税務署の処分に納得できないときは?再調査の請求・審査請求・訴訟の期限と通る確率を税理士が解説【令和7年度の実績】

2026年6月、国税庁と国税不服審判所が、令和7年度の不服申立て・訴訟の実績を公表しました。税務調査の結果に納得できないとき、納税者が取れる手段は3つ——再調査の請求・審査請求・訴訟です。今回の公表で目を引くのは、再調査の請求の発生件数が1,713件と前年度より20.3%増えたこと、そのなかでも相続税・贈与税が42件から81件へ、ほぼ倍増していることです。 一方で、納税者の主張が受け入れられた割合(認容割合)は、再調査の請求で8.0%、審査請求で7.2%、訴訟では国側が敗訴した割合が4.0%にとどまります。「争えば通る」という世界ではありません。しかし数字の低さだけを見て「どうせ無駄だ」と諦めるのも早計です。税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「調査官の指摘に納得できないが、どこまで争えるのか」というご相談は実際に寄せられます。本記事では、3つの手続きの期限と流れを正確に押さえたうえで、公表数字をどう読むべきか、そして争う前にやるべきことを、税務調査対応を手がける税理士が解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が公表されたのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:処分に不服があるときの3つのルート
  3. 3. 数字で見る令和7年度
  4. 4. 専門家の視点:この数字をどう読むか
  5. 5. 実務で押さえるべきこと
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が公表されたのか(3行サマリー)

  • 再調査の請求は発生1,713件(前年度比+20.3%)、処理1,448件。納税者の請求が何らかの形で受け入れられた認容割合は8.0%(認容116件=一部認容96件・全部認容20件)
  • 審査請求は発生3,159件(前年度比−10.7%)、処理3,128件。認容割合は7.2%(認容226件=一部認容146件・全部認容80件)。発生件数のうち79.8%が「再調査の請求を経ない直接審査請求」
  • 訴訟は発生202件(前年度比+3.1%)、終結201件。国側が敗訴したのは8件で4.0%(一部敗訴2件・全部敗訴6件)

2. 前提:処分に不服があるときの3つのルート

税務署長等が行った更正・決定などの課税処分や、差押えなどの滞納処分に不服があるとき、納税者には行政上の救済制度(不服申立制度)司法上の救済制度(訴訟)が用意されています。根拠は国税通則法第75条・第77条・第115条および行政事件訴訟法第14条です。

手続き誰に対していつまでに標準的な処理期間
再調査の請求処分を行った税務署長等処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内標準審理期間3か月
審査請求(再調査の請求を経ない場合)国税不服審判所長処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内標準審理期間1年
審査請求(再調査の請求を経る場合)国税不服審判所長再調査決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内標準審理期間1年
訴訟裁判所裁決があったことを知った日(裁決書謄本の送達を受けた日)の翌日から6か月以内

(出典:国税庁 タックスアンサーNo.7200「税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続」国税不服審判所「不服申立手続等」

ここで押さえるべき最大のポイントは、再調査の請求は「必須の前置き」ではないということです。納税者の選択により、再調査の請求を経ずに、いきなり国税不服審判所長に審査請求をすることができます。実際、令和7年度の審査請求3,159件のうち79.8%が直接審査請求で、多くの納税者が「処分をした税務署にもう一度見てもらう」ステップを飛ばして、第三者機関である審判所に持ち込んでいます。

💡 不服申立てで不利益になることはない … 国税庁は、再調査の請求に係る決定によって納税者に不利益となるような変更がされることはない、また裁決によって納税者に不利益となるような変更がされることはない、と明示しています(国税庁パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)「税務署長の処分に不服があるとき」)。つまり、争ったことで税額がさらに増える(不利益変更)ことはない制度設計です。また、審査請求に手数料はかかりません(証拠書類等の写しを請求する場合に原則1枚10円)。

なお、期限には救済の余地もあります。再調査の請求から3か月を経過しても決定がない場合は、決定を待たずに審査請求ができ、審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合は、裁決を経ないで訴訟を起こすことができます。災害等の理由で期限までにできないときは期限が延長されます。

