医療費控除とは?対象になる費用・10万円の計算・セルフメディケーション税制まで税理士が解説【2026年版】
- 1. 医療費控除とは何か(3行サマリー)
- 2. ★いくらから使える?「10万円」の計算式(ここが核心)
- 3. ★医療費控除の対象になる費用・ならない費用
- 4. ★よくある失敗と王道(共働き・家族分の寄せ方)
- 5. もうひとつの選択肢「セルフメディケーション税制」
- 6. 申告のやり方と必要書類
- 8. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 医療費控除とは何か(3行サマリー)
- 医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えたとき、その超えた分を所得から差し引ける所得控除です。
- 対象は本人だけでなく「生計を一にする」配偶者・親族の医療費まで合算できます。
- 会社員でも年末調整では受けられず、確定申告(還付申告)が必要です。納めた所得税が戻り、翌年の住民税も下がります。
医療費控除は「税額がそのまま戻る」制度ではなく、「所得を減らして、その分の税率に応じて税金が軽くなる」制度です。だからこそ、後述するように所得(税率)の高い人にまとめると効果が大きくなります。
2. ★いくらから使える?「10万円」の計算式(ここが核心)
医療費控除の額は、次の式で計算します(国税庁 No.1120)。
※ その年の総所得金額等が200万円未満の人は、「10万円」ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。
控除額の上限は200万円です(所得税法第73条/国税庁 No.1120)。
ポイントは3つです。
(1) 「10万円」は誰でも一律ではない 総所得金額等が200万円未満の人は、差し引くのが「総所得金額等の5%」になります。たとえば総所得金額等が150万円なら、差し引くのは7万5,000円。所得が少ない人ほど、少額の医療費でも控除が使えるわけです。パート収入の配偶者などが自分で申告すると有利になるケースがあるのはこのためです。
(2) 保険金等は「対応する医療費」からだけ引く 高額療養費・出産育児一時金・生命保険の入院給付金などで補填された金額は、医療費から差し引きます。ただし差し引くのは、その給付の対象となった医療費からだけで、引ききれない分を別の医療費から引く必要はありません(国税庁 No.1120)。なお、傷病手当金や出産手当金は所得の補償であり、医療費から差し引く必要はありません。
(3) 還付額は「控除額×税率」 医療費控除額そのものが戻るのではありません。戻る所得税の目安は「医療費控除額 × その人の所得税率」です。次の表で具体的にイメージしてください。
| 1年間の医療費 | 保険金等で補填 | 差し引く額 | 医療費控除額 | 所得税率20%の人の還付目安 |
|---|---|---|---|---|
| 25万円 | 0円 | 10万円 | 15万円 | 約3万円(+翌年の住民税が約1.5万円減) |
| 18万円 | 5万円(入院給付金) | 10万円 | 3万円 | 約6,000円(+住民税約3,000円減) |
| 40万円 | 0円 | 10万円 | 30万円 | 約6万円(+住民税約3万円減) |
| 12万円(総所得180万円の人) | 0円 | 9万円(180万×5%) | 3万円 | 約1,500円(税率5%・+住民税約3,000円減) |
※住民税は医療費控除額に対して概ね10%軽くなります(翌年度の住民税で反映)。
3. ★医療費控除の対象になる費用・ならない費用
「治療のための支出か、それとも予防・健康増進・美容のための支出か」が分かれ目です(国税庁 No.1122)。
| 区分 | 対象になる(治療目的) | 対象にならない(予防・美容・自己都合) |
|---|---|---|
| 診療・治療 | 医師による診療・治療費、入院費、手術費 | 人間ドック・健康診断の費用(※異常が見つかり治療に移行した場合は対象) |
| 歯科 | 虫歯治療、保険外でも治療目的の金歯・インプラント、子どもの不正咬合の歯列矯正 | 美容目的の歯列矯正、ホワイトニング |
| 医薬品 | 治療・療養に必要な医薬品の購入費(市販の風邪薬等を含む) | 健康増進・病気予防のためのビタミン剤・サプリメント |
| 出産 | 妊娠中の定期検診・検査費、出産費用、助産師による分娩介助 | 里帰り出産のための実家への帰省旅費 |
| 通院交通費 | 通院に必要な電車・バス等の公共交通機関の運賃、症状によりやむを得ない場合のタクシー代 | 自家用車のガソリン代・駐車場代、自己都合のタクシー代 |
| 視力・その他 | 治療として必要な松葉杖・義手義足、医師の指示による医療用器具 | 近視・乱視のための一般的なメガネ・コンタクトレンズ購入費、美容整形 |
| 介護 | 一定の介護保険サービスの自己負担額、おむつ代(医師の証明がある場合) | 親族に支払う付添料 |
4. ★よくある失敗と王道(共働き・家族分の寄せ方)
医療費控除は「誰が申告するか」「どこまで合算するか」で結果が変わります。
- 夫婦それぞれが自分の医療費だけで「10万円に届かない」と諦め、家族分をまとめなかった
- 所得(税率)の低い側が申告してしまい、戻る税金が小さくなった
- 「10万円を超えないと使えない」と思い込み、所得が少ない年(総所得200万円未満=5%基準)なのに申告しなかった
- 保険金で補填された分を、対応しない他の医療費からも引いてしまい、控除額を過小に計算した
- 生計を一にする家族の医療費は、一人にまとめて合算する(同居でなくても仕送り等で生計が一なら合算可)
- 原則として所得税率の高い人に寄せる(戻る額=控除額×税率のため)。ただし総所得200万円未満の人は5%基準で使いやすいので、ケースにより試算する
- 1月1日〜12月31日に「実際に支払った」分で集計する(年をまたぐ未払い分はその年は対象外)
- 保険金等は対応する医療費からのみ控除し、引ききれない分は他に回さない
