事業承継税制(法人版)の決定版|特例措置と一般措置の違い・5年間の要件・17の取消事由を税理士が解説【2026年版】

自社株の評価額が1億円を超えると、後継者が背負う贈与税・相続税は数千万円になります。会社にお金があっても、その株を受け取るのは後継者個人です。株はもらったが、税金を払う現金がない——事業承継の相談で、最初にぶつかる壁がこれです。 この壁を正面から外すのが、法人版事業承継税制(非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除)です。要件を満たせば、後継者が納めるべき税額のうち自社株に対応する部分の納税が猶予され、最終的には免除されることもあります。 ただし、この制度には二つの顔があります。ひとつは「使えたときの効果が極めて大きい」こと。もうひとつは「途中で要件を外すと、猶予されていた税額を利子税とともに一括で納める」ことです。制度を入れることと、20年先まで維持することは、まったく別の話です。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「事業承継税制は使ったほうがいいのか」「一度使ったら後戻りできないと聞いたが本当か」というご相談は実際に寄せられます。本記事では、特例措置と一般措置の違い入口の期限最初の5年間に守り続ける要件、そして猶予が取り消される17の場面を、条文にさかのぼって整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 結論(3行サマリー)
  2. 2. 事業承継税制とは——何が、どこまで止まるのか
  3. 3. 特例措置と一般措置は何が違うのか
  4. 4. 入口の期限——計画は令和9年9月30日、実行は令和9年12月31日
  5. 5. 最初の5年間に守り続ける要件
  6. 6. 猶予が取り消される場面——条文が挙げる17の類型
  7. 7. 猶予されていた税額が免除される場面
  8. 8. 実務で押さえるべきこと
  9. 9. まとめ
  10. よくある質問(FAQ)

1. 結論(3行サマリー)

  • 法人版事業承継税制には特例措置(租税特別措置法第70条の7の5〜第70条の7の8)と一般措置(同法第70条の7〜第70条の7の4)があり、特例措置は対象株数が全株式・納税猶予割合100%と効果が大きい
  • 特例措置を使う入口の特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日(令和8年度税制改正で1年6か月延長)。ただし贈与・相続そのものの期限は令和9年12月31日のままで、計画提出から実行まで実質3か月しかない
  • 制度は「猶予」であって、その時点で税金が消えるわけではない。最初の5年間(経営承継期間)に定められた要件を外すと、猶予されていた税額を利子税とともに一括で納めることになる
💡 「納税猶予」と「免除」は別のことばです … 申告のときに納税が止まるのが猶予、猶予されていた税額を納めなくてよいと確定するのが免除です。猶予は後継者が亡くなるなど一定の事由が起きるまで続き、その事由が起きて初めて免除になります。制度を使った日に税金がなくなるわけではありません。「使った瞬間に終わり」ではなく、「終わるまで続く」制度だと理解してください。
📌 【2026年8月27日 追記】経済産業省が「免除」への見直しを令和9年度税制改正要望に盛り込む見込みと報じられています
報道によれば、経済産業省は成長投資や賃上げに取り組む企業を対象に、事業承継税制の相続税・贈与税の免除を検討し、令和9年度(2027年度)の税制改正要望に盛り込む方向です。ただしこれは要望の段階であり、決定した制度ではありません。本記事が解説している現行制度(納税猶予)は変わっていません。要望の中身と、いまの制度がなぜ「猶予」なのかは、事業承継税制は「猶予」から「免除」に変わるのか|経産省が令和9年度税制改正要望へ、いまの制度との違いを税理士が解説 で整理しています。

2. 事業承継税制とは——何が、どこまで止まるのか

法人版事業承継税制は、後継者が先代経営者から非上場会社の株式等を贈与または相続によって取得した場合に、その株式に対応する贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。

贈与のとき(租税特別措置法第70条の7の5第1項)は、後継者がその年分の贈与税の申告書の提出期限までに猶予税額に相当する担保を提供することを条件に、先代経営者(特例贈与者)が亡くなる日まで納税が猶予されます。

相続のとき(同法第70条の7の6第1項)は、相続税の申告書の提出期限までに担保を提供することを条件に、後継者(特例経営承継相続人等)が亡くなる日まで納税が猶予されます。

前提として、会社が中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)に基づく都道府県知事の認定を受けていることが必要です。税務署に申告するだけでは始まりません。

💡 止まるのは「自社株に対応する部分」だけです … 猶予されるのは、後継者が納めるべき贈与税・相続税のうち、適用を受ける非上場株式等に対応する部分です。後継者が同じ相続で現金や不動産も取得していれば、その部分の相続税は通常どおり納付が必要です。「事業承継税制を使えば相続税がゼロになる」という理解は誤りです。

3. 特例措置と一般措置は何が違うのか

制度は二本立てです。名前は似ていますが、中身の差は大きく、実務で選ばれるのはほぼ特例措置です。

項目特例措置一般措置
事前の計画特例承継計画が必要不要
適用期限令和9年12月31日までなし(恒久)
対象株数全株式総株式数の最大3分の2
猶予割合(贈与)100%100%
猶予割合(相続)100%80%
後継者の人数最大3人1人
雇用確保要件弾力化5年平均8割

(出典:国税庁 タックスアンサー No.4148「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」。対象株数はいずれも議決権に制限のない株式等に限られます)

差がいちばん効くのは、相続のときの猶予割合対象株数の二つです。一般措置では、総株式数の3分の2までしか対象にならず、しかも相続の猶予割合は80%です。株式全体で見ると、猶予されるのは 3分の2 × 80% = おおむね53%にとどまります。特例措置なら全株式が100%猶予されるので、後継者が用意しなければならない現金はまったく違ってきます。

後継者の人数も実務上の意味が大きい論点です。特例措置は最大3人まで認められます(租税特別措置法第70条の7の5第1項第2号)。ただし条件があり、贈与後にそれぞれの後継者が発行済株式総数の10分の1以上を持ち、かつそれぞれが先代経営者の持株数を上回る必要があります。「兄弟3人に均等に」という発想でそのまま使える制度ではありません。

💬 実務の現場から

4. 入口の期限——計画は令和9年9月30日、実行は令和9年12月31日

特例措置を使うには、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて特例承継計画を作成し、都道府県知事の確認を受ける必要があります。この提出期限が、令和8年度税制改正で動きました。

  • 改正前:令和8年3月31日まで(旧円滑化省令第17条第2項)
  • 改正後令和9年9月30日まで(1年6か月の延長。円滑化省令第17条第2項)
  • 施行は令和8年4月1日(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令=令和8年経済産業省令第33号)

(出典:財務省「令和8年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正

延長はこれが初めてではありません。財務省の解説によれば、提出期限は令和4年度税制改正で1年令和6年度税制改正でさらに2年延長され令和8年3月31日となり、今回さらに1年6か月延びて令和9年9月30日になりました。

ここで最も注意が必要なのは、延びたのは「計画」の期限だけだという点です。

  • 特例承継計画の提出期限……令和9年9月30日
  • 贈与・相続そのものの期限……令和9年12月31日(変わっていません)

つまり、計画をぎりぎりに出すと、実際に自社株を贈与・相続するまでに実質3か月しか残りません。株価の算定、株主構成の整理、担保の提供、認定申請、そして贈与契約——これらを3か月で走らせるのは現実的ではありません。この論点は特例承継計画の提出期限の延長についての解説記事で詳しく整理しています。

💡 令和9年度税制改正で「その後」が決まります … 財務省の解説には、令和9年12月31日までとされている特例の適用期限後のあり方について、「世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念に加えて、本特例の適用状況や課税の公平性等の観点も踏まえて多角的な検討を行い、令和9年度税制改正において結論を得る」ことが令和8年度与党税制改正大綱で示されている、と明記されています。延長されるかどうかは、2026年8月時点では決まっていません。「また延びるだろう」という前提で先送りするのは、根拠のない判断です。

なお、個人事業主向けの個人版事業承継税制についても、個人事業承継計画の提出期限が令和10年9月30日まで2年6か月延長されました(円滑化省令第17条第4項)。

5. 最初の5年間に守り続ける要件

制度を使い始めてからの5年間が、事業承継税制の本番です。この期間を条文では経営贈与承継期間(贈与の場合)・経営承継期間(相続の場合)と呼び、贈与税・相続税の申告書の提出期限の翌日から5年を経過する日までを指します(租税特別措置法第70条の7の5第2項第7号ほか)。

この5年間、後継者と会社が守り続けるのは、主に次の3つです。

① 後継者が会社の代表権を持ち続けること 代表権を失うと、原則としてその日で猶予は打ち切られます(租税特別措置法第70条の7第3項第1号)。ただし、条文には「財務省令で定めるやむを得ない理由がある場合を除く」という例外が置かれています。

② 後継者と同族で議決権の過半数を保ち、後継者が同族内で筆頭であり続けること 後継者と特別の関係がある者の議決権の合計が総株主等議決権数の100分の50以下になった場合(同項第3号)、または同族内の誰かが後継者の議決権を超えた場合(同項第4号)、猶予は打ち切られます。

③ 適用を受けた株式を持ち続けること 一部でも譲渡・贈与すれば、その日で打ち切られます(同項第5号・第6号)。

雇用確保要件については、一般措置では5年間の平均で8割の雇用維持が求められ、下回れば猶予が打ち切られます(同項第2号)。特例措置ではこれが弾力化されており、要件を満たさなかった場合には、満たせなかった理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出して確認を受けることで、猶予を続けられます(円滑化省令第20条第3項)。この報告書と確認書の写しは、継続届出書の添付書類とされています。

継続届出書を出し続けること

見落とされやすいのが、税務署への届出です。

  • 5年間(経営承継期間内)……申告期限の翌日から1年を経過するごとの日(第一種贈与基準日)が到来するたびに、その翌日から5か月を経過する日までに継続届出書を提出する
  • 5年経過後……経営承継期間の末日の翌日から3年を経過するごとの日(第二種贈与基準日)ごとに、その翌日から3か月を経過する日までに提出する

(租税特別措置法第70条の7第2項第7号・第9項)

この届出書を期限までに出さないと、届出期限の翌日から2か月を経過する日をもって猶予が打ち切られます(同条第11項)。要件そのものは全部満たしていても、書類を出し忘れただけで一括納付になります。5年で終わりではなく、猶予が続く限り3年ごとに出し続ける制度です。

6. 猶予が取り消される場面——条文が挙げる17の類型

租税特別措置法第70条の7第3項は、経営贈与承継期間内に猶予が打ち切られる場合を17号にわたって列挙しています。該当すると、その号に定める日から2か月を経過する日納税の猶予に係る期限となり、猶予されていた税額を利子税とともに納めることになります。実務で問題になりやすいものを、条文の順に並べます。

  • 第1号 後継者が会社の代表権を有しないこととなった場合(財務省令で定めるやむを得ない理由がある場合を除く)
  • 第2号 5年間の平均で、常時使用従業員の数が政令で定める数(雇用確保要件)を下回った場合
  • 第3号 後継者と同族の議決権の合計が総株主等議決権数の100分の50以下となった場合
  • 第4号 同族内のいずれかの者が、後継者の議決権の数を超える議決権を有することとなった場合
  • 第5号・第6号 後継者が適用対象株式の一部または全部を譲渡・贈与した場合
  • 第8号 会社が解散した場合(合併により消滅する場合を除く)、または法律の規定により解散したものとみなされた場合
  • 第9号 会社が資産保有型会社または資産運用型会社に該当することとなった場合
  • 第10号 会社の事業年度における総収入金額がゼロとなった場合
  • 第11号 会社が資本金の額の減少または準備金の額の減少をした場合(会社法第309条第2項第9号イ及びロに該当する場合など、財務省令で定める場合を除く)
  • 第12号 後継者が、適用を受けることをやめる旨の届出書を提出した場合
  • 第13号・第14号 会社が合併により消滅した場合、または株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合(いずれも適格なものを除く)
  • 第15号 会社の株式等が非上場株式等に該当しないこととなった場合(=上場した場合)
  • 第16号 会社または特定特別関係会社が風俗営業会社に該当することとなった場合
  • 第17号 前各号のほか、円滑な事業の運営に支障を及ぼすおそれがある場合として政令で定める場合

(第7号は、他の項に定める場合を引く規定です)

💡 「資産保有型会社」「資産運用型会社」の線引き … 条文は数値で定めています。資産保有型会社は、政令で定める期間内のいずれかの日において、総資産の帳簿価額に対する特定資産(現金、預貯金その他財務省令で定める資産)の帳簿価額の割合が100分の70以上となる会社をいいます(租税特別措置法第70条の7第2項第8号)。資産運用型会社は、いずれかの事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が100分の75以上となる会社です(同項第9号)。いずれの割合にも、後継者と特別の関係がある者がその日以前5年以内に会社から受けた剰余金の配当等の額が加算される仕組みになっています。本業が細って手元資金と有価証券だけが残った会社は、意図せずこの線を越えることがあります。

7. 猶予されていた税額が免除される場面

猶予の出口は、大きく3つあります。

① 後継者や先代経営者の死亡 贈与税の納税猶予は、先代経営者(特例贈与者)が亡くなった日まで猶予が続き、その時点で猶予されていた贈与税は免除されます。ただし、その株式は先代経営者から相続で取得したものとみなして相続税の課税対象になります(切替確認を受けたうえで相続税の納税猶予に乗り換える運用になります)。相続税の納税猶予は、後継者が亡くなった日まで猶予が続きます。

② 次の後継者への贈与 後継者がさらに次の世代へ株式を贈与し、その贈与について納税猶予の適用を受ける場合には、猶予されていた税額が免除されます(租税特別措置法第70条の7の8ほか)。制度は世代をまたいで引き継いでいくことが前提に組まれています。

③ 事業の継続が困難な事由が生じた場合 ここが特例措置と一般措置の大きな違いです。特例措置では、経営承継期間の経過後に事業の継続が困難な一定の事由が生じて株式を譲渡・解散した場合、譲渡対価の額等に基づいて猶予税額を再計算し、再計算後の税額を納付したうえで、従前の猶予税額との差額が免除されます。一般措置には、この仕組みがありません(猶予税額をそのまま納付することになります)。

💡 特例措置は「出口」が用意されている制度です … 事業承継税制がためらわれる最大の理由は、「20年後に会社がどうなっているか分からないのに、猶予税額という爆弾を抱え続けるのが怖い」というものです。特例措置の事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除は、まさにその不安に対応するために設けられた仕組みです。株価が下がった状態で会社を手放すことになったとき、高かった当時の株価で計算した税額をそのまま払わされるのか、そのときの譲渡対価で計算し直せるのかは、決定的な違いになります。

8. 実務で押さえるべきこと

❌ よくある失敗
  • 「特例承継計画を出せば制度が使える」と考える。計画は特例措置を使う意思表示にすぎません。計画を出しただけでは、猶予は1円も始まりません。実際に贈与・相続を行い、都道府県知事の認定を受け、期限内に申告して担保を提供して、はじめて猶予が始まります
  • 令和9年9月30日ぎりぎりに計画を出す。実行の期限は令和9年12月31日のままなので、残り3か月で株価算定・株主構成の整理・認定申請・贈与契約まで走らせることになります。現実的な時間ではありません
  • 継続届出書の提出を失念する。要件をすべて満たしていても、届出期限の翌日から2か月を経過する日で猶予が打ち切られます。5年経過後も3年ごとに続きます
  • 本業が細ったまま放置する。総収入金額がゼロになった場合(第10号)や、資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合(第9号)は、取消事由です。「会社は残っているから大丈夫」とは限りません
  • 株価が上がる前提だけで急ぐ/下がる前提だけで待つ。株価は評価方式そのものが見直しの議論の対象になっています(自社株の評価方法の見直し議論の解説記事)。一方向の前提で意思決定しないことが重要です
⭕ 王道の進め方
  • まず自社株の評価額を方式別に把握する類似業種比準価額と純資産価額でいくらか、後継者にかかる税額はいくらか。この数字がないまま、制度を使うかどうかは決められません
  • 「制度を使わない場合」の税額と現金繰りも並べて比較する。役員退職金の支給で株価を下げてから贈与する、種類株式で議決権だけ先に渡す、持株会社化する——選択肢は事業承継税制だけではありません。猶予税額を抱え続けるコストと、いま払い切るコストを同じ表で比べるのが実務の出発点です
  • 5年間と、その後の3年ごとの管理体制を先に決める。誰が継続届出書を出すのか、雇用の状況を誰が毎年確認するのか。制度を入れる意思決定と同時に、維持する体制を決めておく
  • 後継者が代表を続けられるか、健康面と家族関係まで含めて確認しておく。代表権を失うことは第1号の取消事由です
  • 認定経営革新等支援機関との連携を早く始める。特例承継計画には認定経営革新等支援機関の指導及び助言が必要です。ここが動かないと計画そのものが出せません
  • 令和9年度税制改正の結論を追いかける。適用期限後のあり方は令和9年度税制改正で結論が出る予定です
💬 実務の現場から

9. まとめ

法人版事業承継税制は、後継者が背負う自社株の贈与税・相続税の納税を猶予し、最終的に免除する制度です。特例措置(租税特別措置法第70条の7の5〜第70条の7の8)は、対象株数が全株式・相続の猶予割合も100%・後継者は最大3人まで認められ、一般措置(対象は3分の2まで、相続の猶予割合80%、後継者1人)と比べて効果が格段に大きくなっています。

押さえるべきは3点です。①入口の期限は令和9年9月30日(特例承継計画)ですが、贈与・相続の実行期限は令和9年12月31日のままで、ぎりぎりに計画を出すと実質3か月しか残りません。②制度は「猶予」であって、最初の5年間は代表権・議決権・株式保有を守り続け、継続届出書を出し続ける必要があります。5年経過後も3年ごとに続きます。③取消事由は条文に17号にわたって列挙されており、該当すると猶予税額を利子税とともに一括で納めることになります。

