事業承継・M&A 完全ガイド|後継者問題から出口戦略までを税理士が解説【2026年版】
- 1. 事業承継の全体像——4つの選択肢
- 2. 後継者がいない時代の現実
- 3. 親族内承継——自社株という難所
- 4. 事業承継税制——納税猶予という強力な制度
- 5. M&Aという出口——譲渡所得と手取り
- 6. 事業承継・M&A補助金を使う
- 7. 役員退職金——出口の手取りを最適化する
- 8. 事業承継の正しい進め方
- 9. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 事業承継の全体像——4つの選択肢
会社の引き継ぎ方には、大きく4つの道があります。
| 選択肢 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子・親族に引き継ぐ | 自社株の評価・贈与・相続が論点 |
| 役員・従業員承継(MBO/EBO) | 役員や従業員が引き継ぐ | 株式の買取資金の調達が論点 |
| 第三者承継(M&A) | 社外の企業・個人に譲渡 | 後継者不在の有力な出口。譲渡所得が論点 |
| 廃業 | 事業をたたむ | 最後の選択肢。コスト・従業員対応が論点 |
かつては親族内承継が主流でしたが、後継者不在が深刻化する今、M&Aが現実的な出口として急速に広がっています。
2. 後継者がいない時代の現実
中小企業の多くが後継者不在に直面しています。「継ぐ人がいないから廃業」では、長年築いた事業・雇用・取引先が失われてしまう。だからこそ、M&Aで第三者に引き継ぐという選択が重要になっています。
大切なのは、「まだ早い」と思ううちに動き出すこと。準備期間が長いほど、企業価値を高め、良い相手とマッチングし、有利な条件で承継できます。
3. 親族内承継——自社株という難所
子や親族に引き継ぐ場合、最大の論点が自社株(非上場株式)の移転です。ここで多くの経営者が直面するのが、「自社株の評価が、想定外に高い」という現実です。
非上場株式は、類似業種比準方式・純資産価額方式などで評価されます。利益・配当・純資産が大きい優良企業ほど株価が高くなり、贈与税・相続税の負担も重くなる——黒字優良企業ほど承継が難しいという逆説が起きます。
だからこそ、株価が低いタイミングを捉えて計画的に移転する設計が重要です。
4. 事業承継税制——納税猶予という強力な制度
自社株の税負担を大きく軽減できるのが事業承継税制です。一定の要件を満たせば、後継者が引き継ぐ自社株にかかる贈与税・相続税の納税が猶予され、最終的に免除されることもあります。
特例措置は適用のハードル・期限(特例承継計画の提出期限など)があり、令和8年度の改正でも関連の見直しが議論されています。使えると効果は絶大ですが、要件管理が厳格なため、専門家と組んで進めるのが安全です。
5. M&Aという出口——譲渡所得と手取り
第三者承継(M&A)では、多くの場合株式譲渡の形をとります。オーナーが株式を売却して対価を得る方法で、譲渡益には分離課税(約20%)が適用されます。給与や役員報酬の最高約55%と比べると、税負担の面でも有利です。
M&Aは「相手探し」「企業価値評価」「交渉」「デューデリジェンス」「契約」と工程が多く、専門家(仲介・FA)の関与が一般的。費用は重くなりがちですが、後述の補助金で軽減できます。
6. 事業承継・M&A補助金を使う
M&Aや承継にかかる費用は、事業承継・M&A補助金で軽減できます。M&A仲介・FA費用、デューデリジェンス、買収後のPMI(経営統合)、さらには廃業費用まで対象になり、補助上限は最大2,000万円規模です。詳細は事業承継・M&A補助金の個別記事で解説しています。
7. 役員退職金——出口の手取りを最適化する
承継・M&Aの「出口」で見落とせないのが役員退職金です。退職金は、退職所得控除+2分の1課税という優遇があり、適切に設計すれば手取りを大きく残せます。
そして退職金の原資・水準は、現役時代の役員報酬の決め方とも連動します。出口まで見据えた役員報酬の設計については、役員報酬の記事もあわせてご覧ください。
8. 事業承継の正しい進め方
- 「まだ早い」と先延ばしし、選択肢が狭まってから慌てる
- 自社株の評価額を把握せず、想定外の税負担に直面する
- M&Aの専門家費用を全額自己負担で進める(補助金を知らない)
- 退職金・株価対策をせず、出口の手取りを大きく減らす
- 早く始める(時間が選択肢と企業価値を生む)
- まず自社株を評価し、現状と税負担を把握する
- 親族内・M&A・退職金まで含めた出口戦略を一体で設計する
- 事業承継税制・補助金など使える制度を漏れなく活用する
——弊社にも、「後継者がいない」「会社を譲りたい」というご相談は実際に多く寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、もったいないのは「動き出すのが遅く、選択肢が廃業しか残っていなかった」ケースです。私たちが関与する場面では、まず自社株評価と現状把握から始め、承継の選択肢を早めに広げます。
9. まとめ
事業承継は、早く始めるほど、選択肢も手取りも増える領域です。親族内・役員従業員・M&A・廃業という選択肢を、自社株評価・事業承継税制・補助金・退職金まで含めて一体で設計する。それが、長年築いた事業を次へつなぐ王道です。
税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、自社株評価から事業承継税制・M&A・出口戦略まで、経営者の「最後の大仕事」を総合的にご支援しています。承継をお考えの方は、早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
事業承継はいつから準備すべきですか?
後継者がいません。会社をたたむしかないですか?
自社株の評価が高いと言われました。なぜですか?
事業承継税制を使えば税金はゼロになりますか?
M&Aの費用が不安です。補助金は使えますか?
出典・参考資料
- 国税庁「取引相場のない株式の評価」(財産評価基本通達)
- 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」「事業承継・M&A補助金」
- 国税庁「No.1420 退職所得」(退職所得控除・課税方法)
- 中小企業庁・経済産業省 事業承継関連 公表資料
本記事は、事業承継・M&Aに関する一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。制度・要件は改正により変わります。実際の判断にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年6月7日
