業務改善助成金【令和8年度】9月1日申請開始|最大600万円・全上限額と税金の注意点を税理士が解説

最低賃金の引き上げが続くなか、「賃上げの原資が出ない」「設備投資に回すお金がない」というご相談が、税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも数多く寄せられます。その負担を国が一部肩代わりする制度が業務改善助成金です。 厚生労働省が公表した「令和8年度業務改善助成金のご案内」(令和8年4月版)によれば、令和8年度の申請受付は9月1日から始まります。しかも締切は「地域別最低賃金の発効日の前日」または「11月30日」のいずれか早い日。多くの地域で、実質1か月ほどしか窓が開きません。本記事では、助成上限額の全パターン、令和7年度からの変更点、そして見落とされがちな助成金の税金まで整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提知識:業務改善助成金とは
  3. 3. 助成上限額と助成率——全パターンの一覧
  4. 4. 専門家の視点——令和7年度から変わった3点
  5. 5. 実務で押さえるべきこと——助成金にかかる税金
  6. 6. 業務改善助成金でよくある失敗と王道
  7. 7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きたのか(3行サマリー)

  • 令和8年度の業務改善助成金は、申請受付が令和8年9月1日開始。締切は申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日または同年11月30日のいずれか早い日です。
  • 助成上限額は最大600万円。事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を50円・70円・90円のいずれか以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行うことが条件です。
  • 令和7年度から要件が変わりました。自動車(特殊用途自動車を除く)は助成対象外になり、引き上げる対象労働者は雇用保険被保険者に限定されました。
💡 この助成金の最大の落とし穴は「順番」です。交付決定の前に設備を買うと、それだけで対象外になります。相見積りを取って年度初めに発注してしまった、というご相談は毎年あります。必ず「申請 → 交付決定 → 設備導入・賃上げ」の順で進めてください。

2. 前提知識:業務改善助成金とは

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部が助成される制度です。

事業場内最低賃金とは、その事業場で最も低い時間給のことです。この助成金では、雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。

対象事業者の要件は次の3つです。

要件内容
企業規模中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する「みなし大企業」でないこと)
賃金水準事業場内最低賃金が、令和8年度の地域別最低賃金未満であること
不交付事由解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

申請は事業場ごとに行います。工場と事務所が分かれていれば、それぞれ別々に申請します。

申請期限と賃金引き上げの期間

区分期間
申請期間令和8年9月1日 〜 申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日いずれか早い日
賃金引き上げ期間令和8年9月1日 〜 申請事業場に適用される地域別最低賃金の発効日の前日
事業完了期限交付決定年度の1月31日

(出典:厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」)

💡 地域別最低賃金の発効日は都道府県ごとに定められます。厚生労働省の案内では「10月1日に新しい地域別最低賃金が発効される場合」を例として示しており、この場合、賃上げは9月30日までに完了していなければなりません。発効日当日に引き上げたのでは対象外です。1日違いで数百万円が消えます。

3. 助成上限額と助成率——全パターンの一覧

助成上限額は「引き上げ額のコース」×「引き上げる労働者数」×「事業場規模」で決まります。省略せず全パターンを掲載します。

コース区分事業場内最低賃金の引上げ額引き上げる労働者数助成上限額(右記以外の事業者)助成上限額(30人未満の事業者)
50円コース50円以上1人30万円40万円
50円コース50円以上2〜3人40万円70万円
50円コース50円以上4〜5人70万円70万円
50円コース50円以上6〜7人90万円90万円
50円コース50円以上8人以上110万円110万円
50円コース50円以上10人以上※130万円130万円
70円コース70円以上1人40万円50万円
70円コース70円以上2〜3人50万円100万円
70円コース70円以上4〜5人130万円130万円
70円コース70円以上6〜7人180万円180万円
70円コース70円以上8人以上230万円230万円
70円コース70円以上10人以上※300万円300万円
90円コース90円以上1人90万円100万円
90円コース90円以上2〜3人150万円240万円
90円コース90円以上4〜5人270万円270万円
90円コース90円以上6〜7人360万円360万円
90円コース90円以上8人以上450万円450万円
90円コース90円以上10人以上※600万円600万円

※「10人以上」の上限額区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象となります。 (出典:厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」)

助成率は、事業場内最低賃金の水準で2段階に分かれます。

事業場内最低賃金助成率
1,050円未満4/5
1,050円以上3/4

特例事業者とは

次のいずれかに当てはまる事業者が特例事業者です。

区分要件
① 賃金要件申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満である事業者
② 物価高騰等要件原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前6か月間平均における利益率が前年度と比べ3%ポイント以上低下している事業者

②に該当する場合は、助成対象経費の拡充も受けられます。通常は対象外のPC・スマートフォン・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入が、助成対象になります。

