グローバル・ミニマム課税の日米合意(2026年)とは?最低税率15%の行方を税理士が解説
- 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 2. 前提:グローバル・ミニマム課税とは何か
- 3. 今回の「日米合意」で何が決着したのか
- 4. 専門家の視点:自社は「対象」なのか
- 5. 実務でどう備えるか
- 6. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 何が起きたのか(3行サマリー)
- 令和8年(2026年)1月5日、BEPS包摂的枠組みにおいて、グローバル・ミニマム課税と米国を含む一定の国の制度との共存等について国際合意が成立した
- グローバル・ミニマム課税は、大規模な多国籍企業グループに対し、国・地域ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組み。対象は総収入金額7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループ
- 日本ではすでに所得合算ルール(IIR)が令和6年(2024年)4月1日以後に開始する対象会計年度から適用済み。今回の合意は、この国際的な枠組みを安定させる動きと位置づけられる
2. 前提:グローバル・ミニマム課税とは何か
グローバル・ミニマム課税は、各国の法人税の引き下げ競争(租税回避地への利益移転)に歯止めをかけるための国際的な仕組みです。正式には「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」として、日本でも法制化されています。
考え方はシンプルです。どの国・地域で稼いだ利益であっても、実効税率が15%を下回る部分があれば、その不足分を親会社の所在国などで上乗せ課税する——これにより、税率の低い国に利益を移しても、グループ全体では最低15%の負担が確保されます。
この仕組みは、OECDが主導する国際的なルール(いわゆる「第2の柱(ピラー2)」)として設計され、複数のルールが組み合わさっています。
| ルール | 略称 | 役割 | 日本での適用 |
|---|---|---|---|
| 所得合算ルール | IIR | 子会社の税負担が15%未満なら、親会社所在国で上乗せ課税 | 令和6年(2024年)4月1日以後開始の対象会計年度から適用 |
| 軽課税所得ルール | UTPR | IIRで拾えない不足分を、他の進出国側で補完して課税 | 法制化が進められている |
| 国内ミニマム課税 | QDMTT | 自国内の税負担が15%未満の部分を、自国で先に上乗せ | 法制化が進められている |
3. 今回の「日米合意」で何が決着したのか
これまで国際社会の懸念だったのが、米国の動向でした。米国には独自のミニマム課税の仕組みがあり、OECDのルールとどう折り合いをつけるかが定まらないと、ルールに従う国の企業だけが不利になりかねない、という問題があったのです。
令和8年(2026年)1月5日の合意は、この点について、グローバル・ミニマム課税と、米国を含む一定の要件を満たす国の制度との「共存」などの方向性を示したものです。これにより、国際的なルールの足並みが整い、すでにルールを導入している日本企業にとっても、予見可能性(先の見通しの立てやすさ)が高まることが期待されます。
なお、財務省の公表資料では、国際最低課税額に対する法人税等の見直しについて、令和8年(2026年)1月1日以後に開始する対象会計年度から適用するとされています。国際合意を踏まえ、日本の制度も継続的に手当てされていく流れです。
4. 専門家の視点:自社は「対象」なのか
中小企業やオーナー経営者の方が最も気にされるのが、「結局うちは関係あるのか」という点です。ここを正確に切り分けましょう。
判定の入口は、グループ全体の総収入金額が7億5,000万ユーロ以上かどうかです。為替により変動しますが、円換算でおおむね1,000億円を大きく超える規模のイメージです。
- 対象は総収入金額7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループ。多くの中小企業は直接の対象ではない
- 一方で、海外展開する中堅・大企業グループや、その取引先・グループ会社は、影響を正面から検討する必要がある
- 自社が対象外でも、取引先・親会社が対象であれば、情報提供や事務対応を求められることがある
つまり、「最低税率15%」という見出しに過剰反応する必要はありませんが、海外に実態のある事業を広げていく企業ほど、早い段階で自社の立ち位置を確認しておくべき論点です。ここを誤解される経営者がとても多いのですが、ポイントは「自社・グループの規模と、海外展開の実態」です。
弊社にも、「海外進出を考えているが、グローバル・ミニマム課税の対象になるのか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、まず必要なのは“自社が対象規模に当たるかどうか”の冷静な切り分けです。多くのケースでは直接の対象ではない一方、取引先や将来の成長を見据えると無視できない、という整理になります。私たちが関与する場面では、ニュースの言葉に振り回されず、自社の規模・海外展開のステージに即して「いま検討すべきこと」と「まだ先でよいこと」を分けてお伝えしています。
5. 実務でどう備えるか
- まず規模で切り分ける:グループの総収入金額が7億5,000万ユーロ以上かどうかを確認する
- 対象なら国・地域ごとの実効税率を点検:単体決算ではなく、国・地域単位でグループの利益・税額を集計する体制が要る
- 情報申告・事務負担を見込む:対象グループは、所定の情報申告など、新たな事務対応が発生する
- 取引先・親会社の影響も確認:自社が対象外でも、グループや取引先経由で情報提供を求められることがある
- 海外進出の設計段階から織り込む:これから海外展開する企業は、進出スキームの検討時点で国際課税の論点を入れておく
6. まとめ
令和8年(2026年)1月5日のグローバル・ミニマム課税をめぐる国際合意は、「税率の低い国に利益を移しても、グループ全体で最低15%の負担を確保する」という国際ルールの足並みを整える、重要な一歩です。対象は総収入金額7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループであり、多くの中小企業が直ちに身構える必要はありません。
ただし、世界の潮流は明確に「利益を置く場所だけで税負担を最小化する時代の終わり」へ向かっています。海外に実態のある事業を広げる企業ほど、自社の立ち位置を早めに確認しておくことが大切です。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、トリプルホルダーの視点で、国際税務・海外展開のご相談に対応しています。海外を使った事業設計をお考えの方は、動く前に一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
グローバル・ミニマム課税の対象になる企業は?
「最低税率15%」とは何ですか?
中小企業や個人に関係はありますか?
出典・参考資料
- 財務省「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」(令和8年度税制改正)| https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20260123kokusai.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」令和7年12月 | https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/index.html
- 国税庁「グローバル・ミニマム課税関係」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/global-minimum/index.htm
本記事は、財務省・国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。グローバル・ミニマム課税の制度は段階的に整備が進められており、要件・適用時期・事務手続は今後の法令・通達により変更される場合があります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月6日
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