海外のグループ会社に払う利息が損金にならない?過大支払利子税制(措置法66条の5の2)の20%基準と2,000万円基準を税理士が解説

海外に子会社や親会社がある。海外のファンドやSPC(特別目的会社)から資金を入れている。あるいは、日本の会社が海外グループの資金管理会社(キャッシュ・プーリングの親元)からお金を借りている。 こうした会社で、支払利息は当然に損金になると考えていると、思わぬところでつまずきます。 租税特別措置法第66条の5の2は、対象純支払利子等の額が調整所得金額の20%を超える場合、その超える部分を損金の額に算入しないと定めています。日本語にすると、「稼いだ利益に比べて利息を払いすぎている会社は、払いすぎの部分を経費として認めない」という制度です。通称を過大支払利子税制といいます。 税理士法人 小山・ミカタパートナーズにも、海外展開をされている会社から「グループ会社からの借入で回しているのですが、問題ありませんか」というご相談は実際に寄せられます。過去のご相談の傾向として申し上げると、移転価格税制やタックスヘイブン対策税制は意識しているのに、支払利子の損金算入制限だけがすっぽり抜けているというケースが目立ちます。 そして、この制度でいちばん誤解されているのが「どの利息が対象になるのか」です。結論から言うと、日本の銀行から借りた利息は基本的に対象外で、租税条約で源泉所得税が免除される海外グループ会社への利息は対象になります。理由は条文にはっきり書かれています。 本記事では、20%の計算方法、2,000万円の除外ライン、対象になる利息とならない利息の分かれ目、そして過少資本税制との関係までを、条文にさかのぼって整理します。
📋 この記事の目次
  1. 1. 何が起きるのか(3行サマリー)
  2. 2. どの利息が「対象」になるのか——制度の心臓部
  3. 3. 見落としやすい「支払利子等」の範囲
  4. 4. 20%の分母——調整所得金額の作り方
  5. 5. 適用されない2つの入口(適用免除基準)
  6. 6. 過少資本税制との関係と、超過利子額の繰越し
  7. 7. 実務で押さえるべきこと
  8. 8. まとめ
  9. よくある質問(FAQ)

1. 何が起きるのか(3行サマリー)

  • 法人の各事業年度の対象純支払利子等の額が、その事業年度の調整所得金額の20%に相当する金額を超える場合、対象支払利子等合計額のうちその超える部分に相当する金額は、損金の額に算入されません(租税特別措置法第66条の5の2第1項)。
  • 損金不算入となった金額は超過利子額と呼ばれ、その後7年以内に開始した事業年度に繰り越して、一定の限度額まで損金に算入できます(同法第66条の5の3第1項)。
  • ただし、対象純支払利子等の額が2,000万円以下であれば、そもそもこの制度は適用されません(同法第66条の5の2第3項第1号)。

この20%というルールは、令和2年4月1日以後に開始する事業年度の法人税から適用されています(所得税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第6号)附則第57条)。それ以前は「関連者への支払利子が調整所得金額の50%超」という、もっとゆるい制度でした。

⚠️ ここに注意 … インターネット上の解説には、いまだに「関連者支払利子等」「50%」と書かれたものが残っています。これは令和2年3月31日以前に開始した事業年度のルールです。国税庁のサイト上にも平成24年当時に作成された旧制度の解説資料がそのまま残っているため、検索で拾った資料の日付は必ず確認してください。現行制度は、対象が関連者以外にも広がったうえで、基準が50%から20%へ引き下げられています。

2. どの利息が「対象」になるのか——制度の心臓部

この制度でいちばん大事なのは、パーセントの計算ではなく、分子に入る利息の範囲です。条文は次の三段構えになっています。

支払利子等 −(対象外支払利子等)= 対象支払利子等

まず支払利子等とは、法人が支払う負債の利子(これに準ずるものを含みます)その他政令で定める費用または損失をいいます(第66条の5の2第2項第2号)。そこから対象外支払利子等を除いたものが、対象支払利子等です(同項第1号)。

