自社株の評価方法が変わる?国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の議論を税理士が解説【2026年7月時点】

2026年7月、国税庁が「第4回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の配付資料を公表しました。この会議は令和8年4月20日に始まり、5月11日・6月4日・7月3日と、およそ月1回のペースで開かれています。テーマはただ一つ、非上場会社の株式(自社株)を相続税・贈与税でいくらと評価するかです。 そして第4回の資料で、国税庁は委員に対し「抜本的な見直しも視野に検討すること」「評価方式の一本化について検討すること」を含む6項目について意見を求めました。オーナー経営者にとって、自社株の評価額は相続税・贈与税の負担そのものです。評価のルールが変われば、事業承継の設計は前提から組み直しになります。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「自社株の評価が上がると聞いたが本当か」「いま贈与を進めるべきか、待つべきか」というご相談は実際に寄せられます。本記事では、何が問題とされているのか(会計検査院と国税庁が示した具体的な数字)第4回で当局が投げかけた6つの論点、そしてまだ何も決まっていない段階でオーナーが取るべき現実的な対応を、事業承継を手がける税理士が整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. いま何が起きているのか(3行サマリー)
  2. 2. 前提:いまの自社株はどう評価されているのか
  3. 3. なぜ見直しの議論が始まったのか
  4. 4. 第4回で国税庁が投げかけた6つの論点
  5. 5. 実務でどう備えるか
  6. 6. まとめ
  7. よくある質問(FAQ)

1. いま何が起きているのか(3行サマリー)

  • 国税庁は令和8年4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催しており、第4回(令和8年7月3日)の配付資料が7月2日に公表された(議事要旨は第1回〜第3回分が公表済み)
  • 第4回で国税庁は、「抜本的な見直しも視野に」「評価方式の一本化」「類似業種比準方式の在り方」「純資産価額方式を基本的な評価方式として維持しないこと」「配当還元方式の対象株主の整理」「資産管理会社は純資産価額方式で評価すること」という6項目について、委員に意見を求めた
  • ただし、財産評価基本通達の改正案も、意見公募(パブリックコメント)も、適用開始時期も、2026年7月28日時点では公表されていない。会議は議論の途中であり、現時点で確定した変更は何もない
💡 本記事の位置づけ … 以下で紹介するのは、国税庁の会議資料に記載された論点・意見・当局の問題意識であり、決定事項ではありません。委員の発言は個人の意見として議事要旨に記載されたもので、会議の結論ではありません。実際に評価方法が変わるかどうか、変わるとして何がどう変わるかは、今後の財産評価基本通達の改正等によって明らかにされる見込みです。

2. 前提:いまの自社株はどう評価されているのか

議論の中身に入る前に、現行ルールを押さえます。上場していない会社の株式(取引相場のない株式)は、相続税法第22条の「時価」により評価しますが、市場価格が存在しないため、財産評価基本通達が具体的な評価方法を定めています。

評価は、まず株主の区分で二つに分かれます。

株主の区分評価方式考え方
同族株主等(会社経営を支配する株主)原則的評価方式会社そのものの価値を反映して評価する
それ以外の少数株主等特例的評価方式(配当還元方式)配当を受け取るにとどまるという実態を考慮した例外的な扱い

そのうえで、原則的評価方式は会社の規模によってさらに分かれます。

会社規模原則の評価方式納税者の選択で使える方式
大会社類似業種比準方式純資産価額方式
中会社併用方式(類似業種比準価額と純資産価額の組み合わせ)純資産価額方式
小会社純資産価額方式併用方式

(出典:国税庁 タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」国税庁「財産評価(法令解釈通達)」

類似業種比準方式は、同じ業種の上場会社の平均株価に、評価する会社の「1株当たりの配当金額」「1株当たりの利益金額」「1株当たりの純資産価額(帳簿価額)」の3要素を比準させ、さらにしんしゃく率(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)を乗じて評価額を求める方法です。純資産価額方式は、会社の資産・負債を相続税評価額に洗い替え、含み益に対する法人税額等相当額を控除して1株当たりの純資産価額を求める方法です。配当還元方式は、その株式に係る年配当金額を還元率10%で割り戻して評価する方法です。

さらに、株式等保有特定会社(株式等の割合が50%以上)、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などは「特定の評価会社」として、原則として純資産価額方式で評価します。

制度の詳しい仕組みは、取引相場のない株式(自社株)の評価の決定版記事で解説しています。

3. なぜ見直しの議論が始まったのか

きっかけは会計検査院の指摘

出発点は、会計検査院「令和5年度決算検査報告」(特定検査対象に関する検査状況「相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価について」)です。会計検査院は、令和2年分・令和3年分の相続税・贈与税の申告から層化抽出法により計1,600件(そこに含まれる評価会社は延べ1,785社)を抽出し、評価明細書を確認する方法で検査しました。

そのうち、類似業種比準価額と純資産価額の両方を確認できた一般の評価会社延べ616社について、次の結果が示されています。

指摘事項会計検査院が確認した内容
類似業種比準価額と純資産価額の水準類似業種比準価額の中央値11,622円に対し、純資産価額の中央値は42,648円。類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%
会社ごとの割合の分布(純資産価額が0円の4社を除く延べ612社)純資産価額に対する類似業種比準価額の割合の中央値は0.25倍。延べ477社(全体の77.9%)が0.5倍未満
規模区分別の申告評価額(同じく延べ612社)純資産価額に対する申告評価額の割合の中央値は、大会社0.32倍・中会社0.50倍・小会社0.61倍。会社規模が大きい区分ほど評価額が相対的に低い
配当還元方式の還元率10%という還元率は評価通達制定当時(昭和39年)の金利水準に安全率等を考慮して定められたもので、その後の長期的な金利低下のなかで見直されていない

(出典:会計検査院「令和5年度決算検査報告」第4 相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価について

会計検査院は所見として、「異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者間での株式の評価の公平性や社会経済の変化を考慮するなどして、評価制度の在り方について様々な視点からより適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要である」と、国税庁に検討を求めました。

国税庁も自ら実態を調べ、同じ傾向を確認した

この指摘を受けて、国税庁は検査院とは異なる期間のデータ(令和4年分・令和5年分)で自ら実態把握を行い、第1回会議(令和8年4月20日)の資料で公表しました。

分析項目国税庁(令和4・5年分)会計検査院(令和2・3年分)
類似業種比準価額の中央値/純資産価額の中央値26.1%27.2%
会社ごとの「純資産価額に対する類似業種比準価額の割合」の中央値0.27倍0.25倍
同割合が0.5倍未満の会社の割合77.6%77.9%
純資産価額に対する申告評価額の割合の中央値(大会社)0.44倍0.32倍
同(中会社)0.50倍0.50倍
同(小会社)0.60倍0.61倍
分析対象の評価会社数700社(分布分析は691社)616社(分布分析は612社)

(出典:国税庁「第1回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」資料(令和8年4月20日)。国税庁の分析における1株当たりの金額は、類似業種比準価額の中央値9,705円、純資産価額の中央値37,166円。分析対象はいずれも特定の評価会社を除く)

つまり、調べた期間もデータも違うのに、ほぼ同じ結果が出たということです。国税庁自身が「類似業種比準価額は純資産価額に比べて相当程度低い水準にあり、各評価方式の間で評価額に相当のかい離が生じている」と資料に明記しています。

国税庁が問題視している「株価圧縮スキーム」

第4回会議の資料には、別添資料として具体的なスキーム事例8件が、金額とともに掲載されました(国税庁が事例を簡略化したものとして記載しているもの)。これは、当局が何を問題だと考えているかを示す、きわめて明快なメッセージです。

国税庁が示したスキームの類型資料に記載された影響額
子会社の会社規模を操作して株価を圧縮(純資産・類似の併用⇒類似業種比準へ)。従業員を転籍させて中会社から大会社へ変更評価額 ▲100億円/税額 ▲55億円
無議決権株式を大量発行し、配当還元方式を利用できる株主を作出して世代飛ばし贈与評価額 ▲19億円/税額 ▲10億円
純粋持株会社を設立し、子会社からの借入(株特外し)と管理部門の吸収分割で会社規模を操作(純資産⇒類似業種比準へ)評価額 ▲20億円/税額 ▲10億円
子会社(類似業種比準)からの循環貸付により親会社(純資産価額)の株価を圧縮評価額 ▲65億円/税額 ▲35億円
中古航空機のオペレーティングリースを活用し、多額の減価償却費で利益・純資産を圧縮した期に株式を移転評価額 ▲10億円/税額 ▲5億円
株主構成を操作して「同族株主のいない会社」とし、全株主を配当還元方式で評価評価額 約98%減
同族関係にない第三者を一時的に介在させて評価額を圧縮し、贈与後に自己株式として買い戻す評価額 約60%減
法人が貸付用不動産を購入し、3年経過後(事例では4年6か月後)に株式を移転評価額 ▲5.4億円/税額 ▲3.0億円

(出典:国税庁「第4回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」資料(令和8年7月3日)別添2。金額はいずれも同資料に記載された評価額・税額の減少額)

同じ資料の冒頭で、国税庁は問題意識として「恣意的な会社規模の変化による評価額圧縮スキームが存在」「上場企業経営者や単なる資産持ち富裕層も非上場会社を活用した高度なスキームを利用」「評価通達6項(総則6項)の適用ではなく評価通達改正による納税者の予測可能性の確保の必要性」を挙げています。

💡 「総則6項ではなく通達改正で」というメッセージ … 財産評価基本通達 総則6項は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という定めです。近年は最高裁 令和4年4月19日 第三小法廷判決(令和2年(行ヒ)第283号)(いわゆるタワーマンション事件)をはじめ、総則6項による個別否認の是非が争われてきました。国税庁の資料は、同判決の調査官解説を引用しつつ「かい離は、本来、評価通達の見直し等によって解消」すべきものと整理しています。つまり、個別に否認して争うのではなく、ルールそのものを直すという方向性が、当局の側から示されているということです。株式等保有特定会社をめぐる総則6項の最近の裁判例は、「株特外し」と総則6項の解説記事で扱っています。

4. 第4回で国税庁が投げかけた6つの論点

第4回会議(令和8年7月3日)の資料には、「当局として御意見いただきたい事項」として、次の6項目が並んでいます。ここが本記事でいちばん重要な部分です。

国税庁が意見を求めた事項(資料の記載を要約)
評価方法は評価理論の進捗や社会経済情勢の変化に応じて変遷するため、企業価値評価の学術的な研究、M&Aにおける評価方法等も参考として、抜本的な見直しも視野に検討すること
評価方式の一本化について検討すること
同じ企業価値評価を扱う会社法における訴訟やM&Aなどの実務でも用いられなくなってきたことも踏まえ、今後の類似業種比準方式の在り方をどう考えるか
純資産価額方式を基本的な評価方式として維持するのではなく、特定の評価会社の株式の評価方式として存置することをどう考えるか
配当還元方式は「特別の例外的措置」であり、還元率や計算方法だけではなく、その趣旨が貫徹できるよう対象株主の範囲や派生する従業員持株会の関係も整理すること
一般の評価会社の評価見直しに応じ、特定の評価会社の範囲と評価方法について検討が必要となるところ、少なくとも資産管理会社については、純資産価額方式で評価すること

(出典:国税庁「第4回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」資料(令和8年7月3日)

見直しの土台となる考え方は、第1回資料で「基本的な4つの観点」として示されています。①異なる規模区分の株主間の公平性の確保と、評価方式間のかい離の排除(「評価額の“崖”」の解消)、②配当・利益・会社規模等の操作による株価圧縮スキームの排除(「恣意性・操作性」の排除)、③実務・学術上の進展を踏まえた「今日的観点」からの見直し(金利変動を踏まえた適正な還元率、継続企業の前提のもとで収益力等を反映できる評価方法)、④近年のM&Aによる第三者への事業承継の増加とその際の企業価値評価を踏まえた検討——の4つです。

委員の意見は割れている

一方で、有識者会議の議論は「見直しありき」で進んでいるわけではありません。議事要旨には、対立する意見が両方記録されています。

見直しに積極的な意見(議事要旨より)

  • 類似業種比準方式には一定の理論的合理性はあるが、算定方法等に理論的・実証的な裏付けがないことから廃止した方がよいのではないか
  • 外形基準がかえって評価額圧縮スキームに悪用され、不公平な実態に至っている。できる限り幅広い企業に統一的に適用できる一つの評価方式を検討してはどうか
  • マーケット・アプローチとされる類似業種比準方式の評価額が純資産価額より低くなることには違和感がある

慎重な意見(議事要旨より)

  • 類似業種比準方式は簡便性等の点から優れており、事業承継の役割を担ってきた一連の流れと歴史があることから、見直しには慎重であるべき
  • 継続企業の評価を、企業の清算を前提とした純資産価額で評価するのはありえないのではないか。経営のリスク(会社借入の経営者の個人保証など)を負いながら次の世代にバトンを渡す時の価値とは、明らかに差がないとおかしい
  • 配当還元方式の還元率を引き下げると、従業員持株会が事実上設立できなくなったり、少数株主の整理がより難しくなりかねない
  • 中小企業の円滑な事業承継は極めて重要な観点であり、円滑な事業承継に資する評価という観点も踏まえて検討すべき

また、第4回会議には日本商工会議所(特別顧問・税制委員長 阿部貴明氏、税制専門委員会学識委員 玉越賢治氏)の意見書が提出されており、①足元で経済情勢が大きく変化するなか拙速な議論は行うべきではない、②議論の出発点となる実態把握は、直近の株価上昇を踏まえて会計検査院の調査方式と同じ条件で改めて調査すべき、③仮に類似業種比準方式が廃止となれば大幅な税負担の増加を招き、中小企業の円滑な事業承継を阻害する、④新たな評価方法を導入する場合は負担増となる事業者がいないか綿密にシミュレーションを実施すべき、と述べています。

💡 「評価の話」と「税負担の話」は別だという整理 … 議事要旨には、「客観的な『時価』としての評価の話と、税負担の在り方の話は分けて議論をするのが生産的」という意見も記録されています。具体的には、まず客観的に時価を認定し、その結果として税負担が重すぎるのであれば、税率の引下げや基礎控除の増額、あるいは納税猶予制度(事業承継税制)をもっと広く柔軟に適用できるようにするといった対応があり得る、という考え方です。これはドイツで財産評価が憲法上争われた際に裁判所が示した考え方でもある、との指摘も併せて記載されています。評価が上がる=そのまま増税、とは限らないというのが、実務家として押さえておくべき視点です。

5. 実務でどう備えるか

まず大前提として、現時点で決まったことは何もありません。財産評価基本通達の改正案も、意見公募の実施も、適用時期も公表されていません。「評価が上がるらしいから急いで贈与を」という反応は、それ自体が判断を誤らせます。そのうえで、実務としては次のように整理できます。

❌ つまずきがちな失敗
  • 「自社株の評価が上がるらしい」という伝聞だけで駆け込みの贈与・株式移転を決める。会議は議論の途中であり、内容も時期も未定。焦って動いた結果、かえって不利な株価の期に移転してしまうことがある
  • 逆に、「まだ決まっていないから」と現状を把握しないまま放置する。いまの株価がいくらで、承継にどれだけの税負担がかかるのかを知らなければ、変更が公表された時に比較すらできない
  • 国税庁が資料で名指しした類型(会社規模の恣意的な操作、配当還元方式の対象株主の作出、循環貸付、株特外し等)を、「まだ通達が変わっていないから今なら使える」と考える。総則6項の適用や、実行後に通達が改正されるリスクは残る
  • 資産管理会社を「株価対策の器」としてだけ捉える。第4回資料は「少なくとも資産管理会社については純資産価額方式で評価すること」を論点として挙げており、この点は方向性がはっきり示されている部類に入る
  • 従業員持株会や少数株主対策を配当還元方式の評価額が続く前提だけで設計する。還元率と対象株主の範囲は、いずれも見直しの論点に挙がっている
⭕ これから取るべき王道
  • いまの自社株評価額を、方式別に把握しておく。類似業種比準価額はいくらか、純資産価額はいくらか、その差はどれくらいか。国税庁の分析では純資産価額に対する類似業種比準価額の割合の中央値が0.27倍でしたが、自社の数字は自社で確かめるしかない
  • 「純資産価額で評価された場合の税負担」をシミュレーションしておく。仮に評価方式が一本化される方向に進んだ場合、影響が最も大きいのは、いまこの差が大きい会社です。最悪ケースを数字で持っておけば、公表後に慌てずに済む
  • 事業承継税制(納税猶予)の検討を、選択肢として並べておく。有識者会議でも「評価の話と税負担の話は分けるべき」「納税猶予制度をもっと広く柔軟に」という意見が出ています。特例措置の入口となる特例承継計画については、提出期限の延長に関する解説記事で整理しています
  • 議決権と財産権を分ける設計(種類株式・属人的株式)や、持株会社化などの選択肢を、評価額だけに依存しない形で検討する。評価ルールが変わっても、「誰が会社を動かすか」の設計は残ります
  • 国税庁の公表を定点観測する。今後は有識者会議の第5回以降の資料、財産評価基本通達の改正に関する意見公募(パブリックコメント)、そして通達そのものの順で情報が出てくる見込みです。令和6年のマンションの評価(居住用の区分所有財産の評価)も、有識者会議→意見公募→通達という流れをたどりました
  • 動くなら、いまの制度の下で合理性を説明できる形で動く。株価が下がる期を狙う、組織再編を行うといった行為は、それ自体が悪いのではなく、事業上の必要性と一貫しているかが問われます
💬 実務の現場から
弊社にも、「自社株の評価が上がると聞いたが、いま贈与を進めるべきか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、こうした局面でいちばん多いのは、自社の株価を方式別に把握していないまま、対策の話から入ってしまうケースです。類似業種比準価額と純資産価額の差がほとんどない会社もあれば、5倍以上開いている会社もあり、見直しが実現したときの影響はまったく違います。私たちが関与する場面でも、最初にお願いしているのは「まず現在地を数字にすること」です。そのうえで、承継の期限(後継者の年齢、社長の年齢、金融機関との関係)と照らし合わせて、待てるのか、待てないのかを判断していきます。守秘義務がありますので詳細は控えますが、構図としては、急ぐべき会社と、急ぐ必要のない会社がはっきり分かれるというのが実務の感覚です。

6. まとめ

国税庁は令和8年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、第4回(令和8年7月3日)の資料で「抜本的な見直しも視野に」「評価方式の一本化」を含む6項目について委員に意見を求めました。背景には、会計検査院「令和5年度決算検査報告」の指摘——類似業種比準価額の中央値が純資産価額の中央値の27.2%にとどまり、77.9%の会社で0.5倍未満配当還元方式の還元率10%は昭和39年から見直されていない——と、国税庁自身が別の期間のデータで確認した同様の傾向(26.1%・77.6%)があります。

押さえるべきは3点です。①まだ何も決まっていないこと。通達改正案も意見公募も適用時期も公表されておらず、議論は途中です。②それでも、当局の問題意識は明確に示されたこと。特に「少なくとも資産管理会社については純資産価額方式で評価すること」「配当還元方式の対象株主の範囲の整理」は、論点として名指しされています。③一方で、委員の意見は割れており、経済界からは慎重論も出ていること。類似業種比準方式が担ってきた事業承継への配慮をどう扱うかは、まさにこれから議論される部分です。

オーナー経営者がいますべきことは、駆け込みでも放置でもなく、自社の株価を方式別に把握し、最悪ケースの税負担を数字で持っておくことです。税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、自社株評価の算定から、事業承継税制・種類株式・持株会社化を含む承継設計、そして制度変更が公表された際の影響試算まで、オーナー経営者の意思決定に伴走しています。自社株の現在地を確かめておきたい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

自社株の評価方法は、もう変わることが決まったのですか?

決まっていません。国税庁は令和8年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、第4回(令和8年7月3日)の資料で抜本的な見直しを含む6項目について委員に意見を求めた段階です。2026年7月28日時点で、財産評価基本通達の改正案も、意見公募(パブリックコメント)も、適用開始時期も公表されていません。今後の通達改正等によって明らかにされる見込みです。

なぜ見直しの議論が始まったのですか?

会計検査院「令和5年度決算検査報告」が、類似業種比準価額の中央値が純資産価額の中央値の27.2%にとどまり、延べ477社(77.9%)で純資産価額に対する類似業種比準価額の割合が0.5倍未満だったことなどを示し、異なる規模区分の株主間で評価の公平性が確保されているとはいえないと指摘したことがきっかけです。あわせて、配当還元方式の還元率10%が昭和39年の通達制定当時から見直されていない点も指摘されました。

類似業種比準方式は廃止されるのですか?

廃止が決まった事実はありません。第4回資料では「今後の類似業種比準方式の在り方をどう考えるか」が論点として挙げられ、議事要旨には廃止を検討すべきという意見と、簡便性や事業承継への配慮の観点から慎重であるべきという意見の両方が記録されています。日本商工会議所からは、廃止となれば大幅な税負担増を招き円滑な事業承継を阻害するとの意見書が提出されています。

資産管理会社を持っています。影響はありますか?

第4回資料の「当局として御意見いただきたい事項」には、「一般の評価会社の評価見直しに応じ、特定の評価会社の範囲と評価方法について検討が必要となるところ、少なくとも資産管理会社については、純資産価額方式で評価すること」という項目が含まれています。これは論点として示されたものであり決定ではありませんが、資産管理会社の株式評価は見直し議論の対象に明示的に含まれています。現在の評価方式と純資産価額方式との差を把握しておくことをおすすめします。

見直しが実現すると、必ず税負担は増えるのですか?

一概にはいえません。会議の議事要旨には「客観的な『時価』としての評価の話と、税負担の在り方の話は分けて議論をするのが生産的」という意見や、税負担が重くなるのであれば税率の引下げ・基礎控除の増額・納税猶予制度(事業承継税制)の柔軟化といった対応があり得るという意見が記録されています。ただし、これらも決定事項ではありません。

いま自社株を贈与しておいたほうがよいですか?

伝聞だけで駆け込みの贈与を決めるのは危険です。見直しの内容も時期も未定であり、株価は会社の業績や類似業種の株価水準によっても動きます。まずは自社の類似業種比準価額と純資産価額を算定し、両者の差と、承継のタイムリミット(後継者・現経営者の年齢、金融機関との関係等)を突き合わせたうえで、税理士と判断することをおすすめします。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、国税庁及び会計検査院の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。本記事で紹介した論点・意見は、有識者会議の配付資料及び議事要旨に記載されたものであり、財産評価基本通達の改正内容・適用時期を含め、確定した事項ではありません。今後の通達改正等の内容によって取扱いが変わる可能性がありますので、実際の判断にあたっては最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年7月28日

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
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この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。