法人保険は節税になる?損金算入と最高解約返戻率のルールを税理士が解説【2026年版】

「保険で節税できると言われて法人保険に入ったが、本当に得なのか」「事業承継や自分の退職金の準備に、法人契約の生命保険を使いたい」——オーナー経営者から、税理士法人 小山・ミカタパートナーズには、法人保険に関するご相談が数多く寄せられます。かつては「保険料を全額損金にして利益を圧縮する」節税策が広く使われましたが、令和元年(2019年)の通達改正で、保険料をどこまで損金にできるかのルールが大きく変わりました。 結論から言えば、法人保険は「入れば節税になる」ものではありません。多くの場合、保険料の損金算入は”課税の繰り延べ”にすぎず、解約時に受け取る返戻金は益金(利益)になります。出口で利益に見合う損失(役員退職金など)を用意できて初めて、効果が完結します。本記事では、令和元年通達(法人税基本通達9-3-5の2、国税庁No.5364・No.5364-2)に基づく最高解約返戻率による損金算入ルールと、事業承継・退職金準備における法人保険の正しい使い方を、網羅的に解説します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 「保険で節税」の正体(3行サマリー)
  2. 2. 損金算入ルールが変わった(令和元年通達)
  3. 3. 最高解約返戻率による資産計上ルール(全区分)
  4. 4. 法人保険の正しい使い方(出口設計)
  5. 5. 法人保険の失敗と王道
  6. 7. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 「保険で節税」の正体(3行サマリー)

  • 損金算入は”節税”ではなく”課税の繰り延べ”——保険料を損金にすればその期の利益(課税所得)は減りますが、将来その保険を解約して解約返戻金を受け取ると、それは会社の益金(利益)になります。払うときに減った税金を、受け取るときに払う——課税のタイミングを先送りしているだけで、税金そのものが消えるわけではありません。
  • 出口(解約のタイミング)で損失をぶつけられて初めて完結する——解約返戻金という利益が出る期に、役員退職金の支給など大きな損金をぶつけられれば、益金と損金が相殺され、繰り延べてきた効果が生きます。逆に、出口の計画がないまま解約すると、返戻金にまるまる法人税がかかり、「節税」どころか手数料分だけ損をすることもあります。
  • どこまで損金にできるかは「最高解約返戻率」で決まる——令和元年(2019年)7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率(保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる割合)の区分に応じて、保険料の一部を資産に計上しなければなりません(法人税基本通達9-3-5の2、国税庁No.5364-2)。返戻率が高い=貯蓄性が高い保険ほど、損金にできる割合は小さくなります。
💡 「保険料が全額損金だから得」という説明は、出口を無視した片面的な理解です。法人保険を検討するときは、必ず「解約したとき返戻金にどれだけ税金がかかるか」「その利益を何の損金で受け止めるか」まで一体で設計してください。ここを設計しないと、税金は減らず、保険会社への手数料だけが残ります。

2. 損金算入ルールが変わった(令和元年通達)

以前は、一定の定期保険(いわゆる「節税保険」)で保険料を全額損金にできる商品が多く販売されていました。これに対し、国税庁は令和元年(2019年)7月8日以後の契約から、貯蓄性の高い保険について保険料の一部を資産計上させる新ルールを導入しました(法人税基本通達9-3-5の2)。

  • 対象:法人が契約者、役員・使用人(親族を含む)を被保険者とする、保険期間3年以上定期保険・第三分野保険で、最高解約返戻率が50%を超えるもの。
  • 最高解約返戻率が50%以下の保険は、原則として従来どおり保険料の全額を損金にできます(法人税基本通達9-3-5)。
  • 最高解約返戻率が50%を超えると、区分に応じて保険料の一定割合を一定期間は資産に計上し、その後の取崩期間で損金に振り替えていきます。
💡 「最高解約返戻率」とは、その保険の保険期間を通じて、解約返戻率(解約返戻金相当額 ÷ それまでに払う保険料の合計)が最も高くなる割合をいいます。契約時に保険会社から示される設計書で確認できます。返戻率が高い(=解約すると多く戻ってくる貯蓄性の高い)保険ほど、損金にできる割合が小さくなる、というのが新ルールの考え方です。

