海外子会社の利益率を相手国が「表」で決める?移転価格の利益B(簡素化・合理化アプローチ)と日本の取扱いを税理士が解説

海外に販売子会社を置いている会社にとって、移転価格税制はずっと「こちらが理屈を組み立てて説明する制度」でした。比較対象企業を探し、利益率のレンジを出し、ローカルファイルにまとめて、税務調査で説明する。手間はかかりますが、価格の根拠を自分でつくれるという前提は共通していました。 その前提が、進出先の国によっては変わり始めています。 令和6(2024)年2月、OECD及びG20の「BEPS包摂的枠組み」において、移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化アプローチが合意されました。いわゆる利益B(原題:OECD/G20 Base Erosion and Profit Shifting Project Pillar One – Amount B)です。ひとことで言えば、基礎的な販売活動を行う販売会社について、あらかじめ定められた利益率の表を当てはめて独立企業間価格を算定する仕組みです。比較対象企業を探す作業そのものが、表の参照に置き換わります。 そして、日本の対応はこうなっています。 我が国においては、当面の間、簡素化・合理化アプローチを実施しません。 ここで多くの経営者が「では関係ないですね」と受け取られます。そこが最大の落とし穴です。 相手国が実施すれば、日本の会社は「相手国は表で決めた価格、日本は従来どおりの価格」というふたつの異なる正解の間に挟まれます。国税庁が令和7年6月にわざわざFAQを公表したのは、まさにその状態が起こりうるからです。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、海外展開をされている会社から「現地の会計事務所から、来期はこの利益率で申告すると言われたのですが」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、現地側の変更が日本側の申告にどう跳ね返るかまで確認できていないことが少なくありません。 本記事では、利益Bとは何か、どの国が対象になるのか、そして日本側で何が変わり何が変わらないのかを、国税庁FAQの原文にさかのぼって整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きているのか(3行サマリー)
  2. 2. 「利益B」とは何か——価格を表で決める仕組み
  3. 3. どの国が対象になるのか——covered jurisdiction
  4. 4. 日本の取扱い——国税庁が示した5つの答え
  5. 5. 実務でどう備えるか
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きているのか(3行サマリー)

  • 令和6(2024)年2月、OECD及びG20の「BEPS包摂的枠組み」において簡素化・合理化アプローチ(利益B)が合意され、その内容がOECD移転価格ガイドラインに追加・公表されました。
  • これにより、簡素化・合理化アプローチを実施した国・地域は、令和7(2025)年1月1日以後に開始する事業年度から、対象となる取引にこのアプローチを適用できることとされています。
  • 我が国においては、当面の間、簡素化・合理化アプローチを実施しません(国税庁FAQ問1)。日本側は従来どおり、租税特別措置法第66条の4第2項各号に掲げる方法で独立企業間価格を算定します。

つまり、制度が動き出す時期はすでに到来している一方で、日本は乗らないという状態です。日本の会社にとって影響が出るのは、自社ではなく海外子会社の側からになります。

⚠️ ここに注意 … 「日本が実施しない」ことと「日本の会社に影響がない」ことは、まったく別の話です。移転価格は一つの取引を二か国で評価する制度なので、片側の国だけがルールを変えれば、その差額はそのまま二重課税のリスクになります。

2. 「利益B」とは何か——価格を表で決める仕組み

国税庁FAQ問1は、簡素化・合理化アプローチの概要を次のように説明しています。

基礎的マーケティング・販売活動を行う販売会社の国外関連取引のうち一定の基準を満たした取引に対し、移転価格税制の適用の簡素化・合理化を図るものです。具体的には、定量的基準を用いることにより、法人の国外関連取引の中から対象となる取引を特定し、あらかじめ定められた利益率の適用表を用いることにより、独立企業間価格を算定するものです。

ポイントは二段構えになっています。

① 対象となる取引を「定量的基準」で特定する すべての取引が対象になるわけではありません。基礎的マーケティング・販売活動を行う販売会社の国外関連取引のうち、一定の基準を満たしたものだけが対象です。研究開発機能や独自の無形資産を持つ会社、製造機能を担う会社は、そもそもこの枠組みの想定外です。

