インフルエンサーの脱税事件に学ぶ|架空外注費はなぜ必ずバレるのか

2025年末から2026年にかけて、有名インフルエンサーの脱税事件が大きく報じられ、SNSで発信する個人事業主や経営者の間に強い衝撃が走りました。報道によれば、手口の中心は「架空の外注費(業務委託費)の計上」だったとされています。 「自分のところは大丈夫だろうか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、SNSで発信される事業者の方から、税務に関するご相談をいただくことが増えています。本記事では、この事件から経営者・個人事業主が何を学ぶべきか、税務の専門家の視点で整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きたのか(報道ベースの概要)
  2. 2. 「節税」と「脱税」は何が違うのか
  3. 3. なぜ「架空外注費」は必ずバレるのか
  4. 4. SNS発信者・個人事業主が特に注意すべきこと
  5. 5. もし申告に不安があるなら
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きたのか(報道ベースの概要)

報道によれば、概要は次のように伝えられています。

  • インスタグラムなどで活動する著名インフルエンサー(「宮崎麗果」名義、本名・黒木麗香氏。フォロワー約47万人)と、本人が代表を務める広告会社が対象。
  • アフィリエイト広告などの所得について、架空の外注費を計上して所得を圧縮し、法人税・消費税あわせて約1億5,700万円を脱税した疑いで、東京国税局査察部(いわゆる「マルサ」)が2025年12月に告発、東京地検が在宅起訴したと報じられています。
  • 隠した所得は約4億9,600万円にのぼるとされ、SNS上での華やかな生活ぶりが調査のきっかけになったと報道されています。
  • 2026年3月の初公判で起訴内容を認めたと報じられており、判決は2026年7月に予定されています。
⚠️ 本件は判決前の段階です。被告人には推定無罪が及びます。本記事は報道に基づく一般的な解説であり、特定個人を断罪する目的のものではありません。

2. 「節税」と「脱税」は何が違うのか

この事件を理解する大前提として、節税と脱税はまったくの別物だということを押さえる必要があります。

区分中身評価
節税法律が認めた範囲で税負担を軽くする(各種控除・特例の活用など)適法。むしろ経営の知恵
脱税事実を偽って税を免れる(売上除外・架空経費の計上など)違法。重いペナルティ

今回問題とされた「架空外注費」は、実際には存在しない外注の支払いを経費として計上するもので、典型的な脱税の手口とされます。「経費を増やせば税金が減る」という発想の延長で、実体のない経費にまで手を出した瞬間に、節税は脱税に変わります。

3. なぜ「架空外注費」は必ずバレるのか

「現金でやり取りすれば分からないのでは」と考える方がいますが、実務上、架空外注費は非常に発覚しやすい項目です。税務調査で何が見られるのかを知れば、その理由が分かります。

① 反面調査(取引相手を調べられる)

税務署は、外注先とされた相手方を直接調べる「反面調査」を行えます。支払った側の帳簿と、受け取ったとされる側の帳簿を突き合わせれば、相手方に売上の計上がなければ一発で矛盾が露見します。

② 「実体」を問われる

外注費が疑われると、次のセットが確認されます。

  • その外注先は本当に存在するか(住所・連絡先・事業実態・ウェブサイト)
  • 誰が作業したのか(担当者・作業体制)
  • その人は本当にその仕事ができる人か(経歴・スキル・稼働状況)
  • 成果物・契約書・やり取りの記録は残っているか

実体のない外注は、これらに答えられません。

③ お金の流れ(資金の還流)

報道では、外注費として支払った資金の一部が現金で本人側に戻っていた(還流)とされています。預金の動きと現金の流れを追われると、こうした還流は把握されやすいものです。

④ SNSという「自己申告の証拠」

今回、調査のきっかけはSNSでの生活ぶりだったと報じられています。所得と釣り合わない高額な消費を自ら発信していれば、税務当局の目に留まるのは自然なことです。発信が武器であるインフルエンサーにとって、これは皮肉な落とし穴です。

