医療費控除とは?対象になる費用・10万円の計算・セルフメディケーション税制まで税理士が解説【2026年版】

「家族の医療費がそれなりにかかった年は、確定申告で税金が戻ると聞いたけれど、いくらから・何が対象なのか分からない」——医療費控除は、毎年多くの方が調べながら手続きをする、最も身近な所得控除のひとつです。会社員の方は年末調整では受けられず、自分で確定申告をして初めて還付されます。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでも、経営者・個人事業主の方の確定申告にあたって、「この支払いは医療費控除に入りますか」というご相談は実際によく寄せられます。 本記事では、医療費控除の対象になる費用・ならない費用、「10万円」を差し引く正しい計算式、共働き世帯でどちらが申告すると得かの考え方、市販薬で使える「セルフメディケーション税制」との選び方、必要書類と申告のやり方まで、2026年(令和8年)時点の最新の取扱いで網羅的に解説します。医療費控除の根拠は所得税法第73条にあり、計算や手続きの詳細は国税庁タックスアンサー No.1120に明示されています。
📋 この記事の目次
  1. 1. 医療費控除とは何か(3行サマリー)
  2. 2. ★いくらから使える?「10万円」の計算式(ここが核心)
  3. 3. ★医療費控除の対象になる費用・ならない費用
  4. 4. ★よくある失敗と王道(共働き・家族分の寄せ方)
  5. 5. もうひとつの選択肢「セルフメディケーション税制」
  6. 6. 申告のやり方と必要書類
  7. 8. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 医療費控除とは何か(3行サマリー)

  • 医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えたとき、その超えた分を所得から差し引ける所得控除です。
  • 対象は本人だけでなく「生計を一にする」配偶者・親族の医療費まで合算できます。
  • 会社員でも年末調整では受けられず、確定申告(還付申告)が必要です。納めた所得税が戻り、翌年の住民税も下がります。

医療費控除は「税額がそのまま戻る」制度ではなく、「所得を減らして、その分の税率に応じて税金が軽くなる」制度です。だからこそ、後述するように所得(税率)の高い人にまとめると効果が大きくなります。

2. ★いくらから使える?「10万円」の計算式(ここが核心)

医療費控除の額は、次の式で計算します(国税庁 No.1120)。

💡 医療費控除額 =(1年間に支払った医療費の合計)−(保険金などで補填される金額)−(10万円 ※)
※ その年の総所得金額等が200万円未満の人は、「10万円」ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。
控除額の上限は200万円です(所得税法第73条/国税庁 No.1120)。

ポイントは3つです。

(1) 「10万円」は誰でも一律ではない 総所得金額等が200万円未満の人は、差し引くのが「総所得金額等の5%」になります。たとえば総所得金額等が150万円なら、差し引くのは7万5,000円。所得が少ない人ほど、少額の医療費でも控除が使えるわけです。パート収入の配偶者などが自分で申告すると有利になるケースがあるのはこのためです。

(2) 保険金等は「対応する医療費」からだけ引く 高額療養費・出産育児一時金・生命保険の入院給付金などで補填された金額は、医療費から差し引きます。ただし差し引くのは、その給付の対象となった医療費からだけで、引ききれない分を別の医療費から引く必要はありません(国税庁 No.1120)。なお、傷病手当金や出産手当金は所得の補償であり、医療費から差し引く必要はありません。

(3) 還付額は「控除額×税率」 医療費控除額そのものが戻るのではありません。戻る所得税の目安は「医療費控除額 × その人の所得税率」です。次の表で具体的にイメージしてください。

1年間の医療費保険金等で補填差し引く額医療費控除額所得税率20%の人の還付目安
25万円0円10万円15万円約3万円(+翌年の住民税が約1.5万円減)
18万円5万円(入院給付金)10万円3万円約6,000円(+住民税約3,000円減)
40万円0円10万円30万円約6万円(+住民税約3万円減)
12万円(総所得180万円の人)0円9万円(180万×5%)3万円約1,500円(税率5%・+住民税約3,000円減)

※住民税は医療費控除額に対して概ね10%軽くなります(翌年度の住民税で反映)。

3. ★医療費控除の対象になる費用・ならない費用

「治療のための支出か、それとも予防・健康増進・美容のための支出か」が分かれ目です(国税庁 No.1122)。

区分対象になる(治療目的)対象にならない(予防・美容・自己都合)
診療・治療医師による診療・治療費、入院費、手術費人間ドック・健康診断の費用(※異常が見つかり治療に移行した場合は対象)
歯科虫歯治療、保険外でも治療目的の金歯・インプラント、子どもの不正咬合の歯列矯正美容目的の歯列矯正、ホワイトニング
医薬品治療・療養に必要な医薬品の購入費(市販の風邪薬等を含む)健康増進・病気予防のためのビタミン剤・サプリメント
出産妊娠中の定期検診・検査費、出産費用、助産師による分娩介助里帰り出産のための実家への帰省旅費
通院交通費通院に必要な電車・バス等の公共交通機関の運賃、症状によりやむを得ない場合のタクシー代自家用車のガソリン代・駐車場代、自己都合のタクシー代
視力・その他治療として必要な松葉杖・義手義足、医師の指示による医療用器具近視・乱視のための一般的なメガネ・コンタクトレンズ購入費、美容整形
介護一定の介護保険サービスの自己負担額、おむつ代(医師の証明がある場合)親族に支払う付添料
💡 「予防」は対象外だが「治療への入口」は対象になり得ます。たとえば人間ドックは原則対象外ですが、その結果重大な疾病が見つかり、引き続き治療を受けた場合は、その人間ドックの費用も医療費控除の対象になります(国税庁 No.1122)。判断に迷う費用は領収書を残し、後でまとめて確認するのが安全です。

4. ★よくある失敗と王道(共働き・家族分の寄せ方)

医療費控除は「誰が申告するか」「どこまで合算するか」で結果が変わります。

❌ やりがちな失敗
  • 夫婦それぞれが自分の医療費だけで「10万円に届かない」と諦め、家族分をまとめなかった
  • 所得(税率)の低い側が申告してしまい、戻る税金が小さくなった
  • 「10万円を超えないと使えない」と思い込み、所得が少ない年(総所得200万円未満=5%基準)なのに申告しなかった
  • 保険金で補填された分を、対応しない他の医療費からも引いてしまい、控除額を過小に計算した
⭕ 王道の対応
  • 生計を一にする家族の医療費は、一人にまとめて合算する(同居でなくても仕送り等で生計が一なら合算可)
  • 原則として所得税率の高い人に寄せる(戻る額=控除額×税率のため)。ただし総所得200万円未満の人は5%基準で使いやすいので、ケースにより試算する
  • 1月1日〜12月31日に「実際に支払った」分で集計する(年をまたぐ未払い分はその年は対象外)
  • 保険金等は対応する医療費からのみ控除し、引ききれない分は他に回さない
💬 実務の現場から
——弊社にも、「共働きで、医療費控除はどちらで申告すれば得ですか」というご相談が、確定申告の時期に実際に寄せられます。一般論として申し上げると、税率の高い方に家族分をまとめるのが基本ですが、出産・入院があった年は補填金(出産育児一時金・高額療養費)の差し引きで見え方が変わります。私たちが関与する場面でも、世帯全体の医療費と所得をならべて、どちらで申告するか・セルフメディケーション税制とどちらが得かまで含めて確認しています。

5. もうひとつの選択肢「セルフメディケーション税制」

医療費が10万円に届かない年でも、市販薬(スイッチOTC医薬品)を多く買った人は、医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制が使える場合があります(国税庁 No.1129・No.1131)。

項目通常の医療費控除セルフメディケーション税制
対象治療のための医療費全般特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品)の購入費
下限10万円(総所得200万円未満は5%)1万2,000円を超えた部分
控除の上限200万円8万8,000円
適用の条件特になし健康診断・予防接種・がん検診など「一定の取組」を受けていること
適用期間恒久平成29年1月1日〜令和8年12月31日

ポイントは次のとおりです。

  • 「一定の取組」が必須:勤務先の定期健康診断、市区町村の健康診査、インフルエンザ等の予防接種、特定健康診査、市町村のがん検診などのいずれかを受けていることが条件です(国税庁 No.1129)。
  • どちらか一方しか選べない(選択適用):通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、有利な方を選んで申告します。いったん選んで申告すると、後から修正申告・更正の請求でもう一方へ変更することはできません(国税庁 No.1131)。
  • 適用期限は令和8年12月末:セルフメディケーション税制は令和8年(2026年)12月31日までの購入分が対象です。
💡 ざっくりの目安として、家族の医療費の合計が10万円を大きく超える年は通常の医療費控除、市販薬中心で10万円に届かない年はセルフメディケーション税制が有利になりやすい、と考えると整理しやすくなります。最後は両方で試算して有利な方を選びます。