助成金額の計算方法

助成額は「設備投資等にかかった費用 × 助成率」と「助成上限額」を比べ、安い方の金額になります。厚生労働省が示す計算例は次のとおりです。

  • 事業場内最低賃金が1,040円 → 助成率 4/5
  • 8人の労働者を1,130円まで引き上げ(90円コース) → 助成上限額 450万円
  • 設備投資などの額が 600万円
  • 600万円 × 4/5 = 480万円 > 助成上限額 450万円450万円が支給

4. 専門家の視点——令和7年度から変わった3点

令和8年度は、令和7年度から次の3点が変更されています。ここを見落とすと、去年と同じつもりで申請して外します。

変更点内容
自動車助成対象経費の特例となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)は助成対象外になりました
対象労働者引き上げる対象労働者は、雇用保険被保険者が対象になりました
物価高騰等要件売上高総利益率・売上高営業利益率の申出書の記入が、「最近3か月間のうち任意の1月」から「最近6か月間平均」になりました

(出典:厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」)

対象労働者は、週所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者が対象です。週20時間未満のパート・アルバイトの時給だけを上げても、この助成金では「引き上げる労働者」に数えられません。

また、「引き上げる労働者数」の数え方にもルールがあります。事業場内最低賃金である労働者に加えて、その人の賃金引き上げによって賃金額が追い抜かれる労働者も算入できます。ただし、いずれも申請コースと同額以上の引き上げが必要です。すでに引き上げ後の事業場内最低賃金以上をもらっている人は算入できません。

💬 実務の現場から
賃上げと設備投資のご相談をいただく場面で、一般論として最初にお伝えしているのは、「助成金ありき」で設備を選ばないほうがよい、ということです。過去のご相談の傾向として申し上げると、うまくいくのは、もともと必要だった設備投資(人手不足を埋める機械、業務フローの見直し)が先にあり、そこに助成金と賃上げのタイミングを合わせたケースです。逆に、助成金を取るために不要な設備を買い、賃上げが固定費として残るだけ、という形は避けたいところです。就業規則に引き上げ後の金額を書き込む以上、賃上げは翌年以降も戻せません。

5. 実務で押さえるべきこと——助成金にかかる税金

見落とされがちなのが、助成金は課税されるという点です。600万円を受け取っても、その全額が手元に残るわけではありません。

① 法人税・所得税——原則として益金・収入金額

法人税では、収益は原則としてその収入すべき権利が確定した日の属する事業年度に計上します(法人税法第22条の2)。助成金は、一般に交付決定があった日に権利が確定すると考えられ、その事業年度の益金に算入するのが原則です。個人事業主も同様に、事業所得の収入金額(雑収入)として課税されます。

つまり、受け取った助成金には法人税等(または所得税・住民税)がかかります

② 圧縮記帳——課税を先送りできる場合がある

固定資産の取得や改良に充てるために国等から交付を受けた補助金(国庫補助金等)で、その交付目的に適合した固定資産を取得した場合には、圧縮記帳により、その事業年度の課税を繰り延べる制度があります。

いずれも確定申告書に一定の明細書を添付することが要件です。圧縮記帳は税金が「消える」制度ではなく、圧縮した分だけ減価償却費が減るため、課税の繰り延べである点にご注意ください。適用の可否は、交付の目的と取得資産の内容によって個別に判断が必要です。

③ 消費税——不課税

国または地方公共団体からの補助金や助成金等は、対価を得て行う取引ではないため、消費税の課税の対象になりません(国税庁タックスアンサー No.6157「課税の対象とならないもの(不課税)の具体例」)。一方、購入した設備は課税仕入れですので、課税事業者であれば仕入税額控除の対象になります。

💡 助成金の「効き方」は、①受給額そのもの ②圧縮記帳を使えるか ③賃上げに伴う社会保険料の増加、の3つを通算して初めて見えます。上限額の大きさだけで判断せず、資金繰り表と税額まで落として比べてください。なお、賃上げに取り組む事業者向けには、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」という融資メニューもあります(厚生労働省の案内に参考として掲載)。助成金は後払いのため、設備代金の立替えをどう回すかは融資とセットで設計するのが現実的です。