4. SNS発信者・個人事業主が特に注意すべきこと

事業が急成長したフェーズで、税務がついていかずトラブルになる——これは、インフルエンサーに限らず、伸びている事業者に共通する落とし穴です。

💬 実務の現場から
——弊社にも、SNSやネット経由で急に売上が伸びた事業者の方からのご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、多いのは「売上が急増したのに、経理と申告の体制が追いついていない」ケースです。悪意はなくても、経費の線引きが曖昧なまま規模が大きくなり、後から不安になって相談に来られる。私たちが関与する場面では、まず実態に合った経理に整え直すところから一緒に始めます。

特に意識していただきたい点を挙げます。

  • 経費は「事業のための支出」だけ:実体のない外注費・プライベートな支出の混入は厳禁
  • 記録を残す:契約書・請求書・成果物・やり取りを保存する(外注費は特に)
  • 売上を抜かない:プラットフォーム経由の入金は補足されやすい
  • 法人化・体制づくりは早めに:規模が大きくなる前に、適正な経理と顧問体制を
  • 発信内容と申告の整合:華やかな発信をするなら、相応の申告を

5. もし申告に不安があるなら

「過去の申告に自信がない」という場合、指摘される前に自分から修正する(自主的な修正申告)ことが、結果的に負担を最も軽くする道です。調査で指摘されてからでは、重い加算税の対象になりかねません。

脱税が認定された場合のペナルティは、本来の税額に加えて重加算税(最も重い加算税)が課され、悪質なケースでは刑事罰にも発展します。今回の事件は、その重さを社会に示すものとなりました。

「自分のケースはどうなのか」を一人で抱えるより、早めに専門家に相談することをおすすめします。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、税務調査対応から日々の経理体制づくりまで、経営者・個人事業主に寄り添ってご支援しています。

6. まとめ

インフルエンサーの脱税事件が示したのは、「架空経費は必ずバレる」というシンプルな事実です。反面調査・実体確認・資金の流れ・SNSの発信——当局が確認する手段は多く、実体のない経費はそのいずれかで露見します。

節税と脱税の境目は、「事実に基づいているか」の一点です。攻めの節税は大いに取り組むべきですが、それは正しい記録と実態があってこそ。守りの経理と攻めの節税はセットです。申告に不安のある方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

架空の外注費はなぜ必ずバレるのですか?

相手方への反面調査、資金の還流、口座の動き、申告内容の不整合などから発覚します。お金の流れは追跡されます。

もし指摘されたらどうなりますか?

重加算税(最大35〜40%)に延滞税が加わります。悪質な場合は脱税として刑事告発の対象にもなります。

経費を正しく計上するには?

実体のある取引だけを計上し、契約書・成果物・支払記録を残すことです。実態のない費用は計上しないのが鉄則です。

出典・参考資料

  • 法人税法 第159条(脱税犯に対する罰則)/国税通則法 第68条(重加算税)
  • 国税庁「加算税制度(過少申告加算税・無申告加算税・重加算税)の概要」
  • 国税庁「税務署における税務調査」/反面調査に関する一般的な実務
  • 日本経済新聞・NHKほか報道各社(インフルエンサー脱税事件、2025年12月告発・在宅起訴/2026年3月初公判)
速報追記ブロック(続報が出たら更新)
本件の判決は2026年7月に予定されています。判決が出次第、本記事に【追記】します。
ご利用上の留意事項
本記事は、報道に基づく一般的な情報提供であり、特定個人の有罪を断定するものではありません(本件は判決前であり、被告人には推定無罪が及びます)。個別の税務判断に代わるものでもありません。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年5月30日

税務調査・経理のご相談は KMP へ

税務調査対応から日々の経理体制づくりまで、経営者・個人事業主に寄り添ってご支援します。申告に不安のある方はお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら
小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務調査対応・税務顧問から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp