源泉所得税の納期の特例とは?7月10日・1月20日の納付期限と対象範囲を税理士が解説【2026年版】
- 1. 源泉所得税の納期の特例とは(3行サマリー)
- 2. 誰が使える?適用の条件と申請のやり方
- 3. ★納期限はいつ?(ここが核心)
- 4. ★最大の落とし穴:納特の「対象になる報酬・ならない報酬」
- 5. 期限を過ぎるとどうなる?(不納付加算税・延滞税)
- 6. 納付の実務(納付書・e-Tax・ダイレクト納付)
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 源泉所得税の納期の特例とは(3行サマリー)
- 源泉徴収した所得税は、原則として徴収した月の翌月10日までに毎月納付します。
- 「納期の特例(納特)」を受けると、これを年2回(半年分まとめて)に減らせます。1月〜6月分は7月10日、7月〜12月分は翌年1月20日が納期限です。
- 対象は給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者で、所轄税務署に申請書を出せば使えます。
毎月の納付事務が年2回で済むため、小規模な会社・個人事業の事務負担を大きく軽くする制度です。ただし対象になる源泉所得税の範囲が限られている点が最大の注意点で、ここを誤解すると「納め忘れ」が起こります(後述)。
2. 誰が使える?適用の条件と申請のやり方
納期の特例を受けられるのは、次の条件を満たす源泉徴収義務者です(所得税法第216条/国税庁 No.2505)。
「常時10人未満」とは、平常の状態で給与を支払う人員が10人に満たないことをいいます。繁忙期に一時的に10人以上になっても、平常が10人未満なら該当します。
申請のやり方
- 所轄の税務署長に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出します(書面のほかe-Taxでも提出可)。
- 税務署長から却下の通知がない場合、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。
- 適用が始まるのは、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税からです。
つまり、申請書を出した「その月分」はまだ毎月納付(翌月10日)のままで、翌月以降に源泉徴収する分から年2回納付に切り替わる点に注意してください。たとえば3月に申請書を提出すると、3月支給分は4月10日までに納付し、4月以降に源泉徴収する分から納特が適用されます。
3. ★納期限はいつ?(ここが核心)
納期の特例を受けると、納付は次の年2回になります(国税庁 No.2505)。
| 区分(源泉徴収した月) | 納期限 |
|---|---|
| その年の1月〜6月に源泉徴収した分 | その年の7月10日 |
| その年の7月〜12月に源泉徴収した分 | 翌年の1月20日 |
ポイントは3つです。
(1) 1〜6月分は「7月10日」、7〜12月分は「翌年1月20日」 前半(上期)の半年分は7月10日まで、後半(下期)の半年分は翌年1月20日までにまとめて納めます。下期分だけ「翌月10日」ではなく1月20日と少し後ろにずれている点に注意してください(年末の事務に配慮した期限です)。
(2) 期限が土日・祝日のときは翌開庁日 7月10日・1月20日が土曜・日曜・祝日にあたる場合は、その休み明けの日(翌開庁日)が納期限になります。年によって実際の期限日が1〜2日ずれるため、毎年カレンダーで確認するのが安全です。
(3) 納める金額は「半年分の合計」 1月〜6月の各月に源泉徴収した所得税を合算し、その合計額を7月10日までに納めます。納付書(所得税徴収高計算書)は納期特例分の専用様式を使い、各月の支給額・税額を記入します。
4. ★最大の落とし穴:納特の「対象になる報酬・ならない報酬」
納期の特例で最も誤解が多いのが、「対象になる源泉所得税の範囲」です。納特は、源泉徴収したすべての所得税を年2回にできるわけではありません。
つまり、同じ「報酬の源泉所得税」でも、士業以外への報酬は納特の対象外で、原則どおり翌月10日までに毎月納付しなければなりません。
- デザイナー・イラストレーターへのデザイン料・イラスト料の源泉
- ライターへの原稿料・講演料の源泉
- カメラマンへの撮影料、モデルへの出演料 などの源泉
- これらを「半年に1回でいい」と思い込み、7月・1月にまとめて納めようとして毎月の納付を失念する
- 給与・退職金・士業(税理士/弁護士/司法書士等)報酬の源泉 → 納特の対象(7月10日・1月20日にまとめて納付)
- デザイン料・原稿料・講演料など士業以外の報酬の源泉 → 納特の対象外(源泉徴収した月の翌月10日までに毎月納付)
- 1つの会社のなかで「年2回でよい源泉」と「毎月納める源泉」が併存することを前提に、納付スケジュールを分けて管理する