3. 数字で見る令和7年度

再調査の請求:件数は2割増、相続税・贈与税はほぼ倍増

令和7年度の再調査の請求の発生件数は1,713件で、前年度(1,424件)から20.3%増加しました。税目別に見ると、増加は特定の税目に偏っています。

税目令和6年度令和7年度前年度比
申告所得税等473件636件134.5%
源泉所得税等51件108件211.8%
法人税等205件342件166.8%
相続税・贈与税42件81件192.9%
消費税等559件457件81.8%
その他0件3件
課税関係 計1,330件1,627件122.3%
徴収関係94件86件91.5%
合計1,424件1,713件120.3%

(出典:国税庁「令和7年度における再調査の請求の概要」令和8年6月。「申告所得税等」は申告所得税及び復興特別所得税、「源泉所得税等」は源泉所得税及び復興特別所得税、「法人税等」は法人税・復興特別法人税及び地方法人税、「消費税等」は消費税及び地方消費税の件数)

相続税・贈与税が42件→81件(192.9%)源泉所得税等が51件→108件(211.8%)法人税等が205件→342件(166.8%)と、いずれも大きく伸びています。唯一減ったのが消費税等(559件→457件)です。件数の水準そのものは相続税・贈与税が最も小さいものの、前年の約2倍というペースは無視できません

処理の内訳は次のとおりです。

区分件数構成比
取下げ等263件18.2%
却下136件9.4%
棄却933件64.4%
認容(合計)116件8.0%
うち一部認容96件
うち全部認容20件
処理件数 計1,448件100.0%

処理のスピードは非常に速く、3か月以内の処理件数割合は99.8%です(相互協議事案、公訴関連事案及び国際課税事案のほか、災害等による調査の中断や納税者の都合によって3か月以内に処理できなかった事案を除いて算出)。

審査請求:件数は1割減、認容割合は7.2%

審査請求の発生件数は3,159件で、前年度(3,537件)から10.7%減少しました。

税目令和6年度令和7年度
申告所得税等940件841件
源泉所得税等62件77件
法人税等660件611件
相続税・贈与税133件133件
消費税等1,483件1,346件
その他8件15件
課税関係 計3,286件3,023件
徴収関係251件136件
合計3,537件3,159件

(出典:国税不服審判所「令和7年度における審査請求の概要」令和8年6月

処理の内訳は次のとおりです。

区分件数構成比
取下げ348件11.1%
却下379件12.1%
棄却2,175件69.5%
認容(合計)226件7.2%
うち一部認容146件4.7%
うち全部認容80件2.6%
処理件数 計3,128件100.0%

1年以内の処理件数割合は98.8%です(相互協議事案や公訴関連事案など審理を留保すべき事由が生じた事案の留保期間のほか、災害等又は審査請求人の都合によって調査・審理が中断等した期間を除いて算出)。

訴訟:国側敗訴は4.0%

訴訟の発生件数は202件で、前年度(196件)から3.1%増加しました。

区分令和6年度令和7年度前年度比
所得税67件61件91.0%
法人税37件49件132.4%
相続税・贈与税29件23件79.3%
消費税25件31件124.0%
その他8件15件187.5%
課税関係 計166件179件107.8%
徴収関係22件20件90.9%
審判所関係8件3件37.5%
合計196件202件103.1%

終結状況は次のとおりです。

区分件数構成比
取下げ等9件4.5%
却下15件7.5%
棄却169件84.1%
国側敗訴(合計)8件4.0%
うち一部敗訴2件1.0%
うち全部敗訴6件3.0%
終結件数 計201件100.0%

(出典:国税庁「令和7年度における訴訟の概要」令和8年6月。期首係属217件、期末係属218件)

4. 専門家の視点:この数字をどう読むか

数字を並べると「認容8.0%・7.2%、国側敗訴4.0%」という低い割合ばかりが目に入ります。ここを誤解される方がとても多いのですが、実務家の立場から申し上げると、この数字の読み方には4つの注意点があります。

第一に、母数が「争うところまで進んだ事案」であること。税務調査で指摘を受けた事案の大半は、その場での説明や資料提出、あるいは修正申告で決着します。不服申立てに至るのは、双方が譲らなかった、争点が固い事案だけです。もともと難易度の高い母集団のなかでの8.0%・7.2%である、という前提を外してはいけません。