対象外になるものの筆頭は「受け手が日本で課税される利息」

第2項第3号イは、対象外支払利子等の第一に、

支払利子等を受ける者の課税対象所得に含まれる支払利子等

を挙げています。その「課税対象所得」の中身を定めているのが、租税特別措置法施行令第39条の13の2第6項です。受け手の区分ごとに、次のように定義されています。

  • 居住者 … 所得税法第2条第1項第21号に規定する各種所得(所得税を課さないこととされる所得を除く)
  • 非居住者 … 所得税法第164条第1項各号の区分に応じた国内源泉所得(所得税を課さないこととされ、または租税条約の規定により所得税を免除することとされる所得を除く
  • 内国法人 … 各事業年度の所得(法人税を課さないこととされる所得を除く)
  • 外国法人 … 法人税法第141条各号の区分に応じた国内源泉所得(法人税を課さないこととされ、または租税条約の規定により法人税を免除することとされる所得を除く

ここを読むと、制度の狙いがはっきりします。

日本の銀行や日本の取引先に払う利息は、受け手である内国法人の各事業年度の所得に含まれます。したがって対象外支払利子等となり、分子に入りません。国内で完結する借入だけの会社が、この制度に当たることは基本的にありません。

一方、海外の関連会社に払う利息はどうか。日本で源泉所得税が課される(国内源泉所得として課税される)のであれば、その部分は課税対象所得に含まれるので対象外です。ところが、租税条約によって源泉所得税が免除される場合、条文はそれを課税対象所得から明確に除いています。 つまり、条約で免除されている利息こそが、この制度の対象になるという構造です。

💡 なぜこの設計なのか … この制度は、OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの行動4「利子控除制限」に対応するものです。趣旨は、日本で課税されない相手に利息を払って日本の課税所得を圧縮することを防ぐ点にあります。だから「日本で課税される相手への利息」は外し、「日本で課税されない相手への利息」だけを残す。条約免除がわざわざ書き込まれているのは、まさにそこが本丸だからです。

そのほかの対象外支払利子等

第2項第3号のロからホは、次のものも対象外としています。

  • 公共法人のうち政令で定めるものに対する支払利子等(ロ)
  • 特定債券現先取引等に係るものとして政令で定める支払利子等のうち、政令で定める金額(ハ)
  • 生命保険会社・損害保険会社が締結した保険契約に係る支払利子等のうち政令で定めるもの(ニ)
  • 法人が発行した債券に係る支払利子等で非関連者に対するもの(特定債券利子等)。ただし、その取得をした者が実質的に多数でないものとして政令で定める債券は除かれます(ホ)

ホの「実質的に多数でない」という要件が置かれているのは、形だけ社債にして特定の関連者に引き受けさせる抜け道をふさぐためです。国税庁の法令解釈通達66の5の2-12は、金融商品取引業者等が総額引受けを行った社債について、発行日に取得したのがその業者だけであっても、複数の者が発行日までに買付けの申込みをし、払込期日までに払込みをしているときは「実質的に多数でないもの」に当たらない、という取扱いを示しています。

迂回させても外れない

租税特別措置法施行令第39条の13の2第4項は、関連者が非関連者を通じて資金を供与したと認められる場合、その非関連者への支払利子等を対象外から外す(=対象に取り込む)と定めています。同条第3項も、次のものを「支払利子等」に含めています。

  • 関連者が非関連者に対して債務の保証をすることで非関連者が資金を供与したと認められる場合の、その関連者に支払う保証料
  • 関連者から貸し付けられた債券が他の非関連者に担保提供・現先取引・現金担保付債券貸借取引で回されることで資金供与があったと認められる場合の、貸付債券の使用料や保証料
  • 法人税法施行令第139条の2第1項に規定する償還有価証券に係る調整差損

海外の親会社に保証だけしてもらって日本の銀行から借りるという形にしても、その保証料は支払利子等に取り込まれる、ということです。

3. 見落としやすい「支払利子等」の範囲

分子に入る「支払利子等」は、損益計算書の支払利息だけではありません。施行令と通達が、次のものを取り込んでいます。

施行令第39条の13の2第2項(負債の利子に準ずるもの)