6. 申告のやり方と必要書類

医療費控除は確定申告(還付申告)で受けます。会社員の方も自分で申告が必要です。

必要なもの

  • 医療費控除の明細書(確定申告書に添付。健康保険組合等から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を使うと、その分は明細の記入を簡略化できます)
  • 源泉徴収票の内容(給与所得者の場合/申告書作成に使用)
  • マイナンバー、本人確認書類、還付金の振込先口座
  • セルフメディケーション税制の場合は、「一定の取組」を行ったことを明らかにする書類(健診結果通知や予防接種の領収書等)

手続きのポイント

  • 領収書の提出は不要になりましたが、確定申告期限から5年間は領収書を自宅で保存する義務があります(税務署から求められたら提示。国税庁 No.1120)。
  • 還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。過去に申告し忘れた年があっても、5年以内ならさかのぼって還付を受けられます。
  • e-Tax(電子申告)を使えば、明細書の作成・送信から還付までスムーズです。

よくある質問(FAQ)

医療費控除は年末調整でできますか?

できません。医療費控除は確定申告(還付申告)でのみ受けられます。会社員の方も、年末調整とは別に自分で確定申告をする必要があります。還付申告は翌年1月1日から5年間できるので、年明け早めの手続きがおすすめです。

家族の医療費はまとめられますか?誰の口座から払ったかは関係しますか?

「生計を一にする」配偶者・親族の医療費はまとめて一人が申告できます。同居していなくても、仕送り等で生計が一であれば対象です。実務上は、税率の高い人に合算すると還付が大きくなりやすいですが、総所得200万円未満の人は5%基準で使いやすいので、世帯で試算するのが確実です。

通院のための交通費は対象になりますか?

電車・バスなど公共交通機関の運賃は対象です(家族の付き添いが必要な場合の付添人の交通費を含みます)。一方、自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外。症状からやむを得ずタクシーを使った場合のタクシー代は対象になります(国税庁 No.1122)。

10万円を超えていなくても申告できますか?

総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」を超えた分が対象です。たとえば総所得150万円なら7万5,000円を超えれば医療費控除を使えます。市販薬中心ならセルフメディケーション税制(1万2,000円超)も検討してください。

美容目的の歯列矯正やインプラントは対象ですか?

治療目的かどうかで判断します。子どもの成長を妨げないための歯列矯正や、治療として必要なインプラントは対象になり得ますが、美容目的の矯正・ホワイトニングは対象外です(国税庁 No.1122)。

8. まとめ

医療費控除は、家族全員の医療費を味方につければ、確定申告で着実に税金を取り戻せる身近な制度です。要点は次のとおりです。

  • 計算式は「支払った医療費 − 保険金等の補填 − 10万円(総所得200万円未満は5%)」。控除の上限は200万円(所得税法第73条/国税庁 No.1120)。
  • 生計を一にする家族の医療費は合算でき、原則として所得税率の高い人にまとめると還付が大きい。
  • 治療目的は対象・予防/美容は対象外が基本。人間ドックは原則対象外でも、異常が見つかり治療に移れば対象になり得る(国税庁 No.1122)。
  • 10万円に届かない年でも、市販薬中心ならセルフメディケーション税制(1万2,000円超・上限8万8,000円・令和8年12月末まで)が使える。両者は選択適用。
  • 会社員でも確定申告が必要。領収書は提出不要だが5年間保存。還付申告は5年さかのぼれる。

「家族分を含めてどちらで申告すると得か」「セルフメディケーション税制と通常の控除のどちらを選ぶか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、経営者・個人事業主の方の確定申告から、所得全体を見据えた節税の設計まで伴走しています。お気軽にご相談ください。

出典・参考資料

  • 所得税法 第73条(医療費控除)、第120条(確定申告)
  • 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.1129「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.1131「セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1131.htm
ご利用上の留意事項
本記事は、医療費控除に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。対象になる医療費の範囲・補填金の取扱い・セルフメディケーション税制の有利不利は、個別の事情により異なります。制度内容は今後の税制改正等で変更される場合があります。実際の申告にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月15日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」を掲げ、税務顧問・改正対応から資金調達・事業承継まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp