自社株の評価が変わった|純資産価額方式の法人税額等相当額が37%から38%へ(令和8年3月25日 課評2-28)を税理士が解説

自社株の評価に使う数字が、静かに1つ変わりました。 令和8年3月25日付 課評2-28ほか2課共同「財産評価基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)により、純資産価額方式で控除する「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の割合が、37%から38%に改正されました(評価基本通達186-2)。適用は、令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等からです。 きっかけは増税です。令和7年度税制改正で防衛特別法人税が創設され、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることになりました。ところが——この増税は、自社株の評価額を上げるのではなく、下げる方向に働きます。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、「防衛特別法人税で株価はどうなるのか」というご質問が実際に寄せられます。本記事では、通達のあらましの原文にさかのぼって、何が変わり、いくら動き、どこで間違えやすいのかを整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が変わったのか(結論)
  2. 2. 前提:純資産価額方式の計算のどこに効くのか
  3. 3. 38%の中身——実際は37.7316%
  4. 4. 実際にいくら動くのか
  5. 5. 見落としやすい4つの点
  6. 6. 実務でどう備えるか
  7. 7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 何が変わったのか(結論)

改正されたのは、財産評価基本通達186-2「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」です。国税庁の情報は、改正の趣旨を次のように説明しています。

令和7年度税制改正において、防衛特別法人税が創設されたことに伴い、純資産価額方式における「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の算定に用いる「法人税(地方法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」を 37%から 38%に改正するなど所要の改正を行った。

(出典:国税庁「『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)」令和8年3月25日)

条文の文言も整理されました。改正前は「法人税(地方法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」だったところが、改正後は「法人税(地方法人税及び防衛特別法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」となりました。防衛特別法人税が、明文で括弧の中に入ったということです。

2. 前提:純資産価額方式の計算のどこに効くのか

取引相場のない株式の評価方法のうち、純資産価額方式は次の算式で計算します。

純資産価額 =(総資産価額 - 負債の合計額 - 評価差額に対する法人税額等に相当する金額)÷ 発行済株式数

ここでいう総資産価額は、相続税評価額による総資産価額です。つまり、帳簿に載っている簿価ではなく、土地なら路線価、上場株式なら課税時期の相場、といった相続税評価額に洗い替えます。

洗い替えると、簿価との間に差が出ます。この差が「評価差額」です。国税庁の情報は、控除する金額を次のように定義しています。

「相続税評価額による純資産価額」から「帳簿価額による純資産価額」を控除した残額に「法人税(地方法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」(以下「法人税率等の合計割合」という。)を乗じて計算した金額

今回の改正は、この「法人税率等の合計割合」を37%から38%に引き上げたものです。

💡 なぜ控除するのか … 純資産価額方式は、「いまこの会社を解散・清算したら株主にいくら残るか」という発想に近い評価方法です。含み益のある資産を実際に売れば法人税等がかかりますから、その分を引いてから株主の取り分を計算する、という考え方です。割合が上がる=控除する金額が増える=1株当たりの純資産価額は下がる、という関係になります。

3. 38%の中身——実際は37.7316%

国税庁の情報には、令和8年4月1日以後に開始する事業年度等の「法人税率等の合計割合」の内訳が示されています。37.7316%を切り上げて38%という構成です。

税目税率に相当する割合
法人税23.2%
地方法人税2.3896%
防衛特別法人税0.928%
事業税7.0%
特別法人事業税2.59%
道府県民税0.232%
市町村民税1.392%
合計37.7316%(≒38%)

(出典:国税庁「『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)」令和8年3月25日)

各税目の根拠条文と計算の内訳は、次のとおりです。

  • 法人税 … 法人税法第66条第1項
  • 地方法人税 … 地方法人税法第10条第1項(法人税額×10.3%)
  • 防衛特別法人税 … 防衛財源確保法第14条第1項(法人税額×4.0%)
  • 事業税 … 地方税法第72条の24の7第1項第3号
  • 特別法人事業税 … 特別法人事業税法第7条第1項第3号(事業税額×37.0%)
  • 道府県民税 … 地方税法第51条第1項(法人税割の税率=法人税額×1.0%)
  • 市町村民税 … 地方税法第314条の4第1項(法人税割の税率=法人税額×6.0%)

