被災した会社の法人税はどうなる?災害損失特別勘定・修繕費の30%基準・災害損失の繰戻し還付を税理士が解説
- 1. 全体像——被災した法人に用意されている8つの取扱い
- 2. 壊れた資産——滅失損・撤去費用と、資産の評価損
- 3. 直す費用——修繕費か資本的支出か
- 4. まだ直していない分を今期に落とす——災害損失特別勘定
- 5. 赤字になったら——繰越しと繰戻し還付
- 6. 従業員と取引先を助けたときの費用
- 7. 実務で押さえるべきこと
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 全体像——被災した法人に用意されている8つの取扱い
国税庁のFAQ〔Q1〕は、被災した法人における取扱いとして次の8つを挙げています。
- (1) 災害により滅失・損壊した資産等の損失や費用(法人税法第22条第3項)
- (2) 資産の評価損(法人税法第33条第2項)
- (3) 復旧のために支出する費用の資本的支出と修繕費の区分(法人税基本通達7-8-6)
- (4) 損壊した賃借資産に係る補修費(法人税基本通達7-8-10)
- (5) 災害損失特別勘定の繰入額の損金算入等(法人税基本通達12-2-5〜12-2-15)
- (6) 災害による損失金の繰越し(法人税法第58条)
- (7) 災害損失の繰戻しによる法人税額の還付(法人税法第80条)
- (8) 仮決算の中間申告による所得税額の還付(法人税法第72条、第78条)
さらにFAQは、被災者に対して支援を行った法人における取扱いとして7つを挙げています。後半で触れる災害見舞金や売掛金の免除などがこれにあたります。
順番に見ていきます。
2. 壊れた資産——滅失損・撤去費用と、資産の評価損
落とせる損失と費用
法人の有する商品、店舗、事務所等の資産が災害により被害を受けた場合、次のような損失や費用の額は損金の額に算入されます(法人税法第22条第3項)。
- 商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失または損壊した場合の損失
- 損壊した資産の取壊しまたは除去のための費用
- 土砂その他の障害物の除去のための費用
災害による地盤沈下または地割れにより地盛りを行った場合の費用についても、FAQ〔Q7〕は、被災資産につき原状を回復するために要した復旧費用として、支出した日を含む事業年度の損金の額に算入することができるとしています(法人税基本通達7-8-6(1))。
壊れていないが価値が落ちた——資産の評価損
「滅失も損壊もしていないが、著しく傷んで売り物にならない」という状態には、評価損の道があります。
法人の有する商品、店舗、事務所等の資産につき災害による著しい損傷が生じたことにより、その資産の時価が帳簿価額を下回ることとなった場合において、損金経理によりその時価と帳簿価額との差額を減額したときは、その減額した日の属する事業年度の損金の額に算入することができます(法人税法第33条第2項、同法施行令第68条第1項)。
対象になる資産は、棚卸資産・固定資産等のほか、FAQ〔Q2〕によれば、他の者の有する固定資産を利用するために支出した分担金等に係る繰延資産も評価損の計上の対象とすることができます。
3. 直す費用——修繕費か資本的支出か
被災資産の復旧費用は、修繕費(その期に全額損金)になるか、資本的支出(資産に計上して減価償却)になるかで、その期の税額が大きく変わります。ここには災害特有の緩和が用意されています。
3つの原則(法人税基本通達7-8-6)
災害により被害を受けた固定資産(その被害に基づき評価損を計上したものを除きます。以下「被災資産」)について支出する費用の区分は、次のとおりです。
- ① 被災資産についてその原状を回復するための費用は、修繕費となります
- ② 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れの防止等のために支出する費用について、修繕費としているときは、その処理が認められます
- ③ 被災資産について支出する費用(①または②に該当するものを除く)の額のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、その処理が認められます
②の具体例として、FAQ〔Q3〕は「二次災害を回避するなどの目的で、被災した建物について耐久性を高めるための補強工事または排水もしくは土砂崩れの防止等のための工事等」を挙げ、これらは被災建物の崩壊等の被害を防止するなど、被災資産の被災前の効用を維持するためのものが多いと考えられるため、修繕費として経理したときはその処理が認められる、としています。
〔Q4〕は、被災した鉄道線路、電線路、ガス管、水道管、コンベアなどの一部を取り替えた場合についても、被災前の効用を維持するためのものであると考えられるため、修繕費として経理したときはその処理が認められるとしています。
賃借している資産を直したとき(法人税基本通達7-8-10)
法人が賃借資産(賃借をしている土地、建物、機械装置等)につき修繕等の補修義務がない場合においても、その賃借資産が災害により被害を受けたため、その法人が賃借資産の原状回復のための補修を行い、その補修のために要した費用を修繕費として経理しているときは、その処理が認められます。
「大家の資産だから、うちで直しても損金にならないのでは」という誤解が実務では起こりますが、災害の場面ではこの通達が受け皿になります。
落とし穴は3つ
落とし穴1:被災していない資産の補強は資本的支出 FAQ〔Q5〕は、被災資産以外の資産について耐久性を高めるための工事を行った場合には、原則として、その工事に要した費用は、その資産の使用可能期間の延長または価額の増加をもたらすものとして資本的支出に該当し、その支出金額が新たな減価償却資産の取得価額となる、としています(法人税法施行令第55条、第132条)。同じ「地震対策の補強工事」でも、被災したかどうかで結論が反対になります。
落とし穴2:修繕に代えて新しく買ったら取得価額 FAQ〔Q6〕は、被災資産の修繕に代えて新規に資産を取得した場合には、新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額は資産の取得価額となるため、修繕費として処理することは認められない、としています(法人税基本通達7-8-6(注)1)。なお、この場合に被災した建物等を取り壊しているときは、その建物等の帳簿価額を除却損として計上することになります。
落とし穴3:30%基準は「明らかでないもの」だけ ③の30%基準は、①原状回復でも②効用維持の補強でもなく、資本的支出か修繕費か明らかでない費用が対象です。工事の内容が明らかに機能向上であるものまで30%を落とせるわけではありません。工事の内訳を「原状回復」「効用維持」「区分不明」に分けて記録しておくことが、この特例を使う前提になります。
4. まだ直していない分を今期に落とす——災害損失特別勘定
決算日までに修繕が終わらないことは、災害では普通に起こります。そのままだと、損失は今期、修繕費は来期以降に分かれて、被災した期の決算だけが極端に悪く見えます。
これを調整するのが災害損失特別勘定です(法人税基本通達12-2-5〜12-2-15)。
法人が、災害のあった日の属する事業年度において、災害により被害を受けた棚卸資産、固定資産等の修繕等のために、災害のあった日から1年以内に支出する費用の適正な見積額として、繰入限度額以下の金額を損金経理により災害損失特別勘定に繰り入れた場合には、その繰り入れた金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。
その後、災害のあった日から1年を経過する日の属する事業年度において、災害損失特別勘定の残額があるときは、その残額を取り崩して益金の額に算入します。ただし、やむを得ない事情により修繕等が遅れているときは、税務署長等の確認を受けることにより、その修繕等が完了すると見込まれる日の属する事業年度まで、その残額の益金算入の時期を延長することができます。
国税庁は、この取扱いについて「災害損失特別勘定など災害関係諸費用に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」を公表しており、FAQもそちらを参照するよう案内しています。
5. 赤字になったら——繰越しと繰戻し還付
白色申告でも10年繰り越せる(法人税法第58条)
通常、欠損金を翌期以降に繰り越せるのは青色申告書を提出した事業年度の欠損金だけです。ところが災害は例外です。
法人の有する棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係る欠損金額(災害損失欠損金額)がある場合には、その損失の発生した事業年度が青色申告書を提出できない事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その事業年度から10年間にわたって繰り越して控除されます(法人税法第58条)。
ただし条件があります。同条第3項は、欠損金額の生じた事業年度の確定申告書、修正申告書または更正請求書に、災害損失金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がない場合には、その事業年度の災害損失金額はないものとして扱う、と定めています。明細書を付け忘れると、権利そのものが消えます。
過去の法人税を取り戻す(法人税法第80条第5項)
さらに強力なのが災害損失の繰戻しによる法人税額の還付です。
災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度、または災害のあった日から同日以後6か月を経過する日までの間に終了する中間期間(=災害欠損事業年度)において生じた災害損失欠損金額がある場合には、その災害欠損事業年度開始の日前1年(青色申告書である場合には、前2年)以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)の法人税額のうち、災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付を請求することができます(法人税法第80条)。
ここが実務で誤解されやすいところです。通常の欠損金の繰戻し還付は青色申告が前提ですが、災害損失の繰戻し還付は白色申告でも前1年分について使えます。
整理すると次のようになります。
| 区分 | 繰越し | 繰戻し還付 |
|---|---|---|
