経費で落とせるものとは?個人事業主の必要経費の範囲と判断基準を税理士が解説【2026年版】

「これは経費で落とせますか」——独立したばかりの個人事業主・フリーランスの方から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズに最も多く寄せられるのが、この必要経費に関するご相談です。経費を1円でも多く計上できれば所得が下がり、所得税・住民税・国民健康保険料まで軽くなります。一方で、事業と関係のない支出を経費に入れれば、税務調査で否認され、加算税・延滞税を含めて後から追徴されます。経費は「多ければよい」のではなく、事業に必要で、根拠を説明できる支出だけを正しく計上することが本質です。 「経費で落とせるもの」に絶対的なリストがあるわけではありません。同じ支出でも、事業に使えば経費、プライベートに使えば経費になりません。判断の軸は一つ、その支出が事業(業務)の遂行上必要だったかです。本記事では、必要経費の法律上の定義から、経費になる科目・ならない支出、自宅や車のように事業と家事が混ざる「家事関連費」の按分、そして税務署に認めてもらうための証拠の残し方までを、国税庁の一次情報にもとづいて網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 必要経費とは何か(3行サマリー)
  2. 2. 経費で落とせる主なもの(科目別一覧)
  3. 3. 経費で落とせないもの(間違えやすい支出)
  4. 4. 自宅・車など「家事関連費」の按分
  5. 5. 10万円以上の買い物は「減価償却」
  6. 6. 経費を「認めてもらう」ための証拠の残し方
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 必要経費とは何か(3行サマリー)

  • 必要経費=収入を得るために直接かかった費用と、その年の業務上の費用——所得税法上、必要経費に算入できるのは「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用」と「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用」です(所得税法第37条、国税庁タックスアンサーNo.2210)。
  • 判断の軸は「事業に必要かどうか」——事業の売上を生むために使った支出は経費、プライベートのための支出(家事費)は経費になりません。同じ飲食代でも、取引先との商談なら経費、家族との食事なら経費ではありません。
  • 家事と事業が混ざる支出は「按分」する——自宅兼事務所の家賃や、仕事にも私用にも使う車のように、事業と家事が混ざる支出(家事関連費)は、業務上必要な部分を合理的に区分できれば、その部分だけを経費にできます。
💡 経費かどうかは「領収書があるか」では決まりません。領収書は支払いの証拠にすぎず、その支出が事業に必要だったかが経費性の判断基準です。だからこそ、「誰と・何の目的で使ったか」を帳簿やメモに残しておくことが、経費を守る決め手になります。

2. 経費で落とせる主なもの(科目別一覧)

個人事業主・フリーランスの事業で、必要経費になりやすい主な支出を科目別に整理します。いずれも事業に使った部分に限るのが大前提です。

科目経費になる主な支出の例
売上原価・仕入販売する商品の仕入代金、製造のための材料費
外注費業務の一部を他者に発注した報酬、制作・システムの委託料
給料賃金従業員へ支払う給与(生計を一にする親族分は原則対象外。青色事業専従者給与は別枠)
地代家賃事務所・店舗の家賃、駐車場代(自宅兼用は按分)
水道光熱費事務所・店舗の電気・ガス・水道(自宅兼用は按分)
通信費事業用の電話・インターネット・切手・サーバー代(私用兼用は按分)
旅費交通費電車・バス・タクシー・宿泊費・出張旅費
接待交際費取引先との飲食、手土産、慶弔費(事業関係先に限る)
広告宣伝費チラシ・Web広告・名刺・看板・ホームページ制作費
消耗品費10万円未満の備品、文具、事務用品
減価償却費10万円以上の器具・備品・車両等を耐用年数で費用化した額
租税公課事業税、事業用資産の固定資産税、印紙税、自動車税(事業割合)
損害保険料事業用資産の火災保険、事業の賠償責任保険
修繕費事業用資産の修理・メンテナンス費用
支払手数料振込手数料、専門家報酬、決済サービス手数料
新聞図書費・研修費事業に必要な書籍・新聞、セミナー・研修の受講料