新たに加わったのは防衛特別法人税の0.928%です。基準法人税額(=法人税額)に4.0%を乗じるものなので、23.2%×4.0%=0.928%となります。

なお、国税庁は次の点も明記しています。

なお、防衛特別法人税の算定における基礎控除額に相当する金額については、評価方法の簡便性を考慮し、「法人税率等の合計割合」の算定に当たって加味しないこととした。

防衛特別法人税には基礎控除がありますが、評価の場面では加味しない——つまり、会社の規模にかかわらず一律に0.928%で計算する、という割り切りです。個社ごとに基礎控除を織り込ませない、簡便性を優先した設計になっています。

4. 実際にいくら動くのか

評価差額に乗じる割合が1ポイント上がるだけですので、動くのは「評価差額×1%」です。

たとえば、相続税評価額による純資産価額が5億円、帳簿価額による純資産価額が2億円の会社を考えます。評価差額は3億円です。

  • 改正前(37%):控除額 3億円 × 37% = 1億1,100万円
  • 改正後(38%):控除額 3億円 × 38% = 1億1,400万円
  • 差額:300万円(=評価差額3億円 × 1%)

発行済株式数が1万株であれば、1株当たり300円だけ評価が下がる計算になります。純資産価額の総額でいえば、5億円 − 1億1,400万円 = 3億8,600万円(改正前は3億8,900万円)です。

インパクトの大きさは、評価差額の大きさに比例します。含み益が10億円ある会社なら1,000万円、含み益がほとんどない会社ならほぼゼロです。含み益の大きい不動産や有価証券を抱える資産管理会社ほど、効き方は大きくなります。

💬 実務の現場から
「防衛特別法人税ができたから、自社株の評価も上がるんですよね」というご質問を実際にいただきます。逆です。評価の場面では、法人税等は「引く側」に立っています。もっとも、下がるといっても評価差額の1%ですから、これを当てにして承継のタイミングを動かすほどの話ではありません。動かすべきは株価の1%ではなく、株価そのものを決めている構造のほうです。

5. 見落としやすい4つの点

(1)基準は「課税時期」であって「事業年度」ではない

防衛特別法人税そのものは、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。しかし通達改正の適用時期は、国税庁の情報によれば、令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用するとされています。

つまり判定するのは、相続開始日・贈与日(=課税時期)です。会社の事業年度がいつ始まるかではありません。令和8年3月31日までに相続が発生していれば37%、令和8年4月1日以後なら38%、という線引きになります。

(2)評価明細書の様式が2種類ある

評価明細書も改正されました。令和8年6月26日付 課評2-46ほか2課共同「『相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について』の一部改正について」(法令解釈通達)により、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書(令和8年4月1日以降用)」が新設されています。

国税庁のページには、令和8年4月1日以降用令和6年1月1日以降用の2種類が並んでおり、「この評価明細書は課税時期によって使用する様式が異なります」と注記されています。

古い様式で計算すれば、控除割合は37%のままです。 過年度の申告書や、事務所に保存されているひな型をそのまま使うと、この改正が反映されません。様式の年版を必ず確認してください。

(3)第5表だけでなく、第8表も対象

国税庁の情報は、改正の対象となる明細書を次の2つと明示しています。

  • 第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書
  • 第8表 株式等保有特定会社の株式の価額の計算明細書(続)

第8表は、株式等保有特定会社の評価で使う「S1+S2方式」のうち、S2(株式等に係る部分)を計算する表です。株式等保有特定会社に該当する会社では、こちらでも法人税額等相当額を控除しますので、同じように38%になります持株会社化を進めた会社ほど、この表を使う場面が出てきます。

(4)類似業種比準方式には影響しない

今回の改正は、あくまで純資産価額方式の話です。類似業種比準方式の計算(配当・利益・純資産の3要素、しんしゃく率)には影響しません。

大会社であれば類似業種比準方式のみ、中会社・小会社であれば併用方式ですから、純資産価額のウエイトが大きい会社ほど影響が出ます。純資産価額方式100%で評価する小会社や、比準要素数1の会社・株式等保有特定会社・土地保有特定会社といった特定の評価会社では、そのまま効いてきます。