第二に、「一部認容」の重み。再調査の請求の認容116件のうち96件、審査請求の認容226件のうち146件は一部認容です。全部が覆るケースは少なくても、争点のうち一部が認められて税額が減るという決着は相応にあります。実務上、争う目的は「全面勝訴」だけではありません。

第三に、取下げ・却下の多さ。審査請求では取下げ348件(11.1%)と却下379件(12.1%)を合わせて全体の約4分の1を占めます。却下は「中身を審理してもらえずに終わった」もので、その典型が期限切れです。3か月・1か月・6か月という期限は、それ自体が入口の関門になっています。

第四に、時間軸。標準審理期間は再調査の請求が3か月、審査請求が1年、そこから訴訟となればさらに年単位です。争うことは、時間と労力というコストを支払うことでもあります。

💡 国税不服審判所は「第三者」である … 国税不服審判所は、審査請求人(納税者)と賦課徴収を行う税務署や国税局との間に立ち、公正な第三者的立場で裁決を行う機関です。処分をした税務署自身が見直す再調査の請求とは、この点で性格が異なります。令和7年度に直接審査請求が79.8%を占めたのは、この「第三者性」を選ぶ納税者が多数派になっていることを示しています。また、審判所は公表裁決事例を公開しており、同種の争点でどのような判断がされてきたかを事前に確認できます。

そして、相続税・贈与税の再調査の請求が42件→81件とほぼ倍増した点は、富裕層・資産家の方にとって見逃せない変化です。相続税の税務調査では、名義預金・海外資産・不動産の評価といった、事実認定と評価が争点になりやすい論点が正面から問われます。評価の問題は「正解が一つに定まらない」性質を持つため、当局と納税者の見解が割れやすく、争いに発展しやすい領域です。

5. 実務で押さえるべきこと

❌ つまずきがちな失敗
  • 期限を落とす。処分の通知を受けた日の翌日から3か月、再調査決定後の審査請求は1か月、訴訟は裁決を知った日の翌日から6か月。却下は「中身を見てもらえずに終わる」最ももったいない結末
  • 調査の現場で「言った・言わない」の水掛け論にする。その場でメモを残さず、指摘の根拠条文も確認しないまま、後から争おうとする
  • 「不服申立てをすると心証が悪くなり、さらに追徴される」と思い込んで泣き寝入りする。制度上、不服申立てによって不利益な変更がされることはない
  • 逆に、勝ち目や実益を検討せずに反射的に争う。標準審理期間は再調査の請求で3か月、審査請求で1年。時間と労力のコストを計算に入れていない
  • 修正申告に安易に応じてしまう。修正申告は自ら申告内容を是正する行為であり、その部分についてはその後の不服申立ての道が事実上閉ざされます。納得できないなら、更正処分を受けたうえで争うという選択肢もある
⭕ これから取るべき王道
  • 調査の段階で決着させるのが最良。争点になりそうな論点は、その場で根拠となる条文・通達を示して説明し、裏付けとなる資料を出す。不服申立ては最後の手段
  • 調査官の指摘は、指摘内容・根拠・日付をその都度記録する。後で争うことになったとき、この記録が資料になる
  • 通知を受けたら、まず期限を逆算してカレンダーに入れる。判断に迷っている間に3か月は過ぎる
  • 再調査の請求を経るか、直接審査請求にするかを意識的に選ぶ。処分庁の判断が変わる見込みが薄い論点であれば、第三者機関である審判所に直接持ち込む選択が現実的
  • 同種の争点について、審判所の公表裁決事例や裁判例を確認し、勝ち筋・負け筋を見極めてから動く
  • 「争うか、受け入れるか」は税額だけでなく、時間・労力・その後の関係を含めて判断する。税理士と一緒に費用対効果を見積もる
💬 実務の現場から
弊社にも、「調査官の指摘にどうしても納得できない」「修正申告に応じるべきか、争うべきか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、実際に不服申立てまで進むケースは多くありません。多くは、指摘の根拠となる条文・通達を確認し、事実関係を裏づける資料を丁寧に揃えて説明し直すことで、調査の段階で決着するからです。私たちが関与する場面でも、最初につまずきやすいのは「何が争点で、当局は何を根拠にしているのか」が整理されていないことです。争うかどうかを決めるのは、その整理が終わってからで遅くありません。ただし、期限だけは待ってくれませんので、通知を受け取った時点でご相談いただくのが安全です。

