自社株評価シミュレーター(無料)|国税庁で検討中の新しい評価方法「残余利益方式」なら評価額はいくら?新旧比較と相続税インパクトを試算

2026年8月20日、国税庁は「第5回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の配付資料を公表しました。表題は「これまでの議論を踏まえた、国税庁の考える評価の見直しの方向性」。非上場株式(自社株)の評価方法について、残余利益方式という新しい評価方法を主軸にしてはどうかという、当局自身の考えが初めて具体的な計算イメージ付きで示されたものです。 議論の全体像は既に別の記事で詳しく解説していますが、経営者の方が本当に知りたいのは「で、うちの会社の株はいくらになるのか」のはずです。そこで弊社では、この資料の計算イメージに沿った速報版の無料シミュレーターを作りました。決算書2枚(貸借対照表と損益計算書)の数字を入れるだけで、新方式を仮定した場合の評価額・現行ルールとの比較・相続税へのインパクト概算まで、その場で試算できます。 制度はまだ何も決まっていません。 だからこそ、確定してから慌てるのではなく、検討段階のいまのうちに「自社の場合はどちらの方向に、どの程度動き得るのか」をレンジで把握しておくことに意味があります。3分で試せますので、ぜひ手元の決算書でお試しください。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きたのか(3行サマリー)
  2. 2. まずは試算してみる(無料・登録不要)
  3. 3. 「残余利益方式」とは——検討中の新しい評価方法
  4. 4. 結果はこう読む——上がる会社・下がる会社
  5. 5. このシミュレーターでは計算できないもの
  6. 6. いま経営者がやるべき3つのこと
  7. 7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きたのか(3行サマリー)

  • 国税庁の有識者会議が2026年8月20日、非上場株式の評価について「規模別の区分を廃止し、広範の企業を共通の評価方式で評価することが考えられるか」「実務・学術研究の進展を踏まえ、インカムアプローチ(収益力に着目して株式の価値を測る考え方)による評価を主軸とすべきではないか」という見直しの方向性(たたき台)を公表しました
  • 具体的な計算イメージとして示されたのが残余利益方式です。「残余利益方式による評価額=①”簿価”純資産±②数年分の超過収益」という構造で、必要な資料は「①直前期末の貸借対照表と②過去数年分の損益計算書等のみ」とされています
  • 弊社はこの計算イメージに沿った速報版シミュレーターを本記事で無料公開しました。入力した数字はブラウザの中だけで計算され、外部に送信されません
📌 本記事とシミュレーターの前提
第5回資料の各項目は「〜ではないか?」「〜としてはどうか?」という問いかけの形で書かれており、決定事項ではありません。改正案の公表・意見公募・適用時期のいずれもこれからです。本記事のシミュレーターは、同資料2〜3頁の計算イメージに基づく仮定計算であり、将来の評価額や税額を保証するものではありません。

2. まずは試算してみる(無料・登録不要)

用意するのは直近の決算書だけです。入力する数字は次の2か所から拾えます。

  • 純資産(簿価)……貸借対照表の「純資産合計」の金額。時価への評価替えは不要です(新方式のたたき台は簿価ベースのため)
  • 当期純利益……損益計算書の末尾の「当期純利益」。直近から最大5期分(手元にある期だけでも試算できます)

現行ルールでの評価額をお持ちの方(株価算定書や、相続税・贈与税の申告で使う「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」がある方)は、その金額も入れると新旧比較のグラフが表示されます。