6. 実務でどう備えるか

❌ よくある失敗
  • 事務所や社内に保存している古い評価明細書のひな型をそのまま使い、37%で計算してしまう
  • 「事業年度が令和8年4月1日以後かどうか」で判定してしまう(正しくは課税時期)
  • 株式等保有特定会社なのに、第8表(S2)の割合を直し忘れる
  • 「1%下がる」ことを承継のタイミングの判断材料にしてしまう
⭕ 王道の進め方
  • 課税時期が令和8年4月1日以後の案件は、「令和8年4月1日以降用」の評価明細書を使う
  • 令和8年3月31日以前の課税時期の案件は、引き続き37%・従前の様式で計算する(新しい様式に引きずられない)
  • 試算のスプレッドシートやツールに37%がハードコードされていないかを確認する
  • 評価差額が大きい会社(含み益のある不動産・有価証券を持つ資産管理会社など)は、改正による影響額を数字で押さえておく
  • 株価対策は1%の話ではなく、会社規模区分・株特外し・株式の種類設計といった構造の話として組み立てる

7. まとめ

  • 令和8年3月25日付 課評2-28ほか2課共同の通達改正により、純資産価額方式で控除する法人税額等相当額の割合が37%から38%になりました(評価基本通達186-2)。
  • 引き上げの理由は、令和7年度税制改正による防衛特別法人税の創設です。内訳の合計は37.7316%で、防衛特別法人税の寄与は0.928%です。
  • 防衛特別法人税の基礎控除額は、評価方法の簡便性を考慮して加味しません
  • 適用は、令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等からです。判定基準は課税時期であって事業年度ではありません。
  • 評価明細書は令和8年6月26日付 課評2-46で改正され、「令和8年4月1日以降用」が新設されました。第5表と第8表(株式等保有特定会社のS2)が対象です。
  • 動く金額は評価差額×1%。増税でありながら、自社株の評価は下がる方向に働きます。ただし承継の判断を左右する規模ではありません。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、取引相場のない株式の評価と事業承継の設計を数多く手がけています。含み益の大きい資産管理会社や持株会社をお持ちの方は、評価明細書の様式まで含めてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

法人税額等相当額の割合は何%になりましたか?

38%です。令和8年3月25日付 課評2-28ほか2課共同「財産評価基本通達の一部改正について」により、従来の37%から改正されました(評価基本通達186-2)。

なぜ引き上げられたのですか?

令和7年度税制改正で防衛特別法人税が創設され、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることになったためです。「法人税率等の合計割合」の根拠となる税率が変わったことによる改正です。

38%の内訳を教えてください。

法人税23.2%、地方法人税2.3896%、防衛特別法人税0.928%、事業税7.0%、特別法人事業税2.59%、道府県民税0.232%、市町村民税1.392%で、合計37.7316%です。これを切り上げて38%としています。

いつから適用されますか?

令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用されます。会社の事業年度ではなく、課税時期で判定します。

自社株の評価は上がりますか、下がりますか?

下がります。 純資産価額の計算では、法人税額等相当額は控除する側の金額だからです。控除割合が1ポイント上がるため、評価差額(相続税評価額による純資産価額と帳簿価額による純資産価額の差)の1%分だけ、純資産価額が小さくなります。

評価明細書はどれを使えばよいですか?

課税時期が令和8年4月1日以後であれば「取引相場のない株式(出資)の評価明細書(令和8年4月1日以降用)」、それより前であれば「令和6年1月1日以降用」を使います。国税庁のページに「この評価明細書は課税時期によって使用する様式が異なります」と注記されています。

株式等保有特定会社の評価にも影響しますか?

します。国税庁の情報は、改正の対象となる明細書として「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」と「第8表 株式等保有特定会社の株式の価額の計算明細書(続)」の2つを挙げています。

類似業種比準方式にも影響しますか?

影響しません。今回の改正は純資産価額方式の計算に限られます。したがって、純資産価額のウエイトが大きい会社ほど影響が出ることになります。

防衛特別法人税の基礎控除は反映されないのですか?

反映されません。国税庁の情報は「評価方法の簡便性を考慮し、『法人税率等の合計割合』の算定に当たって加味しないこととした」と明記しています。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、国税庁が公表した通達改正のあらまし(情報)に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。取引相場のない株式の評価は、会社規模区分、特定の評価会社への該当の有無、課税時期の資産・負債の状況など、個別の事実関係により結論が変わります。実際の評価にあたっては、最新の法令・通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月5日

自社株の評価と事業承継の設計は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、取引相場のない株式の評価、会社規模区分の判定、特定の評価会社への該当の検討、株価対策と承継スキームの設計までご支援しています。含み益の大きい資産管理会社や持株会社をお持ちの方は、評価明細書の様式まで含めて一度ご確認ください。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継から中小企業の税務顧問まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。