準確定申告とは?4か月の期限・必要な人・付表・相続税との関係を税理士が解説【2026年版】
- 1. 3行サマリー
- 2. 準確定申告とは——「4か月」はどこから数えるのか
- 3. 準確定申告が必要な人・不要な人
- 4. 通常の確定申告と違う5つの点
- 5. 手続き——付表・提出先・還付金の委任状
- 6. 相続税との関係——ここが最も間違えやすい
- 7. 事業をしていた場合——消費税と青色申告の期限
- 8. 期限に間に合わないとどうなるか
- 9. 失敗vs王道
- 10. まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. 3行サマリー
- 準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月です(所得税法第125条第1項)。「亡くなった日から4か月」ではなく、「知った日の翌日から」が起点です
- 所得控除は死亡の日までに被相続人が支払った分しか対象になりません。一方、配偶者控除・扶養控除の判定は死亡の日の現況で行い、月割計算はしません
- 準確定申告で納めた所得税は相続税の債務控除の対象(相続税法第13条第1項第1号)、還付金は本来の相続財産として相続税の課税対象になります。還付加算金だけは相続人の雑所得で、扱いが分かれます
2. 準確定申告とは——「4か月」はどこから数えるのか
所得税は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に申告と納税をするのが原則です。しかし年の中途で亡くなった場合は、その年の1月1日から死亡の日までの所得を、相続人(包括受遺者を含みます)が計算して申告します。これを準確定申告といいます。
「居住者が年の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税について第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、(中略)その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日(同日前に当該相続人が出国をする場合には、その出国の時。)までに、税務署長に対し、(中略)申告書を提出しなければならない。」
起点は「死亡の日」ではなく「相続の開始があったことを知った日」であり、そこから翌日起算で4か月です。疎遠だった親族の死亡を後から知った場合、期限も後ろにずれます。
起点がずれる典型例
いずれも死亡の日は2026年9月10日で共通、違うのは「知った日」だけ、という前提で並べます。
| 状況 | 知った日 | 準確定申告の期限 |
|---|---|---|
| 同居の親が亡くなった(当日に知った) | 2026年9月10日 | 2027年1月10日 |
| 別居で、1か月後に連絡を受けた | 2026年10月10日 | 2027年2月10日 |
| 疎遠で、半年後に役所から通知が来た | 2027年3月10日 | 2027年7月10日 |
| 相続人が期限前に出国する | 2026年9月10日 | 出国の時(4か月より前に到来) |
いちばん下の行を見落とす方が多いところです。相続人が海外へ転出する場合、期限は「出国の時」まで前倒しになります(所得税法第125条第1項の括弧書き)。海外赴任の内示が出ている相続人がいるときは、この点を最初に確認してください。
前年分がまだ出ていないまま亡くなった場合
年明けから3月15日までの間に、前年分の確定申告書を提出しないまま亡くなることがあります。この場合は、前年分・本年分の両方が準確定申告の対象になり、いずれも「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」が期限です(国税庁タックスアンサーNo.2022)。
1月・2月に相続が起きたときは、申告書が2年分必要になると覚えておいてください。前年分だけを通常の3月15日期限だと思い込むと、期限を取り違えます。
3. 準確定申告が必要な人・不要な人
判定の考え方は、生きている人の確定申告と同じです。「その人が生きていたら確定申告が必要だったか」を、死亡の日までの所得で判定します。
必要になる主なケース
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 事業所得がある | 個人事業主・フリーランス。死亡の日までの事業所得を計算する |
| 不動産所得がある | アパート・駐車場などの賃貸。死亡の日までに収入すべき金額で計算する |
| 給与が2,000万円を超える | 年末調整の対象外となるため申告が必要 |
| 給与を2か所以上から受けていた | 従たる給与と給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合 |
| 公的年金等が400万円超 | 400万円以下でも他の所得が20万円を超えれば必要 |
| 譲渡所得がある | 死亡の日までに不動産・株式などを売却していた場合 |
| 同族会社から給与以外の支払を受けていた | 貸付金の利息、地代家賃などがある場合は金額の多寡を問わない |
| 限定承認をした | 死亡の日の時価で譲渡があったものとみなされる(所得税法第59条第1項第1号) |
