減価償却とは?定額法・定率法と10万円・30万円の境目を税理士が解説【2026年版】
- 1. 減価償却とは(3行サマリー)
- 2. 取得価額による分かれ道(10万円・20万円・30万円/40万円)
- 3. 中小企業者等の少額減価償却資産の特例(30万円→40万円)
- 4. 定額法と定率法の違い
- 5. 個人と法人で「原則の償却方法」が違う
- 6. 中古資産を買ったときの耐用年数
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 減価償却とは(3行サマリー)
- 減価償却とは、建物・機械・車両・パソコンなど、長く使う高額な資産の購入費用を、買った年に全額経費にせず、使う年数(耐用年数)に分けて少しずつ費用にしていく会計・税務のルールです。
- 時間の経過とともに価値が減っていく資産を「減価償却資産」といい、土地のように減価しないものは対象外です。
- 経費にできる期間や金額が法律で決まっているため、買った年に全額を経費にできるとは限らない点が、現金の支出と費用がずれる最大のポイントです。
たとえば300万円の機械を買っても、その年に300万円全額が経費になるわけではありません。耐用年数にわたって分割して費用化されます。一方で、現金は購入時に一度に出ていきます。この「お金の動き」と「経費の計上」のズレを理解しておくことが、資金繰りと節税の両方で重要になります。減価償却の基本的な取扱いは、所得税法・法人税法と耐用年数省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)に定められています。
2. 取得価額による分かれ道(10万円・20万円・30万円/40万円)
減価償却で最初に押さえるべきは、1単位あたりの取得価額(買った金額)によって、経費にできる方法が変わることです。境目を整理すると次のとおりです。
| 取得価額(1単位あたり) | 経費にできる方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額をその年の経費(消耗品費等)にできる | 使用可能期間1年未満のものも同様 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等償却できる | 取得価額の合計額の3分の1ずつを3年間で経費化。償却資産税(固定資産税)の対象外 |
| 30万円未満(中小企業者等) | 少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる | 年間合計300万円まで。青色申告の中小企業者等が対象 |
| 上記を超える資産 | 原則どおり耐用年数で減価償却 | 定額法・定率法で計算 |
つまり、10万円未満なら誰でもその年に全額経費、10万円以上20万円未満なら3年均等の「一括償却資産」、30万円未満なら青色申告の中小企業者等に限り全額経費という特例(後述)が使えます。それ以上は、原則どおり耐用年数で少しずつ償却します。
3. 中小企業者等の少額減価償却資産の特例(30万円→40万円)
中小企業・個人事業主が最もよく使う節税策が、少額減価償却資産の特例です。青色申告をしている中小企業者等が、一定金額未満の資産を取得して事業に使った場合、その全額をその年(その事業年度)の経費(損金)にできます。
ここで重要なのが、令和8年度税制改正で取得価額の上限が引き上げられたことです。取得した日によって、適用される上限が変わります。
| 取得した時期 | 取得価額の上限 | 年間合計の限度額 | 従業員数の要件 |
|---|---|---|---|
| 令和8年3月31日までに取得 | 30万円未満 | 300万円まで | 常時使用する従業員500人以下 |
| 令和8年4月1日以後に取得 | 40万円未満 | 300万円まで | 常時使用する従業員400人以下 |
令和8年度税制改正(令和8年法律第12号、令和8年3月31日成立)により、対象資産の取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も令和11年(2029年)3月31日まで3年延長されました。一方で、対象となる法人の常時使用する従業員数の要件は500人以下から400人以下に引き下げられています。年間合計の限度額300万円は変わりません。
4. 定額法と定率法の違い
取得価額が特例の上限を超える資産は、定額法または定率法で耐用年数にわたって償却します。両者の違いは「毎年いくら費用にするか」のカーブにあります。
| 償却方法 | 計算の考え方 | 費用のかかり方 |
|---|---|---|
| 定額法 | 取得価額 × 定額法の償却率(毎年同じ金額) | 毎年ほぼ一定額を償却。費用が読みやすい |
| 定率法 | 未償却残高 × 定率法の償却率(年々減っていく) | 初年度に多く、後年になるほど少なく償却 |
定率法は購入の初期に多くの費用を計上できるため、利益が出ている年に早めに費用化したい場合に有利です。一方、定額法は毎年同額で費用が平準化されるため、損益の見通しが立てやすくなります。どちらが有利かは、利益の状況・資金繰り・銀行への決算書の見せ方によって変わります。