| 青色申告 | 10年 | 前2年以内 |
| 白色申告 | 10年 | 前1年以内 |
- 繰越しの根拠は法人税法第58条です。白色申告の場合に繰り越せるのは、災害損失欠損金額に達するまでの金額に限られます。
- 繰戻し還付の根拠は法人税法第80条第5項です。還付されるのは、還付所得事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分です。
(出典:国税庁「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(令和6年1月)〔Q1〕(6)(7)、および法人税法第58条・第80条)
決算を待たずに還付を受ける(法人税法第72条、第78条)
災害のあった日から同日以後6か月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失金額がある場合には、仮決算の中間申告において、その中間期間において課される所得税(復興特別所得税を含みます)でその中間期間の法人税額から控除しきれなかった金額(災害損失金額を限度)の還付を受けることができます(法人税法第72条、第78条)。
つまり、期末を待たずに、上半期の時点で資金を戻せる場合があるということです。被災直後の資金繰りにおいて、これは見逃せません。
なお、義援金や見舞金を受け取った側の処理も押さえておく必要があります。FAQ〔Q24〕は、法人が受けた義援金や見舞金の収入金額は益金の額に算入される(法人税法第22条第2項)としています。損失は損金、受け取った見舞金は益金です。
6. 従業員と取引先を助けたときの費用
従業員への支援
災害見舞金品(FAQ〔Q8〕) 法人が被災した自己の従業員等に支給する災害見舞金品が福利厚生費として取り扱われるためには、その支給が、①被災した全従業員に対して被災した程度に応じて支給されるものであるなど、各被災者に対する支給が合理的な基準によっていること、②その金額もその支給を受ける者の職務上の地位等に照らし被災に対する見舞金として社会通念上相当であることなどの「一定の基準」に則ったものであることが必要です。この「一定の基準」は、あらかじめ社内の慶弔規程等に定めていたもののほか、今回の災害を機に新たに定めた規程等であっても該当するものとして取り扱われます。
〔Q9〕は、既に退職した従業員または採用内定者に対する災害見舞金品であっても、被災した自己の従業員等と同一の基準に従って支給するものは、福利厚生費として損金の額に算入されるとしています(租税特別措置法関係通達61の4(1)-10(2))。
源泉徴収の要否(FAQ〔Q29〕〜〔Q33〕)
- 災害見舞金:個人が心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(役務の対価たる性質を有するものを除く)については、所得税は課されません(所得税法第9条第1項第18号、同法施行令第30条第3号)。会社が、被災者の所有資産の損害の程度(全壊、半壊、床上浸水、床下浸水など)に基づき支給額を定めるなど、損害の程度に応じて一定の基準をもって支給額を定めている場合には、「相当の見舞金」に該当すると考えられるため、給与として源泉徴収をする必要はありません
- 生活資金の無利息貸付け:被災した従業員に対して、生活に必要な資金を、損害の程度に応じた返済期間を定め、無利息で貸し付けた場合の利息相当額の経済的利益については、合理的と認められる期間内に受ける経済的利益と考えられますので、給与として源泉徴収をする必要はありません(所得税基本通達36-28(1))
- 社宅の無償貸与:被災した方が新たな住居に入居できるまで、または自宅の修繕が完了して居住可能となるまでの間、無償で社宅を貸与する場合には、その貸与期間に受ける家賃相当額の経済的利益は「相当の見舞金」に該当するものと考えられるため、源泉徴収は不要です
- 代替交通費:通勤に利用する交通手段が災害により利用できないため、他の交通手段を利用した場合に支給する実費相当額の交通費については、その利用した交通手段が合理的なものであれば、旅費に準じて非課税と考えられるため、源泉徴収は不要です(所得税法第9条第1項第4号)。災害により交通手段が遮断されたため、やむを得ず宿泊した場合に実費で支給する宿泊費用も同様に取り扱われると考えられます
従業員自身の源泉所得税を止める(FAQ〔Q34〕) 給与の支払を受ける従業員が、災害により住宅や家財などに損害を受け、①災害による雑損失の金額の見積額または繰越雑損失の金額がある場合、または②災害による住宅または家財の損害額がその住宅または家財の価額の50%以上で、かつ、その年分の合計所得金額の見積額が1,000万円以下である場合には、従業員が勤務先を経由して申請することにより、その支払を受ける給与について、源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予または既に徴収された税額の還付を受けることができます(災害減免法第3条第2項・第5項、災害減免法施行令第3条の2)。
なお、徴収猶予や還付を受けた人は年末調整の対象とならないため、確定申告で雑損控除または災害減免法による軽減免除の適用を受けることにより精算することになります(災害減免法第3条第6項)。給与担当者はここを押さえておかないと、年末に処理を誤ります。
