法人保険は節税になる?損金算入と最高解約返戻率のルールを税理士が解説【2026年版】
- 1. 「保険で節税」の正体(3行サマリー)
- 2. 損金算入ルールが変わった(令和元年通達)
- 3. 最高解約返戻率による資産計上ルール(全区分)
- 4. 法人保険の正しい使い方(出口設計)
- 5. 法人保険の失敗と王道
- 7. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 「保険で節税」の正体(3行サマリー)
- 損金算入は”節税”ではなく”課税の繰り延べ”——保険料を損金にすればその期の利益(課税所得)は減りますが、将来その保険を解約して解約返戻金を受け取ると、それは会社の益金(利益)になります。払うときに減った税金を、受け取るときに払う——課税のタイミングを先送りしているだけで、税金そのものが消えるわけではありません。
- 出口(解約のタイミング)で損失をぶつけられて初めて完結する——解約返戻金という利益が出る期に、役員退職金の支給など大きな損金をぶつけられれば、益金と損金が相殺され、繰り延べてきた効果が生きます。逆に、出口の計画がないまま解約すると、返戻金にまるまる法人税がかかり、「節税」どころか手数料分だけ損をすることもあります。
- どこまで損金にできるかは「最高解約返戻率」で決まる——令和元年(2019年)7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率(保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる割合)の区分に応じて、保険料の一部を資産に計上しなければなりません(法人税基本通達9-3-5の2、国税庁No.5364-2)。返戻率が高い=貯蓄性が高い保険ほど、損金にできる割合は小さくなります。
2. 損金算入ルールが変わった(令和元年通達)
以前は、一定の定期保険(いわゆる「節税保険」)で保険料を全額損金にできる商品が多く販売されていました。これに対し、国税庁は令和元年(2019年)7月8日以後の契約から、貯蓄性の高い保険について保険料の一部を資産計上させる新ルールを導入しました(法人税基本通達9-3-5の2)。
- 対象:法人が契約者、役員・使用人(親族を含む)を被保険者とする、保険期間3年以上の定期保険・第三分野保険で、最高解約返戻率が50%を超えるもの。
- 最高解約返戻率が50%以下の保険は、原則として従来どおり保険料の全額を損金にできます(法人税基本通達9-3-5)。
- 最高解約返戻率が50%を超えると、区分に応じて保険料の一定割合を一定期間は資産に計上し、その後の取崩期間で損金に振り替えていきます。
3. 最高解約返戻率による資産計上ルール(全区分)
令和元年7月8日以後契約の定期保険・第三分野保険(最高解約返戻率50%超)は、次の区分で処理します(国税庁No.5364-2、法人税基本通達9-3-5の2)。
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額(支払保険料のうち) | 取崩期間 |
|---|---|---|---|
| 50%以下 | なし(全額損金) | — | — |
| 50%超70%以下 | 保険期間開始〜40%経過まで | 支払保険料の 40% を資産計上(残り60%は損金) | 保険期間の75%経過後〜終了日 |
| 70%超85%以下 | 保険期間開始〜40%経過まで | 支払保険料の 60% を資産計上(残り40%は損金) | 保険期間の75%経過後〜終了日 |
| 85%超 | 保険期間開始〜最高解約返戻率となる期間の終了日まで(最短5年。保険期間10年未満は50%経過まで) | 当初10年間は90%、11年目以降は70%を資産計上 | 解約返戻金が最も高くなる期間の経過後〜終了日 |
資産に計上した保険料は経費になっていないため、その期の損金は減ります。そして取崩期間に入ると、資産計上した額を取り崩して損金に振り替えます。つまり「最初は損金が小さく、後半で損金が大きくなる」構造です。
4. 法人保険の正しい使い方(出口設計)
新ルール下でも、法人保険には合理的な使い道があります。ポイントは、保険を「節税商品」ではなく「資金の準備手段+課税の繰り延べ」と捉え、出口を先に決めることです。
- 役員退職金の準備:オーナーの退職時期に解約返戻金がピークになるよう契約し、解約益をその期の役員退職金(損金)とぶつけて相殺します。会社は退職金の原資を保険で準備でき、益金と損金が打ち消し合うことで、繰り延べてきた効果が実を結びます。
- 事業承継の資金・納税資金:オーナーに万一のことがあったとき、後継者は自社株の相続税や、他の相続人への代償金(遺産分割の調整金)を用意する必要があります。法人契約の保険金を、死亡退職金や弔慰金の原資、あるいは会社の資金繰りの備えとして活用できます。