② 「あらかじめ定められた利益率の適用表」を当てはめる 対象になった取引については、比較対象企業を探すのではなく、表に定められた利益率を使って独立企業間価格を算定します。ここが従来の移転価格分析と決定的に違う点です。

従来の移転価格税制では、独立企業間価格は租税特別措置法第66条の4第2項各号に掲げる方法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法、これらに準ずる方法、政令で定める方法)によって算定します。いずれも、その取引に見合う比較対象を探してくることが出発点です。利益Bは、その探索作業を表の参照に置き換えます。

なぜこうした仕組みが合意されたのか。 背景にあるのは、経済のデジタル化・グローバル化に伴う課税上の課題への対応です。とりわけ、比較対象企業のデータが乏しい国では、基礎的な販売会社の移転価格をめぐる争いが起こりやすく、税務当局・納税者の双方にとって負担が重くなります。定型的な取引については表で決着させ、限られた執行資源を難しい取引に振り向ける——それが簡素化・合理化という言葉の意味するところです。

💡 「簡素化」は納税者にとって常に有利とは限らない … 表に定められた利益率が、その会社が現に実現している利益率より高い場合、現地での課税所得はむしろ増えます。簡素化は手続の話であって、税負担が軽くなることを意味しません。ここは経営判断に直結するので、切り分けて理解しておく必要があります。

3. どの国が対象になるのか——covered jurisdiction

利益Bの議論には、covered jurisdictionという耳慣れない言葉が出てきます。国税庁FAQの「用語の意義」は、次の①から③のいずれかの条件を満たす国・地域と定義しています。

  • OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」の加盟国・地域で、世界銀行の所得水準分類において、低所得国、低中所得国、高中所得国に該当する国・地域(EU、OECD、G20加盟国を除く)
  • OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」の加盟国・地域で、OECD、G20加盟国のうち、2024年3月までにOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」に対して簡素化・合理化アプローチの実施の意思を示した上記①の所得水準分類に該当する国・地域
  • OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」の非加盟国・地域で、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」に対して簡素化・合理化アプローチの実施の意思を示し、その承認を受けた上記①の所得水準分類に該当する国・地域

covered jurisdictionに該当する国・地域のリストはOECDウェブサイトに公表されており、その基準は5年毎に更新されることとされています。

ここで、実務上とても大事な注意書きがFAQに付されています。

(注)上記OECDウェブサイトは簡素化・合理化アプローチを実施している国・地域を示すものではありません。

covered jurisdictionであることと、その国が実際に利益Bを実施していることは、別の話だということです。リストに載っているから適用される、載っていないから関係ない、という読み方はできません。進出先の国が現に実施しているかどうかは、その国の制度を個別に確認する必要があります。

なお、covered jurisdictionの所得水準分類は世界銀行の基準によるものなので、日本企業の進出先として多いアジア・中南米・アフリカの新興国が中心になります。欧米の先進国が主たる進出先である会社より、新興国に販売子会社を置いている会社のほうが、この論点に当たる可能性は高いといえます。

4. 日本の取扱い——国税庁が示した5つの答え

ここからが本題です。国税庁は令和7年6月、「移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化アプローチ(FAQ)」を公表し、5つの問いに答えています。日本側で何が変わり、何が変わらないのかが、この5問に集約されています。

まず全体像を整理します。

場面進出先国(実施国)の扱い日本側の扱い
独立企業間価格の算定利益Bの利益率表による従来の算定方法による
事前確認の申出利益Bの適用結果従来の算定方法による
移転価格文書利益Bを適用して作成従来の方法の併記が必要
二重課税が生じたとき租税条約に基づく相互協議

問2:日本でも利益Bで算定できるか → できない

進出先国で利益Bを適用して独立企業間価格を算定した取引であっても、日本では従来の独立企業間価格の算定方法を用いて算定する必要があります

そして重要なのが、FAQが続けて述べている一文です。

このことは、国外関連者の所在する進出先国・地域がcovered jurisdictionに該当するか否かによって影響を受けません。

相手がcovered jurisdictionであろうとなかろうと、日本側の答えは変わらないということです。この一文は問2・問3・問5に繰り返し登場します。国税庁が念を押している箇所だと読むべきでしょう。

問3:事前確認(APA)は利益Bの結果で申し出られるか → できない

利益Bを実施した国に所在する国外関連者との国外関連取引について、簡素化・合理化アプローチの適用結果を独立企業間価格とする事前確認の申出はできません。日本の事前確認は、従来の独立企業間価格の算定方法を用いて申し出る必要があります。

事前確認は、移転価格の不確実性をあらかじめ取り除くための制度です。相手国が表で決めた数字をそのまま持ち込んでも、日本側の事前確認には乗らない——ここは、二国間APAを検討している会社にとって実務上の分岐点になります。

問4:二重課税になったら相互協議できるか → できる(ただし協議は従来の方法で)

ここが最も重要な部分です。FAQ問4は、二つの場面を挙げています。

  • 進出先国から利益Bを適用した課税が行われたことにより二重課税が生じた場合
  • 進出先国と日本で異なるアプローチで算出された異なる独立企業間価格をもって、それぞれの国で申告したことにより二重課税の状態が生じた場合

いずれの場合も、その進出先国と日本との間に租税条約があるときは、当該租税条約に基づき相互協議の申立てを行うことができます

ただし、協議の中身については次のように述べられています。

両当局間における相互協議は、簡素化・合理化アプローチでなく従来の独立企業間価格の算定方法に基づいて行うこととなりますが、この対応は、国外関連者が所在する進出先国・地域がcovered jurisdictionに該当する場合であっても同様となります。

相互協議のテーブルに載るのは、あくまで従来の算定方法です。

そのうえで、FAQは利益Bガイダンスの内容にも触れています。進出先国で簡素化・合理化アプローチが適用された場合、その国がcovered jurisdictionに該当し、かつ租税条約が締結されているときは、取引を行った法人の所在地国・地域内の法令や執行上の慣行の範囲内において、その適用結果を尊重(respect)する旨がガイダンスに記載されている、というものです。そして相互協議でもこれを踏まえ、我が国の法令や執行上の慣行の範囲内において対応することになると結んでいます。

「尊重する」であって「従う」ではありません。 しかも「法令や執行上の慣行の範囲内において」という枠がはっきり付されています。相手国の結果がそのまま通る、と期待して設計するのは危険です。

問5:現地で作った移転価格文書は日本で使えるか → 併記があれば使える

進出先国で利益Bを適用して作成された移転価格文書は、そのままでは我が国の移転価格税制に係る文書化の報告様式に沿ったものとはいえません。日本の文書化規定に従い、従来の算定方法を用いて算定した移転価格文書の作成・保存、および当局の要請に基づく提出が必要です。

ただし、FAQは救済の道を明示しています。

ただし、当該進出先国・地域で簡素化・合理化アプローチを適用して作成された移転価格文書であっても、従来の独立企業間価格の算定方法を用いて独立企業間価格を分析・算定した結果を併記しており、かつ、当該算定結果と簡素化・合理化アプローチの適用結果が整合的である場合には、当該移転価格文書は我が国の移転価格税制に係る文書化の報告様式に沿ったものといえます。

条件は二つです。①従来の方法による分析・算定結果を併記していること、②その算定結果と利益Bの適用結果が整合的であること。片方だけでは足りません。

これは実務上きわめて有用な取扱いです。 文書を二本立てで作り直すのではなく、現地の文書に従来方式の分析を併記させることで、一本の文書を両国で使える可能性がある、ということだからです。ただし「整合的である場合」という条件が付いている以上、数字が食い違ったときは併記では足りません。その場合は日本側で独自に文書を用意することになります。

5. 実務でどう備えるか

❌ よくある失敗
  • 「日本は実施しないから関係ない」と判断し、現地側の変更を確認しないまま決算を締める
  • 現地の会計事務所が利益Bで作成した移転価格文書を、そのまま日本のローカルファイルとして保存している
  • covered jurisdictionのリストに載っていることを「その国が利益Bを実施している」証拠と取り違える
  • 相手国が利益Bで課税してきた金額を、日本側でも当然に是認されるものとして処理する
  • 事前確認を検討しているのに、相手国の利益B適用結果を前提に申出内容を組み立てる
⭕ 王道の進め方
  • 販売子会社を置いている国について、その国が現に簡素化・合理化アプローチを実施しているかを個別に確認する(リストの有無ではなく、その国の制度を見る)
  • 実施している場合、現地で適用される利益率と、現在の取引で実現している利益率の差を数字で把握する
  • 現地の移転価格文書に、従来の算定方法による分析・算定結果を併記させ、その結果が利益Bの適用結果と整合しているかを確認する
  • 整合しない場合は、差額がそのまま二重課税のリスク額になると理解したうえで、日本側の文書を独自に用意する
  • 進出先国と日本との間に租税条約があるかを確認する(相互協議の申立てができるかどうかの前提条件になります)
  • 決算期をまたぐ前に、日本側の申告額をいくらにするかを決めておく(申告してから調整するのは、相互協議しか道がなくなります)
💬 実務の現場から
海外子会社の移転価格については、現地の会計事務所が現地のルールに沿って処理し、日本側はその結果を受け取るだけ、という体制になっている会社が少なくありません。平時はそれで回りますが、現地のルールが変わった瞬間に、日本側の申告と食い違いが生じます。私たちが関与する場面でも、最初につまずきやすいのが、この「どちらの国の物差しで決めた数字なのか」が社内で共有されていない点です。移転価格の資料は、現地任せにせず日本側でも同じ数字を持っておくことが、結局いちばんの近道になります。

相互協議は最後の手段であって、最初の設計ではありません。 申立てができること自体は救いですが、二国間の協議には相応の期間と資料の準備が必要です。しかもFAQが明示するとおり、協議は従来の算定方法に基づいて行われます。日本側が従来の方法で説明できる状態を保っておくことが、そのまま最善の備えになります。

なお、財務省が令和8年7月に公表した「令和8年度 税制改正の解説」の「国際課税関係の改正」には、簡素化・合理化アプローチを日本に導入する改正は含まれていません。国税庁FAQが示した「当面の間、実施しません」という取扱いが、現時点の日本の立場です。今後の動向によって変わりうる論点ですので、進出先国の制度とあわせて継続的に確認する必要があります。

6. まとめ

  • 利益B(簡素化・合理化アプローチ)は、基礎的マーケティング・販売活動を行う販売会社の国外関連取引のうち一定の基準を満たしたものについて、あらかじめ定められた利益率の適用表で独立企業間価格を算定する仕組みです。
  • 実施した国・地域は、令和7(2025)年1月1日以後に開始する事業年度から適用できることとされています。
  • 我が国は当面の間、これを実施しません。 日本側は租税特別措置法第66条の4第2項各号の従来の方法で算定します。
  • 日本側の取扱いは、相手国がcovered jurisdictionに該当するかどうかで変わりません(FAQ問2・問3・問5)。
  • 進出先国の利益B適用により二重課税が生じた場合、その国と日本との間に租税条約があれば相互協議の申立てが可能です。ただし協議は従来の算定方法に基づいて行われます(問4)。
  • 現地で利益Bにより作成された移転価格文書は、従来の算定方法による分析・算定結果を併記し、かつ両者が整合的である場合に限り、日本の報告様式に沿ったものといえます(問5)。
  • 影響を受けるのは、新興国に基礎的な販売子会社を置いている会社です。日本が実施しないからこそ、両国の数字の差を自分で把握しておく必要があります。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、海外子会社との取引について、移転価格税制の文書化、事前確認、相互協議の見通しまでを一体で確認し、現地の処理と日本側の申告が食い違わない形をご一緒に設計しています。現地から「来期はこの利益率で」と言われた段階が、いちばん動きやすいタイミングです。

よくある質問(FAQ)

日本は利益Bを実施しないのに、なぜ国税庁はFAQを出したのですか?

日本の法人の国外関連者(子会社等)が所在する進出先国・地域において、簡素化・合理化アプローチが実施される可能性があるからです。国税庁は、その場合の我が国の税務上の取扱いをまとめたものとして本FAQを作成した旨を明記しています。日本が実施しないことと、日本の会社に影響が及ばないことは別だ、という位置づけです。

進出先国が利益Bを適用した価格を、日本の申告でもそのまま使えますか?