5. 個人と法人で「原則の償却方法」が違う
同じ資産でも、個人事業主と法人で法律上の原則(法定償却方法)が異なります。ここは見落としやすいポイントです。
- 個人も法人も、減価償却の方法は同じだと思っている
- 建物や内装も定率法で早く償却できると思い込んでいる
- 届出をしないまま、有利だと思った方法で勝手に計算している
- 個人事業主の法定償却方法は「定額法」(届出により一部資産で定率法を選択できる)
- 法人の法定償却方法は「定率法」(届出により定額法を選択できる)
- 建物(平成10年4月1日以後取得)、建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得)は、個人・法人を問わず「定額法」しか使えない
- 法定と異なる方法を使いたい場合は、税務署への届出が必要
建物や内装設備(建物附属設備)は、たとえ法人でも定率法は使えず定額法に限られます。「内装に大きく投資したから初年度に多く償却したい」と考えても、定率法は選べません。設備投資の計画段階で、どの資産がどの方法になるかを確認しておくことが大切です。
——弊社にも、「大きな設備投資をしたのに、思ったほど今期の利益が下がらなかった」というご相談は実際に寄せられます。一般論として申し上げると、その多くは「現金は出たが、減価償却で費用化されるのは数年がかり」という、お金の動きと費用のズレを織り込めていなかったことが原因です。私たちが関与する場面でも、投資の前に「いつ・いくら経費になるか」「資金繰りはどうなるか」を一緒に試算してから判断していただいています。
6. 中古資産を買ったときの耐用年数
新品ではなく中古の資産(中古車・中古機械など)を買った場合は、法定耐用年数ではなく、使用可能な残りの年数を見積もって償却します。実際の見積りが難しい場合は、次の簡便法で計算できます。
- 法定耐用年数の全部を経過した中古資産:法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部を経過した中古資産:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
- 計算した年数に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年未満になる場合は2年とする
たとえば法定耐用年数6年の普通自動車を、新車登録から4年経過した中古で買った場合、(6年−4年)+4年×20%=2.8年→端数切捨てで2年で償却できます。中古資産は新品より短い年数で費用化できるため、節税の観点から中古車などが選ばれることがあるのはこのためです。
よくある質問(FAQ)
30万円未満なら、いくつ買っても全部その年の経費にできますか?
パソコンが本体19万円、付属品やソフトを入れて22万円でした。どう判定しますか?
個人事業主ですが、定率法で早く償却したいです。できますか?
少額減価償却資産の特例と一括償却資産は、どちらが有利ですか?
減価償却は必ずしなければいけませんか?
8. まとめ
減価償却は、高額な資産の費用を耐用年数に分けて計上する、事業の数字の土台です。ポイントは次のとおりです。
- 10万円未満=全額経費/10万円以上20万円未満=3年均等(一括償却資産)/30万円未満(令和8年4月以降は40万円未満)=中小企業者等の特例で全額経費。
- 少額減価償却資産の特例は年間合計300万円まで。令和8年度改正で上限が40万円未満へ引上げ・令和11年3月末まで延長された。
- 定額法は毎年同額、定率法は初期に多く。利益・資金繰り・決算書の見せ方で有利不利が変わる。
- 個人の原則は定額法、法人の原則は定率法。ただし建物・建物附属設備・構築物は定額法のみ。
- 中古資産は簡便法で短い年数で償却できる。
「この設備投資はいつ・いくら経費になるのか」「特例と原則償却のどちらが有利か」「資金繰りに無理はないか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、設備投資の前の試算から、減価償却の方法選択・届出、決算・申告まで、経営者・個人事業主に伴走しています。お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 所得税法・法人税法、減価償却資産の耐用年数等に関する省令、租税特別措置法 第28条の2・第67条の5
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2106「定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
本記事は、減価償却に関する一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。取得価額の判定・償却方法・特例の適用可否は個別事情や取得時期により異なります。制度内容は変更される場合があります。実際の処理にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月9日
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