非上場株式評価シミュレーター(新旧比較・速報版)
国税庁で議論中の新しい評価方法(残余利益方式)を仮定した場合に、自社株の評価額がどう変わり得るかを試算します。
制度は未確定です。本ツールは、国税庁の有識者会議(第5回・2026年8月20日公表)資料に示された検討段階の「たたき台」に基づく仮定計算であり、将来の評価額や税額を保証・断定するものではありません。
1. 決算書の数字を入力
貸借対照表の「純資産合計」(帳簿価額)をそのまま入力します。
直前期
2期前
3期前
4期前
5期前
損益計算書の「当期純利益」。入力した期だけで平均します(赤字はマイナスで入力)。
たたき台では、一時的な役員退職金等の非経常的な損益を除外した「正常利益」で評価する方向が示されています。平均利益に加減算したい金額があれば入力してください(例:一時的な特別損失の足し戻しはプラス)。
直近の株価算定書や「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の評価額があれば入力すると、新旧比較が表示されます。
2. 計算の前提(動かして感度を確認)
たたき台では上場株式の平均期待収益率等を参考にCAPM(資本資産価格モデル)で算定する案。水準は未定のため動かして確認してください。
「数年分」の年数も未定です。
3. 試算結果
新方式(残余利益方式・仮定計算)による評価額
純資産(簿価)
正常利益(平均利益±調整)
通常期待される利益(純資産×還元率)
残余利益(1年あたりの超過収益)
超過収益の現在価値(5年分)
評価額(純資産+超過収益)
計算式:評価額=簿価純資産+Σ 残余利益÷(1+還元率)t(t=1〜年数)。残余利益=正常利益−簿価純資産×還元率。赤字・低収益の場合は残余利益がマイナスとなり、簿価純資産を下回る評価額になります(本ツールでは下限を0円としています)。国税庁の有識者会議 第5回資料2〜3頁のイメージ図に基づく仮定計算です。
現行ルールの評価額(入力値)
新方式の評価額(仮定計算)
相続税へのインパクト概算(任意)
相続税の税率は10〜55%の累進(2026年8月現在)。実際の適用税率は財産全体の規模・法定相続人の数により異なります。
4. 感応度表(年数×還元率で評価額はこう動く)
還元率と年数はいずれも未定のため、置き方によって評価額がどの程度振れるかをレンジで把握しておくことが重要です(赤枠=上で設定中の前提)。単位:百万円。表は横にスクロールできます。
※入力した数字はお使いのブラウザの中だけで計算され、外部に送信・保存されることはありません。

スライダーの還元率年数は、いずれもまだ決まっていない前提条件です。1つの数字を信じ込むのではなく、動かしてみて「うちの会社はこの範囲で振れる」というレンジで受け取ってください。

3. 「残余利益方式」とは——検討中の新しい評価方法

残余利益方式とは、会社の価値を「いま持っている純資産」と「その純資産から通常期待される水準を超えて稼ぐ力(超過収益)」の2つに分けて評価する方法です。第5回資料の計算イメージを式にすると、次のようになります。

  • 評価額 = 簿価純資産 + 数年分の残余利益の現在価値(マイナスの場合を含む)
  • 残余利益 = 正常利益 −(簿価純資産 × 還元率)

ここでいう正常利益とは、一時的な役員退職金のような非経常的な損益を除いた、会社の実力ベースの利益のことです。第5回資料は、評価を正常利益で行い非経常的な損益を除外することで「評価額の恣意性を排除することができないか」としています。還元率(期待収益率)は、上場株式の平均期待収益率等を参考にCAPM(資本資産価格モデル。市場データから株式に求められる収益率を推計する手法)により算定してはどうか、とされています。超過収益を織り込む年数について、資料には「有識者からは5年分が良いのではないかという意見があった」と注記されていますが、これも決定ではありません。

第5回資料は、収益力に着目する評価方法(インカムアプローチ)の代表的な3方式を比較したうえで、配当還元方式は配当を操作している企業等に、DCF法は成長期の企業等に適用できないのに対し、残余利益方式は「適用できない企業」が「特には見あたらない」と整理しています。将来予測への依存が小さく、決算書から把握できる情報で計算できることが、主軸候補とされている理由です。

💡 類似業種比準方式は「存置することは困難ではないか」——ただし廃止が決まったわけではありません
第5回資料は、現行の中心的な評価方法である類似業種比準方式について「理論的な根拠や実証的な裏付けがなく、他分野における企業価値評価では用いられない」として存置は困難ではないかとし、純資産価額方式についても原則的評価方式ではなく「特定の評価会社の株式の評価方式」として位置付けてはどうかとしています。一方で、事務局は第4回の議事要旨で「類似業種比準方式を廃止するということを現時点で決定しているわけではない」と明言しています。方向性と決定を区別して読む必要があります。

4. 結果はこう読む——上がる会社・下がる会社

第5回資料自身が、新方式の下での評価水準の構図を明示しています。期待収益率以上の収益率の会社は簿価純資産価額以上、期待収益率以下または赤字の会社は簿価純資産価額以下になる、という関係です。

設例で確認します。簿価純資産10億円・正常利益2億円の会社を、還元率7%・5年分で試算すると、通常期待される利益は7,000万円(10億円×7%)、残余利益は1億3,000万円です。その5年分の現在価値5億3,303万円が上乗せされ、評価額は15億3,303万円となります。同じ純資産で正常利益が3,000万円しかなければ残余利益はマイナス(年▲4,000万円)となり、評価額は簿価純資産を下回る8億3,599万円です(いずれも本記事のシミュレーターに同じ数字を入力すると表示される設例です)。

もう1つ押さえておきたいのは、現行ルールとの比較では会社のタイプによって方向が分かれ得ることです。たとえば含み益の大きい事業用不動産を長く保有している会社は、現行の純資産価額方式では含み益込みの時価で評価される一方、新方式のたたき台は簿価ベースのため、下がる方向に働き得ます。逆に、資産は軽いのに収益力が高い会社は、超過収益の上乗せで簿価純資産より高くなる方向です。どちらに転ぶかは決算書の数字次第なので、一般論ではなく自社の数字で試算することに意味があります。

❌ やってはいけない受け取り方
  • 「増税が決まった」と受け取る(事務局は「あくまで評価の適正化を目的としており、全体として相続税の増税を目的で行うものではない」と説明しています)
  • 「類似業種比準方式は廃止決定」と受け取る(前章のとおり、現時点で決定した事実はありません)
  • シミュレーターの結果を将来の評価額・税額として扱い、それを前提に贈与や組織再編を実行する
⭕ 正しい使い方
  • 還元率と年数を動かし、感応度表で評価額の振れ幅(レンジ)として把握する
  • 現行ルールでの評価額と並べて、自社がどちらの方向に動き得るタイプかを確認する
  • 続報(改正案の公表・意見公募・適用時期)が出るたびに、同じ数字で試算し直す

5. このシミュレーターでは計算できないもの

速報版の簡易ツールとして、対象を「たたき台の計算イメージの再現」に絞っています。次の論点は含まれていませんので、該当する会社は個別の検討が必要です。

  • 現行ルールの評価額の計算(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式による評価そのもの)
  • 株式等保有特定会社・土地保有特定会社など「特定の評価会社」に該当する場合の評価(新制度での範囲・判定基準は今後の検討事項とされています)
  • 完全支配関係があるグループ法人全体での評価(たたき台は、グループ法人税制を活用した評価額の圧縮に対し、グループ全体として評価を行うことで操作性を排除してはどうかとしています)
  • 種類株式の評価、正常利益の個別判定(どの損益を非経常的として除外するか)、債務超過会社の評価
  • 相続税インパクト欄は「評価額の増減×持株割合×仮定税率」の粗い概算であり、基礎控除・小規模宅地等の特例・事業承継税制(納税猶予)等は考慮していません

6. いま経営者がやるべき3つのこと

  1. 現行ルールでの自社株の評価額を把握する……新旧比較は、現在地が分かって初めて意味を持ちます。直近の相続税・贈与税申告や株価算定書がなければ、まず現行の取引相場のない株式の評価から始めてください
  2. 簿価純資産と正常利益の目線で決算書を見直す……新方式のたたき台で使うのはこの2つの数字です。非経常的な損益(一時的な特別損益等)がどの期にいくら入っているかを整理しておくと、続報が出たときにすぐ再試算できます
  3. たたき台の段階で慌てて動かない……役員退職金やオペレーティング・リースで利益を圧縮した期を狙った株式移転、グループ法人税制を前提とした持株構成といった手法は、まさに第5回資料が「租税回避スキーム」として名指しで対応を検討している領域です。検討段階の情報を前提にスキームを実行するのは、方向が逆です
💬 実務の現場から
守秘義務がありますので詳細は控えますが、8月20日の資料公表のあと、弊社にも「うちの株価はどうなるのか」というご相談が実際に寄せられています。過去のご相談の傾向として申し上げると、経営者の方は「上がるのか下がるのか」という二択で聞かれることが多いのですが、実際に決算書の数字で試算してみると、還元率と年数の置き方によって同じ会社でも大きくレンジが振れます。私たちがこの段階でお勧めしているのは、結論を急ぐことではなく、現行ルールでの評価額と新方式の試算レンジを1枚に並べて、どの前提なら何が起こるのかを地図として持っておくことです。

7. まとめ

国税庁の有識者会議は2026年8月20日、非上場株式の評価について、規模別区分の廃止と残余利益方式を軸とする見直しの方向性(たたき台)を公表しました。残余利益方式の評価額は「簿価純資産±数年分の超過収益」という構造で、期待収益率を上回る収益力の会社は簿価純資産より高く、下回る会社・赤字の会社は低く評価される関係になります。

ただし、評価方式の採否・還元率の水準・年数・特定の評価会社の扱い・適用時期は、いずれも確定していません。いまやるべきことは、確定情報のように扱って動くことではなく、本記事のシミュレーターのようなツールで自社の評価額がどのレンジで動き得るかを把握し、続報に備えることです。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズは、現行ルールでの自社株評価、有識者会議の議論を踏まえた事業承継・相続対策の設計まで一体でご支援しています。試算結果を見て気になる点があった方は、決算書をお手元にお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

新しい評価方法はいつから適用されますか?

決まっていません。2026年8月20日に公表された第5回資料は検討段階のたたき台であり、改正案の公表・意見公募・経過措置・適用開始時期はいずれも示されていません。現行の財産評価基本通達による評価は、現在も有効です。

シミュレーターの結果は、将来の評価額として使えますか?

使えません。本ツールは第5回資料2〜3頁の計算イメージに基づく仮定計算であり、還元率・年数などの前提はすべて今後の議論で変わり得ます。将来の評価額・税額を保証するものではなく、振れ幅を把握するための参考値としてご利用ください。

評価額は上がる会社と下がる会社のどちらが多いのですか?

一律には言えません。第5回資料の構図では、期待収益率を上回る収益力の会社は簿価純資産より高く、下回る会社・赤字の会社は低く評価される関係です。現行ルールとの比較では、含み益の大きい不動産を保有する会社は下がる方向、資産が軽く収益力の高い会社は上がる方向に働き得ます。なお、事務局は「全体として相続税の増税を目的で行うものではない」と説明しています。

入力した決算書の数字はどこかに送信されますか?

されません。計算はすべてお使いのブラウザの中で完結し、入力した数字が外部に送信・保存されることはありません。安心してお試しください。

現行ルールでの評価額はどうすれば分かりますか?

相続税・贈与税の申告をしたことがある場合は「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」に、株価算定を依頼したことがある場合は株価算定書に記載されています。どちらもない場合は、決算書と株主構成が分かる資料があれば税理士が算定できます。弊社でも現行ルールでの評価額の算定を承っています。

事業承継税制(納税猶予)はどうなりますか?

第5回資料は、事業承継への配慮は株式の「評価」の中でではなく、政策税制(事業承継税制のような特例措置)で行うという整理の方向を示しています。ただし、これも検討段階の整理であり、事業承継税制自体の今後の扱いが決まったわけではありません。特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日まで延長されていることも含め、現行制度の期限管理は従来どおり必要です。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事およびシミュレーターは、国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。第5回資料は検討段階のたたき台であり、評価方式の採否・還元率・年数・特定の評価会社の範囲・適用時期はいずれも2026年8月現在確定していません。試算結果は仮定計算による参考値であり、将来の評価額・税額を保証するものではありません。実際の対策のご判断は、最新の情報をご確認のうえ、必ず税理士への個別相談を経て行ってください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月23日

自社株評価・事業承継のご相談は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、現行ルールでの自社株評価の算定から、評価見直し議論を踏まえた事業承継・相続対策の設計まで一体でご支援します。シミュレーターの試算結果が気になった方は、決算書をお手元にお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら
小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。自社株評価・事業承継・相続対策から国際税務・資産防衛まで、経営者のお金の論点に一体で伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。