6. 業務改善助成金でよくある失敗と王道

❌ やってしまいがちな失敗
  • 交付決定を待たずに設備を発注・購入してしまう(それだけで助成対象外)
  • 地域別最低賃金の発効日当日に賃上げを実施してしまう(前日までに完了が必要)
  • 賃上げを複数回に分けて実施する(分割は認められません)
  • 週20時間未満のパート・アルバイトの時給だけを上げて、対象労働者に数えられない
  • 就業規則に引き上げ後の事業場内最低賃金を書き込まないまま実績報告をする
  • 助成金を「まるまる手取り」と見込んで資金繰り表を作る(課税されます)
  • 令和7年度の情報のまま自動車を助成対象として計画する(令和8年度は対象外)
⭕ 実務の王道
  • 申請 → 交付決定 → 設備導入・賃上げの順序を厳守する
  • 9月1日の受付開始に間に合うよう、8月中に見積り・計画・就業規則案まで準備しておく
  • 自社の事業場内最低賃金が1,050円の上か下かを先に確認し、助成率(4/5か3/4か)とコースを決める
  • 引き上げる労働者数を、追い抜かれる労働者まで含めて正確に数え、上限額が跳ねる区分を狙う
  • 助成金の益金計上時期と圧縮記帳の可否を、申請前に顧問税理士と確認しておく
  • もともと必要な設備投資に助成金を合わせる(助成金のために不要な設備を買わない)

その他、押さえておきたい注意事項として、同一事業場の申請は年度内1回まで予算の範囲内での交付のため申請期間内でも募集を終了する場合がある過去に業務改善助成金を活用した事業者も対象になる、という点があります。要件は交付要綱・要領で必ず最新版をご確認ください。

7. まとめ

令和8年度の業務改善助成金は、賃上げと設備投資を同時に進める中小企業にとって、資金面の後押しになる制度です。要点は次のとおりです。

  • 申請受付は令和8年9月1日から。締切は地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日の早い日で、窓は実質1か月程度
  • 上限は最大600万円(90円コース・10人以上・特例事業者)。助成率は事業場内最低賃金1,050円未満で4/5、1,050円以上で3/4
  • 令和7年度から、自動車は対象外対象労働者は雇用保険被保険者、物価高騰等要件は6か月間平均へ変更。
  • 順序は申請 → 交付決定 → 設備導入・賃上げ。交付決定前の購入は対象外、賃上げは発効日の前日までに完了、分割引き上げは不可。
  • 助成金は課税対象。圧縮記帳を使えるかどうかで手残りが変わるため、申請前に税務の確認を。

「賃上げの原資をどう作るか」「助成金と融資と設備投資をどう組み合わせるか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、資金繰り表と税額まで落とし込んだ設計に伴走しています。9月1日の受付開始に間に合わせるには8月中の準備が要になりますので、お早めにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

令和8年度の業務改善助成金は、いつからいつまで申請できますか?

厚生労働省の案内によれば、申請期間は令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日までです。発効日が10月1日の地域であれば9月30日が締切となり、実質1か月程度しかありません。加えて、予算の範囲内で交付されるため、申請期間内でも募集が終了する場合があります。

助成金の上限600万円は、どうすれば受けられますか?

90円コース(事業場内最低賃金を90円以上引き上げ)で、10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合の上限額が600万円です。ただし「10人以上」の区分は特例事業者が対象です。特例事業者とは、事業場内最低賃金が1,050円未満である事業者、または申請前6か月間平均の利益率が前年度と比べ3%ポイント以上低下している事業者をいいます。

交付決定の前に設備を買ってしまいました。あとから対象にできますか?

厚生労働省の案内では、交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は助成の対象とならないと明記されています。順序は「申請 → 交付決定 → 設備導入」です。すでに購入済みの設備を後から対象に含めることは想定されていません。

受け取った助成金に税金はかかりますか?

かかります。法人であれば原則として交付決定があった日の属する事業年度の益金、個人事業主であれば事業所得の収入金額(雑収入)となります。ただし、固定資産の取得に充てた部分については、要件を満たせば圧縮記帳(法人税法第42条、所得税法第42条)により課税を繰り延べられる場合があります。消費税については、国等からの補助金・助成金は不課税です。

パート・アルバイトの時給を上げれば対象になりますか?

引き上げる対象労働者は、週所定労働時間が20時間以上の雇用保険被保険者に限られます(令和8年度から雇用保険被保険者が対象と明記されました)。また、雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。週20時間未満の方の時給を上げても、この助成金の「引き上げる労働者」には算入できません。

令和7年度と何が変わりましたか?

主な変更点は3つです。①助成対象経費の特例となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)が助成対象外になりました。②引き上げる対象労働者が雇用保険被保険者に限定されました。③物価高騰等要件に係る売上高総利益率・売上高営業利益率の申出書の記入が、「最近3か月間のうち任意の1月」から「最近6か月間平均」に変わりました。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、令和8年度の業務改善助成金に関する一般的な情報提供であり、個別の申請可否や税務判断に代わるものではありません。助成要件・上限額・申請期限は今後変更される場合があり、実際の申請にあたっては必ず最新の交付要綱・要領および管轄の都道府県労働局の案内をご確認ください。税務上の取扱いは事実関係により異なりますので、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月26日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・補助金・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。