外国税額控除とは?控除限度額の計算・3年繰越・法人と個人の違いを税理士が解説【2026年版】

「米国株の配当から、現地で10%引かれたうえに日本でも課税された」「海外子会社からのロイヤリティに源泉税が引かれたが、日本の法人税から引けるのか」「海外赴任中の給与に、現地でも日本でも税金がかかっている」——海外に資産や事業を持つ方から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、国際的な二重課税についてのご相談が実際に寄せられます。 同じ所得に、稼いだ国(源泉地国)と住んでいる国(居住地国)の両方から課税される。これを調整する仕組みが外国税額控除です。ただし、この制度は「外国で払った税金が全額そのまま戻ってくる」ものではありません。控除限度額という上限があり、その計算を理解していないと、払ったのに引けない税金が生まれます。 本記事では、外国税額控除の基本構造から、個人(居住者)と法人それぞれの控除限度額の計算、3年間の繰越、外国子会社配当との使い分け、必要な添付書類まで、国税庁の一次資料にもとづいて解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 外国税額控除とは(3行サマリー)
  2. 2. 前提:国際的な二重課税はなぜ起きるのか
  3. 3. 個人(居住者)の外国税額控除
  4. 4. 法人の外国税額控除
  5. 5. 外国子会社からの配当は「控除」ではなく「益金不算入」
  6. 6. 実務で押さえるべきこと
  7. 7. よくある失敗と王道
  8. 8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 外国税額控除とは(3行サマリー)

  • 外国税額控除とは、外国の法令により所得税・法人税に相当する租税を納付することとなる場合に、その外国の税額を日本の所得税額・法人税額から差し引くことができる制度です(所得税法第95条、法人税法第69条)。
  • 目的は国際的な二重課税の排除です。日本は居住者・内国法人に対して全世界所得課税を行うため、外国で課税された所得にも日本の税がかかり、調整しなければ同じ所得に二重に課税されてしまいます。
  • ただし控除できるのは控除限度額までです。控除限度額は「日本の税額 × 国外所得 ÷ 全体の所得」で計算され、外国の税率が日本より高い部分は、その年には引ききれません
💡 外国税額控除は「税額」から直接差し引く税額控除です。所得から差し引く所得控除ではないため、控除できる金額がそのまま税負担の減少になります。だからこそ、控除限度額という上限が設けられています。

2. 前提:国際的な二重課税はなぜ起きるのか

国際課税では、ひとつの所得に対して2つの課税権が重なります。

課税権課税する国課税の範囲
居住地国課税納税者が住んでいる国(日本)その人・その法人の全世界の所得に課税する
源泉地国課税所得が生じた国(外国)その国で生じた所得(配当・利子・使用料・事業所得など)に課税する

日本は、居住者(国内に住所があるか、現在まで引き続いて1年以上居所がある個人)と内国法人に対して全世界所得課税を行います。したがって、外国で稼いで外国で課税された所得にも、改めて日本の税がかかります。この重複を放置すると、同じ所得に2回課税されることになります。

これを調整する方法は、日本の税制上おもに次の3つです。混同されやすいので、まず全体像を押さえてください。

方法内容主な適用場面
① 外国税額控除外国で納めた税額を、日本の税額から差し引く個人の国外所得全般、法人の国外支店所得・受取利子・使用料など
② 損金算入(必要経費算入)方式外国で納めた税額を、税額控除せずに費用として所得から差し引く控除限度額が出ない(赤字など)年に選択されることがある
③ 外国子会社配当等の益金不算入一定の外国子会社から受ける配当は、そもそも日本で課税しない(後述)内国法人が25%以上を6か月以上保有する外国子会社からの配当
💡 ③は「二重課税を控除で調整する」のではなく、「そもそも日本で課税しない」ことで重複を避ける仕組みです。外国子会社からの配当は外国税額控除の対象外となるのが原則で、この違いを取り違えると申告を誤ります。

3. 個人(居住者)の外国税額控除

控除限度額の計算

居住者が外国所得税を納付することとなる場合、次の算式で計算した所得税の控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます。

所得税の控除限度額 = その年分の所得税額 × (その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)

外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合には、さらに次の算式で計算した復興特別所得税の控除限度額を限度として、その超える金額を復興特別所得税額から差し引くことができます。

復興特別所得税の控除限度額 = その年分の復興特別所得税額 × (その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)

(出典:国税庁タックスアンサーNo.1240「居住者に係る外国税額控除」 ※令和7年4月1日現在法令等)

用語の意味は次のとおりです。

用語内容
その年分の所得税額配当控除、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除、所得税に係る分配時調整外国税相当額控除などの税額控除(令和6年分特別税額控除は除く)、災害減免額を適用したの所得税額
その年分の所得総額純損失・雑損失の繰越控除や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除などの適用の、総所得金額、分離長(短)期譲渡所得の金額(特別控除前)、一般株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る譲渡所得等の金額、申告分離課税の上場株式等に係る配当所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額および山林所得金額の合計額
その年分の調整国外所得金額上記の各種繰越控除の適用の国外所得金額。ただし、国外所得金額がその年分の所得総額を超える場合は、所得総額に相当する金額が上限
💡 ここが実務の要点です。分母が「所得総額」、分子が「調整国外所得金額」であるため、国外所得の割合が小さいほど控除限度額は小さくなります。国内所得が大半を占める方が海外配当を受け取った場合、外国で引かれた税額の全部を控除しきれないことが起こります。「取られた分は全部戻る」ではありません。

地方税にも控除枠がある

外国所得税額が所得税・復興特別所得税の控除限度額を超えた場合、住民税にも控除の枠があります。国税庁は、地方税の控除限度額を「その年の所得税の控除限度額に30パーセントを乗じた金額」としています(国税庁タックスアンサーNo.1240)。所得税→復興特別所得税→住民税の順に枠を使っていくイメージです。

対象になる外国所得税・ならないもの

「外国で払った税金なら何でも対象」ではありません。外国所得税とは、外国の法令に基づき外国またはその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税をいい、次のものを含みます。

  1. 超過所得税その他個人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
  2. 個人の所得またはその特定の部分を課税標準として課される税の附加税
  3. 個人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、個人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
  4. 個人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、個人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

一方、次のものは外国所得税に含まれません(=控除の対象外)。

  1. 税を納付する人が、その税の納付後、任意にその金額の全部または一部の還付を請求することができる税
  2. 税を納付する人が、税の納付が猶予される期間を任意に定めることができる税

(出典:国税庁タックスアンサーNo.1240

さらに、外国所得税に該当しても控除の対象とならないものが定められています。実務で重要なのは次の2つです。

  • 租税条約の限度税率を超える部分。日本が租税条約を締結している相手国等で課される外国所得税額のうち、その租税条約の規定(軽減・免除に関する規定)によりその相手国等において課することができることとされる額を超える部分、または免除することとされる額に相当する金額は、控除の対象になりません。
  • 居住者がその年以前の年において非居住者であった期間内に生じた所得に対して課される外国所得税額。
💬 実務の現場から
「現地で条約より高い税率で源泉徴収されてしまったが、日本で外国税額控除すれば取り返せますか」というご相談は、実際によくお寄せいただきます。守秘義務がありますので詳細は控えますが、一般論として申し上げると、答えは「取り返せません」です。条約の限度税率を超えて課された部分は日本の外国税額控除の対象外とされているため、取り戻すべき相手は日本の税務署ではなく、相手国の税務当局になります。多くの国では、支払前に租税条約に関する届出書等を提出しておかないと条約の限度税率が適用されません。支払を受ける前の手続きこそが節税で、事後の申告では回復できない——ここを取り違えている例が非常に多い論点です。

引ききれなかったときは3年繰り越せる

控除限度額を超えて外国所得税を納めた年があっても、その差は3年間の枠のなかで調整できます。

状況取扱い
外国所得税額が控除限度額を超える場合その年の所得税・復興特別所得税の控除限度額と地方税の控除限度額の合計を超えるとき、前年以前3年内の各年の所得税の控除限度額のうち繰り越される部分(繰越控除限度額)を限度として、超える部分を控除できる
外国所得税額が控除限度額に満たない場合前年以前3年内の各年に納付することとなった外国所得税額のうち繰り越される部分(繰越外国所得税額)を、その年の控除限度額の残枠を限度として控除できる

(出典:国税庁タックスアンサーNo.1240

前者は「枠が余った年の枠を、足りない年に持ってくる」仕組み(控除余裕額の繰越)、後者は「引ききれなかった税額を、枠が余っている年に持ってくる」仕組み(控除限度超過額の繰越)です。どちらも3年内の各年について申告書等を提出し、「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」を添付していることが前提になります。「今年は引けないから申告書に書かない」としてしまうと、翌年以降に繰り越せません。

手続き——添付書類がなければ控除できない

居住者に係る外国税額控除の適用を受けるには、確定申告書・修正申告書・更正請求書に次の書類を添付する必要があります。控除される金額は、一定の場合を除き、(1)の明細書に記載された金額が限度になります。

  1. 「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」
  2. 外国所得税額を課されたことを証する書類
  3. 外国の法令により課される税の名称および金額、その税を納付することとなった日およびその納付の日または納付予定日、その税を課する外国またはその地方公共団体の名称、ならびにその税が外国税額控除の対象となる外国所得税に該当することについての説明を記載した書類
  4. 外国所得税が減額され、減額された場合の規定の適用があるときは、その減額された金額・減額されることとなった日・その外国所得税額が減額に係る年の前年以前の各年において控除されるべき金額の計算の基礎となったことについての説明を記載した書類
  5. 上記3の税を課されたことを証するその税に係る申告書の写しまたはこれに代わるべき書類、および納付済みの場合はその納付を証する書類(納税証明書、更正決定に係る通知書、賦課決定通知書、納税告知書、源泉徴収票などを含む)
  6. 国外源泉所得の金額の計算に関する明細を記載した書類

(出典:国税庁タックスアンサーNo.1240

💡 実務で最も多い躓きが「証明書類がない」です。海外証券会社の年間取引報告書に源泉税額の記載がない、現地の納税証明書を取り寄せていない、といったケースでは控除が受けられません。外国で課税された時点で、その税額を証明する資料を確保しておくことが出発点になります。

4. 法人の外国税額控除

控除限度額の計算

内国法人が各事業年度において外国法人税を納付することとなる場合には、原則として、次の算式で計算した控除限度額を限度として、その外国法人税の額を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除します(法人税法第69条第1項)。

控除限度額 = 各事業年度の所得に対する法人税の額 × (当該事業年度の国外所得金額 ÷ 当該事業年度の所得金額)

ここでいう「国外所得金額」とは、内国法人の各事業年度において生じた国内源泉所得以外の所得(国外源泉所得)に係る所得のみについて各事業年度の所得に対する法人税を課すものとした場合に課税標準となるべき当該事業年度の所得の金額に相当する金額をいいます(法人税法施行令第142条第3項)。

(出典:国税庁「外国税額の控除」(法人税基本通達関係・解説)

構造は個人と同じで、日本の法人税額のうち国外所得に対応する部分が上限になります。したがって、その事業年度が欠損(赤字)であれば、法人税額がないため控除限度額も生じません。この場合に外国法人税を切り捨てないための仕組みが、後述の繰越しと損金算入方式の選択です。

「税額控除するか、損金算入するか」は全部か全部でないかの選択

内国法人が、その事業年度に納付する控除対象外国法人税の額の一部についてだけ外国税額控除の適用を受ける場合であっても、法人税法第41条第1項の規定により、その控除対象外国法人税額の全部が損金の額に算入されません(法人税基本通達16−3−1)。

つまり「A国の源泉税は税額控除、B国の源泉税は損金算入」というつまみ食いはできません。その事業年度について、税額控除方式と損金算入方式のどちらかを選ぶことになります。

💡 選択の実務的な目安は「その事業年度に控除限度額が出るかどうか」です。黒字で控除限度額が十分にあるなら税額控除方式が有利ですが、欠損の事業年度は控除限度額が生じないため、損金算入方式(欠損金を増やして将来に繰り越す)が検討対象になります。ただし、税額控除方式には3年の繰越しがあるため、翌期以降の業績見通しまで含めて比較する必要があります。単年度だけで判断しないでください。

適用する事業年度——費用計上した期でもよい

外国税額の控除は、外国法人税を納付することとなる日の属する事業年度において適用があります。ただし、内国法人が継続してその納付することが確定した外国法人税の額を費用として計上した日(その計上した日が外国法人税を納付した日その他の税務上認められる合理的な基準に該当する場合に限る)の属する事業年度において適用している場合には、その計算が認められます(法人税基本通達16−3−5)。

また、いわゆる予定納付・見積納付等をした外国法人税についても、継続して仮払金等として経理し、確定申告・確定賦課等があった日の属する事業年度で適用することとしている場合には、その計算が認められます(法人税基本通達16−3−6)。

(出典:国税庁 法人税基本通達 第16章第3節第1款「通則」第2款「外国法人税の控除」

高率負担部分は控除の対象にならない

納付した外国法人税のすべてが控除対象になるわけではありません。外国法人税の額のうち、その所得に対する負担が高率な部分(高率負担部分)は、控除対象外国法人税の額から除かれます(法人税法施行令第142条の2)。この判定は、外国法人税ごとに、かつ、その外国法人税の課税標準となる金額ごとに行うこととされています。

高率負担部分の判定に用いる所得率は、その法人が営む主たる事業の種類に応じてそれぞれ定められた方法により計算します(法人税法施行令第142条の2第2項)。具体的な率および計算方法は政令で定められているため、適用にあたってはその事業年度に適用される政令の内容を必ず確認してください。

5. 外国子会社からの配当は「控除」ではなく「益金不算入」

内国法人が海外に子会社を持つ場合、その子会社からの配当は外国税額控除ではなく、外国子会社から受ける配当等の益金不算入(法人税法第23条の2)で処理するのが原則です。二重課税を「控除」ではなく「そもそも日本で課税しない」ことで排除する仕組みです。

項目内容
外国子会社の要件(持株割合)内国法人が保有する外国法人の発行済株式または出資(その有する自己の株式または出資を除く)の総数または総額の25%以上
外国子会社の要件(保有期間)剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6か月以上継続して上記の状態にあること(法人税法施行令第22条の4第1項)
益金不算入とならない部分剰余金の配当等の額に係る費用の額として、その配当等の額(損金算入対応受取配当等の額を控除した残額)の100分の5に相当する金額(法人税法施行令第22条の4第2項、法人税基本通達3−3−5)
結果差引き95%相当額が益金不算入となる
租税条約による軽減判定対象の外国法人が租税条約の二重課税排除条項により保有割合が軽減されている相手国の外国法人である場合には、25%未満でも条約に定める保有割合以上を保有していれば適用がある(法人税基本通達3−3−3)

(出典:国税庁 法人税基本通達 第3章第3節「外国子会社から受ける配当等の益金不算入」

💡 ここが最も間違えられる論点です。外国子会社配当の益金不算入の適用を受けた配当に課された外国源泉税は、外国税額控除の対象にならず、かつ損金にもなりません(法人税法第39条の2)。日本で課税していない所得にかかった外国税なので、二重課税が生じていないという整理です。「95%益金不算入にしたうえで、現地源泉税も外国税額控除する」という処理は誤りになります。
なお、外国子会社の要件(25%以上・6か月以上)を満たさない外国法人からの配当は、この制度の対象外です。その場合は原則どおり日本で課税されるため、現地の源泉税は外国税額控除の対象になります。どちらの制度に乗るかで結論が真逆になるため、まず持株割合と保有期間を確認してください。

6. 実務で押さえるべきこと

① 支払を受ける「前」に、租税条約の手続きを済ませる

前述のとおり、租税条約の限度税率を超えて課された税額は日本の外国税額控除の対象になりません。多くの国では、配当・利子・使用料の支払を受ける前に、居住者証明書や条約特典の届出を相手国(または支払者)に提出しておかなければ、条約の限度税率が適用されず国内法の税率で源泉徴収されます。事後の日本の申告では回復できないため、契約・支払スケジュールの段階で手当てしてください。