——弊社にも、「外注先のデザイナーに払う報酬の源泉も、7月にまとめて納めればよいと思っていた」というご相談が実際に寄せられます。一般論として申し上げると、納特はあくまで給与・退職金・一定の士業報酬に限られ、デザイン料・原稿料などは対象外です。私たちが関与する場面でも、最初に「どの支払いが納特の対象で、どれが毎月納付か」を一覧で整理し、納め忘れが起きないようにしています。年2回の納付に安心して、毎月納付すべき源泉を見落とすのが、最も多いつまずきどころです。
5. 期限を過ぎるとどうなる?(不納付加算税・延滞税)
源泉所得税の納付が1日でも期限を過ぎると、原則として次のペナルティの対象になります。
| ペナルティ | 内容 |
|---|---|
| 不納付加算税 | 納付すべき税額の10%(税務署の指摘ではなく自主的に納付した場合は5%に軽減) |
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される利息的な税。納期限の翌日から2か月以内と、それを超える期間で割合が変わります |
源泉所得税は「預かったお金(従業員等から天引きした税金)を国に納める」性質のものです。納付遅延は資金繰りの問題に直結しやすいため、7月10日・1月20日の納期限から逆算して資金を確保しておくことが大切です。
6. 納付の実務(納付書・e-Tax・ダイレクト納付)
納付書(所得税徴収高計算書)
- 納特を使う場合は、「納期特例分」の納付書を使用します(毎月納付用とは様式が異なります)。
- 各月の支給年月日・人員・支給額・税額を記入し、半年分を合計して納付します。
納める方法
- 金融機関・税務署の窓口での現金納付
- e-Tax(電子納税)/ダイレクト納付/インターネットバンキング/クレジットカード納付/スマホアプリ納付など、電子的な方法も利用できます。
- 納付すべき税額がない(ゼロ)月や、半年で源泉税額がゼロの場合でも、納付書(税額0円)を税務署に提出します(提出により「納付忘れではない」ことが明確になります)。
従業員が10人以上になったら
- 給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を速やかに提出し、原則どおりの毎月納付に戻します。
よくある質問(FAQ)
納期の特例の対象になるのは給与だけですか?
1月〜6月分の納付期限はいつですか?
申請書を出せば、その月の分からすぐに年2回納付になりますか?
納付が1日遅れただけでもペナルティはありますか?
源泉徴収した税額がゼロの期間でも、何かする必要はありますか?
8. まとめ
源泉所得税の納期の特例は、小規模な会社・個人事業の事務負担を年2回納付に減らせる便利な制度です。要点は次のとおりです。
- 対象は給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者。所轄税務署に申請書を提出して使う(所得税法第216条/国税庁 No.2505)。
- 納期限は1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日。土日祝なら翌開庁日。
- 対象になるのは給与・退職金・一定の士業報酬の源泉のみ。デザイン料・原稿料など士業以外の報酬の源泉は対象外で毎月納付。ここが最大の落とし穴。
- 期限を過ぎると不納付加算税(10%/自主納付5%)・延滞税の対象。1か月以内納付+直前1年無遅延などで加算税が課されない救済はあるが、期限内納付が大原則。
- 適用開始は申請書提出月の「翌月」に源泉徴収する分から。提出月の分はまだ毎月納付。
「どの支払いが納特の対象で、どれが毎月納付なのか」「7月の納付資金をどう確保するか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、源泉徴収・給与計算の事務点検から、納付スケジュールの設計、資金繰りまで伴走しています。お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 所得税法 第216条〜第218条(源泉所得税の納期の特例)、国税通則法 第67条(不納付加算税)
- 国税庁 タックスアンサー No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
- 国税庁「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2502「源泉徴収義務者とは」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2502.htm
本記事は、源泉所得税の納期の特例に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。対象になる報酬の範囲・納付期限・加算税の取扱いは、個別の事情により異なります。制度内容は今後の税制改正等で変更される場合があります。実際の納付・申請にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月17日
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