使えません。国税庁FAQ問2は、進出先国における簡素化・合理化アプローチの適用状況にかかわらず、従来の独立企業間価格の算定方法を用いて独立企業間価格を算定する必要があるとしています。この取扱いは、その国がcovered jurisdictionに該当するか否かによって影響を受けません。

covered jurisdictionのリストに載っている国と取引していれば、利益Bが適用されるのですか?

そうとは限りません。国税庁FAQは、OECDウェブサイトに公表されているcovered jurisdictionのリストについて、「簡素化・合理化アプローチを実施している国・地域を示すものではありません」と注記しています。該当性と実施は別の話なので、進出先国が現に実施しているかは個別の確認が必要です。

二重課税になった場合、必ず相互協議で解決できますか?

申立てができるかどうかと、望む結果になるかどうかは分けて考える必要があります。FAQ問4は、進出先国と日本との間に租税条約があるときは相互協議の申立てを行うことができるとしています。一方で、協議は簡素化・合理化アプローチではなく従来の独立企業間価格の算定方法に基づいて行うとされており、これはcovered jurisdictionに該当する場合でも同様です。

利益Bガイダンスの「尊重(respect)する」とは、日本が相手国の結果に従うという意味ですか?

そういう意味ではありません。FAQが引用する利益Bガイダンスの記載は、進出先国がcovered jurisdictionに該当し、かつ租税条約が締結されているときに、取引を行った法人の所在地国・地域内の法令や執行上の慣行の範囲内において適用結果を尊重する、というものです。国税庁も相互協議において「我が国の法令や執行上の慣行の範囲内において対応する」としています。範囲内において、という限定が付いている点が重要です。

現地で作った移転価格文書を日本でも使いたいのですが、条件は何ですか?

条件は二つです。①従来の独立企業間価格の算定方法を用いて分析・算定した結果を併記していること、②その算定結果と簡素化・合理化アプローチの適用結果が整合的であること。この両方を満たす場合に限り、我が国の文書化の報告様式に沿ったものといえる、とされています(FAQ問5)。

利益Bが適用されると、税負担は軽くなるのですか?

軽くなるとは限りません。簡素化・合理化アプローチは、比較対象企業の探索を利益率表の参照に置き換えるという手続の簡素化です。表に定められた利益率が現に実現している利益率より高ければ、現地での課税所得はむしろ増えます。手続の負担と税負担は分けて考える必要があります。

当社の海外子会社は製造をしています。利益Bの対象になりますか?

国税庁FAQ問1は、対象を基礎的マーケティング・販売活動を行う販売会社の国外関連取引のうち一定の基準を満たした取引と説明しています。製造機能を担う会社や、独自の無形資産を有する会社は、この枠組みが想定する対象とは異なります。ただし、具体的な適用範囲は実施する国・地域の制度によりますので、現地での確認が必要です。

事前確認(APA)を進めている最中です。何か影響はありますか?

日本側の事前確認は、従来の独立企業間価格の算定方法を用いて申し出る必要があります(FAQ問3)。相手国が利益Bを実施している場合でも、その適用結果を独立企業間価格とする事前確認の申出はできません。二国間の事前確認を検討している場合は、両国で前提となる算定方法が異なる可能性を織り込んでおく必要があります。

いつから備えればよいですか?

利益Bガイダンス上、実施した国・地域は令和7(2025)年1月1日以後に開始する事業年度から適用できることとされています。すでに適用が始まりうる時期に入っていますので、販売子会社を置いている国の制度を確認することが最初の一歩になります。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、国税庁が公表したFAQおよび条文原文に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。簡素化・合理化アプローチが進出先国・地域において実施されているか、対象となる取引に該当するか、適用される利益率および二重課税の解消手続は、その国・地域の制度、締結されている租税条約の内容、取引の実態により異なります。実際の判定にあたっては、最新の法令、通達および進出先国の制度をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月13日

海外子会社との取引価格の設計は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、移転価格税制の文書化、事前確認、相互協議の見通しまでを一体で確認し、現地の処理と日本側の申告が食い違わない形をご一緒に設計しています。現地から「来期はこの利益率で」と言われた段階が、いちばん動きやすいタイミングです。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継から中小企業の税務顧問まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。