そして、令和9年12月31日より後にこの制度がどうなるかは、令和9年度税制改正において結論を得るとされており、2026年8月時点では決まっていません。「また延びるだろう」という前提での先送りは、根拠のない判断です。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、自社株の評価額の算定から、事業承継税制を使う場合と使わない場合の税額・現金繰りの比較、特例承継計画の作成支援、そして制度を入れたあとの5年間・3年ごとの維持管理まで、オーナー経営者の意思決定に伴走しています。自社にとってこの制度が本当に有利なのかを数字で確かめておきたい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

事業承継税制を使うと、相続税はゼロになるのですか?

なりません。猶予されるのは、後継者が納めるべき贈与税・相続税のうち、適用を受ける非上場株式等に対応する部分だけです。同じ相続で現金や不動産も取得していれば、その部分の相続税は通常どおり納付が必要です。また「猶予」であって、その時点で税額が消えるわけではありません。後継者の死亡など一定の事由が生じたときに、はじめて免除が確定します。

特例承継計画の提出期限はいつまでですか?

令和9年9月30日までです。令和8年度税制改正で、令和8年3月31日から1年6か月延長されました(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第17条第2項)。施行は令和8年4月1日です。なお個人版事業承継税制の個人事業承継計画は、令和10年9月30日まで2年6か月延長されています(同規則第17条第4項)。国税庁のタックスアンサーには改正前の期限が残っている場合がありますので、施行規則の条文をご確認ください。

計画さえ出しておけば、贈与や相続はいつでもよいのですか?

よくありません。特例措置の対象となる贈与・相続は、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの間のものに限られます(租税特別措置法第70条の7の5第1項、第70条の7の6第1項)。計画の提出期限(令和9年9月30日)と実行の期限(令和9年12月31日)は別物で、その差は3か月しかありません。

後継者を3人にできると聞きましたが、どう分けてもよいのですか?

条件があります。特例措置で後継者が2人または3人の場合、贈与後にそれぞれの後継者が発行済株式または出資の総数・総額の10分の1以上を有し、かつそれぞれが先代経営者(特例贈与者)の有する株式数を上回る贈与であることが必要です(租税特別措置法第70条の7の5第1項第2号)。均等に分ければよいという制度ではありません。

5年経てば、もう何もしなくてよいのですか?

いいえ。経営承継期間(5年)の経過後も、3年を経過するごとの日(第二種贈与基準日)ごとに、その翌日から3か月を経過する日までに継続届出書を提出する必要があります(租税特別措置法第70条の7第2項第7号ロ・第9項)。提出しないと、届出期限の翌日から2か月を経過する日で猶予が打ち切られます。また、5年経過後も株式を譲渡すれば猶予は打ち切られます。

会社の業績が悪化して事業をたためなくなった場合、猶予税額はどうなりますか?

特例措置には、経営承継期間の経過後に事業の継続が困難な一定の事由が生じて株式を譲渡・解散した場合に、譲渡対価の額等に基づいて猶予税額を再計算し、再計算後の税額を納付したうえで従前の猶予税額との差額が免除される仕組みがあります。一般措置にはこの仕組みがなく、猶予税額をそのまま納付することになります。ここが特例措置を選ぶ実務上の大きな理由のひとつです。

会社が上場したら、猶予はどうなりますか?

取消事由です。会社の株式等が非上場株式等に該当しないこととなった場合、その該当しないこととなった日から2か月を経過する日をもって猶予に係る期限が到来します(租税特別措置法第70条の7第3項第15号)。将来的な上場を視野に入れている会社では、制度を入れる前にこの点を確認しておく必要があります。

減資をすると猶予が打ち切られるというのは本当ですか?

条文上、会社法第447条第1項もしくは第626条第1項の規定により資本金の額の減少をした場合、または同法第448条第1項の規定により準備金の額の減少をした場合は取消事由とされています(租税特別措置法第70条の7第3項第11号)。ただし、会社法第309条第2項第9号イ及びロに該当する場合その他これに類する場合として財務省令で定める場合は除かれます。外形標準課税対策などで減資を検討する際は、事業承継税制の適用状況を必ず確認してください。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、法令・通達及び国税庁・財務省・中小企業庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。事業承継税制は要件が多く、認定・申告・継続届出のいずれかを欠くと猶予が打ち切られる制度です。適用の可否および有利不利は、会社の株価・株主構成・後継者の状況によって大きく異なります。実際の適用にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月20日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。