取引先への支援
売掛金等の免除(FAQ〔Q15〕〜〔Q17〕) 法人が売掛金等の債権を免除した場合に、その免除が取引先の復旧過程においてその復旧支援を目的として行われるものであるときは、その免除したことによる損失の額は、寄附金や交際費等以外の費用として取り扱われます(法人税基本通達9-4-6の2、租税特別措置法関係通達61の4(1)-10の2)。
- 「取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のように直接取引を行うもののほか、商社等を通じた取引であっても自ら価格交渉等を行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者も含まれます
- 自社だけが免除しても構いません。〔Q16〕は「復旧支援は、それを行うかどうかは個々の企業の判断によらざるを得ないのであり、その被災した法人の取引先の全てが復旧支援を行うことが前提とされているわけではありません」としています
- 時期には制限があります。〔Q17〕は、売掛債権の免除は、災害発生後相当の期間内——例えば、店舗等の損壊によりやむなく仮店舗により営業を行っている場合のように、被災した取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内に行うことが前提となる、としています
消費税の側では、その免除による損失の額が法人税法上の寄附金および交際費等以外の費用とされるものについては、当該費用として処理した売掛債権に係る消費税額を、その処理した課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除することができます(消費税法第38条第1項)。その場合、原則として取引先に対して適格返還請求書の交付が必要です(消費税法第57条の4第3項)。
低利または無利息による融資(FAQ〔Q18〕) 災害により被害を受けた取引先に対して低利または無利息による融資を行う場合、通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、その融資が被災した取引先の復旧支援を図るものであり、かつ、その取引先の被災の程度、取引の状況等を勘案した合理性を有するものである限りにおいては、特にその融資期間や融資額に制限はありません(法人税基本通達9-4-6の3)。
帳簿書類を消失しても仕入税額控除は認められる(FAQ〔Q25〕) 被災により消費税の課税仕入れに係る帳簿書類を消失した場合、また、売手である適格請求書発行事業者が被災したことで適格請求書の交付を行うことができず、買手においてその保存をすることができなかった場合、いずれも災害その他やむを得ない事情により帳簿及び請求書等を保存できなかった場合に該当するため、帳簿及び請求書等の保存がない課税仕入れについても、仕入税額控除は認められます(消費税法第30条第7項ただし書き)。
7. 実務で押さえるべきこと
- 復旧工事を一括で修繕費に計上し、被災していない資産の補強工事まで混ぜてしまう
- 被災した建物を建て替えたのに、その取得費用を修繕費として処理してしまう
- 決算日までに修繕が終わらず、災害損失特別勘定を使わないまま決算を締める
- 白色申告だから繰戻し還付は使えないと思い込み、法人税法第80条第5項を検討しない
- 災害損失欠損金を繰り越すつもりで、明細を記載した書類の添付を忘れる(法人税法第58条第3項)
- 従業員への見舞金を規程なしで人によって違う金額で配り、給与課税のリスクを作る
- 取引先への売掛金免除を、復旧過程が終わってから行い、寄附金として扱われる
- 工事の見積書と請求書を、「原状回復」「効用維持の補強」「区分不明」「被災していない資産」の4つに分けて記録する。この分類がそのまま税務上の区分になります
- 評価損も災害損失特別勘定も損金経理が要件。決算前に、被害資産の一覧・時価の根拠・修繕の見積額を固めておく
- 大きな赤字が見えたら、繰戻し還付(過去)と繰越し(将来)のどちらが有利かを試算する。還付は資金が今戻り、繰越しは将来の税額を減らします
- 中間期間で損失が確定しているなら、仮決算の中間申告による所得税額の還付を検討する
- 従業員への見舞金は、支給前に基準を文書化する。災害を機に新たに定めた規程でも認められます
- 取引先を支援するなら、復旧過程にある期間内に実行する。免除の理由と時期を議事録に残す
- 消費税は、帳簿書類を消失しても仕入税額控除が否定されない(消費税法第30条第7項ただし書き)。消失した事実と範囲を記録に残しておく
被災後の決算でいちばん差がつくのは、税務の知識よりも記録の残し方です。工事の内訳が「復旧工事一式」としか書かれていない請求書は、原状回復なのか機能向上なのかを後から説明できません。逆に、写真と見積書の内訳が揃っていれば、修繕費・資本的支出・区分不明の30%基準まで、条文の受け皿にきちんと乗せられます。片づけの前に写真を撮り、工事業者には内訳を分けた見積書をお願いする。この2つで、あとの選択肢がまったく変わります。
8. まとめ
- 被災した法人には、壊れた分を落とす/直す費用を落とす/まだ直していない分を今期に落とす/赤字を過去と将来に振り分けるという4段構えの取扱いが用意されています。
- 滅失・損壊の損失、取壊し・除去費用、土砂等の障害物の除去費用は損金です(法人税法第22条第3項)。著しい損傷で時価が帳簿価額を下回ったときは、損金経理により評価損を計上できます(法人税法第33条第2項)。
- 復旧費用は、①原状回復=修繕費、②被災前の効用を維持する補強・排水・土砂崩れ防止=修繕費として経理すればその処理が認められる、③区分が明らかでないもの=30%相当額を修繕費・残額を資本的支出とする経理が認められます(法人税基本通達7-8-6)。
- 被災していない資産の耐久性を高める工事は資本的支出、修繕に代えて新規取得した資産は取得価額です。ここが最大の落とし穴です。
- 決算までに修繕が終わらないときは、災害損失特別勘定(法人税基本通達12-2-5〜12-2-15)で、災害のあった日から1年以内に支出する費用の適正な見積額を損金経理により繰り入れられます。
- 災害損失欠損金は、白色申告でも10年繰り越せます(法人税法第58条)。ただし明細を記載した書類の添付が要件です。
- 災害損失の繰戻し還付は、白色申告でも前1年分、青色申告なら前2年分について請求できます(法人税法第80条第5項)。中間期間の損失なら、仮決算の中間申告で所得税額の還付を受けられる場合もあります(法人税法第72条、第78条)。
- 従業員への災害見舞金・無利息貸付け・社宅の無償貸与・代替交通費は、一定の基準に従って支給していれば源泉徴収は不要です。基準は災害を機に新たに定めた規程でも構いません。
- 取引先への売掛金免除は、復旧過程にある期間内に行えば寄附金・交際費等以外の費用になります(法人税基本通達9-4-6の2)。消費税では適格返還請求書の交付が原則として必要です。
税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、被災後の決算方針の設計、修繕費と資本的支出の区分、災害損失特別勘定の繰入額の検討、繰戻し還付と繰越しの有利判定までを一体でご支援しています。判断の分かれ目は決算日の前にあります。工事に着手する前にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
災害の復旧費用は、全額を修繕費にできますか?
地震対策として、被災していない工場も補強しました。修繕費になりますか?
被災した建物を修繕せず建て替えました。取得費用は修繕費になりますか?
決算までに修繕が終わりません。今期の損金にできませんか?
白色申告でも欠損金を繰り越せますか?
去年払った法人税を取り戻せますか?
期末を待たずに資金を戻す方法はありますか?
従業員に災害見舞金を出します。給与として源泉徴収が必要ですか?
見舞金の規程を今から作っても間に合いますか?
被災した取引先の売掛金を免除しました。寄附金になりますか?
帳簿や請求書を消失しました。消費税の仕入税額控除はどうなりますか?
受け取った義援金や見舞金は課税されますか?
出典・参考資料
- 国税庁「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(令和6年1月)
- 国税庁「災害関連情報」
- 国税庁「災害損失特別勘定など災害関係諸費用に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」(国税庁FAQ〔Q1〕(5)が参照先として案内。掲載URLは変更されている場合があるため、国税庁サイト内検索でご確認ください)
- 国税庁「災害損失の繰戻しによる法人税額の還付(法人税法第80条第5項)及び仮決算の中間申告による所得税額の還付(同法第72条第4項、第78条)の適用を受ける場合の申告書等の記載例」(同上)
- 国税庁「令和8年熊本地震に係る国税の申告・納付等の期限の延長について」(令和8年8月4日)
- 法人税法(昭和40年法律第34号)第58条(青色申告書を提出しなかつた事業年度の欠損金の特例)|e-Gov法令検索
- 法人税法 第80条(欠損金の繰戻しによる還付)|e-Gov法令検索
- 法人税法 第72条(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)|e-Gov法令検索
- 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和22年法律第175号)第3条|e-Gov法令検索
本記事は、国税庁の公表資料および条文原文に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。国税庁のFAQは令和6年1月1日現在の法令・通達等に基づいて作成されたものです。修繕費と資本的支出の区分、災害損失特別勘定の繰入額、災害損失欠損金額の計算は、被災の状況や工事の内容により結論が変わります。実際の処理にあたっては、最新の法令・通達および所轄税務署の案内をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月6日
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無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