上の科目はあくまで代表例です。ここにない支出でも、事業の遂行上必要で、その必要性を説明できるものは必要経費になり得ます。逆に、表に載っている科目でも、私的な部分は経費になりません。

3. 経費で落とせないもの(間違えやすい支出)

一方で、事業に関係していても必要経費にならない支出があります。間違えやすいものを整理します。

❌ 必要経費にならない主な支出
  • 事業主自身の給料・生活費——個人事業主本人の取り分(事業主貸)は経費になりません。稼いだ利益がそのまま本人の所得です
  • 所得税・住民税——事業の税金ではなく個人にかかる税金のため、租税公課にできません(国税庁No.2210)
  • 国民健康保険料・国民年金保険料——必要経費ではなく、確定申告で「社会保険料控除」として所得控除に回します
  • 生計を一にする親族への給与・地代家賃——同居の家族へ払う給与や家賃は原則経費になりません(青色事業専従者給与など一定の例外を除く)
  • 罰金・交通反則金・延滞税——反則金や加算税・延滞税は経費になりません
  • 借入金の元本返済——返済のうち利息は経費ですが、元本は経費になりません
  • 10万円以上の資産の購入額を一括で——後述の減価償却で複数年に分けて費用化します
💡 国民健康保険料・国民年金・生命保険料・iDeCoの掛金などは、「経費」ではなく確定申告書の所得控除で差し引きます。経費に入れられないからといって、税金が安くならないわけではありません。経費(事業の費用)と所得控除(個人の事情に応じた控除)は別のルートで、両方を正しく使うことで税負担が最適化されます。

4. 自宅・車など「家事関連費」の按分

個人事業主でとくに悩ましいのが、自宅兼事務所の家賃や、仕事にも私用にも使う車のように、事業と家事(プライベート)が混ざった支出です。これを家事関連費といいます。

国税庁は、家事関連費のうち必要経費になるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られる」としています(国税庁No.2210、所得税法施行令第96条)。つまり、事業に使った割合を合理的な基準で区分(家事按分)できれば、その部分だけを経費にできます。

支出よく使われる按分の基準
家賃・地代事業に使う部屋の床面積 ÷ 自宅全体の床面積
電気・ガス・水道使用時間、コンセント数、事業スペースの割合など
通信費(スマホ・ネット)業務で使う時間や日数の割合
自動車(ガソリン・保険・減価償却)事業の走行距離 ÷ 総走行距離、使用日数

按分で大切なのは、割合の根拠を自分で説明できることです。「なんとなく5割」ではなく、床面積や使用時間など、後から見て納得できる基準で計算し、その計算根拠をメモや帳簿に残しておきます。合理的な根拠のない高い按分率は、税務調査で否認されやすい典型例です。家事按分の考え方は、家事按分の記事でさらに詳しく解説しています。

5. 10万円以上の買い物は「減価償却」

パソコン・カメラ・車・機械などを買ったとき、その金額をいつ経費にできるかは、取得価額で変わります。

  • 10万円未満——買った年に全額を消耗品費などで一括経費にできます。
  • 10万円以上——原則として、その資産の法定耐用年数にわたって少しずつ費用化します(減価償却)。たとえば10万円以上のパソコンなら、購入年に全額ではなく耐用年数で分割して経費にします。
  • 青色申告なら30万円未満まで一括の特例——青色申告をしている中小事業者は、取得価額30万円未満の資産を、年間合計300万円までその年に一括で経費にできる特例(少額減価償却資産の特例)が使えます。

減価償却は「高額な資産の費用を、使う期間に合わせて配分する」考え方です。詳しくは減価償却の記事をご覧ください。青色申告のこの特例を使えるかどうかで、設備投資をした年の税負担は大きく変わります。