いちばん下の限定承認は、他とまったく性質が違います。相続人が限定承認を選んだというだけで、被相続人に譲渡所得が発生し、準確定申告が必要になります。 この論点は独立した記事で詳しく扱っています。
必要ではないが、出すと得になるケース(還付申告)
申告義務がなくても、納めすぎの所得税を取り戻せる場合があります。
- 死亡の日までに多額の医療費を支払っていた(医療費控除)
- 給与や年金から源泉徴収されていたが、年の途中で亡くなったため年末調整を受けていない
- 予定納税をしていたが、死亡により年間の所得が想定より小さくなった
- 生命保険料・地震保険料・社会保険料を支払っていたが、控除が反映されていない
所得税法第125条は、第1項(納付すべき税額がある場合)は「提出しなければならない」=4か月以内、第2項(還付等を受けるための申告に該当する場合)は「提出することができる」と書き分けています。第2項には4か月の定めがありません。
還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。4か月を過ぎたから還付をあきらめる必要はありません。
実務家の立場から申し上げると、ここを取り違えて「もう4か月過ぎたので何もできない」と考えてしまうご相談は少なくありません。納付が出るのか還付が出るのかで、期限の性質がまったく違います。
4. 通常の確定申告と違う5つの点
準確定申告でいちばん間違いが起きるのが、所得控除の扱いです。「死亡の日まで」で切るものと、「死亡の日の現況」で判定するものが混在しています。
(1)所得控除は「死亡の日までに支払った分」だけ
| 控除の種類 | 対象になるもの | 死亡後に相続人が支払った分 |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 死亡の日までに被相続人が支払った医療費 | 対象にならない |
| 社会保険料控除 | 死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額 | 対象にならない |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 死亡の日までに被相続人が支払った掛金の額 | 対象にならない |
| 生命保険料控除 | 死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額 | 対象にならない |
| 地震保険料控除 | 死亡の日までに被相続人が支払った保険料等の額 | 対象にならない |
| 寄附金控除 | 死亡の日までに被相続人が支出した特定寄附金 | 対象にならない |
入院中に亡くなった場合、最後の入院費の請求書は死亡後に届くのが普通です。その支払は被相続人の準確定申告では医療費控除の対象になりません。なお、被相続人と生計を一にしていた親族が支払った医療費について、その親族自身の医療費控除の対象となるかどうかは、生計を一にしていたかなどの事実関係による個別判断になります。
(2)人的控除は「死亡の日の現況」で判定し、月割りしない
配偶者控除や扶養控除等を適用できるかどうかの判定(親族関係や、その親族等の1年間の合計所得金額の見積り等)は、死亡の日の現況により行います。そして配偶者控除額、配偶者特別控除額、扶養控除額および特定親族特別控除額の月割計算等は行いません(国税庁タックスアンサーNo.2022)。
3月に亡くなった方でも、扶養控除は1年分の満額で適用されます。「3か月分だから12分の3」ではありません。ここは納税者に有利な取扱いなので、取りこぼさないでください。
「特定親族特別控除」は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます(国税庁タックスアンサーNo.2022の注書き)。準確定申告でも、上記のとおり月割計算は行いません。
(3)基礎控除は満額
基礎控除も月割りしません。死亡の日が1月であっても12月であっても、合計所得金額に応じた金額がそのまま適用されます。
(4)提出先は「被相続人の」納税地
準確定申告書は、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出します。相続人の住所地ではありません。被相続人が地方に住んでいて相続人が東京にいる場合でも、提出先は被相続人側です。
(5)相続人が2人以上いるときは連署が原則
各相続人等が連署により準確定申告書を提出することになります。ただし、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に申告した内容を通知しなければならないことになっています(国税庁タックスアンサーNo.2022)。
相続人の仲がよくない、連絡が取れない、という場面で連署にこだわると期限に間に合いません。別々に提出できることと、そのときは通知義務が生じることをセットで押さえてください。
過去のご相談の傾向として申し上げると、準確定申告でつまずくのは税額計算そのものよりも、「誰が」「何を」揃えるかの段取りです。年金の源泉徴収票、医療費の領収書、事業の帳簿、生命保険料控除証明書——これらは被相続人あてに届くため、郵便物が止まる前に押さえておくかどうかで作業量が大きく変わります。相続人が複数いる場合は、最初に代表者を決め、資料の集約先を一本化しておくと、4か月は十分に足ります。逆に、誰も動かないまま2か月が過ぎると、途端に苦しくなります。
5. 手続き——付表・提出先・還付金の委任状
提出するもの
| 書類 | 内容 | 必要な場面 |
|---|---|---|
| 準確定申告書 | 通常の確定申告書を使い、表題に「準確定」と加筆する | 常に必要 |
| 死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 | 各相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入する | 常に必要 |
| 委任状(準確定申告書用) | 還付金の受領を相続人の代表者等に委任する場合に提出する | 還付金を代表者がまとめて受け取る場合 |
| 各種控除の証明書 | 生命保険料控除証明書、社会保険料の領収書、医療費の明細書など | 該当する控除を受ける場合 |
付表は必ず添付します。 相続人が誰で、それぞれの相続分がどれだけで、納付・還付をどう按分するかを記載する書類で、これがないと税務署は誰にいくら還付すべきかを判断できません。
還付金を代表者がまとめて受け取りたいとき
相続人や包括受遺者が受領すべき還付金の受領を相続人の代表者等に委任する場合には、準確定申告書の付表とは別に、還付金の受領に関する委任状の提出が必要になります(国税庁タックスアンサーNo.2022)。
付表を出せば足りると誤解されやすいところです。付表と委任状は別の書類で、代表者口座に一括で振り込んでほしいなら委任状が要ります。
納税も4か月以内
申告だけでなく納税も4か月以内です。納付すべき税額は、原則として各相続人が相続分に応じて按分して負担します。相続財産がまだ分割されていなくても、納期限は待ってくれません。
6. 相続税との関係——ここが最も間違えやすい
準確定申告の結果は、相続税の計算にそのまま影響します。しかも納付・還付金・還付加算金で扱いが3つに分かれます。
| 項目 | 相続税での扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 準確定申告で納付する所得税 | 債務控除の対象(課税価格から控除する) | 相続税法第13条第1項第1号 |
| 準確定申告により還付される還付金 | 本来の相続財産として課税価格に算入する | 国税庁 質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」 |
| その還付金に付く還付加算金 | 相続税の課税価格に算入しない。相続人の雑所得として所得税の対象 | 同上(所得税法第125条第2項、国税通則法第58条、所得税基本通達35−1(4)) |
なぜ還付金は相続財産で、還付加算金は違うのか
国税庁の質疑応答事例は、次のように整理しています。
「還付金請求権は(本来の)相続財産であり、相続税の課税の対象となります。還付金請求権は、被相続人の死亡後に発生するとしても、被相続人の生存中に潜在的な請求権が被相続人に帰属しており、これが被相続人の死亡により顕在化したものと考えられます。」
「還付加算金は相続人が確定申告書の提出によって原始的に取得するもので、被相続人からの相続によって取得するものとは認められないため、所得税(雑所得)の課税対象となり、相続税の課税価格には算入されません。」
つまり、還付金のもとになる権利は被相続人のものだったが、還付加算金は相続人が申告書を出したことで初めて生まれた、という区別です。
ただし「亡くなる前に申告書を出していた」場合は結論が変わる
被相続人が自分で確定申告書を提出したあと、還付金の支払決定前に亡くなった場合は、還付加算金も相続税の課税価格に算入されます。国税庁の別の質疑応答事例が、次のように整理しています。
「申告所得税の納税義務は、暦年の終了の時に成立するとされています。このことは、還付申告となる場合の還付金請求権についても同様であると考えられます。したがって、還付加算金についても暦年終了後は、被相続人の債権として潜在的に成立していると考えるのが相当であり、被相続人の死亡時までの期間に係る還付加算金は、相続税の課税価格に算入されます。」(関係法令通達:相続税法第2条、国税通則法第15条第2項第1号)
同じ「還付加算金」でも、申告書を出したのが被相続人自身か、相続人かで結論が分かれます。ここは実務でも見落とされやすい分岐です。
債務控除できる公租公課の範囲
相続税法第13条第1項第1号は、控除できる債務を「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)」と定めています。準確定申告により納付する所得税のほか、被相続人が納めるべきであった住民税・固定資産税・事業税なども、相続開始の際に確定していない場合であっても債務控除の対象になります(国税庁タックスアンサーNo.4126)。
個人事業主が亡くなった場合、準確定申告の事業所得に係る事業税は、翌年に賦課決定されます。この事業税は被相続人の債務として債務控除の対象になり、同時に、その事業税の額は準確定申告における事業所得の必要経費としても扱われます。相続税と所得税の両方で効いてくるため、事業を営んでいた方の相続では必ず確認してください。
7. 事業をしていた場合——消費税と青色申告の期限
被相続人が個人事業主だった場合、所得税だけで終わりません。同じ4か月の中に、消費税と届出の期限が重なります。
消費税の準確定申告も4か月以内
被相続人が消費税の課税事業者だった場合、消費税についても準確定申告が必要です。
個人事業者が課税期間の中途において死亡した場合、その相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、その課税期間分の消費税の確定申告書を提出しなければならないこととされています。所得税の準確定申告と同じ期限です。
なお、被相続人が免税事業者であった場合には、この申告は不要です。
あわせて、「個人事業者の死亡届出書」の提出が必要です(国税庁「D1-15 個人事業者の死亡届出手続」)。
青色申告承認申請の期限は「死亡の日」で変わる
事業を承継する相続人が青色申告をしたい場合、被相続人の青色申告は自動的には引き継がれません。 相続人が自分の名前で承認申請を出す必要があり、その期限は死亡の日によって3通りに分かれます。
| 被相続人の死亡の日 | 青色申告承認申請書の提出期限 |
|---|---|
| その年の1月1日から8月31日まで | 死亡の日から4か月以内 |
| その年の9月1日から10月31日まで | その年の12月31日まで |
| その年の11月1日から12月31日まで | その年の翌年の2月15日まで |
(国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」の提出時期。手続根拠:所得税法第144条、第166条。※これは被相続人が青色申告の承認を受けていた事業を相続により承継した場合の期限です)
このほか、事業を承継する相続人は「個人事業の開業・廃業等届出書」、青色事業専従者給与を支払うなら「青色事業専従者給与に関する届出書」、従業員を引き継ぐなら給与支払事務所等の開設届出書なども必要になります。準確定申告の作業と並行して届出の棚卸しをしてください。
8. 期限に間に合わないとどうなるか
準確定申告の期限を過ぎると、期限後申告として取り扱われます。納付すべき税金があった場合には、無申告加算税と延滞税の対象になります。
無申告加算税の割合(令和5年分以降・令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの)
| 期限後申告のタイミング | 納付すべき税金50万円までの部分 | 50万円超300万円までの部分 | 300万円を超える部分 |
|---|---|---|---|
| 税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告 | 5% | 5% | 5% |
| 調査の事前通知の後、決定を予知する前の期限後申告 | 10% | 15% | 25% |
| 調査を受けた後の期限後申告・税務署から決定を受けた場合 | 15% | 20% | 30% |
(出典:国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」)
さらに、期限後申告に係る年分の前年および前々年の所得税について無申告加算税もしくは無申告加算税に代えて課される重加算税が課されたことがあるとき、または課されるべきと認められるときには、納付すべき税金に10%の割合を乗じて計算した金額が加算されます。
気づいたら、調査の通知が来る前に自分から出す。 これが割合の面でも最も有利です。5%と15%では3倍違います。
9. 失敗vs王道
- 相続税の10か月ばかりを見ていて、準確定申告の4か月に気づかない。相続税がかからない規模でも準確定申告は必要になり得る。
- 「亡くなった日から4か月」と数える。正しくは「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月」。
- 相続人の1人が海外赴任するのに、期限が「出国の時」まで前倒しになることを知らずに通常の4か月で段取りする。
- 1月・2月に相続が起きたのに、前年分の申告書が未提出であることを見落とし、本年分だけ出す。
- 死亡後に届いた最後の入院費の請求書を医療費控除に入れてしまう。準確定申告の対象は死亡の日までに被相続人が支払った分だけ。
- 扶養控除を月割りして計算する。月割計算は行わず、満額適用される。
- 準確定申告書だけを出し、付表を添付しない。あるいは代表者口座に一括で還付を受けたいのに委任状を出していない。
- 相続人同士の連絡がつかず、連署にこだわって期限を落とす。別々に提出できる(ただし他の相続人への通知義務がある)。
- 還付だけの案件で「4か月を過ぎたからもう無理」とあきらめる。還付申告は翌年1月1日から5年間できる。
- 準確定申告で納めた所得税を、相続税の債務控除に入れ忘れる。
- 個人事業主なのに消費税の準確定申告と青色申告承認申請の期限を失念する。青色は自動では引き継がれない。
- 相続が起きたら、まず「知った日」を確定し、そこから4か月後をカレンダーに置く。相続人に出国予定者がいないかを同時に確認する。
- 1月から3月15日までの相続は、前年分・本年分の2年分を前提に段取りする。
- 郵便物が止まる前に、年金の源泉徴収票・保険料控除証明書・医療費の領収書・事業の帳簿を1か所に集約する。相続人が複数なら、最初に資料の集約先と代表者を決める。
- 控除は「死亡の日までに支払ったか」で切るものと、「死亡の日の現況で判定し月割りしないもの」を一覧にして突き合わせる。
- 付表は必ず添付し、代表者が還付金を受け取るなら委任状もセットで用意する。
- 納付額が出る場合は、相続税の債務控除に回す金額として金額を控えておく。還付が出る場合は、還付金は相続財産・還付加算金は相続人の雑所得として分けて記録する。
- 個人事業を承継するなら、準確定申告と同時に届出書の棚卸しをする。青色申告承認申請は死亡の日で期限が3通りに分かれるため、真っ先に確認する。
- 期限に間に合わないと分かった時点でも、調査の通知が来る前に自主的に提出する。
10. まとめ
準確定申告は、相続で最初に来る税務の期限です。ポイントを整理します。
- 期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月(所得税法第125条第1項)。相続人が期限前に出国する場合は出国の時まで前倒しになる
- 納付が出る場合の4か月は義務の期限、還付だけの場合は5年間提出できる。この違いを最初に見極める
- 所得控除は死亡の日までに被相続人が支払った分のみ。一方、配偶者控除・扶養控除等の判定は死亡の日の現況で行い、月割計算はしない
- 提出先は被相続人の死亡当時の納税地。付表は必須、還付金を代表者が受け取るなら委任状も必要
- 相続人が2人以上なら連署が原則。別々に提出する場合は他の相続人への通知義務がある
- 相続税では、納付した所得税は債務控除、還付金は本来の相続財産、還付加算金は相続人の雑所得。ただし被相続人自身が申告書を出したあとに亡くなった場合の還付加算金は相続税の課税価格に算入される
- 個人事業主なら、消費税の準確定申告も4か月以内。青色申告承認申請の期限は死亡の日によって3通りに分かれる
税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、準確定申告と相続税申告を同じチームで一体にお引き受けしています。準確定申告で納めた所得税を相続税の債務控除に確実に反映させること、還付金と還付加算金を分けて処理すること、事業を承継する場合の届出を落とさないこと——これらは別々に進めると必ずどこかが抜けます。4か月と10か月をひとつの工程表として設計するのが、最も事故が少ない進め方です。
よくある質問(FAQ)
相続放棄をした場合も準確定申告をしなければなりませんか?
4か月の期限を延長してもらうことはできますか?
準確定申告をすると、相続税の申告も必ず必要になりますか?
年金しか受け取っていなかった親でも、準確定申告は必要ですか?
死亡後に支払った医療費は、どこにも入れられないのですか?
相続人が複数いる場合、納税額はどう分けますか?
準確定申告書はe-Taxで提出できますか?
被相続人が予定納税をしていた場合はどうなりますか?
準確定申告を忘れていたことに、相続税の申告作業中に気づきました。
被相続人が海外に住んでいた(非居住者だった)場合も同じですか?
出典・参考資料
- 国税庁タックスアンサー No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁タックスアンサー No.2030 還付申告(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁タックスアンサー No.2024 確定申告を忘れたとき(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁タックスアンサー No.4126 相続財産から控除できる債務(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)
- 国税庁 質疑応答事例「確定申告書提出後に死亡した被相続人に係る還付加算金の課税関係」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁「D1-15 個人事業者の死亡届出手続」
- 国税庁 相続税法基本通達「第13条《債務控除》関係」
- 根拠法令:所得税法第16条、第85条、第120条、第122条、第123条、第124条、第125条、第144条、第166条/所得税法施行令第263条/所得税法施行規則第49条/所得税基本通達85−1、124・125−4、35−1(4)/相続税法第2条、第13条第1項第1号/消費税法第45条/国税通則法第15条第2項第1号、第58条、第66条
本記事は、国税庁の公表資料および法令・通達に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に関する税務上の取扱いを保証するものではありません。準確定申告の要否、控除の適用可否、相続税における債務控除の範囲は、個々の事実関係により異なります。実際の税務処理にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月23日
相続の税務を一体でご相談ください
公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、準確定申告と相続税申告を同じチームで一体にお引き受けしています。4か月と10か月をひとつの工程表として設計するのが、最も事故が少ない進め方です。
無料相談はこちらこの記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。