3. 最高解約返戻率による資産計上ルール(全区分)

令和元年7月8日以後契約の定期保険・第三分野保険(最高解約返戻率50%超)は、次の区分で処理します(国税庁No.5364-2、法人税基本通達9-3-5の2)。

最高解約返戻率資産計上期間資産計上額(支払保険料のうち)取崩期間
50%以下なし(全額損金
50%超70%以下保険期間開始〜40%経過まで支払保険料の 40% を資産計上(残り60%は損金)保険期間の75%経過後〜終了日
70%超85%以下保険期間開始〜40%経過まで支払保険料の 60% を資産計上(残り40%は損金)保険期間の75%経過後〜終了日
85%超保険期間開始〜最高解約返戻率となる期間の終了日まで(最短5年。保険期間10年未満は50%経過まで)当初10年間は90%11年目以降は70%を資産計上解約返戻金が最も高くなる期間の経過後〜終了日

資産に計上した保険料は経費になっていないため、その期の損金は減ります。そして取崩期間に入ると、資産計上した額を取り崩して損金に振り替えます。つまり「最初は損金が小さく、後半で損金が大きくなる」構造です。

💡 重要な例外(30万円特例):最高解約返戻率が70%以下で、かつ1人の被保険者あたりの年換算保険料相当額が30万円以下の保険は、資産計上をせず全額を損金にできます(国税庁No.5364-2)。小規模な保障目的の契約は、この特例で従来どおり全額損金にできるケースがあります。ただし複数の契約がある場合は合算して判定します。

4. 法人保険の正しい使い方(出口設計)

新ルール下でも、法人保険には合理的な使い道があります。ポイントは、保険を「節税商品」ではなく「資金の準備手段+課税の繰り延べ」と捉え、出口を先に決めることです。

  • 役員退職金の準備:オーナーの退職時期に解約返戻金がピークになるよう契約し、解約益をその期の役員退職金(損金)とぶつけて相殺します。会社は退職金の原資を保険で準備でき、益金と損金が打ち消し合うことで、繰り延べてきた効果が実を結びます。
  • 事業承継の資金・納税資金:オーナーに万一のことがあったとき、後継者は自社株の相続税や、他の相続人への代償金(遺産分割の調整金)を用意する必要があります。法人契約の保険金を、死亡退職金や弔慰金の原資、あるいは会社の資金繰りの備えとして活用できます。
  • 借入金・連帯保証への備え:オーナー個人が会社の借入に連帯保証をしている場合、経営者の死亡時に保険金で借入を返済できれば、遺族の負担を軽くできます。
💡 法人保険は「入ること」より「いつ・いくら戻し、何の損金で受け止めるか」の出口設計が本質です。役員退職金・事業承継・自社株評価と一体で設計してこそ、繰り延べが「節税」に転じます。保障が本当に必要か、繰り延べた税金の出口があるかを、加入前に必ず検証してください。

5. 法人保険の失敗と王道

❌ 法人保険でやってしまいがちな失敗
  • 「全額損金だから節税になる」とだけ聞き、解約時に返戻金が益金になることを知らずに契約している
  • 出口(解約益をぶつける損金)を決めずに加入し、返戻金にまるまる課税されてしまう
  • 資金繰りが苦しくなり、解約返戻率が低い早期に解約して元本割れする
  • 令和元年通達を知らず、最高解約返戻率の区分どおりに資産計上していない(税務調査で損金を否認)
  • 経営に必要な現金を保険料に回しすぎ、本業の資金繰りを圧迫している
⭕ 法人保険を活かす王道
  • 保険料の損金算入は「課税の繰り延べ」と理解し、出口の損金(役員退職金等)を先に設計する
  • 解約返戻金がピークになる時期を、役員の退職や承継のタイミングに合わせて契約する
  • 最高解約返戻率の区分に従って正しく資産計上・取崩を行い、根拠を帳簿に残す
  • 保障(万一の備え)として本当に必要な金額・期間かを、節税とは切り離して検討する
  • 本業の資金繰りに支障のない範囲で、無理のない保険料に抑える

よくある質問(FAQ)

法人保険の保険料は全額損金にできますか?

最高解約返戻率が50%以下の定期保険等なら、原則として全額損金にできます(法人税基本通達9-3-5)。50%を超えると、区分に応じて保険料の40%・60%、または当初10年90%などを一定期間資産計上する必要があります(令和元年7月8日以後契約、国税庁No.5364-2)。返戻率が高い保険ほど損金にできる割合は小さくなります。

「保険で節税」とは結局どういう意味ですか?

保険料を損金にするとその期の利益は減りますが、解約返戻金を受け取る期にはそれが益金(利益)になります。税金が消えるのではなく、課税のタイミングを先送りしているだけです。解約益が出る期に役員退職金などの損金をぶつけて相殺できて初めて、繰り延べの効果が生きます。

最高解約返戻率が70%以下なら全額損金にできる場合があると聞きました。

最高解約返戻率が70%以下で、かつ1人の被保険者あたりの年換算保険料相当額が30万円以下であれば、資産計上せず全額損金にできます(国税庁No.5364-2)。複数契約は合算して判定します。小規模な保障目的の契約が主な対象です。

事業承継に法人保険は使えますか?

使えます。オーナーの死亡時に受け取る保険金を、死亡退職金・弔慰金の原資や、後継者が負担する相続税・代償金の備えとして活用できます。解約返戻金は退職金原資にもなります。ただし自社株評価・役員退職金と一体で設計しないと効果が薄れるため、承継計画とあわせて検討してください。

令和元年より前に契約した保険はどうなりますか?

令和元年7月8日より前に契約した定期保険等は、原則として契約時の取扱い(旧通達)が継続します。本記事で解説した最高解約返戻率による資産計上ルールは、令和元年7月8日以後の契約に適用されます。契約時期によって処理が異なるため、証券と設計書で契約日を確認してください。

7. まとめ

法人保険は「入れば節税」ではなく、課税の繰り延べを出口の損金で受け止めて初めて効果が完結する仕組みです。要点は次のとおりです。

  • 保険料の損金算入は課税の繰り延べ。解約返戻金は益金になるため、出口(役員退職金等の損金)を先に設計する。
  • 令和元年(2019年)7月8日以後契約の定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率の区分(50%以下=全額損金/50超70以下=40%資産計上/70超85以下=60%資産計上/85%超=当初10年90%等)で処理する(国税庁No.5364-2、法人税基本通達9-3-5の2)。
  • 最高解約返戻率70%以下かつ年換算保険料30万円以下なら全額損金にできる特例がある。
  • 正しい使い道は、役員退職金の準備・事業承継の資金・連帯保証への備え。解約返戻金のピークを退職・承継のタイミングに合わせる。
  • 「全額損金だから得」という片面的な説明に乗らず、出口の損金があるか・保障が本当に必要かを加入前に検証する。

「勧められた法人保険が本当に得なのか診断してほしい」「役員退職金や事業承継に保険をどう組み込むか設計したい」「解約のタイミングをいつにすればよいか相談したい」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、法人保険の損金処理から出口設計、役員退職金・自社株評価・事業承継との一体設計まで伴走します。加入・解約を決める前のお早めの段階でご相談ください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、法人契約の生命保険に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断や保険の勧誘・推奨に代わるものではありません。損金算入の可否・資産計上の割合・期間は、契約日・保険の種類・最高解約返戻率等の事実関係により異なり、制度・通達は改正により変わることがあります。実際の加入・解約・経理処理の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月13日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資産防衛・相続・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。