——弊社にも、「共働きで、医療費控除はどちらで申告すれば得ですか」というご相談が、確定申告の時期に実際に寄せられます。一般論として申し上げると、税率の高い方に家族分をまとめるのが基本ですが、出産・入院があった年は補填金(出産育児一時金・高額療養費)の差し引きで見え方が変わります。私たちが関与する場面でも、世帯全体の医療費と所得をならべて、どちらで申告するか・セルフメディケーション税制とどちらが得かまで含めて確認しています。
5. もうひとつの選択肢「セルフメディケーション税制」
医療費が10万円に届かない年でも、市販薬(スイッチOTC医薬品)を多く買った人は、医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制が使える場合があります(国税庁 No.1129・No.1131)。
| 項目 | 通常の医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 対象 | 治療のための医療費全般 | 特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品)の購入費 |
| 下限 | 10万円(総所得200万円未満は5%) | 1万2,000円を超えた部分 |
| 控除の上限 | 200万円 | 8万8,000円 |
| 適用の条件 | 特になし | 健康診断・予防接種・がん検診など「一定の取組」を受けていること |
| 適用期間 | 恒久 | 平成29年1月1日〜令和8年12月31日 |
ポイントは次のとおりです。
- 「一定の取組」が必須:勤務先の定期健康診断、市区町村の健康診査、インフルエンザ等の予防接種、特定健康診査、市町村のがん検診などのいずれかを受けていることが条件です(国税庁 No.1129)。
- どちらか一方しか選べない(選択適用):通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、有利な方を選んで申告します。いったん選んで申告すると、後から修正申告・更正の請求でもう一方へ変更することはできません(国税庁 No.1131)。
- 適用期限は令和8年12月末:セルフメディケーション税制は令和8年(2026年)12月31日までの購入分が対象です。
6. 申告のやり方と必要書類
医療費控除は確定申告(還付申告)で受けます。会社員の方も自分で申告が必要です。
必要なもの
- 医療費控除の明細書(確定申告書に添付。健康保険組合等から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を使うと、その分は明細の記入を簡略化できます)
- 源泉徴収票の内容(給与所得者の場合/申告書作成に使用)
- マイナンバー、本人確認書類、還付金の振込先口座
- セルフメディケーション税制の場合は、「一定の取組」を行ったことを明らかにする書類(健診結果通知や予防接種の領収書等)
手続きのポイント
- 領収書の提出は不要になりましたが、確定申告期限から5年間は領収書を自宅で保存する義務があります(税務署から求められたら提示。国税庁 No.1120)。
- 還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。過去に申告し忘れた年があっても、5年以内ならさかのぼって還付を受けられます。
- e-Tax(電子申告)を使えば、明細書の作成・送信から還付までスムーズです。
よくある質問(FAQ)
医療費控除は年末調整でできますか?
家族の医療費はまとめられますか?誰の口座から払ったかは関係しますか?
通院のための交通費は対象になりますか?
10万円を超えていなくても申告できますか?
美容目的の歯列矯正やインプラントは対象ですか?
8. まとめ
医療費控除は、家族全員の医療費を味方につければ、確定申告で着実に税金を取り戻せる身近な制度です。要点は次のとおりです。
- 計算式は「支払った医療費 − 保険金等の補填 − 10万円(総所得200万円未満は5%)」。控除の上限は200万円(所得税法第73条/国税庁 No.1120)。
- 生計を一にする家族の医療費は合算でき、原則として所得税率の高い人にまとめると還付が大きい。
- 治療目的は対象・予防/美容は対象外が基本。人間ドックは原則対象外でも、異常が見つかり治療に移れば対象になり得る(国税庁 No.1122)。
- 10万円に届かない年でも、市販薬中心ならセルフメディケーション税制(1万2,000円超・上限8万8,000円・令和8年12月末まで)が使える。両者は選択適用。
- 会社員でも確定申告が必要。領収書は提出不要だが5年間保存。還付申告は5年さかのぼれる。
「家族分を含めてどちらで申告すると得か」「セルフメディケーション税制と通常の控除のどちらを選ぶか」——税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、「日本一、経営者の視点に立てる税理士法人」として、経営者・個人事業主の方の確定申告から、所得全体を見据えた節税の設計まで伴走しています。お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 所得税法 第73条(医療費控除)、第120条(確定申告)
- 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1129「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1131「セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1131.htm
本記事は、医療費控除に関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。対象になる医療費の範囲・補填金の取扱い・セルフメディケーション税制の有利不利は、個別の事情により異なります。制度内容は今後の税制改正等で変更される場合があります。実際の申告にあたっては、国税庁の最新情報および税理士等の専門家にご確認ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月15日
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