② 国外所得の割合を把握してから、控除しきれるかを見積もる

控除限度額は「日本の税額 × 国外所得 ÷ 全体の所得」です。国内所得の比率が高いほど枠は小さくなります。海外投資・海外進出を検討する段階で、日本側でいくら控除しきれるのかを先に試算しておくと、税引後の手取りの見込みが大きくずれません。

③ 3年繰越を活かすには「毎年書き続ける」

繰越控除限度額・繰越外国所得税額を使うには、繰越しに係る年のうち最も古い年以後の各年について、その各年の控除限度額や納付することとなった外国所得税額を記載した明細書と申告書等を提出していることが前提です。引けない年こそ明細書を付けて申告する——これが3年後に効いてきます。

④ 個人と法人で「同じ制度」ではないと理解する

個人と法人はいずれも「日本の税額 × 国外所得 ÷ 全体の所得」という共通の骨格を持ちますが、個人には復興特別所得税と住民税(所得税の控除限度額の30%)の枠があり、法人には損金算入方式との全部選択・高率負担部分の除外・外国子会社配当の益金不算入という別の論点があります。個人事業から法人化した方、個人と資産管理会社の両方で海外資産を持つ方は、どちらの制度で処理する所得なのかを区別してください。

7. よくある失敗と王道

❌ 外国税額控除でよくある失敗
  • 「外国で払った税金は全額戻る」と思い込み、控除限度額を計算していない
  • 租税条約の限度税率を超えて源泉徴収されたまま放置し、日本の申告で取り戻そうとする(対象外)
  • 外国所得税額を証明する書類を確保していない(明細書・納税証明書・源泉徴収票等がなく控除できない)
  • 控除しきれない年に明細書を添付せず申告してしまい、3年繰越の権利を失う
  • 法人で「A国は税額控除、B国は損金算入」とつまみ食いしようとする(全部が損金不算入になる)
  • 外国子会社配当を95%益金不算入にしたうえで、現地源泉税も外国税額控除してしまう(二重取りで誤り)
  • 欠損の事業年度に控除限度額が生じないことを見落とし、損金算入方式との比較をしていない
⭕ 外国税額控除の王道
  • 投資・進出のに、国外所得の割合から控除限度額の見込みを試算する
  • 支払を受けるに、居住者証明書・租税条約の届出など相手国側の手続きを済ませる
  • 外国で課税された時点で、税額を証明する資料をその都度確保して保管する
  • 控除しきれない年も、「外国税額控除に関する明細書」を毎年添付して申告し、3年繰越の枠を残す
  • 法人は、その事業年度の控除限度額の有無と翌期以降の業績見通しを並べて、税額控除方式と損金算入方式を比較する
  • 外国子会社からの配当は、まず持株割合25%以上・保有6か月以上を確認し、益金不算入と外国税額控除のどちらに乗る所得かを切り分ける
  • 個人・法人・資産管理会社をまたぐ場合は、所得ごとにどちらの制度で処理するかを最初に整理しておく

8. まとめ

外国税額控除は、国際的な二重課税を調整するための基本的な仕組みですが、「払った分がそのまま戻る」制度ではありません。要点は次のとおりです。

  • 外国税額控除は、外国で納めた税を日本の税額から差し引く税額控除(所得税法第95条、法人税法第69条)。目的は国際的な二重課税の排除。
  • 控除できるのは控除限度額まで。個人は「その年分の所得税額 × 調整国外所得金額 ÷ 所得総額」、法人は「各事業年度の所得に対する法人税の額 × 国外所得金額 ÷ 所得金額」。
  • 個人はさらに復興特別所得税と、所得税の控除限度額の30%にあたる地方税の枠が使える。
  • 租税条約の限度税率を超える部分は控除の対象外。取り戻す相手は相手国であり、支払を受ける前の手続きが勝負。
  • 引ききれなかった税額・使い切れなかった枠は、いずれも3年間繰り越せる。ただし各年に明細書を添付して申告していることが前提。
  • 法人は、税額控除方式と損金算入方式の選択が全部か全部でないか(法人税基本通達16−3−1)。所得に対する負担が高率な部分は控除対象から除かれる(法人税法施行令第142条の2)。
  • 持株割合25%以上・保有6か月以上の外国子会社からの配当は、外国税額控除ではなく95%益金不算入(法人税法第23条の2)。この配当に課された外国源泉税は控除も損金算入もできない。
  • 制度の成否は書類で決まる。証明資料がなければ、正しく課税されていても控除は受けられない。

