グローバル・ミニマム課税の初回申告が2026年9月末に|3月決算の対象企業が確認すべきことを税理士が解説

世界共通の最低税率を定めるグローバル・ミニマム課税(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税)が、いよいよ「申告」の局面に入ります。日本では令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から制度が始まっており、3月決算の対象企業にとっては、最初の情報申告(GIR)の提出期限が2026年9月30日です。 「大企業の話で、うちには関係ない」と思われがちな制度ですが、判定の入口はグループ全体(連結)の収入規模です。海外に子会社を持つオーナー企業やグループの場合、「自社は中小だから対象外」と決めつける前に、グループ連結ベースで基準に当たらないかの確認が必要です。本記事では、制度の対象・初回の申告期限・実務でいま確認すべきことを、税理士が整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きているのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:グローバル・ミニマム課税とは何か
  3. 3. 誰が対象なのか(連結7億5,000万ユーロの壁)
  4. 4. 専門家の視点:いちばんの落とし穴は「税額ゼロでも申告は必要」
  5. 5. 実務で押さえるべきこと
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きているのか(3行サマリー)

  • グローバル・ミニマム課税は令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用。3月決算法人の初回の情報申告(GIR)提出期限は2026年9月30日
  • 対象は、直前の複数年度で全世界の年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループ。基準税率は15%
  • 情報申告(GIR)は、追加で納める税額がゼロでも提出義務があり、e-Tax(電子)で所轄税務署長に提供する。提出を怠ると罰則の対象になりうる

2. 前提:グローバル・ミニマム課税とは何か

グローバル・ミニマム課税は、2021年にOECD/G20の枠組みで国際合意された制度で、多国籍企業グループの各国での実効税率が最低基準(15%)を下回る場合に、その差額(トップアップ税額)を課税する仕組みです。税率の低い国に利益を移して税負担を軽くする動きを抑える、いわば「税の底上げ」のルールです。

制度は3つのルールで構成されます。

ルール略称内容日本での適用開始
所得合算ルールIIR軽課税国にある子会社等の不足税額を、親会社等の所在地国(=日本)で課税令和6年(2024年)4月1日以後開始する対象会計年度
軽課税所得ルールUTPRIIRで拾いきれない残りの不足税額を、グループ会社の所在地国で課税令和8年(2026年)4月1日以後開始する対象会計年度
国内ミニマム課税QDMTT自国(日本)内の不足税額を、まず自国で課税令和8年(2026年)4月1日以後開始する対象会計年度

日本ではまずIIR(所得合算ルール)と情報申告制度が令和6年度から先行して始まり、UTPRとQDMTT(国内ミニマム課税)は令和7年度税制改正で法制化され、令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されます。

💡 「対象会計年度」とは … その多国籍企業グループの連結等の会計年度のことです。3月決算であれば、令和6年4月1日に始まる事業年度(令和7年3月期)が、日本でこの制度が適用される最初の対象会計年度になります。

3. 誰が対象なのか(連結7億5,000万ユーロの壁)

対象となるのは、直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度において、全世界の年間総収入金額(連結ベース)が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループに属する会社等です。

7億5,000万ユーロは、為替にもよりますがおおむね1,200億円前後の規模です。したがって、純粋な国内中小企業や、海外展開のない会社は通常この制度の対象になりません。

ただし、注意したいのは判定がグループ全体(連結)の収入規模で行われる点です。

  • 国内外に多数のグループ会社を持つオーナー企業グループ
  • 海外子会社や海外拠点を通じて事業を展開しているグループ
  • 持株会社(ホールディングス)の下に複数事業会社がぶら下がる構造

こうしたケースでは、「1社1社は中小規模でも、連結で合算すると基準に近づく/届く」ことがあります。「うちはグローバル企業ではないから無関係」と感覚で判断せず、連結ベースの総収入金額で機械的に確認することが第一歩です。

4. 専門家の視点:いちばんの落とし穴は「税額ゼロでも申告は必要」

この制度で実務上もっとも誤解されやすいのが、「追加で納める税額が出ないなら、何もしなくてよい」という思い込みです。

対象となる多国籍企業グループには、特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供(いわゆるGIR=GloBE情報申告)という情報申告の義務が課されます。これは法人税法第150条の3に定められた義務で、トップアップ税額(追加納税額)がゼロであっても、提供義務は免除されません

GIRの提出期限は次のとおりです。

区分提出期限(対象会計年度終了の日の翌日から)
通常1年3月(15か月)以内
適用初年度(最初に提供する場合)1年6月(18か月)以内

3月決算法人の最初の対象会計年度(令和7年3月期)であれば、終了の日(令和7年3月31日)の翌日から1年6月=2026年9月30日が初回の提出期限です。提供はe-Tax(電子)により所轄税務署長に対して行います。

加えて、トップアップ税額が生じる場合は、国際最低課税額に対する法人税の申告・納付も別途必要になります(こちらの申告期限も、対象会計年度終了の日の翌日から原則1年3月・初回1年6月)。

⚠️ 「実効税率が高いから関係ない」も早合点 … 日本は法人実効税率が15%を上回るため、「うちは15%超だから追加課税はない=申告も不要」と考えてしまいがちです。しかし、軽課税国に子会社等があれば、その国の実効税率が問われます。そして何より、税額の有無にかかわらず情報申告(GIR)の提出義務は生じます。「税額ゼロ=申告不要」ではない点が、この制度の最大の注意点です。

5. 実務で押さえるべきこと

グローバル・ミニマム課税は、初年度の対応が特に重く、必要なデータも多岐にわたります。期限間際に着手すると間に合わないリスクが高い制度です。

❌ つまずきがちな失敗
  • グループ連結の収入規模を確認せず、感覚で「対象外」と判断してしまう
  • トップアップ税額がゼロだからと、情報申告(GIR)の提出を失念する
  • 初回の提出期限(3月決算なら2026年9月30日)を「通常決算と同じ感覚」でとらえ、準備の着手が遅れる
  • 各国子会社の税額・所得・実効税率を計算するためのデータ収集の段取りを後回しにする
⭕ これから取るべき王道
  • まず連結ベースの全世界年間総収入金額が7億5,000万ユーロ(おおむね1,200億円)以上かを機械的に確認する
  • 対象なら、情報申告(GIR)は税額ゼロでも提出義務がある前提で、提出期限から逆算してスケジュールを引く
  • 各国子会社の財務・税務データ(所得、納付税額、有形資産・人件費などの実体的活動の情報)を早期に収集する体制を整える
  • セーフ・ハーバー(一定要件を満たせば計算を簡素化できる経過措置)が使えるかを検討し、初年度の負担を抑える
  • 自社グループだけで判断せず、国際税務に対応できる専門家とともに初回申告のスケジュール表を作る
💬 実務の現場から
守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としてお伝えすると、海外子会社をお持ちのオーナー企業から「グローバル・ミニマム課税は大企業の話で、うちは関係ないと思っていた」というお声は実際に少なくありません。過去のご相談の傾向として申し上げると、つまずきやすいのは「税額が出ないなら申告も要らない」という思い込みと、初年度のデータ収集に必要な手間の見積もりが甘くなる点です。私たちが関与する場面でも、まずは連結の収入規模で対象かどうかを切り分け、対象であれば提出期限から逆算してデータ収集の段取りを早めに固めることを最優先にしています。

6. まとめ

グローバル・ミニマム課税は、日本では令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用が始まり、3月決算の対象企業にとっては、初回の情報申告(GIR)の提出期限が2026年9月30日に迫っています。対象は連結で全世界の年間総収入金額7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループで、基準税率は15%。追加納税額がゼロでも情報申告の提出義務があり、e-Taxで提供する点が最大の注意点です。

純粋な国内中小企業には縁の薄い制度ですが、海外子会社を持つオーナー企業やグループでは、「対象外」と感覚で判断せず連結ベースで確認することが欠かせません。税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、国際税務を強みとして、対象判定から情報申告(GIR)の準備、国際最低課税額に対する法人税の申告まで伴走します。海外に拠点・子会社をお持ちで、自社が対象かどうかを確認しておきたい経営者の方は、お早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

グローバル・ミニマム課税は中小企業も対象ですか?

対象は、直前の複数年度で全世界の年間総収入金額(連結ベース)が7億5,000万ユーロ(おおむね1,200億円)以上の多国籍企業グループです。純粋な国内中小企業や海外展開のない会社は通常対象になりません。ただし判定は連結ベースで行うため、海外子会社を持つグループは連結の収入規模で確認することが必要です。

3月決算です。最初の申告期限はいつですか?

令和6年4月1日以後に開始する最初の対象会計年度(3月決算なら令和7年3月期)について、情報申告(GIR)の初回提出期限は、対象会計年度終了の日の翌日から1年6月以内=2026年9月30日です。通常年度は1年3月以内です。

追加で納める税額がなければ申告は不要ですか?

いいえ。対象となる多国籍企業グループには、トップアップ税額(追加納税額)がゼロであっても、特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供(GIR=情報申告)の義務があります。e-Taxで所轄税務署長に提供します。

UTPRや国内ミニマム課税(QDMTT)はいつから始まりますか?

日本では、所得合算ルール(IIR)と情報申告制度が令和6年4月1日以後開始する対象会計年度から先行し、軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)は令和7年度税制改正で法制化され、令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されます。

何から準備すればよいですか?

まず連結ベースの全世界年間総収入金額で対象かどうかを確認します。対象なら、提出期限から逆算し、各国子会社の所得・納付税額・実体的活動などのデータ収集体制を早期に整えます。計算を簡素化できるセーフ・ハーバーが使えるかの検討も初年度の負担軽減に有効です。

出典・参考資料

  • 国税庁「グローバル・ミニマム課税関係」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/global-minimum/index.htm
  • 国税庁「グローバル・ミニマム課税への対応に関する制度概要(パンフレット)」| https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/globalminimum2024/index.htm
  • 国税庁「特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領(令和6年6月・令和8年4月改訂)」| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/global-minimum/pdf/01.pdf
  • 国税庁「C8-1 国際最低課税額に対する法人税等の申告(グローバル・ミニマム課税関係)」| https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/global-minimum/annai/01.htm
  • 根拠法令:法人税法第150条の3(特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供)ほか
ご利用上の留意事項
本記事は、国税庁の公表資料および法人税法等に基づく一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。グローバル・ミニマム課税の対象判定・税額計算・申告は専門性が高く、グループの構成や各国の税制により取り扱いが異なります。実際の判断にあたっては、最新の公表資料をご確認のうえ、国際税務に詳しい税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月17日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。中小企業の税務顧問から富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継、国際税務まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp