扶養の壁とは?103万・106万・130万・150万・160万の壁を税理士が解説【2026年・令和7年改正対応】
- 1. 扶養の壁とは何か(3行サマリー)
- 2. 【全体像】扶養の壁を一枚に(令和7年分以後)
- 3. 【税金の壁①】令和7年改正で「103万円」は「123万円」と「160万円」に分かれた
- 4. 【税金の壁②】150万・160万・188万・201.6万──配偶者と大学生の「特別控除」
- 5. 【社会保険の壁】106万円・130万円──ここが本当の「逆転」ポイント
- 6. 「働き控え」で損をしないための考え方
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 扶養の壁とは何か(3行サマリー)
- 扶養の壁とは、パートやアルバイトの年収が一定額を超えると、税金や社会保険の負担が発生し、世帯全体の手取りが変わる境目のことです。壁は大きく「税金の壁」と「社会保険の壁」の2種類に分かれ、両者はまったく別の制度です。
- 税金の壁は、①働く本人に所得税・住民税がかかり始めるライン、②配偶者や親(扶養する人)が配偶者控除・扶養控除などを受けられるかのラインの2つの意味があります。令和7年度改正で、これらのラインが引き上げられました。
- 社会保険の壁(106万円・130万円)は、パート本人が自分で健康保険・厚生年金に加入する義務が生じるラインで、超えると社会保険料の負担が発生します。税金の壁とは金額も仕組みも別なので、混同すると判断を誤ります。
2. 【全体像】扶養の壁を一枚に(令和7年分以後)
まず全体像です。それぞれの壁が「誰にとっての、何の壁か」を一覧にしました。金額は原則として給与収入(額面)ベースです。
| 年収の目安 | 壁の種類 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 106万円 | 社会保険 | 一定要件(週20時間以上・従業員数など)を満たすパートが、勤務先で健康保険・厚生年金に加入する義務が生じる |
| 123万円 | 税金 | この額(合計所得58万円)を超えると、配偶者や親の「配偶者控除」「扶養控除」の対象から外れる(旧「103万円の壁」) |
| 130万円 | 社会保険 | 配偶者などの健康保険の「被扶養者」から外れ、自分で国民健康保険・国民年金または勤務先の社会保険に加入する |
| 150万円 | 税金 | 大学生年代(19〜22歳)の子は、ここまでは親が「特定親族特別控除」で満額63万円を受けられる/配偶者は「配偶者特別控除」が満額38万円のまま |
| 160万円 | 税金 | 働く本人に所得税がかかり始めるライン(旧「103万円の壁」が改正で実質的に上昇)/配偶者特別控除が満額38万円である上限 |
| 188万円 | 税金 | 大学生年代(19〜22歳)の子について、親が「特定親族特別控除」を受けられる上限 |
| 201.6万円 | 税金 | 配偶者について、配偶者特別控除が受けられる上限(これを超えると控除ゼロ) |
以下、税金の壁と社会保険の壁に分けて、一つずつ正確に見ていきます。
3. 【税金の壁①】令和7年改正で「103万円」は「123万円」と「160万円」に分かれた
これまで「103万円の壁」と一言で呼ばれていたものは、令和7年度税制改正で、実は2つの別々のラインに分かれました。この分離を理解することが、新しい扶養の壁を正しく読む最大のポイントです。
改正の中身は、国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」のとおり、給与所得控除の最低保障額と基礎控除の引き上げです。
| 控除 | 改正前 | 改正後(令和7年分以後) |
|---|---|---|
| 給与所得控除の最低保障額 | 55万円 | 65万円 |
| 基礎控除(合計所得132万円以下の場合) | 48万円 | 95万円(令和7・8年分の特例上乗せ後) |
この2つが動いた結果、「103万円」が持っていた2つの意味は、次のように分かれます。
① 123万円の壁 = 扶養に入れるかどうかの境目
配偶者控除や扶養控除の対象になれるかどうかを判定する「合計所得金額の要件」が、これまでの48万円以下から58万円以下に引き上げられました。給与収入に換算すると、給与所得控除65万円を足して123万円以下です(58万円+65万円=123万円)。
つまり、パートの妻や、アルバイトをする高校生・大学生の子の年収が123万円以下なら、これまでどおり配偶者や親の配偶者控除・扶養控除の対象でいられます。旧「103万円の壁」が「123万円の壁」に移ったと考えてください。
② 160万円の壁 = 働く本人に所得税がかかり始めるライン
一方、パート・アルバイトをする本人自身に所得税がかかり始めるラインは、給与所得控除65万円と基礎控除95万円(合計所得132万円以下の場合)を足した160万円まで上がりました。年収160万円までは、働く本人の所得税は原則としてかかりません。これが新しい「160万円の壁」です。
4. 【税金の壁②】150万・160万・188万・201.6万──配偶者と大学生の「特別控除」
「扶養から外れる123万円を超えたら、もう控除は一切ないの?」——そうではありません。ここが働き控えで損をしないための肝です。123万円を超えても、控除は段階的に残る仕組みが用意されています。配偶者と、大学生年代の子とで制度が分かれます。
配偶者の場合:配偶者特別控除(150万・160万・201.6万)
配偶者の年収が123万円を超えても、配偶者特別控除(所得税法第83条の2・国税庁No.1195)によって、扶養する側は控除を受けられます。控除を受ける本人の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者の合計所得金額に応じた控除額は次のとおりです。
| 配偶者の合計所得金額 | 給与収入の目安 | 控除額 |
|---|---|---|
| 58万円超 95万円以下 | 123万円超 160万円以下 | 38万円(満額) |
| 95万円超 100万円以下 | 160万円超 約165万円以下 | 36万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 約165万円超 約170万円以下 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 約170万円超 約175万円以下 | 26万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 約175万円超 約180万円以下 | 21万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 約180万円超 約185万円以下 | 16万円 |
| 120万円超 125万円以下 | 約185万円超 約190万円以下 | 11万円 |
| 125万円超 130万円以下 | 約190万円超 約195万円以下 | 6万円 |
| 130万円超 133万円以下 | 約195万円超 201.6万円以下 | 3万円 |
ポイントは、配偶者の年収が160万円まで(合計所得95万円まで)は控除が満額38万円で変わらないこと。旧制度では満額の上限が「150万円」でしたが、改正で160万円に上がりました。そして年収201.6万円(合計所得133万円)を超えると配偶者特別控除はゼロになります。
大学生年代の子の場合:特定親族特別控除(150万・188万)
令和7年改正で新設されたのが「特定親族特別控除」(国税庁No.1177)です。これは、19歳以上23歳未満(大学生年代)の子などの年収が123万円を超えても、親が段階的に控除を受けられる制度です。子の合計所得金額に応じた控除額は次のとおりで、この控除に親(本人)側の所得制限はありません。
| 子(特定親族)の合計所得金額 | 給与収入の目安 | 控除額 |
|---|---|---|
| 58万円超 85万円以下 | 123万円超 150万円以下 | 63万円(満額) |
| 85万円超 90万円以下 | 150万円超 155万円以下 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 155万円超 160万円以下 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 160万円超 165万円以下 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 165万円超 170万円以下 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 170万円超 175万円以下 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 175万円超 180万円以下 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 180万円超 185万円以下 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 185万円超 188万円以下 | 3万円 |
子の年収が123万円以下なら、親は従来どおり特定扶養控除63万円(No.1180)を受けます。123万円を超えても、150万円までは特定親族特別控除で満額63万円が維持され、そこから段階的に減って、年収188万円を超えると控除はゼロになります。つまり大学生の子は、年収188万円まで、親が何らかの控除を受けられるようになりました。これが大学生年代の「150万円の壁」「188万円の壁」です。
5. 【社会保険の壁】106万円・130万円──ここが本当の「逆転」ポイント
税金の壁と並んで、いえ、それ以上に手取りに効くのが社会保険の壁です。こちらは超えた瞬間に保険料負担が発生するため、注意が必要です。
106万円の壁(勤務先で社会保険に加入する義務)
パート・アルバイトでも、次の要件をすべて満たすと、勤務先の健康保険・厚生年金に加入する義務が生じます(短時間労働者への適用拡大)。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金月額が8.8万円以上(年収に換算すると約106万円)
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生でない
- 勤務先の従業員数が51人以上(令和6年10月時点の要件)
これが「106万円の壁」です。加入すると給与から健康保険料・厚生年金保険料が天引きされるため、一時的に手取りが減ります。
130万円の壁(配偶者などの被扶養者から外れる)
勤務先で社会保険に加入しない働き方でも、年収が130万円以上(60歳以上または障害者は180万円以上)になると、配偶者などが加入する健康保険の被扶養者から外れ、自分で国民健康保険・国民年金(または勤務先の社会保険)に加入して保険料を負担することになります。これが「130万円の壁」で、税金の扶養(123万円)とは別の基準です。
6. 「働き控え」で損をしないための考え方
扶養の壁は「超えたら損」と単純化されがちですが、正しくは壁ごとに性質が違います。失敗しやすいパターンと、王道の考え方を整理します。
- 情報が古いまま「103万円まで」で年収を抑え、働けるのに働いていない(今は税金の扶養は123万円、本人の所得税は160万円まで非課税)
- 「税金の壁」と「社会保険の壁」を混同し、106万・130万を気にすべき場面で123万に抑えてしまう
- 配偶者特別控除・特定親族特別控除の存在を知らず、「123万円を1円でも超えたら控除ゼロ」と誤解している
- 社会保険に加入すると損だと思い込み、将来の年金増額・傷病手当金・出産手当金などのメリットを無視している
- まず「税金の壁」と「社会保険の壁」を分けて考える。手取りが一時的に逆転しやすいのは社会保険の壁(106万・130万)
- 税金の壁は超えても控除がなだらかに減るだけ。世帯全体の手取りは、多くの場合むしろ増えるので、過度な働き控えは避ける
- 社会保険に加入する場合は、目先の保険料だけでなく、将来の年金の増加・各種給付という「戻ってくる価値」も含めて判断する
- 会社側は、パート従業員の働き方と自社の社会保険適用の要件(従業員数・改正の施行時期)をあらかじめ確認し、シフトや賃金を設計する
よくある質問(FAQ)
結局、パートの妻は年収いくらまでに抑えるべきですか?
「103万円の壁」はなくなったのですか?
大学生の子がアルバイトを頑張ると、親の税金が増えますか?
社会保険の106万円・130万円を超えると、手取りは減りますか?
「160万円の壁」とは何の壁ですか?
8. まとめ
扶養の壁は、令和7年度税制改正で大きく動きました。要点は次のとおりです。
- 扶養の壁には「税金の壁」と「社会保険の壁」があり、金額も仕組みも別物。混同しないことが第一歩。
- 税金の壁:旧「103万円」は、扶養に入れる境目=123万円と、本人に所得税がかかり始める=160万円の2つに分かれた(給与所得控除65万円・基礎控除95万円への引き上げ)。
- 123万円を超えても、配偶者は配偶者特別控除(満額は160万円まで・201.6万円で消滅)、19〜22歳の子は新設の特定親族特別控除(満額は150万円まで・188万円で消滅)で控除が段階的に残る。
- 社会保険の壁:106万円(勤務先で加入・要件あり)と130万円(被扶養者から外れる)。手取りの逆転が起きやすいのはこちら。106万円の壁は年金制度改正法で見直しが進む(賃金要件撤廃は2026年10月施行見込み)。
- 「壁を超えたら損」ではなく、「どの壁を、どう超えるのが世帯にとって得か」で考える。
「わが家はどの働き方が一番得なのか」「パート従業員の社会保険適用にどう備えればよいか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、ご家庭の所得税・住民税・社会保険を通算したシミュレーションから、経営者側の給与設計・年末調整の実務まで、一体でご支援しています。お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1191(配偶者控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1195(配偶者特別控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1177(特定親族特別控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1177.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1180(扶養控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1410(給与所得控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
- 厚生労働省「年収の壁への対応」 https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html
本記事は、いわゆる扶養の壁に関する一般的な情報提供であり、個別の税務・社会保険の判断に代わるものではありません。控除額・要件・非課税限度額等は、合計所得金額や自治体・加入している健康保険により異なり、また改正により変わることがあります。特に社会保険(106万円)の見直しは施行時期・詳細が今後の政省令で確定します。実際の働き方・申告の判断にあたっては、税理士・社会保険労務士等の専門家、勤務先、加入している健康保険にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月6日
扶養の働き方・給与設計と年末調整のご相談は KMP へ
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、ご家庭の所得税・住民税・社会保険を通算したシミュレーションから、経営者側のパート従業員の社会保険適用への備え、給与設計・年末調整の実務まで一体でご支援します。わが家はどの働き方が得か、パートの社会保険にどう備えるか知りたい方は、お早めにご相談ください。
無料相談はこちら