「海外子会社からの配当・使用料の税務をどう組むべきか」「海外赴任者の給与にかかる二重課税を整理したい」「外国税額控除が使い切れず毎年切り捨てている」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、国際的な二重課税の調整から租税条約の適用、海外子会社・資産管理会社を含めたグループ全体の設計までご支援しています。海外に事業・資産をお持ちの方は、実行の前にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

外国で払った税金は、全額が日本の税金から引けますか?

引けません。控除できるのは控除限度額までです。所得税の控除限度額は「その年分の所得税額 × その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額」で計算するため、国内所得の割合が大きいほど枠は小さくなります(国税庁タックスアンサーNo.1240)。外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合は、復興特別所得税の控除限度額、さらに所得税の控除限度額の30%にあたる地方税の控除限度額の順に使うことができ、それでも引ききれない部分は3年間繰り越します。

米国株の配当で現地に10%引かれました。確定申告で取り戻せますか?

日本で課税される所得であれば、外国税額控除の対象になります。ただし控除限度額の範囲内までであり、外国所得税額を課されたことを証する書類の添付が必要です。なお、租税条約の限度税率を超えて源泉徴収された部分は日本の外国税額控除の対象外とされているため、その部分は相手国の税務当局に対して還付を求めることになります。支払を受ける前に条約の適用手続きを済ませておくことが実務上いちばん重要です。

赤字の事業年度に外国法人税を納めました。どうなりますか?

法人の控除限度額は「各事業年度の所得に対する法人税の額 × 国外所得金額 ÷ 所得金額」で計算するため、法人税額が生じない事業年度には控除限度額も生じません。この場合は、控除限度超過額として3年間繰り越して翌期以降の枠で控除する方法と、その事業年度に損金算入方式を選択して欠損金を増やす方法が考えられます。損金算入方式を選ぶとその事業年度の控除対象外国法人税額の全部が損金算入となり、税額控除とのつまみ食いはできません(法人税基本通達16−3−1)。翌期以降の業績見通しを含めて比較してください。

海外子会社からの配当は外国税額控除の対象ですか?

持株割合25%以上を配当の支払義務が確定する日以前6か月以上継続して保有している外国子会社からの配当は、外国子会社配当等の益金不算入(法人税法第23条の2)の対象となり、配当等の額の5%相当額を費用の額として控除した残りが益金不算入となります。この適用を受けた配当に課された外国源泉税は、外国税額控除の対象にならず損金にもなりません。逆に、25%・6か月の要件を満たさない外国法人からの配当は日本で課税されるため、現地源泉税は外国税額控除の対象になります。

今年は控除しきれないので、申告書に書かなくてもよいですか?

書いてください。繰越控除限度額・繰越外国所得税額を使うには、繰越しに係る年のうち最も古い年以後の各年について、その各年の控除限度額や納付することとなった外国所得税額を記載した「外国税額控除に関する明細書」と申告書等を提出していることが前提です。控除しきれない年に明細書を付けずに申告すると、翌年以降に繰り越せなくなります。引けない年こそ書き残すのが鉄則です。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、外国税額控除に関する一般的な情報提供であり、個別の取引・所得に係る適用の可否や申告内容の判断に代わるものではありません。国際課税の取扱いは、相手国の国内法および日本が締結している租税条約の内容により異なります。適用にあたっては必ず税理士等の専門家にご相談ください。記載の取扱いは、とくに断りのない限り令和7年4月1日現在の法令等にもとづきます。高率負担部分の率その他政令で定める事項は、適用される事業年度の政令をご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月27日

国際的な二重課税・海外進出の税務は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、外国税額控除の適用設計から租税条約の手続き、海外子会社・資産管理会社を含めたグループ全体の税務までご支援しています。海外に事業・資産をお持ちの方は、実行の前にご相談ください。

無料相談はこちら
小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。