6. 経費を「認めてもらう」ための証拠の残し方

必要経費は、計上するだけでなく、税務調査で説明できる状態にしておくことがセットです。

❌ 経費でやってしまいがちな失敗
  • 事業と関係のないプライベートの飲食・買い物まで経費に入れる
  • 家事按分の割合に根拠がなく、感覚で高い比率を経費にしている
  • 領収書やレシートを保存しておらず、支出を証明できない
  • 誰と・何の目的の飲食かをメモしておらず、交際費の事業関連性を説明できない
  • 10万円以上の資産を一括で経費にしてしまう(本来は減価償却)
⭕ 経費を正しく計上する王道
  • 事業用とプライベート用の口座・クレジットカードを分ける
  • 領収書・レシートは科目ごとに整理し、原則7年間保存する
  • 交際費は領収書の裏や帳簿に「相手先・目的」を書き添える
  • 家事按分は面積・時間などの根拠とともに計算過程を残す
  • 迷う支出は「事業の売上にどうつながるか」を一言で説明できるかで判断する
  • 青色申告を選び、記帳と控除の特典(最大65万円の青色申告特別控除など)をあわせて活かす

よくある質問(FAQ)

経費で落とせるものに決まったリストはありますか?

絶対的なリストはありません。必要経費になるかは、その支出が「事業の遂行上必要だったか」で判断します(所得税法第37条、国税庁No.2210)。同じ支出でも、事業に使えば経費、プライベートに使えば経費になりません。科目別の代表例は本記事の一覧が目安になりますが、最後は事業との関連性で判断します。

自宅で仕事をしています。家賃や電気代は経費にできますか?

事業に使っている部分は経費にできます。家賃なら「事業に使う部屋の床面積 ÷ 自宅全体の床面積」、電気代なら使用時間などの合理的な基準で事業割合を計算し(家事按分)、その部分だけを必要経費に算入します。割合の根拠を説明できるようにしておくことが重要です。

国民健康保険料や国民年金は経費になりますか?

必要経費にはなりませんが、確定申告で「社会保険料控除」として所得から差し引けます。経費(事業の費用)と所得控除(個人の事情に応じた控除)は別のルートです。経費にできないからといって税金が安くならないわけではなく、所得控除で正しく差し引くことで負担が軽くなります。

30万円のパソコンを買いました。全額その年の経費になりますか?

原則は10万円以上なので減価償却の対象で、耐用年数にわたって費用化します。ただし青色申告をしている中小事業者は、取得価額30万円未満の資産を年間合計300万円まで一括で経費にできる特例(少額減価償却資産の特例)が使えます。30万円ちょうどは特例の対象外(30万円「未満」)なので、金額の線引きに注意してください。

家族に払う給料は経費にできますか?

生計を一にする配偶者や親族へ支払う給与は、原則として必要経費になりません。ただし、青色申告をしていて「青色事業専従者給与」の届出を出し、実際に事業に従事し、労働の対価として相当な金額であるといった要件を満たせば、届け出た範囲で必要経費にできます。

8. まとめ

必要経費は「多く積む」ことではなく、「事業に必要な支出を、根拠をもって正しく計上する」ことがすべてです。要点は次のとおりです。

  • 必要経費は、収入を得るために直接要した費用と、その年の販売費・一般管理費その他業務上の費用(所得税法第37条、国税庁No.2210)。
  • 判断の軸は事業の遂行上必要だったか。プライベートの家事費は経費にならない。
  • 自宅・車など事業と家事が混ざる家事関連費は、合理的な基準で按分した事業部分だけを経費にできる。
  • 所得税・住民税、国民健康保険料・国民年金、事業主本人の生活費、借入金の元本は経費にならない(社会保険料等は所得控除へ)。
  • 10万円以上の資産は減価償却。青色申告なら30万円未満の一括特例が使える。
  • 経費は計上して終わりではなく、領収書の保存と按分根拠のメモで「説明できる状態」にしておく。

「この支出は経費にできるのか」「家事按分の割合はどこまで認められるか」「経費と所得控除をどう組み合わせれば税負担が最小になるか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、個人事業主・フリーランスの記帳から、家事按分の設計、青色申告での節税、確定申告までを一体で伴走します。自宅家賃や車をどこまで経費にできるか、根拠の残し方に不安のある方は、お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、個人事業主・フリーランスの必要経費に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。ある支出が必要経費になるかは、事業の内容・支出の目的・事業との関連性・按分の根拠等の事実関係により異なり、制度の要件は改正により変わることがあります。実際の適用にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月15日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。