6. まとめ

令和7年度の実績は、再調査の請求1,713件(前年度比+20.3%)・認容割合8.0%審査請求3,159件(同−10.7%)・認容割合7.2%訴訟202件・国側敗訴割合4.0%でした。とくに相続税・贈与税の再調査の請求が42件から81件へほぼ倍増したことは、評価や事実認定をめぐる争いが増えていることを示しています。

押さえるべきは3点です。①期限(3か月・1か月・6か月)を絶対に落とさないこと。②再調査の請求は必須ではなく、第三者機関である国税不服審判所への直接審査請求を選べること(令和7年度は79.8%がこの選択)。③不服申立てによって不利益な変更がされることはないが、時間と労力のコストはかかるため、勝ち筋を見極めてから動くこと。

そして最も大切なのは、争わなくて済むように、調査の段階で根拠と資料をもって説明しきることです。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、日々の記帳・申告から税務調査の立会い、指摘への対応方針の設計まで、経営者・オーナーが「数字と根拠を堂々と説明できる状態」を作るご支援をしています。調査の通知が届いた方、指摘に納得できずお悩みの方は、期限が動き出す前のお早めの段階でご相談ください。

よくある質問(FAQ)

税務署の処分に不服があるとき、いつまでに手続きをすればよいですか?

再調査の請求は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内、審査請求も再調査の請求を経ない場合は同じく3か月以内です。再調査の請求を経てから審査請求をする場合は、再調査決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内。訴訟は、裁決があったことを知った日(裁決書謄本の送達を受けた日)の翌日から6か月以内です(国税通則法第75条・第77条・第115条、行政事件訴訟法第14条/国税庁No.7200)。

再調査の請求をせずに、いきなり審査請求できますか?

できます。不服申立ては、国税不服審判所長に対する「審査請求」か、処分を行った税務署長等に対する「再調査の請求」のいずれかを納税者が選択して行うことができます。令和7年度の審査請求3,159件のうち、再調査の請求を経ない直接審査請求は79.8%を占めています。

納税者の主張が認められる確率はどのくらいですか?

令和7年度の実績では、再調査の請求の認容割合が8.0%(認容116件=一部認容96件・全部認容20件/処理1,448件)、審査請求の認容割合が7.2%(認容226件=一部認容146件・全部認容80件/処理3,128件)、訴訟の国側敗訴割合が4.0%(8件/終結201件)です。ただし母数は「調査の段階で決着しなかった争点の固い事案」であり、認容の多くは一部認容である点に注意が必要です。

不服申立てをすると、かえって税額が増えることはありませんか?

ありません。国税庁は、再調査の請求に係る決定によって納税者に不利益となるような変更がされることはなく、裁決によっても納税者に不利益となるような変更がされることはない、と明示しています。また、審査請求に手数料はかかりません(証拠書類等の写しの交付を請求する場合は原則1枚につき10円)。

手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?

標準審理期間は、再調査の請求が3か月、審査請求が1年と定められています。令和7年度の実績では、再調査の請求の3か月以内処理件数割合は99.8%、審査請求の1年以内処理件数割合は98.8%でした。なお、再調査の請求から3か月を経過しても決定がない場合は決定を待たずに審査請求ができ、審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合は裁決を経ないで訴訟を提起できます。

修正申告に応じてしまうと、あとから争えなくなりますか?

修正申告は、納税者が自ら申告内容を是正する行為です。そのため、修正申告をした部分について、その後に不服申立てで争うことは事実上できなくなります。指摘に納得できない論点がある場合は、修正申告に応じるべきか、更正処分を受けたうえで不服申立ての道を残すべきかを、事前に税理士と検討することが重要です。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、国税庁及び国税不服審判所の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。記載の数値は「令和7年度における再調査の請求の概要」「令和7年度における審査請求の概要」「令和7年度における訴訟の概要」(いずれも令和8年6月公表)の公表値です。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月27日

税務調査・更正処分への対応は KMP へ

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から富裕層・オーナー経営者の資産防衛・国際税務・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。