費が不明なら、取得費はわずか250万円(5%)。差引き4,750万円近くが譲渡所得となり、税負担が一気に重くなります。購入時の売買契約書・領収書・当時の通帳の記録などは、売却の何十年も前のものでも捨てずに保管することが、そのまま数百万円単位の節税につながります。
6. 相続した実家を売るなら「空き家の3,000万円特別控除」
相続や遺贈で取得した被相続人(親など)が住んでいた家屋とその敷地を売った場合にも、譲渡所得から最高3,000万円(一定の場合2,000万円)を控除できる特例があります(租税特別措置法第35条第3項・国税庁No.3306)。マイホームの3,000万円控除とは別の、相続した空き家に特化した特例です。
主な要件
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震)で、区分所有建物(マンション等)でないこと。
- 相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所等の一定の場合を含む)。
- 売却時に、家屋を耐震リフォームして売るか、家屋を取り壊して更地で売ること(買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修・取壊しをする場合も対象)。
- 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売却代金(譲渡対価)が1億円以下であること。
- 適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡。
相続人が3人以上なら控除は2,000万円に
令和6年1月1日以後の譲渡では、その空き家を取得した相続人(被相続人の居住用家屋等を取得した相続人)が3人以上いる場合、一人あたりの特別控除額は3,000万円から2,000万円に縮小されます。
| 状況 | 特別控除額(一人あたり) |
|---|---|
| 取得した相続人が2人以下 | 3,000万円 |
| 取得した相続人が3人以上(令和6年1月1日以後の譲渡) | 2,000万円 |
7. 失敗と王道――税額はここで決まる
- 所有期間を「売った日」で数え、1月1日判定を知らずに短期税率(39.63%)で課税される
- 購入時の契約書・領収書を捨ててしまい、概算取得費5%しか引けず税額が跳ね上がる
- マイホームなのに確定申告をせず、3,000万円特別控除を受けられない
- 相続した実家を、相続開始から3年の期限を過ぎて売り、空き家特例を逃す
- 買い替えで、3,000万円控除と住宅ローン控除の併用制限を知らずに損な方を選ぶ
- 売る前に取得日と「翌年1月1日時点の所有期間」を確認し、長期・短期の分かれ目を見極める
- 購入時の売買契約書・領収書・当時の資料を探し出し、取得費を実額で積む
- マイホームは3,000万円特別控除、10年超なら軽減税率まで確認し、必ず確定申告する
- 相続した実家は空き家特例(3年の期限・1億円以下・旧耐震)を早めに検討する
- 売却と購入が重なる買い替えは、特例の併用可否を事前にシミュレーションしてから動く
8. 実務でどう向き合うか(まとめの視点)
- 不動産の譲渡所得は「収入金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」で計算する分離課税(国税庁No.1440・No.3202)。
- 税率は売った年の1月1日時点の所有期間で決まり、長期(5年超)20.315%・短期(5年以下)39.63%(No.3208・No.3211)。
- マイホームは3,000万円特別控除(措置法第35条・No.3302)、所有10年超なら軽減税率(6,000万円以下部分14.21%/No.3305)。両者は併用可。
- 取得費が不明だと概算取得費5%(No.3258)しか引けず税額が急増。購入時の資料は保管が命。
- 相続した実家は空き家の3,000万円特別控除(相続人3人以上は2,000万円/令和9年末まで/No.3306)。3年の期限に注意。
——「自宅を売ったら税金はいくらか」「相続した実家をどう売れば税金が軽いか」というご相談は、弊社でも不動産をお持ちの経営者・富裕層の方から実際によく頂きます。一般論として申し上げると、つまずきやすいのは二点です。ひとつは所有期間の1月1日判定で、あと数か月待てば長期税率になったのに年内に売り急いで短期税率になってしまう、というケースです。もうひとつは取得費で、購入時の契約書が見つからず概算取得費5%で計算せざるを得ず、本来より重い税負担になる場面です。私たちが関与する場面では、売却のタイミングの見極めから、取得費を裏づける資料の掘り起こし、マイホーム・空き家の各特例の適用可否、そして買い替えや相続対策との兼ね合いまで、一体でご支援しています。
よくある質問(FAQ)
不動産を売ったら必ず税金がかかりますか?
所有期間5年の判定は、売った日で数えるのですか?
マイホームの3,000万円特別控除は、所有期間が短くても使えますか?
購入時の契約書をなくしました。取得費はどうなりますか?
相続した実家を売るときの特例はありますか?
10. まとめ
不動産の譲渡所得税は、所有期間・特別控除・取得費という3つの要素で、税額が数百万円単位で変わる分野です。要点は次のとおりです。
- 譲渡所得は「収入金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」で計算する分離課税(国税庁No.1440・No.3202)。
- 税率は売った年の1月1日時点の所有期間で決まる。長期(5年超)20.315%、短期(5年以下)39.63%。
- マイホームは3,000万円特別控除、所有10年超なら軽減税率(6,000万円以下部分14.21%)。両者は併用可。
- 取得費が不明だと概算取得費5%しか引けない。購入時の資料の保管がそのまま節税になる。
- 相続した実家は空き家の3,000万円特別控除(3年の期限・1億円以下・旧耐震・令和9年末まで)。
「自宅や相続した不動産を売ると税金がいくらになるのか」「特例を最大限使って手取りを増やしたい」「売却と相続対策をまとめて考えたい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、譲渡所得の試算から、取得費を裏づける資料の掘り起こし、マイホーム・空き家の各特例の適用判定、売却時期の見極め、そして相続・資産承継との一体設計まで伴走します。不動産の売却をご検討の方は、売買契約を結ぶ前のお早めの段階でご相談ください。
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサー No.1440(譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき))
- 国税庁タックスアンサー No.3202(譲渡所得の計算のしかた(分離課税))
- 国税庁タックスアンサー No.3208(長期譲渡所得の税額の計算)
- 国税庁タックスアンサー No.3211(短期譲渡所得の税額の計算)
- 国税庁タックスアンサー No.3302(マイホームを売ったときの特例)
- 国税庁タックスアンサー No.3305(マイホームを売ったときの軽減税率の特例)
- 国税庁タックスアンサー No.3252(取得費となるもの)/No.3258(取得費が分からないとき)
- 国税庁タックスアンサー No.3306(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
- 租税特別措置法 第35条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)
本記事は、不動産の譲渡所得税に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。特例の適用可否や税額は、取得日・取得費・用途・居住状況などの事実関係により異なり、関係する制度の要件や適用期限は改正により変わることがあります。実際の計算・特例適用・申告の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月5日
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