- 借入金・連帯保証への備え:オーナー個人が会社の借入に連帯保証をしている場合、経営者の死亡時に保険金で借入を返済できれば、遺族の負担を軽くできます。
5. 法人保険の失敗と王道
- 「全額損金だから節税になる」とだけ聞き、解約時に返戻金が益金になることを知らずに契約している
- 出口(解約益をぶつける損金)を決めずに加入し、返戻金にまるまる課税されてしまう
- 資金繰りが苦しくなり、解約返戻率が低い早期に解約して元本割れする
- 令和元年通達を知らず、最高解約返戻率の区分どおりに資産計上していない(税務調査で損金を否認)
- 経営に必要な現金を保険料に回しすぎ、本業の資金繰りを圧迫している
- 保険料の損金算入は「課税の繰り延べ」と理解し、出口の損金(役員退職金等)を先に設計する
- 解約返戻金がピークになる時期を、役員の退職や承継のタイミングに合わせて契約する
- 最高解約返戻率の区分に従って正しく資産計上・取崩を行い、根拠を帳簿に残す
- 保障(万一の備え)として本当に必要な金額・期間かを、節税とは切り離して検討する
- 本業の資金繰りに支障のない範囲で、無理のない保険料に抑える
よくある質問(FAQ)
法人保険の保険料は全額損金にできますか?
「保険で節税」とは結局どういう意味ですか?
最高解約返戻率が70%以下なら全額損金にできる場合があると聞きました。
事業承継に法人保険は使えますか?
令和元年より前に契約した保険はどうなりますか?
7. まとめ
法人保険は「入れば節税」ではなく、課税の繰り延べを出口の損金で受け止めて初めて効果が完結する仕組みです。要点は次のとおりです。
- 保険料の損金算入は課税の繰り延べ。解約返戻金は益金になるため、出口(役員退職金等の損金)を先に設計する。
- 令和元年(2019年)7月8日以後契約の定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率の区分(50%以下=全額損金/50超70以下=40%資産計上/70超85以下=60%資産計上/85%超=当初10年90%等)で処理する(国税庁No.5364-2、法人税基本通達9-3-5の2)。
- 最高解約返戻率70%以下かつ年換算保険料30万円以下なら全額損金にできる特例がある。
- 正しい使い道は、役員退職金の準備・事業承継の資金・連帯保証への備え。解約返戻金のピークを退職・承継のタイミングに合わせる。
- 「全額損金だから得」という片面的な説明に乗らず、出口の損金があるか・保障が本当に必要かを加入前に検証する。
「勧められた法人保険が本当に得なのか診断してほしい」「役員退職金や事業承継に保険をどう組み込むか設計したい」「解約のタイミングをいつにすればよいか相談したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、法人保険の損金処理から出口設計、役員退職金・自社株評価・事業承継との一体設計まで伴走します。加入・解約を決める前のお早めの段階でご相談ください。
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサー No.5364(定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分))
- 国税庁タックスアンサー No.5364-2(定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い)
- 法人税基本通達9-3-5(定期保険等の保険料)・9-3-5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)
本記事は、法人契約の生命保険に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断や保険の勧誘・推奨に代わるものではありません。損金算入の可否・資産計上の割合・期間は、契約日・保険の種類・最高解約返戻率等の事実関係により異なり、制度・通達は改正により変わることがあります。実際の加入・解約・経理処理の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月13日
法人保険の診断・出口設計は KMP へ
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、法人保険の損金処理から出口設計、役員退職金・自社株評価・事業承継との一体設計まで伴走します。勧められた保険が本当に得か診断したい方、加入・解約を決める前の方は、お早めにご相談ください。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