  • 支払う手形の割引料
  • 法人税法第64条の2第3項に規定するリース取引によりリース資産の引渡しを受けたことにより支払うべき対価の額のうちに含まれる利息に相当する金額1,000万円に満たないものは除かれます
  • 法人税法施行令第136条の2第1項に規定する満たない部分の金額(金銭債務の償還差損
  • その他経済的な性質が支払う利子に準ずるもの

国税庁 法令解釈通達

  • 固定資産その他の資産の取得価額に算入した支払利子等、繰延資産として経理した支払利子等であっても、その事業年度において支払うものは支払利子等の額に含まれます(66の5の2-1)。
  • 短期の前払利息のうち、法人税基本通達2-2-14により支払った日の属する事業年度の損金に算入されたものも、含まれます(66の5の2-3)。
  • 「負債の利子」には、買掛金を手形で支払った場合に負担した割引料相当額営業保証金・敷金その他これらに類する預り金の利子金融機関の預金利息および給付補備金繰入額が含まれます(66の5の2-6)。
  • 金銭債権を債権金額を超える価額で取得した場合に損金算入される調整差額も、「経済的な性質が支払う利子に準ずるもの」に含まれます(66の5の2-5)。

建設中の工場の借入利息を建設仮勘定に乗せているから支払利息はゼロです、という説明は通りません。取得価額に算入していても、その事業年度に支払うものは分子に入ります。

なお、通達66の5の2-2は救済も用意しています。取得価額等に含めたために損金に算入されていない部分(原価算入額)があり、そのうちに損金不算入額から成る部分があるときは、確定申告書において、その事業年度終了時の固定資産の取得価額等を減額することができるとされています(減額した金額は翌事業年度の決算で調整します)。二重に不利益を受けないための取扱いです。

4. 20%の分母——調整所得金額の作り方

調整所得金額は、租税特別措置法施行令第39条の13の2第1項が定めています。ひとことで言えば、税務上の所得金額を、利息と償却で膨らませ直した金額です。組み立ては次のとおりです。

① 出発点 特別償却、収用等の特別控除、受取配当等の益金不算入、外国子会社配当の益金不算入、欠損金の繰越控除、寄附金の損金不算入など、条文に列挙された多数の規定を適用せず、かつ、その事業年度に支出した寄附金の額の全額を損金に算入して計算した場合の、その事業年度の所得の金額。

② 加算するもの

  • その事業年度の対象純支払利子等の額
  • 減価償却資産に係る償却費の額で、その事業年度の所得の計算上損金に算入される金額(損金経理または剰余金の処分により特別償却準備金として積み立てた金額を含みます)
  • 金銭債権の貸倒れによる損失の額で損金に算入される金額
  • 匿名組合契約等により匿名組合員に分配すべき利益の額で損金に算入される金額

③ 減算するもの

  • 外国関係会社に係る課税対象金額・部分課税対象金額・金融子会社等部分課税対象金額など(第66条の5の2第7項または第66条の5の3第2項の適用に係るもの)
  • 匿名組合契約等により匿名組合員に負担させるべき損失の額で益金に算入される金額

イメージとしては税務版のEBITDA(利払前・税引前・償却前利益)に近い数字ですが、会計上のEBITDAとは一致しません。出発点が税務上の所得であること、繰越欠損金の控除前であること、寄附金を全額損金にして計算することなど、独自の調整が入っているためです。決算書の数字をそのまま当てはめると判定を誤ります。

そして分子の対象純支払利子等の額は、

対象支払利子等合計額 − 控除対象受取利子等合計額

です。控除対象受取利子等合計額は、その事業年度の受取利子等の額の合計額を、「対象支払利子等合計額 ÷ 支払利子等の額の合計額」の割合で按分した金額とされています(第66条の5の2第2項第6号)。受取利息を全額引けるわけではないという点に注意が必要です。対象支払利子等の割合が小さい会社ほど、差し引ける受取利息も小さくなります。

5. 適用されない2つの入口(適用免除基準)

第66条の5の2第3項は、次のいずれかに当たる場合は第1項を適用しないと定めています。

① デミニミス基準(第3項第1号) その事業年度の対象純支払利子等の額が2,000万円以下であるとき。通算法人の場合は、通算グループ内の対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額の合計額を控除した残額で判定します。

② 国内グループ判定(第3項第2号) 内国法人と、その内国法人との間に特定資本関係のある他の内国法人について、グループ全体の対象純支払利子等の額が、グループ全体の調整所得金額の20%に相当する金額を超えないとき。

ここでいう特定資本関係とは、一の内国法人が他の内国法人の発行済株式等の総数または総額の100分の50を超える数または金額の株式等を直接または間接に保有する関係、およびその関係にある内国法人相互の関係をいいます。なお、他の内国法人は事業年度の開始の日と終了の日がその内国法人と一致するものに限られます。

⚠️ 「50%以上」と「50%超」は別物 … 分子に入るかどうかを左右する関連者の判定は、発行済株式等の100分の50以上を直接または間接に保有する関係などです(第66条の5の2第2項第4号)。一方、②の国内グループ判定に使う特定資本関係100分の50を超える関係です。ちょうど50%のとき、関連者には当たるがグループ判定には入らないという結果になります。条文を読まずに「50%」とだけ覚えていると、判定を取り違えます。

適用免除には「書類」が要る

第4項は、第3項の適用免除を受けるには、確定申告書等に第3項の規定の適用がある旨を記載した書面およびその計算に関する明細書を添付し、かつ、その計算に関する書類を保存している場合に限り適用すると定めています。

第5項に宥恕規定があり、添付や保存がなかった場合でも、やむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、書面・明細書・書類の提出があった場合に限り適用できるとされています。ただし、これは税務署長の裁量にかかる救済であって、当てにして省略してよい手続きではありません

2,000万円以下だから関係ない、で申告書を出してしまうと、形式要件で足をすくわれます。

6. 過少資本税制との関係と、超過利子額の繰越し

支払利子の損金算入制限には、もう一つ古くからある制度があります。過少資本税制(租税特別措置法第66条の5)です。両者は似て非なるものなので、整理しておきます。

比べる点過少資本税制(66条の5)過大支払利子税制(66条の5の2)
見るもの負債と資本の比率利息と所得の比率
基準資本持分の3倍超調整所得金額の20%超
相手国外支配株主等・資金供与者等課税対象所得に含まれない相手
除外ライン総負債が自己資本の3倍以下対象純支払利子等2,000万円以下
繰越しなし7年

過少資本税制は、内国法人の国外支配株主等および資金供与者等に対する負債に係る平均負債残高が、その国外支配株主等の資本持分の3倍に相当する金額を超えるときに、超える部分に対応する負債の利子等を損金不算入とする制度です。ただし、その内国法人の総負債に係る平均負債残高が自己資本の額の3倍に相当する金額以下であれば適用されません(第66条の5第1項)。特定債券現先取引等に係る負債を控除して計算する方法を選んだ場合は、この「3倍」が「2倍」になります(同条第2項)。同種の事業を営む類似法人の負債・純資産比率に照らして妥当と認められる倍数を用いることもできます(同条第3項)。

両方に当たったらどうなるのか。 第66条の5の2第6項が答えを出しています。過大支払利子税制による損金不算入額が、過少資本税制による損金不算入額(に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額)以下となる場合には、過大支払利子税制は適用しない。つまり、否認額が大きいほうの制度だけが適用されるという調整です。二重に否認されることはありません。

超過利子額の繰越し(第66条の5の3)

損金不算入となった超過利子額は、その事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度に生じたものについて、繰り越して損金に算入できます。損金算入できる限度額は、

その事業年度の調整所得金額の20%相当額 − その事業年度の対象純支払利子等の額

です(第66条の5の3第1項)。利息を払いすぎた年に切り捨てられるのではなく、利息に余裕がある年に取り戻す設計になっています。

適用には手続要件があります。超過利子額が生じた最も古い事業年度以後の各事業年度について確定申告書の提出があり、かつ、適用を受けようとする事業年度の確定申告書等・修正申告書・更正請求書に超過利子額、損金算入額およびその計算に関する明細を記載した書類の添付があることが必要です。しかも、損金算入額の計算の基礎となる超過利子額は、その書類に記載された金額が限度とされています(同条第5項)。書き漏らした分は、後から増やせません。

💡 繰越期間が10年になる期間がある … 第66条の5の3第4項は、法人の事業年度が令和12年4月1日から令和17年3月31日までの間に開始する事業年度である場合について、「七年以内に開始した事業年度」を「十年以内に開始した事業年度(当該開始の日前七年以内に開始した事業年度および令和4年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始した事業年度に限る)」と読み替える規定を置いています。令和4年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始した事業年度に生じた超過利子額について、繰越しの窓が長く取られている形です。

なお、適格合併が行われた場合や完全支配関係のある子法人の残余財産が確定した場合には、被合併法人等の超過利子額を引き継ぐことができます(同条第3項)。ただし、その超過利子額に係る最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書の提出があることなど、政令で定める要件を満たしている場合に限られます。

7. 実務で押さえるべきこと

❌ よくある失敗
  • 「日本の銀行からしか借りていない」と思い込み、海外グループ会社への支払利息や保証料を集計していない
  • 租税条約で源泉所得税が免除されているので税務上も安心だと考える(条約免除こそが対象になる入口です)
  • 建設仮勘定や固定資産の取得価額に算入した支払利息を、支払利子等から外して集計している
  • リース料に含まれる利息相当額、手形割引料、敷金・保証金の利子を支払利子等に入れていない
  • 会計上のEBITDAを調整所得金額の代わりに使って、20%を計算している
  • 受取利息を全額控除できると考えている(実際は対象支払利子等の割合で按分します)
  • 2,000万円以下だから関係ないと判断し、申告書への記載と明細書の添付を省略する
  • 過少資本税制と過大支払利子税制を両方とも否認されると思っている(否認額の大きいほうだけです)
  • 超過利子額の明細を申告書に書き漏らし、翌年以後に繰り越せる金額を失う
⭕ 王道の進め方
  • まず支払利子等の全量を洗い出す。損益計算書の支払利息だけでなく、資産に計上した利息、リース料の利息相当額、保証料、手形割引料まで拾う
  • 拾った利息を受け手の区分で並べ替える。内国法人か、非居住者か、外国法人か。日本で課税されるのか、条約で免除されているのかを1件ずつ確定させる
  • 対象純支払利子等が2,000万円を超えそうかを、期中のうちに概算で確認する。超えそうなら調整所得金額の試算に進む
  • 調整所得金額は税務上の所得から組み立て直す。繰越欠損金の控除前であること、寄附金を全額損金として計算することを忘れない
  • 過少資本税制の計算も並行して行い、否認額の大きいほうを確認する
  • 適用免除を使うなら、確定申告書に「適用がある旨」を記載し、明細書を添付し、計算書類を保存する。この3点をチェックリスト化する
  • 超過利子額が出たら、発生年度から連続して確定申告書を提出し、毎年明細を添付し続ける。1年でも切れると繰越しが使えなくなります
  • 借入の組み替えを検討する場合は、移転価格税制(利率が独立企業間価格か)とタックスヘイブン対策税制(貸し手側の合算課税)とセットで設計する。片方だけ直すと別のところが壊れます
💬 実務の現場から
海外グループからの借入について、「利率は第三者と同じ水準にしてあるので問題ありません」というご説明を伺うことがよくあります。移転価格税制の観点ではそのとおりです。ただ、過大支払利子税制は利率が適正かどうかを一切見ていません。見ているのは、払った利息の総額が、その年に稼いだ所得に比べて大きすぎないかという一点だけです。適正な利率で、正当な事業目的で借りていても、赤字に近い年や償却負担の重い年には、あっさり20%を超えます。だからこそ、期末を過ぎてから計算するのでは遅い。決算期の途中で対象純支払利子等の見込みを一度置いてみることを、海外グループ内の資金取引がある会社にはおすすめしています。

8. まとめ

  • 対象純支払利子等の額が調整所得金額の20%を超えると、超える部分は損金不算入になります(租税特別措置法第66条の5の2第1項)。現行ルールは令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています(平成31年法律第6号 附則第57条)。
  • 分子に入るのは対象支払利子等=支払利子等から対象外支払利子等を除いたものです。受け手の課税対象所得に含まれる利息は対象外になります(同条第2項第1号・第3号イ)。
  • 「課税対象所得」からは、租税条約により所得税または法人税を免除することとされる所得が除かれます(同法施行令第39条の13の2第6項)。条約で免除されている海外関連会社への利息は、この制度の対象になります。
  • 支払利子等には、固定資産の取得価額に算入した利息(通達66の5の2-1)、短期の前払利息(同-3)、手形割引料・預り金の利子・預金利息(同-6)、リース料に含まれる利息相当額(1,000万円未満を除く)(施行令第39条の13の2第2項)まで含まれます。
  • 調整所得金額は、列挙された規定を適用せず寄附金を全額損金として計算した所得に、対象純支払利子等・減価償却費・貸倒損失・匿名組合分配額を加算し、CFC合算額等を減算して求めます(同施行令第1項)。会計上のEBITDAとは一致しません。
  • 対象純支払利子等が2,000万円以下なら適用されません(第66条の5の2第3項第1号)。国内グループ全体で20%以下という免除基準もあります(同項第2号。特定資本関係は50%超)。
  • 適用免除には、確定申告書等への記載・明細書の添付・書類の保存が必要です(同条第4項)。
  • 過少資本税制と重なった場合は、否認額が大きいほうの制度だけが適用されます(同条第6項)。
  • 損金不算入額(超過利子額)は7年間繰り越せますが、発生年度以後の連続した確定申告書の提出と明細の添付が要件で、明細に書いた金額が限度です(第66条の5の3第1項・第5項)。

税理士法人 小山・ミカタパートナーズでは、海外グループ内の資金取引について、過大支払利子税制・過少資本税制・移転価格税制・タックスヘイブン対策税制を横断して確認し、借入と資本の構成そのものからご一緒に設計しています。決算を締めてから判明する論点ではありません。期中のうちに一度、数字を置いてみてください。

よくある質問(FAQ)

日本の銀行からの借入だけでも、この制度に当たりますか?

基本的に当たりません。銀行が受け取る利息は内国法人の各事業年度の所得に含まれ、租税特別措置法第66条の5の2第2項第3号イの対象外支払利子等に該当するため、分子である対象支払利子等に入らないからです。ただし、海外の関連者が銀行に保証を出している場合など、施行令第39条の13の2第3項・第4項により取り込まれる部分がないかは確認が必要です。

海外の親会社に払う利息から源泉所得税を引いています。それでも対象になりますか?

日本で国内源泉所得として課税されている部分は、受け手の課税対象所得に含まれるため対象外です。問題になるのは、租税条約により所得税または法人税が免除されている場合です。施行令第39条の13の2第6項は、課税対象所得から「租税条約の規定により免除することとされる所得」を明示的に除いています。条約免除を受けているほど、この制度の対象になりやすいという関係にあります。

中小企業には関係のない制度ですか?

条文上、資本金や従業員数による除外はありません。判定は金額で行われ、対象純支払利子等が2,000万円以下であれば適用されません(第66条の5の2第3項第1号)。海外グループへの支払利息が年間2,000万円を超える規模であれば、会社の大小にかかわらず検討対象になります。

調整所得金額は決算書のどこを見れば分かりますか?

決算書からは直接は分かりません。税務上の所得金額を出発点に、施行令第39条の13の2第1項が列挙する規定(受取配当等の益金不算入、欠損金の繰越控除、寄附金の損金不算入など)を適用せずに計算し直したうえで、対象純支払利子等・減価償却費・貸倒損失・匿名組合員への分配額を加算し、CFC合算額等を減算します。繰越欠損金の控除前である点が実務上とくに効きます。

受取利息は全額を差し引けますか?

差し引けません。控除できるのは控除対象受取利子等合計額で、これはその事業年度の受取利子等の額の合計額を「対象支払利子等合計額 ÷ 支払利子等の額の合計額」の割合で按分した金額と定義されています(第66条の5の2第2項第6号)。対象支払利子等の割合が小さい会社ほど、控除できる受取利息も小さくなります。

建設中の建物の借入利息を建設仮勘定に入れています。支払利子等に含まれますか?

含まれます。国税庁の法令解釈通達66の5の2-1は、固定資産その他の資産の取得価額に算入した場合または繰延資産として経理した場合であっても、その事業年度において支払うものは支払利子等の額に含まれると明記しています。なお、同66の5の2-2は、原価算入額のうち損金不算入額から成る部分について、確定申告書で固定資産の取得価額等を減額できる取扱いを認めています。

2,000万円以下なら、申告書には何も書かなくてよいですか?

書く必要があります。第66条の5の2第4項は、適用免除は確定申告書等に適用がある旨を記載した書面およびその計算に関する明細書の添付があり、かつ計算に関する書類を保存している場合に限り適用するとしています。第5項にやむを得ない事情がある場合の宥恕はありますが、税務署長の判断によるものです。

過少資本税制と両方に当たったら、二重に否認されますか?

されません。第66条の5の2第6項により、過大支払利子税制の損金不算入額が過少資本税制の損金不算入額(に対応する政令で定める計算による金額)以下となる場合には、過大支払利子税制は適用されません。結果として、否認額の大きいほうの制度だけが適用されます。

損金不算入になった金額は、その後どうなりますか?

超過利子額として、その後7年以内に開始した事業年度に繰り越し、その事業年度の調整所得金額の20%相当額から対象純支払利子等の額を控除した残額を限度に損金算入できます(第66条の5の3第1項)。適用には、超過利子額が生じた最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書の提出と、適用年度の申告書等への明細の添付が必要で、明細に記載した金額が上限になります(同条第5項)。

利率を第三者と同じ水準にしておけば大丈夫ですか?

移転価格税制の観点では重要ですが、過大支払利子税制は利率の妥当性を判定しません。見ているのは対象純支払利子等の総額と調整所得金額の比率だけです。適正な利率であっても、所得が小さい年や償却負担の重い年には20%を超えることがあります。移転価格税制とは別に、独立して検討する必要があります。

グループ通算制度を適用している場合はどうなりますか?

デミニミス基準の判定が変わります。第66条の5の2第3項第1号は、通算法人については、その通算法人および通算完全支配関係がある他の通算法人の対象純支払利子等の額の合計額から、対象純受取利子等の額の合計額を控除した残額で2,000万円以下かどうかを判定すると定めています。単体の金額だけで判断すると誤ります。

出典・参考資料

ご利用上の留意事項
本記事は、条文原文および国税庁の法令解釈通達に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断に代わるものではありません。過大支払利子税制の適用の有無、調整所得金額および対象純支払利子等の額の計算、適用免除基準の判定、過少資本税制との調整は、資金調達の形態、相手方の居住地国、適用される租税条約の内容により異なります。実際の判定にあたっては、最新の法令および通達をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。
発行:税理士法人 小山・ミカタパートナーズ / 文責:代表 小山晃弘(公認会計士・税理士・米国公認会計士)
出典確認日:2026年8月10日

海外グループ内の資金取引と支払利子の設計は KMP へ

公認会計士・税理士・米国公認会計士のトリプルホルダーの視点で、過大支払利子税制・過少資本税制・移転価格税制・タックスヘイブン対策税制を横断して確認し、借入と資本の構成そのものから設計をご支援しています。決算を締めてから判明する論点ではありません。期中のうちに一度、数字を置いてみてください。

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小山晃弘 公認会計士・税理士・米国公認会計士
小山 晃弘(こやま あきひろ)
税理士法人 小山・ミカタパートナーズ 代表
公認会計士・税理士・米国公認会計士(ワシントン州)のトリプルホルダー。デロイト トーマツ(監査)出身。富裕層・オーナー経営者の資産防衛・事業承継から中小企業の税務顧問まで伴走。著書7冊・累計6万部、YouTube登録者11万人超。 🔗 kmp.or.jp / お問い合わせ:info@kmp.or.jp

この記事は執筆時点の法令・通達に基づいています。最終確認日:2026年8月2日(現行制度との照合を実施)。税制は改正されます。実際のご判断の前に、最新の情報をご確認いただくか、税理士法人 小山・ミカタパートナーズまでご相談ください。